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もっきぃの映画館でみよう(もっきぃの映画館で見よう)

年間100本の劇場鑑賞、音声ガイドもやってました。そんな話題をきままに書きます。ネタバレもありますのでご注意を。

敬愛なるベートーヴェン フーガを理解できなくても、第九には圧倒された。とても大胆な映画。

2006-12-10 04:27:49 | 実在する人
タイトル:敬愛なるベートーヴェン(原題 Copying Beethoven)
製作国:イギリス・ハンガリー
ジャンル:伝記もの/2006年/104分
映画館:TOHO二条シネマズ(127席)
鑑賞日時:2006年12月8日 (土),12:30~ 70人ぐらい
私の満足度:70% 
オススメ度:60%

<序>
主演エド・ハリスと聞いて、思い出すのはビューティフル・マインドの
スパイ役。怖さを感じさせる鋭い目つきでの怪演は、まさにピッタリ。
音楽家は似合わないと思ったのだが、なんとなくベートーヴェン
と聞いて、これはいけるかも?実際、チラシのエド・ハリスは、
人間としての恐ろしさと、クラシックのセンスのよさが共存している
みたいで期待がつのる。

ただ不安もあった。「第九」のパワーは圧倒的だし、結局「第九」が
よかったみたいな感じにならないかと。「バルトの楽園」でも、
なんだか最後の「第九」で満足して(誤魔化されて?)しまった
みたいなところがあった。

でも、たまたま時間があったこともあり、珍しく初日に見に行って
きました。

<冒頭:今回は、BIGLOBEストリームで冒頭の12分間を配信しているため
それを参考にしました。12/11まで。なので、いつもより正確です。>

タイトルバック、暗転のなか。
教会の鐘の音、犬の泣き声、小鳥のさえずり。

青白い煙、赤い炎。パチパチという焚き火の音。
手をかざしたり、手こすったり。
メインタイトル『Copying Beethoven』
焚き火のまわりで眠っている人たち。寝ながらあくびする子供。
しわしわの手、ボロボロの服。いかにもその土地の人という感じの
男の顔、女の顔。

木の車輪。4頭の白馬に引かれて馬車がゆく。
小川のほとり、川べりの牛がなく。軽い馬のいななき。

馬車のなか、女のアップ(ダイアン・クルーガー)端正な顔立ち。
深い緑のコート。隣の男は、ナイフで果物を切りながら食べている。
老婆と赤子を抱いた女。
田園を走りづづける乗合馬車。

バイオリンの音色。やや低く、不気味な感じ。
先ほどの女が、チラリと外を見る。
羊の群れ。バイオリンを弾いている青年。
そのなかを、馬車がつっきってゆく。

バイオリンの音色は、やや神経質で、混乱させるような音。段々激しく。
女、窓から外をみる。葉の落ちた木々。まどに黒い手袋をした女の手が
なにかをつかむようにのびてくる。目をとじ音に反応し首を動かし、
耐えるような表情。

チェロの音も入ってくる。
車窓;馬を使って耕す人。種をまく人。平原。走る少年。高くつもった干し草を燃やす人
鍬を肩に掛けて歩く人。

軌跡を描くように、ぶれたカメラの映像。一本道を馬車がゆく。
車窓:子供を挟んで親二人が歩いている。風で男親の帽子が飛ぶ。
吹き飛ばされて舞い上がる。子供が振り返り大きなくちをあけて目で追う。
大きな袋を抱えたおばさんが馬車を見る。鍬を肩に掛けた青年が馬車に
振り返る。

小刻みなカットで、いままでのようなシーンが、女の顔のアップとともに
繰り返される。

暗い建物のなか、早足で階段を上がってゆく音。さきほどの女。
装飾をほどこした金属性の手すり。階上に蝋燭を持った人。
女は、歩きながら帽子を取り、看護婦、牧師?とすれ違う。
コートを脱いで部屋の中へ。音楽がとまる。

女は、ベッドで横になっている老人(エド・ハリス)をみて
軽く息を吐く。ベットに肘をついて手を合わせ指を絡め、額を付ける。

横たわっていた老人の手がのびてくる。その手を握り返し立ち上がる。
「アンナ」
「お目覚めですか?」
彫りが深く、影になっている老人の顔。白髪。
アンナ(女)の顔も、窓からの光だけで半分は影になっている。
アンナ、老人のほほ、肩ををなでる。老人は横になったまま。
「待ってたよ」
アンナ、感激したおももちで
「マエストロと同じように”大フーガ”を聴きました」
稲光で、小刻みに顔がてらされる。
「分かってくれるとおもってたよ。」
「ウー。」老人うなづいていたが、うめく。
「医者を呼んで」
そばに座っていた男があわてて立ち上がる。
アンナ、老人のほほ、肩をなでる。
「しっかり、落ち着いて」
「アンナ、嵐が・・・嵐が私に近づいてくる。」
「怖れないで」
雷、激しい雨。
「ウーゥ。」
少し離れたところで子供があとずさりながら見ている。
「泣くんじゃない。」
うなずくアンナ。老人の顔をみて、胸に顔をうずめて泣く

「朝か」
「そうです。」
アンナ外を見る。
明るい光。窓枠から雨のしずくが、ポタリポタリと落ちている。
「マエストロ」
老人の顔を見て、胸に顔をうずめて、白い衣服をつかみ声を上げて泣く。
目をつぶったままのマエストロ。だんだんと画面が白くなり、真っ白に。
『ウィーン1824年』

<ストーリー gooより引用>
“第九”の初演を4日後に控えた1824年のウィーン。楽譜が完成しない中、
ベートーヴェンのもとに写譜師としてアンナが派遣されてくる。
ベートーヴェンはアンナを冷たくあしらうが、彼女の才能を知り、
仕事を任せることに。尊大で傲慢なベートーヴェンだが、ただ一人の肉親
である甥のカールだけは溺愛していた。しかしカールがその一方的な愛を
疎ましく感じていることに気づかない。やがて初演の日がきた。難聴から
指揮を怖れるベートーヴェンを助けたのはアンナだった。

<感想:ネタバレあり>

原題 Copying Beethoven のコピーには、「はっきりと理解する」という
意味もあるようで、アンナがコピスト(楽譜を清書する人)であることと
かかっている。一方で、アンナは、監督のコピーでもあるように思えた。
アニエスカ・ホランド監督は「私は、女性監督ではなく、映画監督」と言った
そで、アンナが女であることで帰れといわれ「一番優秀な学生です。」
と言い返すところなど似ているのでは? 監督がアンナを通して、主張を
しているように感じた。それだけに、この映画は「ベートーヴェン」の映画
でありながら、アンナにも同じぐらい比重が置かれているという
とても大胆な映画だ。

それだけではない、あの第九がラストではなく、中盤にでてくる。しかも、
このシーンで、ベートーヴェンを助けるアンナは、舞台の袖にいるのでは
なく、舞台の上。オーケストラの後部の床にある、1m四方の穴から
上半身を出して、ベートーヴェンに向かって指揮をするのである。
アンナの指揮をみて、ベートーヴェンは指揮をする。さらに、演奏が
終わったあと、アンナは穴にもぐっていくかとおもいきや・・・・。
この場面は、この映画で一番すきなところなので、再現すると。

第九の演奏を終えた瞬間。静寂のなかベートヴェンのアップ。
肩で息をしている息遣いだけが聞こえる。少しカメラがひくと、
大きな拍手をする満場の観客。だが、拍手の音は聞こえずべートーヴェンは
緊張と疲労の表情。アンナは、両脇の楽団員から手を伸ばされ、
穴から引き上げられて、文字通り舞台にたつ。そのまま指揮台へと
歩いてゆき、ベートーヴェンに観客の方を向くように促す。
振り返るベートーヴェンの目に、拍手する観客が飛び込んでくるとともに、
拍手の音声がはいり、満面の笑みを浮かべる。

本当はもっとゆったりと4時間ぐらいかけてこの映画をみたかったという
気がするのだが、それはベートーヴェンの生き方に反することなのかも
しれない。フーガにはじまり、フーガに終わった映画を、
私は「はっきりと理解する」ことができなかったが、第九に圧倒され
主演二人の演技もよかったので、少し満足度が甘くなっちゃいました。

<映画で使われた第九の録音>
1987年ベルナルド・ハインテインク指揮
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

<エド・ハリス>
またまた怪演ながら、かわいらしさもチラリ。おなら節?を弾く
あたりの嬉しそうな姿はなんだか似合ってました。でも、やはり
スパイとか刑事のほうがぴったりの感があり、12月末では
見逃した『ヒストリーオブバイオレンス』を見に大阪・新世界へ
言ってきます。

<ダイアン・クルーガー>
何といっても元スーパーモデル。初めてみたのは『トロイ』(2004)。
これだけ美しかったら戦争を起こす原因になるのもわからんでは
ないなあと妙に納得したものでした。存在感はあったけど、お飾り
的な役でした。それが2005年『戦場のアリア』では、歌手の役で
もう立派な女優さん。そして今回はエド・ハリスと張り合うの
ですから、凄いですねえ。いつ日本公開されるのか知りませんが
「Frankie」という映画では、堕落して破滅するファッションモデル役で
主演するそうで、これまたぜひ見てみたいと思います。


<英語でひと言。 He mooned me.>
いちおう目指せ英検一級の試みとして、映画で、でてきた単語なり
表現をひとつでも書いてゆこうというセコイコーナー。しかも、
聞き取りの時点であっているという保証なし。

アンナがベートーベンの家で楽譜の清書をしているときに、
ベートーベンが上半身裸になって髪の毛を洗いはじめる。
不快な表情のアンナ。でも、ベートヴェンは上機嫌で、
ズボンをずらして尻まで見せる。

あとからそのときのことをアンナが恋人に伝える言葉。

He mooned me. (お尻を見せたの。)

まさかと思って、辞書を引くと
moon (俗)(人)に尻を出して見せる。
とありました。

ではまた。

敬愛なるベートーヴェン@映画生活
「敬愛なるベートーヴェン」の映画詳細、映画館情報はこちら eXcite CINEMA>>


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11 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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TBありがとうです (がくりん)
2006-12-18 10:28:42
TBありがとうございます。

あの、第9のシ-ンをもっとやって欲しかったと思うくらい、やっぱり第9でしたね。
でも、さほどクラシックに興味のない私にも、感動させて貰えるくらい、ベートーヴェンの役ははまり役で見事だったと思います。

DVD出たら買おうかな~と思うくらいです(笑)
返信する
Unknown (♪稔兎♪)
2006-12-18 12:23:26
トラバありがとうございます
エド・ハリスたしかに可愛らしさもありました。
実際のベートーベンがどんな人物だったのかはわかりませんが
(気難しいというイメージが一般的?)
すごく人間味を感じました。
もう一度じっくり見たいかも。
返信する
がくりん さんへ (もっきぃ)
2006-12-18 22:42:36
 第九のシーン、私ももっと長ければ、ずーっと続けばと思いながらみていました。昔、ラテナマジカという映像とつぎめなしの舞台で演じるのがあって、それを思い出しました。
 アンナとベートベーンの指揮が、不思議な感覚で、継ぎ目なくつながっていたものですから。
返信する
♪稔兎♪ さんへ (もっきぃ)
2006-12-18 22:48:42
指揮の合間合間に、チラリとかわいらしさがでてましたね。ちょっと、バックトゥザフュチャーのドクの「笑み」にもにてるかな、なんて思いました。
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Unknown (rock-c)
2006-12-19 00:22:54
TBありがとうございました。
返信する
rock-c さんへ (もっきぃ)
2006-12-19 01:32:49
こちらこそ。

ブログよませていただきました。
「僕って何」って、そいう本だったんですね。
タイトルだけは知ってて、内容はまったくしりませんでした。私の記憶に間違いがなければ、私の中学校が高校のときに、著者が講演にこられたことがあったんです。1時間弱、まったく覚えていなのですが、終わったあと、先生が『もっといろんなこと話してくれるかと思ったのだが・・・』とつぶやいてられたことだけ覚えています。でも、学園紛争の話なら、学校で話すことも抵抗あったのではないかなあと、いまさらながら思いました。

映画とかなりずれましたが。
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こんばんは (カオリ)
2007-01-03 22:35:42
この作品、としこして最初の劇場映画だったのですが・・・参りました。
涙が流れました。
copyにはそのような意味もあるのですか・・・なるほど。女性の生き方と言うところにも光が当たってて、素敵な作品だと思いました。
TBさせていただきました~
返信する
moon (wako)
2007-01-05 13:00:19
TBありがとうございました。
私も「He mooned me」と訳が気になっていたのですが
調べていませんでした。使う機会はなさそうですが
参考になりました。
返信する
こんばんは (nyanco)
2007-01-11 19:36:45
こんばんは。
この映画は、元旦に観たのですが、年明け早々良い映画を観れて満足です!
第九のシーンは本当に圧倒されました。
ベートーヴェンの物語であると同時に、アンナという女性の自立の物語でもありましたね。
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こんにちわ。 (michi)
2007-01-16 09:40:12
TBありがとうございました。
私からのTBが不調のため、コメントにて失礼いたします。

今まで、勝手なイメージでベートーヴェンは神経質な人だと思っていましたが、
以外にも粗野な一面もあって、ちょっと可愛いおじさんでした~★
部屋の中での行水には驚きましたが、下階の住人、大変そうでしたね 笑!
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