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『ローサは密告された』

2017年08月23日 | 映画(ら行)
『ローサは密告された』(原題:Ma' Rosa)
監督:ブリランテ・メンドーサ
出演:ジャクリン・ホセ,フリオ・ディアス,アンディ・エイジェンマン,フェリックス・ローコー他

テアトル梅田にて、前述の『ハートストーン』とハシゴ。
新聞か何かで紹介されたのか、ものすごい混みようです。
事前にネット予約していたので席を確保できましたが、当日なら立ち見。

フィリピンの俊英ブリランテ・メンドーサ監督の作品を観るのは2度目。
1度目は『囚われ人 パラワン島観光客21人誘拐事件』(2012)でした。
それもなかなかに衝撃的な作品でしたが、本作もいろいろと目が点に。
フィリピンには住めそうにありません。(--;

マニラのスラム街で雑貨店を営むローサ。
苦しい生活を補うため、客からの需要があればなんでも取り扱う。
息子たちとともに大型スーパーで買ってきたものを並べ、少量の麻薬も売る。
夫のネストールは、仕入れた麻薬を味見と称して吸いたがる困り者。

ある日、警察のガサ入れに遭い、ローサとネストールは逮捕されてしまう。
警察に連行されたふたりは、刑務所に入りたくなければ金を払えと言われる。
その額20万ペソ(=約43万円)。そんな大金を用意できるわけがない。

金が払えないなら、誰から麻薬を買っているのか教えろと言われ、
売人ジャマールの名を伝えると、ジャマールもただちに捕らえられる。
ところがジャマールを売ったというのに、まだ金を要求される。
財布も麻薬もスマホも取り上げられ、いったいどうすればいいというのか。

両親が警察へ行ったきり連絡がないことを心配した子どもたち。
ジャクソン、ラケル、アーウィンの3人は警察へ行き、別室に軟禁状態の両親と面会。
とにかく売れるものはすべて売って金をつくるようにと、
ローサは子どもたちに告げるのだが……。

まず冒頭、ローサとアーウィンが買い物をする大型スーパーで、
「釣り銭がないから代わりに飴」にビックリ。
レジ横にはまさしく飴ちゃんが置かれていて、釣り銭代わりにどうぞって。
これにはローサも呆れて「こんなデカいスーパーのくせして
釣り銭がないってどういうことよ」と怒っていましたけれども。

そしてなんですか、この堂々とした汚職は。
見逃してもらうために家まで売る話になっているところに唖然。
逮捕者の所持金を巻き上げて、ビールをケース買い、チキンもつけて。
ヤクの売人よりよほどタチが悪いっちゅうの。

さらに驚いたのは、悲壮感のなさ。
両親を釈放してもらうために、子どもたちは走りまわります。
家財を処分し、親戚中を回り、男娼となって体まで売る。
なのに悲壮感がまったくないのです。凄い。
悲壮感がない分、ラストのローサの表情が余計に心に突き刺さる。

金を借りに行って、帰りの交通費がなく、小銭はもらうということにも驚きました。
スーパーの釣り銭といい、小銭は貸し借りするものじゃないんですね。

『クロッシング』(2009)を観たときに警官の給料の安さを知り、
少なからず同情しましたが、フィリピンの警官の給料はどうなのでしょう。

ダンナがフィリピンに出張するさい、
スーツケースをラップで巻いていくほうがいいと言われました。
さすがにそれはしたくなくて、切り裂きようのない「とぅるっとぅる」のスーツケースを購入。
怖いよ、フィリピン。
なんにせよ、凄い作品です。

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