夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『トワイライト ささらさや』

2014年11月19日 | 映画(た行)
『トワイライト ささらさや』
監督:深川栄洋
出演:新垣結衣,大泉洋,中村蒼,福島リラ,寺田心,つるの剛士,
   波乃久里子,藤田弓子,小松政夫,石橋凌,富司純子他

前述の『美女と野獣』とハシゴ、同じく109シネマズ箕面にて。

原作は加納朋子のベストセラー小説『ささら さや』。
予告編を観て、これは私が泣けないパターンかもしれないとは思いましたが、
キャストは良さそうだし、ほかに時間が合う作品もなかったし。

落語家のユウタロウ(大泉洋)は、寄席で唯一笑ってくれたサヤ(新垣結衣)と結婚。
息子のユウスケが生まれて、落語では売れずとも幸せ絶頂だったはずのある日、
交通事故であっけなく死んでしまう。
しかし、両親を早くに亡くして頼れる親戚もいないサヤのことが心配で成仏できない

自分の葬儀を見つめていると、ユウタロウの父親(石橋凌)が現れる。
仕事仕事で母親の危篤時にも来なかった父親のことをユウタロウは許せず、絶縁状態。
サヤには両親共に亡くなったと話していたため、父親の出現にサヤはびっくり。

ユウタロウの父親は、サヤひとりではユウスケを育てられないだろう、
ユウスケは自分が引き取って育て、将来は会社を継がせるつもりだ、と言う。
どうにかしなければと考えたユウタロウは、参列していた師匠(小松政夫)の体に乗り移り、
サヤに一刻も早くユウスケを連れて逃げろと伝える。

サヤが訪れたのは、以前親戚が住んでいた「ささら」という町の一軒家で、
ユウスケとともにそこで暮らしはじめる。

向かいの家には覗き見とおしゃべりが大好きな珠子(藤田弓子)、
近所には元教師でパワー全開の久代(波乃久里子)や、
自分の家ではぼけたふりをしているお夏(富司純子)など、
おせっかいだけど面倒見のいいおばちゃん、いや、おばあちゃんばかり。
最初は呆気にとられるサヤだったが、次第に町に慣れてゆく。

そうこうしているうちに、たびたび誰かに乗り移ったユウタロウが出没するように。
どうやらユウタロウは、彼のことが見える人間にならば乗り移ることができるらしい。
ただし、同じ人間に何度も乗り移ることはできず、たった一度だけで……。

深川栄洋監督の作品は基本的に温かい人間ドラマで、ちょっとお涙頂戴路線、
しかも私はあまり泣けない場合が多かったりします。
そういう作品よりも、私はこの監督ならば断然『真木栗ノ穴』(2007)。

本作もカワイイかわいい新垣結衣の起用で、やっぱりお涙頂戴。
しかし、大泉洋と新垣結衣が大泣きするシーンでは私はまったく泣けず。
私に涙を拭わせたのは石橋凌でした。
罵られても息子のことが気にかかり、こっそり聴きに行った寄席。
息子の落語を聴いて嬉しそうに笑う彼の表情には泣かされました。
勇気を振り絞って息子と会おうとしたのに、息子はただただ冷ややかな顔。
さみしげな父親の表情がまた辛い。

弱くて頼りないサヤを放っておけなくて成仏できないと思っていたのに、
本当にバカでわかっていなかったのは自分。
思いをわからないまま死んでしまった自分、伝えられないまま息子を死なせてしまった父親。
やっぱり言わなわからんしこの世に弱い女なんていませんから(笑)。

ばあちゃんたちは揃っていいですね。
こんなふうに友だちと年を取れたら。

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『美女と野獣』

2014年11月17日 | 映画(は行)
『美女と野獣』(原題:La Belle et la Bête)
監督:クリストフ・ガンズ
出演:ヴァンサン・カッセル,レア・セドゥ,アンドレ・デュソリエ,エドゥアルド・ノリエガ,
   ミリアム・シャルラン,オドレイ・ラミー,サラ・ジロドー,イボンヌ・カッターフェルト他

わが家のお風呂の給湯と床暖房はなかなか珍しい灯油。
引っ越してきてから10年、建ってから20年、
不調を感じることはありませんでしたが、なんだかこのごろ灯油くさい。
ちょっと不安になり、点検に来てもらうことにしました。

そのために休みを取った日、どうせならレディースデーにしておけば、
昼から2本ぐらいは観られたかなぁと悔やんでいたら、
ちょうど109シネマズデーであることが発覚、
109シネマズ箕面にて2本観ることができました。
まず1本目に観たのがこれ。

母親が幼い息子と娘を寝かしつけるために、物語を読み聞かせます。
それがこんな物語。

都会で裕福な暮らしを送っていた商人一家。
母親の亡き後、父親は息子3人と娘3人を大いに可愛がり、
ほしがるものは何でも与え、わがままも許していたが、
あるとき、大嵐で貿易船を失い、破産してしまう。

仕方なく、一家は田舎に移り住む。
三女のベルだけは、どこであろうと家族一緒にいられることに幸せを感じ、
自然に囲まれて自給自足の生活を送ることを楽しんでいた。
しかし、贅沢に慣れきっていた3人の兄と2人の姉は不満顔。

そんな折り、行方不明だった貿易船が見つかったという報せが入り、
これで都会に帰れると、父親とベルを除く子どもたちは大喜び。
ところが船は借金の形に取られ、すでに商人のものではなくなっていた。
田舎に帰る道すがら、チンピラのペルデュカスに襲われた商人は、
吹雪に遭って逃げ込んだ古城で宝の山々に目を見張る。

長女と次女がほしがっていたドレスを確保して古城を出ると、庭には深紅のバラが。
バラはベルが唯一ほしがっていたもの。
商人が一輪のバラを手折った瞬間、世にも恐ろしい野獣が姿を現す。

野獣はバラこそが何よりも大事にしていたものだと言い、
それを盗んだ代償として商人の命を要求。
家族に別れを告げるために一日だけ猶予を与えられた商人は、帰宅して事情を話す。
バラをほしがったのは私だからと、ベルは父親の身代わりを買って出る。

死を覚悟して古城に足を踏み入れるベルだったが、
野獣が要求するのは毎晩7時のディナーをともにすることだけで……。

どうしましょうかね、これ。
ベル役のレア・セドゥがお気に入りなので、
彼女を見られればそれでよしとしてもいいのですけれど、
彼女を含め、登場人物にあまり深みがなく、魅力を感じることができません。
強いて挙げるなら、古城の亡きプリンセスでしょうか。

だいたい、野獣/王子役のヴァンサン・カッセルがもう47歳なんだもの。
同年代の人がいつまでも色男を演じているというのはその頑張りが嬉しくもありますが、
もうちょっと若いイケメンを使ってもよかったんでないのという思いも。
『ジェヴォーダンの獣』(2001)の監督だからといって、
おつきあいでヴァンサン・カッセルを選んだということはないですよねぇ。

ただ、なぜ王子が野獣になってしまったのかが
しっかりわかるように描かれているのは良かったと思います。
悪人、俗物が多すぎて、こんな黒々とした『美女と野獣』もありかと。

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『福福荘の福ちゃん』

2014年11月15日 | 映画(は行)
『福福荘の福ちゃん』
監督:藤田容介
出演:大島美幸,水川あさみ,荒川良々,芹澤興人,飯田あさと,平岩紙,黒川芽以,
   山田真歩,徳永ゆうき,山本剛史,田口主将,真行寺君枝,古舘寛治,北見敏之他

前述の『100歳の華麗なる冒険』とハシゴ。
同じく大阪ステーションシティシネマにて。

前週見送った『小野寺の弟・小野寺の姉』とどちらを観るかさんざん迷い、
結局『全然大丈夫』(2007)が結構好きだった監督を採ることに。

福ちゃんこと福田辰男(大島美幸)は、おんぼろアパート“福福荘”の住人。
真面目で気の良い塗装職人である彼は、職場でも信頼の厚い人気者。
しかし女性と話すのはどうも苦手で、相手と目を合わすことすらできない。

親友のシマッチこと島木拓郎(荒川良々)は、そんな福ちゃんをなんとかしようと、
妻の良美(黒川芽以)の友人・笠原克子(山田真歩)を紹介するが、
福ちゃんは克子と話をしようとしないばかりか、ダブルデートのつもりのピクニックに、
同じアパートの住人、馬淵典彦(芹澤興人)と野々下彰(飯田あさと)を連れてくる。
克子はすっかりヘソを曲げて、「福田くんよりもシマッチさんのほうがいい」などと言いだし、
良美はなんと言っていいのかわからず、シマッチはほにゃほにゃ顔。

さて、外資系の会社でバリバリ稼ぐOL・杉浦千穂(水川あさみ)は、
写真界の大御所・沼倉ヒサシ(北見敏之)に憧れて、カメラマンを目指す。
沼倉のひと言で会社を辞め、本格的に修業すると決めたが、
沼倉からあきれたセクハラを受けてカメラを持つ気にもなれないでいる。
ルームメイトの下田悠子(平岩紙)の叱咤激励も疎ましく、
近所の喫茶店でボーッとしていたところ、怪しげな女店主(真行寺君枝)から
「あなたが過去にひどく誰かを傷つけたつけが回ってきている」と言われる。

そんなにひどく誰かを傷つけた覚えなどない。
そう反論してみたが、はたと思い浮かぶ、中学時代に同級生だった「福田くん」のこと。

千穂は福ちゃんのもとへ謝罪に訪れる。
福ちゃんの顔を見た千穂に俄然わき上がる「この人を写真に撮りたい」という思い。
悠子の協力を得て、さっそく千穂は福ちゃんのもとへと向かうのだが……。

基本的に東京と大阪の笑いはちがいますから、
生粋の大阪人としては『泣いたらアカンで通天閣』のようなノリのほうが好きですが、これも○。
特に荒川良々はさすがで、表情だけで観客を笑わせてしまうのはアッパレ。

驚かされたのは大島美幸。
女性がいくら上手く男性の役を演じても、やっぱり女性だと思ってしまうものですが、
顔も声も歩き方もまるで男、しかも何もかもがものすごく男前。

千穂のせいで女性恐怖症になったらしい福ちゃんは、
「今さら謝られても」と千穂を怒鳴りつけます。
気落ちして帰途につく千穂をゆるゆると自転車で追いかけてきた福ちゃんは、
「さっき、今さら謝られてもって言ったけど、謝られないよりは謝られたほうがいい」。
あったかい焼き芋を差し出して。

傷つけたこと、傷つけられたこと。
確かに、今さら謝っても、謝られてもと思うことはあるでしょう。
だけど、もしも今も悔いているなら、生きているうちに会うべきなのか。
今さら放っておいてよと思い思われることもあるかもしれないし、
それは相手のためというよりも自己満足になってしまうのかもしれない。
むずかしくて、自分がそうできるかどうかはわからないけれども、
福ちゃんの笑顔を見れば、断然そうすべきだと思うのでした。

やっぱりこれはハッピーエンドで。
焼き芋みたいにぬくぬくほかほかです。

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『100歳の華麗なる冒険』

2014年11月14日 | 映画(は行)
『100歳の華麗なる冒険』(英題:The 100-Year-Old Man who Climbed Out the Window and Disappeared)
監督:フェリックス・ハーングレン
出演:ロバート・グスタフソン,イヴァル・ヴィクランデル,ダーヴィッド・ヴィーベリ,
   ミア・シャーリンゲル,イェンス・フルテン,アラン・フォード他

大阪ステーションシティシネマにて。

原作はヨナス・ヨナソンによる世界的ベストセラー『窓から逃げた100歳老人』で、
本国スウェーデンで大ヒットしたアドベンチャーコメディという触れ込み。
かなりブラックユーモアに満ちていて、PG12も納得の死体続出。

100歳の誕生日を迎えるアランは、誕生パーティーが開かれる当日、
老人ホームの窓からふと脱出できるのではないかと考える。
窓際に椅子を置いてみれば、いとも簡単に成功。
そのまま地元のマルムシェーピング駅へと向かう。

ポケットにはわずかな小銭、それでどこまで行けるのかと駅員に尋ね、
ド田舎のビーリンゲという村までバスの切符を買う。

あと数分でバスが発車するというときに、駅のトイレに駆け込む兄ちゃん。
大きなスーツケースが個室内に入りきらず、苛立っていた兄ちゃんは、
通りすがりのアランにスーツケースを見ていろと偉そうに命じて個室内へ。
けれどももうバスは発車寸前、アランはスーツケースを引きずって乗車する。

実はこの兄ちゃんはギャングの下っ端ブルテン。
スーツケースの中には5000万クローナ(約7億7500万)もの裏金が入っていて、
兄貴分のイェッダンの代理で、ボスのピムに届ける途中。
個室から出てくるとスーツケースを預けた爺さんがいないものだから仰天。

一方のアランはビーリンゲでバスを降りる。
バス停近くに暮らす70歳のユーリウスと知り合いになり、食事と酒をよばれる。

マルムシェーピングの駅員を脅してアランの行き先を突き止めたブルテンは、
ユーリウスの自宅まで押しかけて暴れるが、アランの一撃に遭って失神。
そのまま冷凍庫に放り込まれて凍死してしまう。

スーツケースの中身を知ったアランとビーリンゲは、そのまま旅へ。
ヒッチハイクした車の運転手は、気弱でやたら博識な青年ベニー。
3人が車を走らせるうちにたどり着いたのが、象を飼う女性グニラの家。

ブルテンと連絡が取れなくなったイェッダンは、
同じく手下のヒンケンをビーリンゲへ送り込む。
手がかりをつかめずにいるヒンケンのもとへ、弟のリッキーから連絡が入る。
女にフラレたと泣きわめくリッキーの電話を切ろうとすると、
なんとリッキーの元カノはグニラで、彼女の家に100歳の爺さんがいたと言うではないか。

さらに、老人ホームからの捜索願を受けた地元警察では、
アーロンソン警部補がギャングとの妙なつながりに気づくのだが……。

はちゃめちゃです。
こんなドタバタ劇の合間に挟み込んで描かれるアランのこれまでの人生。
アランが何事にも動じず、いつでもマイペースなのは、
決してぼけているからではなく、生まれついての変人らしい。
変人ゆえに、100年の人生で世界の大物相手に凄いことをやってのけていて、
絵空事といえども、世界の大事件の裏にはこんな人が実在したかもしれないと思わされます。

北欧のコメディ作品には独特の雰囲気があり、
万人受けするとは思えませんが、私は好き。
ただ、やっぱり老けメイクは苦手なので、そこはマイナス点。
アラン役のロバート・グスタフソンは来月50歳になるようです。
ま、100歳の役者を見つけてくるのは無理でしょうけれども。

これだけ凄い経験をしておきながら、アランには恋愛の経験がなかったのはちと切ない。
本当は恋もしたかったのかも。

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『祝宴!シェフ』

2014年11月12日 | 映画(さ行)
『祝宴!シェフ』(原題:總舖師:移動大厨)
監督:チェン・ユーシュン
出演:リン・メイシウ,トニー・ヤン,キミ・シア,ウー・ニエンチェン他

連休初日の3本目から食べ物関係3連チャン。
これもシネ・リーブル梅田にて。

昨年10月に第26回東京国際映画祭にて、
『総舗師 メインシェフへの道』という邦題で上映された台湾の作品。
“総舗師(ツォポーサイ)”とは台湾伝統の宴席料理人のことだそうです。

“蝿師”の異名をとる伝説の宴席料理人クー・イーチェン。
その娘でありながら、料理にまるで興味のないシャオワンはモデル志望。
一流モデルになるのを夢見て家を出るが、ずっと三流のまま。
しかも、恋人が借金を踏み倒して逃げたらしく、
連帯保証人となっていたシャオワンの前に借金取りのヤクザがやってくる。

絶対に返せるはずもない金額で、シャオワンは慌てて実家へ逃げ帰る。
大好きだった父親は、娘のシャオワンに料理の才能ありと見込んでいたのに、
娘が料理人になりたいと言うのを聞けないまま他界。
料理の才能がない母親パフィーが継いだ食堂は閑古鳥が鳴いていた。

曲がりなりにもモデルを目指していたのだから、シャオワンはそこそこ可愛い。
彼女目当てでやってくるようになったオタク3人組。
商売敵の向かいの店の主人も、シャオワンにメロメロ。

ある日、老いた上品なカップルが店を訪れる。
聞けば50年越しの恋を実らせたらしく、結婚式を挙げたいという。
そこで想い出の料理を出してほしいと言うのだ。
どこかにレシピが残っているとも思えない古典料理ばかりで、
パフィーは断ろうとするが、シャオワンは引き受けると言う。

ちょうどそのとき、店にやってきたのが料理ドクターを名乗るハールイ。
ハールイは想い出の料理のメニューを見て、いくつかは作ってみせる。
しかし、ハールイも知らない料理がほとんど。
引き受けたものの、前途多難であることを思い知るシャオワン。

そこへなぜバレたのか、借金取りが乗り込んでくる。
金を返せと言われて途方に暮れるが、
全国宴席料理大会に出場して優勝すれば、たいそうな額の賞金が得られると知り……。

監督は『熱帯魚』(1995)や『ラブゴーゴー』(1997)のチェン・ユーシュン。
わくわくして笑えるストーリーとポップな色使いが印象に残っていて、
とても好きだと思ったことを覚えています。
台湾映画は、胸キュンの恋愛ものもいいけれど、こんな支離滅裂なのも楽しい。

とにかくみんな巻き込み、巻き込まれるところが傑作。
食材の調達にはオタク3人組がその人脈を使って奔走し、窮地を救ってくれるのはバイク集団
伝説の宴席料理人のもう1人は今はホームレスで、
彼も大いにシャオワンの力になってくれます。
金を取り立てにきたはずのヤクザもいつのまにかパフィーの言いなりに。
スッポンや鶏と格闘する姿は抱腹絶倒ものです。あ、ちと大げさ(笑)。

あっという間の145分、大団円でみんな幸せ。

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