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母のこと。

2024年03月21日 | まるっきり非映画
1930(昭和5)年生まれ、93歳の母がその生涯にもうじき幕を下ろそうとしています。
 
母にとっての息子、私にとってのが亡くなったのが一昨年のこと。
あのときは悲しくて悲しくて、だけど息子に先立たれた両親のほうがより悲しかろうと思うから、
私の家とめちゃ遠くもないけれど至近距離にあるとは言えない実家へ仕事帰りに毎日通いました。
後から考えると、よくもあんなに毎日寄れたものだと思います。
母とあの頃のことを振り返り、「みんなアタマおかしくなってたもんね」と話しました(笑)。
 
その年の11月、母の貧血の値がよくないということで総合病院で診察を受けたら、大腸がんだと判明。
手術で切除し、高齢とは思えないほどの回復力を発揮して1週間で退院。
術後の経過も良くて安心していたところ、昨年5月に肝転移していることがわかりました。
 
しかしまったく自覚症状がなく、あまりになさすぎてホスピスでの面談も叶わず。
もうちょっと自覚症状が現れてから予約を取ってくださいと言われてずっとそのまま。
6週間毎に受けている診察では、主治医曰く「もう数値が良くはなることはないが、最悪ってこともない」。
昨年12月に93歳の誕生日を迎えた頃、手足に浮腫が出てきたものの、眠い以外は元気で。
なにせ主治医からは昨年肝転移した時点で「年を越すのは難しい」と言われていたのに、
余裕で年を越して3カ月以上過ぎたのです。
 
今月7日の朝、電話してきた折に「起きて着替えたんやけどね、なんか夢見てるみたい。これは現実かな」と言う。
「大丈夫やで、お母さん、ちゃんと現実で私と話してるで」と言うと安心したようで、
午後からは訪問リハビリの人が来られるし、夕方には私も寄るからということで電話を切りました。
 
ところが午後になって訪問リハビリの人から「部屋のインターホンを押しても応答がない」と連絡が。
慌てて駆けつけたらリビングで倒れていました。
命はあってひと安心しましたが、救急車が到着したときには意識混濁。
がんのせいで肝不全を起こしており、食事はちゃんと摂れていたにも関わらず低血糖に陥り、
体温も計測不可能なほど下がっていました。
 
病院に搬送されたのち、ブドウ糖の点滴を受けるも効いている様子はないとのことで、
相当危ない状況ですと言われましたが、なんとか復活。でももう元通りにはなれません。
 
今日明日いつ亡くなっても不思議はない状態で、あと数日か1週間か。
でも1カ月はもたないと主治医から断言されています。
こんな状態ではあるものの意識不明というわけではなく、面会時にちゃんと話ができています。
幸い痛みはないようで、母はおそらく自分が死ぬなんてことは考えていないと思います。
 
思えば、弟の闘病生活が始まるまではスマホはおろかケータイも持ったことがなかった私。
弟が亡くなった後に母の電話代に驚き、92歳だった母にスマホデビューさせました。
電話はできるようになってもLINEは絶対無理だと周囲から言われていて、実際教えてみると本当に大変。
皆さん簡単に「ここを押せば」みたいなことをおっしゃいますが、
年寄りがスマホを持つとこちらの想定外のことが起こります。タップもスワイプも難しいようで。
 
「あー無理、もう絶対無理!」とキレつつ教え続けました。
「あまりスパルタで教えたげんといて、お母さん可哀想」という友だちの横で母が言う、
「うん、でもねぇ、スパルタじゃないと響かないから」。
そして見事、LINEも使えるようになった母。
 
すごく楽しかったです。
まず、スタンプの使い方にセンスがある。適当に押しているわけではなく、正しいスタンプで笑わせてくれる。
「おはよう 大丈夫」に始まり、「おやすみなさい 感謝」までが日常になりました。
私以外の知人友人ともできるかぎりLINEを繋いで、母は「世の中にこんな便利なものがあるなんて」と嬉しそう。
句読点を上手く打てないおかげで、いま話題になっている「マルハラ」なし(笑)。
 
弟の生前は、弟のほうが私よりずっと実家の近くに住んでいたから、何かと弟に任せることが多く、
それほど頻繁には実家に寄らなかったけれど、弟が亡くなったせいかおかげか母と過ごす時間がグッと増えました。
回転寿司未体験だった母と病院帰りに“にぎり長次郎”へ寄って、季節のおすすめランチを食べるのが恒例。
コメダ珈琲店へは私も行ったことがなくて、母と初入店しました。
京都へのお墓参りや、母の友人を誘ってのランチなど、この2年弱でどれだけ思い出が増えたことか。
 
母は他人への不満を口にすることがなく、いつも「感謝感謝の毎日です」と言っていました。
入院中の病院でも私はたまに「ん?」と思うようなことがあるのに、
母自身はそんなことを思ってもみないようで、看護師さんたちのことを「みんなよくしてくれてね」と言ってます。
自分を囲んでくれている人は当たり前に存在しているわけじゃないのだから、感謝しなくちゃ。
私も見習わなければと思う。

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