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夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『少女ファニーと運命の旅』

2017年08月26日 | 映画(さ行)
『少女ファニーと運命の旅』(原題:Le Voyage de Fanny)
監督:ローラ・ドワイヨン
出演:レオニー・スーショー,セシル・ドゥ・フランス,ステファン・ドゥ・グルート,
   ファンティーヌ・アルデュアン,ジュリアンヌ・ルプロー,ライアン・ブロディ他

ポコッと時間の空いた先週土曜日の夕方、1本だけ。
大阪ステーションシティシネマにて。

予告編を目にしたときから観たいと思っていたのですが、
ひとつ引っかかることがありました。それは監督。

フランス出身の女流監督ローラ・ドワイヨンは、ジャック・ドワイヨン監督の娘。
巨匠というべき存在のお父様ですが、私はどうも苦手。
決定的に駄目だったのが『ポネット』(1996)で、腹立たしさすら感じました。
その娘だよ、大丈夫かなと不安に。
しかしローラの旦那様は私のお気に入りの映画監督セドリック・クラピッシュ
お父さんと旦那さん、どちらに近いかわからないけれど、
どちらともちがうかもしれないし、観てみようということで。

実話に基づく。凄絶な話ながら、目を背けたくなるほどではありません。
実際はもっと苛酷だったと想像しますが、見せる作品として上手いバランスの取り具合。

第二次世界大戦中の1943年、ナチスドイツの支配下にあったフランス
ユダヤ人の子どもたちは親と離れ、支援組織が運営する児童保護施設に匿われていた。
そんな施設のひとつに身を寄せていたのが13歳の少女ファニー。
幼い妹エリカとジョルジェットや仲間とともに過ごしている。

ところがある日、近隣の誰かがナチスに密告したらしい。
じきにナチスが押し寄せるにちがいないと、子どもたちは安全な施設へ移動する。

移動先の施設の責任者マダム・フォーマンは、
一見厳しくも、子どもたちに大きな愛情をかける。
ファニーとその妹たちの様子に、妹たちから離れる時間も持つべきだと、
マダム・フォーマンはファニーに料理や雑用を担う青年エリの助手を命じる。
明るいエリの話についつい引き込まれ、笑顔を見せるファニー。

しかしその施設にもやがてナチスの魔の手が迫る。
子どもたちはマダム・フォーマンやエリに連れられてスイスを目指すことに。
だが、大人の身元確認は子どものそれよりも厳しい。
マダム・フォーマンは子どもたちだけを列車に乗せ、自分は車でそこへ向かう。
乗り継ぎの駅ごとに待ち合わせ場所を決めていたが、
ナチスの取り締まりのもと、会えなくなってしまう。

出発前にマダム・フォーマンからリーダーに指名されていたファニーを含む、
9名の子どもたちは、ドイツ兵の目をかいくぐりながら歩を進めるのだが……。

ファニーは実在の人物。健在で、いまの写真がエンドロールにも。
マダム・フォーマンは架空の人物で、
命がけで子どもたちを守ろうとしてくれた複数の大人たちをイメージしたそうです。

こんな状況下でも、子どもたちのなんとたくましいことか。
沈む子どもたちを笑わせようとする大人もいるし、
その大人の意図を理解して合わせようとする年長の子どももいます。
歌って遊び、笑い声を響かせる子どもたち。

わずか13歳の少女が平気なわけがない。
だけどファニーはマダム・フォーマンの言葉を思い出して耐える。
ほかの子どもたちに不安な顔を見せては駄目。
平気じゃなくても平気なふりをする。

あきらめたときから希望はなくなるというのは、『はじまりへの旅』にあった台詞。
ファニーたちはあきらめない。絶望もしない。腹を括って歩く。

観てよかったと心から思える1本です。

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『スパイダーマン:ホームカミング』

2017年08月24日 | 映画(さ行)
『スパイダーマン:ホームカミング』(原題:Spider-Man: Homecoming)
監督:ジョン・ワッツ
出演:トム・ホランド,マイケル・キートン,ジョン・ファヴロー,ゼンデイヤ,
   ドナルド・グローヴァー,マリサ・トメイ,ロバート・ダウニー・Jr.他

ダンナが飲み会のため、晩ごはんの用意をしなくていい日。
130分超の本作は、できればTOHOシネマズで観てマイルを貯めたかったけれど、
伊丹にはちょうどいい時間の上映がなく、西宮まで行く元気なし。
職場とわが家の通勤経路途中にある109シネマズ大阪エキスポシティで手を打ち、
マイルはあきらめることにしました。無念。

『COP CAR/コップ・カー』(2015)がめっちゃ面白かったジョン・ワッツ監督。
3作目でいきなり本作の監督だなんて、大抜擢でんがな。
いやいや、それぐらい面白かったんです、『コップ・カー』。

15歳の高校生ピーター・パーカーは、“アベンジャーズ”が内輪もめしたさいに、
アイアンマン/トニー・スタークに見いだされた。
トニーが開発したスパイダーマンのスーツを渡され、
いつ呼び出されても駆けつけられるように待機するが、連絡は来ない。
トニーの運転手でピーターのお目付け役ハッピー・ホーガンにこまめに電話を入れるも、
それらしき仕事を与えられることはなく、おとなしくしているように言われる。

早くアベンジャーズの一員になりたくてたまらないピーターは、
近隣のパトロールを日課にし、困っている住民を助けたり、
犯罪者を懲らしめたりすることに精を出しはじめる。
それが親友ネッドにバレてしまい、ピーターがスパイダーマンであると知ったネッドは大興奮。
誰にも言わないようにと、ピーターはネッドに釘を刺す。

そんななか、8年前にトニーから仕事を奪われたエイドリアン・トゥームスは、
地球外の物質から強力な兵器をつくりだすことに成功。
兵器の密売で荒稼ぎしていたが、その現場をピーターが目撃してしまう。
トニーに認められたいピーターは、たったひとりで立ち向かうのだが……。

歴代のスパイダーマンを演じたトビー・マグワイアアンドリュー・ガーフィールドより、
私は本作のトム・ホランドの顔のほうが好み。
普通の高校生らしいところも良くて、可愛げがあります。

大人に認められたくて勝手なことをやらかして、失敗して怒られて凹む。
それでもスネたりしない、変に「がんばってるアピール」もしない、
たとえ誰も見ていなくても自分にやれることをやる。
恋はちょっぴり切なくて、こんな青春&ヒーローものもいいもんです。

そして私はやっぱりジョン・ファヴローが画面に映ると嬉しくなる。
ハッピー役のこの人が最初の『アイアンマン』(2008)の監督だということを
みんなわかって観てくださいねと思うのでした。
役者のときもいい味出してます。

次の“アベンジャーズ”も楽しみです。

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『ローサは密告された』

2017年08月23日 | 映画(ら行)
『ローサは密告された』(原題:Ma' Rosa)
監督:ブリランテ・メンドーサ
出演:ジャクリン・ホセ,フリオ・ディアス,アンディ・エイジェンマン,フェリックス・ローコー他

テアトル梅田にて、前述の『ハートストーン』とハシゴ。
新聞か何かで紹介されたのか、ものすごい混みようです。
事前にネット予約していたので席を確保できましたが、当日なら立ち見。

フィリピンの俊英ブリランテ・メンドーサ監督の作品を観るのは2度目。
1度目は『囚われ人 パラワン島観光客21人誘拐事件』(2012)でした。
それもなかなかに衝撃的な作品でしたが、本作もいろいろと目が点に。
フィリピンには住めそうにありません。(--;

マニラのスラム街で雑貨店を営むローサ。
苦しい生活を補うため、客からの需要があればなんでも取り扱う。
息子たちとともに大型スーパーで買ってきたものを並べ、少量の麻薬も売る。
夫のネストールは、仕入れた麻薬を味見と称して吸いたがる困り者。

ある日、警察のガサ入れに遭い、ローサとネストールは逮捕されてしまう。
警察に連行されたふたりは、刑務所に入りたくなければ金を払えと言われる。
その額20万ペソ(=約43万円)。そんな大金を用意できるわけがない。

金が払えないなら、誰から麻薬を買っているのか教えろと言われ、
売人ジャマールの名を伝えると、ジャマールもただちに捕らえられる。
ところがジャマールを売ったというのに、まだ金を要求される。
財布も麻薬もスマホも取り上げられ、いったいどうすればいいというのか。

両親が警察へ行ったきり連絡がないことを心配した子どもたち。
ジャクソン、ラケル、アーウィンの3人は警察へ行き、別室に軟禁状態の両親と面会。
とにかく売れるものはすべて売って金をつくるようにと、
ローサは子どもたちに告げるのだが……。

まず冒頭、ローサとアーウィンが買い物をする大型スーパーで、
「釣り銭がないから代わりに飴」にビックリ。
レジ横にはまさしく飴ちゃんが置かれていて、釣り銭代わりにどうぞって。
これにはローサも呆れて「こんなデカいスーパーのくせして
釣り銭がないってどういうことよ」と怒っていましたけれども。

そしてなんですか、この堂々とした汚職は。
見逃してもらうために家まで売る話になっているところに唖然。
逮捕者の所持金を巻き上げて、ビールをケース買い、チキンもつけて。
ヤクの売人よりよほどタチが悪いっちゅうの。

さらに驚いたのは、悲壮感のなさ。
両親を釈放してもらうために、子どもたちは走りまわります。
家財を処分し、親戚中を回り、男娼となって体まで売る。
なのに悲壮感がまったくないのです。凄い。
悲壮感がない分、ラストのローサの表情が余計に心に突き刺さる。

金を借りに行って、帰りの交通費がなく、小銭はもらうということにも驚きました。
スーパーの釣り銭といい、小銭は貸し借りするものじゃないんですね。

『クロッシング』(2009)を観たときに警官の給料の安さを知り、
少なからず同情しましたが、フィリピンの警官の給料はどうなのでしょう。

ダンナがフィリピンに出張するさい、
スーツケースをラップで巻いていくほうがいいと言われました。
さすがにそれはしたくなくて、切り裂きようのない「とぅるっとぅる」のスーツケースを購入。
怖いよ、フィリピン。
なんにせよ、凄い作品です。

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『ハートストーン』

2017年08月22日 | 映画(は行)
『ハートストーン』(原題:Hjartasteinn)
監督:グズムンドゥル・アルナル・グズムンドソン
出演:バルドゥル・エイナルソン,ブラーイル・ヒンリクソン,ディルヤゥ・ヴァルスドッティル,
   ヨーニナ・ソールディス・カルスドッティル,ラゥン・ラグナスドッティル他

世間のお盆休みが終わった頃の先週水曜日。
毎年恒例の全館停電ではなく、停電はしないけど節電のための全館休業日。
出てくるなとのお達しに素直に従い、映画館へ。

すっかり休みの日モードだったから、家を出て車を走らせてから、
この日が普通の平日であることに気づく。
通勤渋滞の時間帯、もしや新御がババ混みなのではと心配したけれど、
まだまだお盆休みのところも多いようで、わりとガラガラ。

そのせいなのか、梅田で駐車するときによく利用するタイムズがまさかの満車。
仕方なくいつもは通り過ぎる有人駐車場に入庫したら、
最大料金1,000円で、この界隈にあってはものすごく良心的。
係員さんの応対もめちゃ良くて、今度からこっちに駐めようと誓いました。

さて本題。
これが長編デビューとなるアイスランドの新鋭、
グズムンドゥル・アルナル・グズムンドソン監督の作品をテアトル梅田にて。
それにしてもなんちゅう長い名前。
出演俳優の名前もなんたらソンとかなんたらティルとか
やたらめったら長いうえに似ていて、絶対覚えられへん。
隣のシアターで上映中だった『この世界の片隅に』(2016)がいまだに立ち見の出る盛況ぶりで、
入れなかった客が少しこちらにも流れてきているようでした。

アイスランドの小さな漁村。
ソールとクリスティアンは幼なじみの大親友。
思春期のまっただなか。

ソールは母親と2人の姉ラケルとハフディスの4人家族。
父親は若い女をつくって出て行ってしまった。
かといって狭い村では母親が別の男と出かければすぐに噂の的に。

クリスティアンは両親との3人家族。
厳格な父親から殴られることも多く、
母親は懸命にかばってくれるが、父親は暴走気味。

最近、ソールは美少女ベータに夢中。
そのベータがどうしようもない不良のフュークルと寝たらしいと聞き、
まだ下の毛も生えてもいないソールはガックリ。

そんなソールをクリスティアンは励ます。
フュークルとの話なんて嘘かもしれないと勇気づけ、
ソールとベータが会う機会をなんとかつくろうとする。

おかげでソールはベータと急接近。
ベータの親友ハンナはクリスティアンに好意を寄せているとのこと。
ダブルデートでキャンプに行くのだが……。

クリスティアンは実はソールに想いを寄せていますが、
自分がゲイであることに気づいて悩んでもいる。
ベータを見てはしゃぐソールに、まさかカミングアウトなんてできません。

誰が何をしたか一日で広まってしまうような、
何の娯楽もない閉鎖的で保守的な村。
ゲイだというだけで迫害されることは目に見えています。
村を出て行くしかない彼が生きられる場所があるようにと願うよりほかありません。

監督自身の少年時代の出来事に着想を得た作品だそう。
やんちゃくれのソールと、美形で頼りになるクリスティアン。
クリスティアンの切ない心のうちが表情のみに映し出される佳作。

これまでに観たアイスランド作品というと、
『レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー』(2009)、
『馬々と人間たち』(2013)、『ひつじ村の兄弟』(2015)と一風変わった作品だったような。
そういう意味では初めて「普通」のアイスランド作品を観た気がします。

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『ウォーナーの謎のリスト』

2017年08月20日 | 映画(あ行)
『ウォーナーの謎のリスト』
監督:金高謙二
ナレーション:志賀廣太郎

前述の『人間爆弾「桜花」 特攻を命じた兵士の遺言』とハシゴ。
同じく第七藝術劇場にて。

第二次世界大戦中に一度も空襲を受けなかった場所、神田古書店街
それは、ロシア人の親日家セルゲイ・エリセーエフが、
靖国通り沿いのこの一画には空爆しないようにダグラス・マッカーサーに進言したから。

ほかにも同様に空襲を受けなかった場所があります。
寺社、図書館、博物館などなど、150を超える日本の文化財が記されたリスト。
戦争をしないで済むならそれが最善。
しかし万が一戦争しなければならなくなったときに、これらの場所は空爆するべからず。
太平洋戦争当時にそんなリストを作成した人がいました。

アメリカ人の美術史家で、日本美術史の権威だったラングドン・ウォーナー。
日本文化を救ったとされているが、それは真実なのか。
数々の資料や証言をもとに、新しい事実を伝えようというのが本作の試み。

結局どこまでが真実なのかはわかりません。
ボストン美術館では岡倉天心の助手を務め、天心に可愛がられていたのに、
最後にはどうやら二人は絶交状態にあった様子。
莫高窟からウォーナーが剥がしてアメリカに運んだ壁画等について、
保存状態が悪いから良いところへ移したというようなウォーナーの言い分も、
なんだか勝手な話に感じられ、いろいろと疑問も。

純粋に日本の文化財を保護したかったゆえのリストだったのかどうかは別として、
おかげで多くの文化財が守られたのは事実。
文化は共通、どこの国のものであっても守られるべきもの。

閉架だった日本の図書館が、アメリカによる統治時代に開室になり、
本を外に持ち出せるようになった話なども面白い。

金高謙二監督の前作『疎開した40万冊の図書』(2013)は、
戦時中の日比谷図書館の本の疎開について描かれた作品とのこと。
未見なのでそれも観てみたいです。

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