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『渾身 KON-SHIN』

2013年01月17日 | 映画(か行)
『渾身 KON-SHIN』
監督:錦織良成
出演:伊藤歩,青柳翔,甲本雅裕,笹野高史,中村嘉葎雄,財前直見,
   宮崎美子,井上華月,中村麻美,高橋長英,真行寺君枝他

新年になってから先週まで、家でおとなしくDVD鑑賞していました。
お正月三が日はレンタル開始のDVDもなかったので、旧作を中心に。
アガサ・クリスティ原作、ビリー・ワイルダー監督の『情婦』(1957)とか、
せめてダニエル・クレイグ版ジェームズ・ボンドは見ておこうと思って、
『007/カジノ・ロワイヤル』(2006)と『007/慰めの報酬』(2008)とか。
そうそう、『007 スカイフォール』のときに50作目と書いてしまいましたが、
50周年記念作品というだけで、23作目でした。すみません。

で、1月も半ばになった先週末、今年初めて劇場で観たのが本作です。

『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』(2010)など、
自らの出身地である島根県を舞台にした作品を手がける錦織良成監督が、
今度はやはり島根県の隠岐諸島に伝わる古典相撲を取り上げて。
ロケ地には『カミハテ商店』と同じく隠岐郡海士町も含まれていますが、
あの寒々とした町が、作品が変わればこんなにも暖かく見えるのですね。

隠岐諸島に暮らす多美子は、夫の英明、幼い娘の琴世と3人暮らし。
ただし、琴世とは血がつながっていない。

旧家に生まれた英明は、かつて親が決めた縁組を挙式当日にドタキャン。
多美子の親友である麻里と駆け落ち同然に島を飛び出した。
数年後、英明は突如として帰郷を決意、麻里もそれに従う。
両親を訪ねると、母親は和らいだ表情を見せるが、父親は絶対に許さないと言う。
英明と麻里は島からふたたび逃げ出したりせず、ここで生きていくことを誓う。
以前のドタキャンを知る住民らのもとでは職に就くのも大変だったが、
多美子や彼女の母親の助けもあり、なんとか暮らしが形になりはじめる。
ところが、琴世を出産した麻里を病魔が襲い、闘病生活ののちに帰らぬ人に。
琴世の母親代わりを務めていた多美子は、やがて「新しいお母ちゃん」になることに。

そんな事情の3人だったが、英明が古典相撲の練習に参加するようになり、
ようやく島のみんなに受け入れられたかのようだ。
ドタキャンの噂の影はいつまでもつきまとって消えないが、
英明の真面目な仕事ぶりや練習に臨むひたむきな態度が人びとの信頼を得る。

そして迎える、20年に一度の水若酢神社の遷宮を祝う古典相撲大会の日。
古典相撲は座元(ざもと)と寄方(よりかた)に分かれて勝負がおこなわれる。
座元とはいわゆるホームチームで、寄方はそれ以外の地域のチーム。
今回、寄方となる英明らのチームでは、正三役大関を誰にするかで審議中。
正三役大関は心技体すべてにおいて優れている者でなければならない。
過去を問題にしつつも、いまの英明こそ正三役大関にふさわしいと、
島の重鎮たちは満場一致で彼を推挙する。

自分が選ばれるとは思いもよらず驚く英明、嬉しくも緊張の面持ちの多美子。
島は大いに盛り上がりを見せ、いよいよ当日がやってくるのだが……。

相撲にさほど興味はありませんでしたけれども、
古典相撲なるものがわかりやすく描かれていて楽しめました。
夜通しおこなわれる伝統行事、ラストは圧巻で涙の渦。

付かず離れずの都会生活のほうがいいなぁと思うものの、
住民同士がこんなに触れあう暮らしも羨ましい気がします。
古い考えがはびこっているのが当たり前であろうこの島で、
過去にとらわれずに若者を見守り育てていこうという心意気が嬉しくてたまりません。

多美子役は『スワロウテイル』(1996)以降、順調にキャリアを伸ばしている伊藤歩。
今風の女性よりもこんな古風な女性が似合っています。
英明役の青柳翔が劇団EXILEのメンバーだとは鑑賞後に知りました。
っちゅうのか、そんな劇団の存在も知りませんでした。ごめんなさい。
いつも兄弟のどちらだかわからなくなる甲本雅裕。弟のほうでしたね。
すっとぼけた味のある役でみんなを笑わせてくれます。
しかし、隠岐の島の人たちって相撲を観ながらこんなにお酒を飲むんですか!?

それにしても相撲って年輩の方に絶大な人気があるのですね。
ここ数年間に観た映画のなかで、ジジババ率は最高。
『あなたへ』(2012)や『北のカナリアたち』(2012)同様、
共感能力の高いみなさんの間で観ると、いちいち面白い。
「夜が明けてしもたがな」とかいう声も聞こえて笑いました。

新年1本目で思いきっり泣いて、いい気分でした。
ごっつぁんです。

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