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サラ金の取引履歴の開示義務を認めた最高裁判例

2005-07-19 23:44:36 | Weblog
 最近の最高裁は本当に元気だ。

 今日の新聞にも,ある新聞なんかは1面トップで,最高裁がサラ金業者に取引履歴の開示義務を認めた判断をしたという記事が出ている。

 で,昔は,新聞に報道される判決が出されても,1~2か月して法律雑誌に載らないと,実際にはどのような判決がされたか分からなかったのが,今は最高裁のホームページで,判決が言い渡された当日に読むことができる。というわけで,早速読んでみた。

 今回の最高裁判決の論理構造は,貸金業法19条の業務帳簿の保存義務の規定は,債務者が17条書面を紛失する場合も想定した上で,帳簿の保存義務を課したものであるとし,サラ金業者との間では,いわゆるみなし弁済をめぐる紛争が生じる可能性があるという現実を考えると,この帳簿の保存義務は,貸金業者と債務者との間の紛争を未然に防止し,又は生じた紛争を迅速に解決することを目的としたものであるという解釈を示している。貸金業者に債務内容についての開示要求に対する強力を求めた金融庁のガイドライン(これは通達にすぎず,瑕疵銀業者に対してすら法的効果=何らかの法的義務を負わせるなどといった効果のあるものではない)は,そのような解釈の裏付けであるとする。

 そしてさらに,債務者が取引履歴を正確に把握していない場合には過払金返還訴訟などで大きな不利益を被るのに対し,貸金業者が帳簿に基づいて取引履歴を開示することには特段の負担はないというバランス論をも裏付けとして,「信義則上」貸金業者は取引履歴の開示義務を負うという結論に達している。

 従前の理解では,業者に対して行政上の規制が行われる場合には,基本的にそれは行政目的を達するためのもので,行政規制が行われていることをもって,私人の側に何らかの権利(私法上の権利)が発生することはないとされてきていた。今回の判決は,いろいろと周辺の事実を支えにしながら,かつ,信義則という一般条項に根拠を求めながらではあるが,行政法による業務の規制が,私法上の権利を有無場合があることを明示した点で,大きな意義があるように思える。

 これまで最高裁が同じような判断をした例があるかどうかは,私には分からないが,少なくとも,このような判断手法がこれまで一般的に用いられてきたものではないということはできると思う。また,このような判断手法が,何にでも使えるというほど一般的なものとも思えない。しかし,これが一つの突破口となって,今後各分野で同じような手法による判断がされる可能性はあると思える。

(追記)
 行政規制と私法上の権利との関係では,騒音などの環境基準が,受忍限度を画する基準とされたり,差止請求の基準とされたことがあった。このことと,今回の判断とがどこかでつながっているといえるのだろうか?


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