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『パレード』

2024年03月20日 | 映画(は行)
『パレード』
監督:藤井道人
出演:長澤まさみ,坂口健太郎,横浜流星,森七菜,黒島結菜,中島歩,若林拓也,深川麻衣,でんでん,
   高石あかり,北村有起哉,舘ひろし,木野花,奥平大兼,田中哲司,寺島しのぶ,リリー・フランキー他
 
2月29日よりNetflixで独占配信されている藤井道人監督作品です。
藤井監督といえば公安から目をつけられそうな(じゃなくて、つけられたでしょう)『新聞記者』(2019)で
時の人になった感がありますが、その後も硬軟織り交ぜてコンスタントに映画を撮り続けていらっしゃいます。
 
本作はキャストを見ただけで良作が期待できる。
今回はどんな作品を撮られたのか楽しみにして鑑賞に臨みました。
 
大きな地震に見舞われた町。
瓦礫が打ち上げられた海辺で目を覚ましたシングルマザーの美奈子(長澤まさみ)は、
6歳の一人息子・良(岩川晴)と離ればなれになってしまったことに気づく。
慌てて良を探すが、行き交う救助隊の人も避難所ですれ違った人も、誰にも美奈子の姿は見えていないらしい。
 
呆然としている美奈子に声をかけてきたのは、青年・アキラ(坂口健太郎)。
自分のことが見えている彼は何者なのか。
藁にもすがる思いで誘われるがままについていくと、草っ原の陰に現れたのは地震とは無縁の場所。
バーがしつらえられ、テーブルを囲んで和む男女の姿があった。
 
アキラによれば、ここにいるのはみんな亡くなった人。
死んだにもかかわらず、この世に未練を残しているせいで“その先”に行けないのだと言う。
アキラ以外の住人は、元ヤクザ・勝利(横浜流星)、元銀行員・田中(田中哲司)、
元スナックのママ・かおり(寺島しのぶ)、元映画プロデューサー・マイケル(リリー・フランキー)。
 
未練があるというわりには、ただ集まってダラダラしているだけの彼らを見て美奈子は苛立つ。
出て行こうとするとアキラに止められ、あと1日だけつきあってほしいと言われる。
 
ちょうどその日は新月。
出かけるマイケルたちについて行くと、誰かを探している大勢の人が歩いているではないか。
美奈子と同じように、会いたい人を探し続けてその先に行けない人がこんなにもいる。
それはまさに“パレード”。パレードに参加したことをきっかけに、アキラたちに心を開きはじめる美奈子。
 
そんな折、手首を切って自殺を図った女子高生・ナナ(森七菜)がやってくる。
終始ふてくされた態度で、死ねてせいせいしているとナナは言うのだが……。
 
生活の心配なく、毎日飲んで食べて歌って好きなことをして。
死後にこんな世界があるならば、死ぬのも怖くないかもしれないと思いました。
だけどそれぞれに未練がある。
残してきた家族や恋人や友人のことが気がかりだったり、やり残したことがあったり。
その未練をなくすために、会いたい人を探しに行く。
 
死んでいるのだから空間移動もできそうなもんですが(笑)、車やバイクで移動。
どうやら死の瀬戸際にいる人にだけはこちらの姿が見えるようで、
そのおかげで美奈子は良と言葉を交わすことができたのだと思います。
 
心残りがひとつもなく死にゆくことはたぶんできない。それでも人は死んでゆく。
やっぱり、明日死んでもいいように生きたいなぁ。

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