《ら》
『乱暴と待機』
「劇団本谷有希子」主宰者の本谷有希子の同名舞台劇の映画化。
木造平屋が並ぶ市営住宅の1軒に暮らす奇妙な男女。
上下スウェット、いつもおどおどして人の機嫌をとってばかりの奈々瀬(美波)は、
黒縁眼鏡を外せば意外にも可愛い。胸もデカそう。
同居しているのは、兄妹でもないのに奈々瀬が兄と呼ぶ男、英則(浅野忠信)。
彼は出かけてくると偽って天井裏に潜み、奈々瀬の日常を覗き見する行為を繰り返していた。
近所に引っ越してきたのが奈々瀬の高校時代の同級生で、あずさ(小池栄子)と、その夫、貴男(山田孝之)。
妊娠中のあずさは、どうやら昔から特別の憎悪を奈々瀬に抱いている様子で……。
壊れた浅野忠信と怒る小池栄子がお見事。
ヘンテコな作品だけどおもしろくて、目が離せませんでした。
《り》
『Ricky リッキー』(原題:Ricky)
2009年のフランス/イタリア作品。
シングルマザーのカティは7歳の娘リザとふたり暮らし。
職場でスペイン人のパコと出会ったカティは恋に落ち、パコも同居するように。
それまで母を独占していたリザにとっては、この状況がつまらない。
やがてカティとパコの間に赤ちゃん“リッキー”が生まれ、リザはさらに不機嫌に。
ある日、リッキーの背中にアザを見つけたカティがパコの虐待を疑う。
パコは怒って家を出るが、その後、リッキーの背中に小さな翼が生え始めて……。
翼の生える過程がグロすぎ。
体重と翼の比率を調べようとスーパーの肉売場で鶏肉を広げてみたカティが
店員に叱られる様子は笑いましたけど。
奇才フランソワ・オゾン監督らしいと言えばらしい作品。
ファンタジーなのに、リッキーが飛び去ったあとのカティの表情が私にはホラー。
《る》
『ルイーサ』(原題:Luisa)
2008年のアルゼンチン/スペイン作品。
ブエノスアイレスのアパートにひとりで暮らす60歳の女性ルイーサ。
愛猫のティノが死に、悲しみに暮れたまま、1年後に定年を迎える予定の霊園に出勤するが、突然解雇される。
同日、家政婦を務めていた女優宅も、女優の引退とともにクビに。
ティノを火葬してやりたいが、火葬代は300ペソ(=約5,500円)、退職金は20ペソ。
なんとか金を工面しようと、あの手この手を考えるのだが……。
30年間、自宅と職場の往復しかしていなかったルイーサは、地下鉄に乗るのも一苦労。
しかし、地下鉄の車内で物乞いをしたり商売をしたりするのがアルゼンチンでは普通らしく、
ルイーサも盲目のふりをしてコンコースで物乞いをします。
そのときに知り合うのが片足をなくして同じく物乞いする男オラシオ。
家族も仕事もなくして嘆くルイーサにオラシオは言います。「脚があるじゃないか」。
ティノの死体を女優からもらったラム肉だと偽られ、冷凍庫を貸すまだ若い管理人ホセは、
薄々ルイーサの事情を感じ取っていて放っておけません。
この3人が地下鉄の車内に並んで座る姿がなんだか微笑ましくて好きでした。
アルゼンチンって、ホットドッグにはケチャップでもマスタードでもなく、マヨネーズなんや!
《れ》
『レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー』(原題:Reykjavik Whale Watching Massacre)
2009年のアイスランド作品。
アイスランドというだけでも変わり種なのに、
これはアイスランド初のホラーなんだそうで、激しく興味を惹かれ、
エグそうだけれど笑えそうな気もしてレンタル。
捕鯨大国アイスランド。しかし、世界的な反捕鯨の波には逆らえず、
今は鯨を見るだけ、ホエール・ウォッチングを観光の目玉としている。
この日も外国人観光客を乗せた遊覧船が出港するが、
途中、船長がアクシデントに見舞われ、船は航行不能に。
そこを通りかかった家族で操業している漁船に救助され、観客は難を逃れる。
ところが、この家族は捕鯨禁止で職を失った一家。
観光客を逆恨み、皆殺しの計画を立てていて……。
ある程度のもてなしをして安心させてから一人ずつ殺されるのかと思いきや、
いきなり甲板で頭に鎚を打ち込まれるわ、首を掻き切られるわ、ぶっ飛び。
真面目に撮っているところを申し訳ないですが、ワロてしまいました。
生き残るのはもっともしたたかだった日本人(裕木奈江)と、もう一人。
後者はこんな作品で脱ぐハメになったんだから、せめて生き残らんと割に合わん。
《ろ》
『ロスト・アイズ』(原題:Los Ojos de Julia)
スペイン作品。
ホラーが苦手でも、スパニッシュ・ホラーにだけは手が伸びてしまいます。
本作は『永遠のこどもたち』(2007)で製作総指揮を務めたギレルモ・デル・トロが
やはり製作に名前を連ねているのでなおさら外せず。
双子の姉妹サラとフリアは、進行性の視力低下という疾患を抱えている。
1年前に失明したサラは、ある日、首を吊って死ぬ。
将来を悲観しての自殺と断定されるが、フリアはその死に不審な点を見いだし、
夫のイサクを巻き込んで独自に調査を始める。
すると、サラが亡くなる1週間前に旅行をしていたことが判明。
男連れだったとの情報を得るが、誰も男の特徴を覚えていない。
唯一、男の風貌を覚えているらしいホテルの雑役夫が浴槽で感電死。
続いてイサクまでが死んでしまう。
そんななか、フリアも視力を失い、角膜移植手術を受けるのだが……。
さて、完全ネタバレ。犯人は看護人になりすましていた男。
とことん地味なこの男は、誰からも気づかれず、まるで透明人間のよう。
彼の存在に盲人だけは気づくと知り、自分を必要とされたくて仕組んだこと。
ホラーだけに残虐なシーンもありますが、この辺りの動機もよくできていておもしろい。
あれだけ人に気づかれたかった犯人なのに、
警官に取り押さえられそうになったさいに「俺を見るな」と叫ぶのも。
スパニッシュ・ホラーの切なさゆえに見る私。
本作はその切なさなしかと思いきや、ラストの「瞳の中の宇宙」で来ました、やはり。
『乱暴と待機』
「劇団本谷有希子」主宰者の本谷有希子の同名舞台劇の映画化。
木造平屋が並ぶ市営住宅の1軒に暮らす奇妙な男女。
上下スウェット、いつもおどおどして人の機嫌をとってばかりの奈々瀬(美波)は、
黒縁眼鏡を外せば意外にも可愛い。胸もデカそう。
同居しているのは、兄妹でもないのに奈々瀬が兄と呼ぶ男、英則(浅野忠信)。
彼は出かけてくると偽って天井裏に潜み、奈々瀬の日常を覗き見する行為を繰り返していた。
近所に引っ越してきたのが奈々瀬の高校時代の同級生で、あずさ(小池栄子)と、その夫、貴男(山田孝之)。
妊娠中のあずさは、どうやら昔から特別の憎悪を奈々瀬に抱いている様子で……。
壊れた浅野忠信と怒る小池栄子がお見事。
ヘンテコな作品だけどおもしろくて、目が離せませんでした。
《り》
『Ricky リッキー』(原題:Ricky)
2009年のフランス/イタリア作品。
シングルマザーのカティは7歳の娘リザとふたり暮らし。
職場でスペイン人のパコと出会ったカティは恋に落ち、パコも同居するように。
それまで母を独占していたリザにとっては、この状況がつまらない。
やがてカティとパコの間に赤ちゃん“リッキー”が生まれ、リザはさらに不機嫌に。
ある日、リッキーの背中にアザを見つけたカティがパコの虐待を疑う。
パコは怒って家を出るが、その後、リッキーの背中に小さな翼が生え始めて……。
翼の生える過程がグロすぎ。
体重と翼の比率を調べようとスーパーの肉売場で鶏肉を広げてみたカティが
店員に叱られる様子は笑いましたけど。
奇才フランソワ・オゾン監督らしいと言えばらしい作品。
ファンタジーなのに、リッキーが飛び去ったあとのカティの表情が私にはホラー。
《る》
『ルイーサ』(原題:Luisa)
2008年のアルゼンチン/スペイン作品。
ブエノスアイレスのアパートにひとりで暮らす60歳の女性ルイーサ。
愛猫のティノが死に、悲しみに暮れたまま、1年後に定年を迎える予定の霊園に出勤するが、突然解雇される。
同日、家政婦を務めていた女優宅も、女優の引退とともにクビに。
ティノを火葬してやりたいが、火葬代は300ペソ(=約5,500円)、退職金は20ペソ。
なんとか金を工面しようと、あの手この手を考えるのだが……。
30年間、自宅と職場の往復しかしていなかったルイーサは、地下鉄に乗るのも一苦労。
しかし、地下鉄の車内で物乞いをしたり商売をしたりするのがアルゼンチンでは普通らしく、
ルイーサも盲目のふりをしてコンコースで物乞いをします。
そのときに知り合うのが片足をなくして同じく物乞いする男オラシオ。
家族も仕事もなくして嘆くルイーサにオラシオは言います。「脚があるじゃないか」。
ティノの死体を女優からもらったラム肉だと偽られ、冷凍庫を貸すまだ若い管理人ホセは、
薄々ルイーサの事情を感じ取っていて放っておけません。
この3人が地下鉄の車内に並んで座る姿がなんだか微笑ましくて好きでした。
アルゼンチンって、ホットドッグにはケチャップでもマスタードでもなく、マヨネーズなんや!
《れ》
『レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー』(原題:Reykjavik Whale Watching Massacre)
2009年のアイスランド作品。
アイスランドというだけでも変わり種なのに、
これはアイスランド初のホラーなんだそうで、激しく興味を惹かれ、
エグそうだけれど笑えそうな気もしてレンタル。
捕鯨大国アイスランド。しかし、世界的な反捕鯨の波には逆らえず、
今は鯨を見るだけ、ホエール・ウォッチングを観光の目玉としている。
この日も外国人観光客を乗せた遊覧船が出港するが、
途中、船長がアクシデントに見舞われ、船は航行不能に。
そこを通りかかった家族で操業している漁船に救助され、観客は難を逃れる。
ところが、この家族は捕鯨禁止で職を失った一家。
観光客を逆恨み、皆殺しの計画を立てていて……。
ある程度のもてなしをして安心させてから一人ずつ殺されるのかと思いきや、
いきなり甲板で頭に鎚を打ち込まれるわ、首を掻き切られるわ、ぶっ飛び。
真面目に撮っているところを申し訳ないですが、ワロてしまいました。
生き残るのはもっともしたたかだった日本人(裕木奈江)と、もう一人。
後者はこんな作品で脱ぐハメになったんだから、せめて生き残らんと割に合わん。
《ろ》
『ロスト・アイズ』(原題:Los Ojos de Julia)
スペイン作品。
ホラーが苦手でも、スパニッシュ・ホラーにだけは手が伸びてしまいます。
本作は『永遠のこどもたち』(2007)で製作総指揮を務めたギレルモ・デル・トロが
やはり製作に名前を連ねているのでなおさら外せず。
双子の姉妹サラとフリアは、進行性の視力低下という疾患を抱えている。
1年前に失明したサラは、ある日、首を吊って死ぬ。
将来を悲観しての自殺と断定されるが、フリアはその死に不審な点を見いだし、
夫のイサクを巻き込んで独自に調査を始める。
すると、サラが亡くなる1週間前に旅行をしていたことが判明。
男連れだったとの情報を得るが、誰も男の特徴を覚えていない。
唯一、男の風貌を覚えているらしいホテルの雑役夫が浴槽で感電死。
続いてイサクまでが死んでしまう。
そんななか、フリアも視力を失い、角膜移植手術を受けるのだが……。
さて、完全ネタバレ。犯人は看護人になりすましていた男。
とことん地味なこの男は、誰からも気づかれず、まるで透明人間のよう。
彼の存在に盲人だけは気づくと知り、自分を必要とされたくて仕組んだこと。
ホラーだけに残虐なシーンもありますが、この辺りの動機もよくできていておもしろい。
あれだけ人に気づかれたかった犯人なのに、
警官に取り押さえられそうになったさいに「俺を見るな」と叫ぶのも。
スパニッシュ・ホラーの切なさゆえに見る私。
本作はその切なさなしかと思いきや、ラストの「瞳の中の宇宙」で来ました、やはり。