Dying Message

僕が最期に伝えたかったこと……

春の足音

2013-02-15 23:34:44 | Weblog
 僕の弟の就職が正式に決まったらしい。連絡をもらい「おめでとう」的な言葉をかけたけど、心の中は全然おめでとう的ではない僕がいる。

 兄として、本当は東京まで行って就職祝いをしなきゃいけない立場だし、そうしてやりたい気持ちだってないわけではない。でも、残念ながら今はとてもそんなエネルギーが湧いてこない。頭では正解が分かっているはずなのに、心が僕を誤った方向へと導いてゆく。たったひとりの兄弟の門出さえ祝えぬ非情な人間に俺は成り下がってしまった。

 僕は感情表現が決して得意ではないし、多くの人にいい顔ができるような人間でもない。でも、だからこそ、せめて側にいる人には笑顔を振りまきたいと思って生きてきた。そのほんの些細な優しさに付け込まれて、人生のプランを根底から覆すようなトラブルに巻き込まれたこともあるけれど、結局最後は自分を納得させてきた。「不器用だけどこれが俺の生き方だ」と。

 なのに、僕は今やその優しささえもポッケからこぼしてる。自業自得を棚に上げて、他人をうらやむばかりの僕がいる。確かにお世辞にも満たされた人生を送ってはないけれど、その原因は全て自分の努力不足にあるわけだろう。そこまで分かっているのに、極端に言えば、俺は近しい人の不幸さえも願っているんじゃないのか。

 俺はバイトさえきつく感じるようなダメ人間で、いつまでもそんな自分を変えることができなくて、マジで死んでやろうと思うこともたまにはある。でも、レベルの差こそあれど世の中には自分と似た感覚を持つ人もいるはずで、そういう奴だって折り合いをつけながら日々を過ごしているわけだろう。じゃあ俺に足りないものって何だ。それはやっぱり努力なんじゃないのか。

 もう何なんだろう、俺の人生って。そんな自問自答を繰り返すうち、春一番が答えを明日の向こう側へと運ぶようで、今年もまた春の足音が僕を追い詰める。人生を始めることも終わらせることもできぬままに、永遠に咲くことのない桜の木の下、僕はこの身朽ち果てゆく時をただぼんやりと待ちぼうけているのです。


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