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無用というコトバ

2007-05-23 07:51:56 | 中国のことわざ
中国のことわざ-280 無用というコトバ 


久しぶりに興膳宏さんの漢字コトバ散策から取り上げました。
無用を広辞苑で引きますと、三つの意味があって、①役に立たないこと。必要でないこと②してはならないこと。天地無用。口外無用③用事がないこと。無用の者入るべからずとあります。今回は①に関してです。


この「無用」というコトバは、老荘思想に特有の考えで、世間的な常識に対する逆説を含んでいます。現代においては、少しでも無駄なものを削って、短い期間の間に成果を上げようとする風潮が強いですね。しかし、ムダは人や社会にとって本当に無用なのかもう少し突き詰めて考える必要があるのではないかと、冒頭に興膳さんは書かれています。


荘子の逍遙遊篇には、曲がりくねり、節くれ立った無用の大木を巡る議論が見えます。
荘子はそれを木材に使うなどという考えを捨てなさい。そもそも見渡す限りなにもない荒野に立つ木の下で、ゆったりと歩き回ったり寝そべることができるのは、この木の役立たずのおかげで木が大きく成長してくれた恩恵によるものだと認識すべきであると言っているのです。


荘子によれば、「無用」なるものをムダとして片っ端から切り捨ててしまえば、結局は人間の存在自体が危機に瀕すると指摘しています。


興膳さんは独立行政法人化された国立大学を例に取られています。六年間の中期計画期間中に、何らかの目のつく成果を出して自己の存在をPRしようとするあまり、企業との共同研究や委託研究ばかりが重要視されて、本来大学が行わなければならない「無用」の学問の有用性が忘れられてしまうことを強く懸念されています。


企業経営でも同じことが言えるのでしょう。目先の利潤に目が行き、ともすれば研究開発がおろそかになる傾向があるようです。こうして企業は将来の飯の種を失って、次第にじり貧状態に陥いります。そのようなリスクが垣間見えるようです。


出典:広辞苑、日本経済新聞8月27日漢字コトバ散策から
詳しくは新聞をご覧ください。


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