minaの官能世界

今までのことは、なかったことにして。これから考えていきます。

ミステリー民俗学者 八雲樹

2005年12月22日 | 映画鑑賞

及川光博がこのドラマの主人公を演じているというので、興味を持ってDVDを入手した。

わたしは、何を隠そう及川光博の隠れファンなのだ。
原作は、BJ連載漫画の「民俗学者 八雲樹」だ。

民俗学と言えば、「柳田國男」があまりにも有名であるが、かの「鳥越俊太郎」教授が民俗学の権威とは知らなかった。原作には、鳥越教授は出てこない。

このテレビドラマシリーズは、全部で10回、放映された。基本的には、前編、後編の2回で1話完結という構成となっていて、エピソードは全部で6話である。
1回の放映枠は、55分。
金曜日とは言え、深夜11時45分からの放映では視聴者も辛い。
そんな悪環境にも拘わらず、そこそこの視聴率だったようだ。
わたしは、普段からほとんどテレビを観ない主義なので、この番組の存在も知らなかったのだが、もし、わたしが、放映当時からこの作品の存在を知っていたら、毎週、欠かさずに観たかもしれない。
原作の漫画では、比較的シリアスに物語が進行していき、八雲樹と富良野のコミカルな掛け合いはあまり見られなかったのに対し、テレビドラマ版では、彼らの掛け合いが、実におもしろく出来上がっていたからだ。

作品の構成は、こうなっている。
第1話 天狗伝説殺人事件(前後編)(DVD第1巻)
第2話 記憶喪失のかぐや姫(前後編)(DVD第2巻)
第3話 いけにえの島の少女(前後編)(DVD第3巻)
第4話 赤い靴の秘密(1話完結)(DVD第4巻)
第5話 やまんばに呪われた村(前後編)(DVD第4巻、第5巻)
第6話 冬に咲く桜(1話完結)(DVD第5巻)
民俗学者が主人公なので、地方の伝承や昔話を題材にしたテーマが並んでいるのが特徴である。

☆ 八雲樹のキャラクターについて
原作における八雲樹は、少女漫画に出てくるような美形のキャラクターとして描かれている。
テレビドラマ化するに当たって、及川光博を起用したのは大正解だ。
原作者も及川光博の演じる八雲樹が、原作のイメージに極めて近いと絶賛している。
やはり及川光博の美形ぶりは、半端ではないということだ。
そして、そのイメージを壊さずに、テレビドラマ用に八雲樹のキャラクターを組み立てなおしているのだが、これがまた秀逸なのだ。
ポイントはいくつかある。
まず、第1に、八雲の性格の判り易さである。
主人公の性格が判り易いほど、視聴者は、そのドラマに感情移入しやすい。
八雲が「教授」ではなく「単なる助手」と言う点を殊更に強調し、しかも、「あらゆる乗り物」に弱く、フィールドワークにおける移動では常に乗り物酔いに悩まされるという情けなさ。
しかし、この「情けなさ」が、及川の女性ファン層の母性本能を擽る重要なファクターとなっているだろうことは、想像に難くない。
第2は、すなわち、富良野との対比である。

華奢な女子大生の富良野(平山あや)に「格闘術の達人」という特技を付与し、八雲と対比させて彼の「情けなさ」「腕っ節の弱さ」を際立たせることに成功している。
我々視聴者は、美形なのだが情けない八雲が、警察も手こずる難事件を次々に鮮やかに解決する彼の「頭脳のキレ」に心酔してしまうという仕掛けだ。
つまり、ダメ人間であればあるほど、落差が大きければ大きいほど、推理劇が劇的に決まるという訳だ。
第3は、クサいほどの過剰とも言える演出である。
原作にはない「キメ台詞」である「心の闇は明けました」・・・これには参った。

流行語になっても不思議じゃなかった・・・。
かくて、テレビドラマ版「八雲樹」のキャラクターが完成する。

☆ ドラマを彩る女優たち
富良野は、原作では、八雲に淡い恋心を抱く設定になっているが、テレビドラマ版では、ゼミの助手と女子学生の関係以上のものはない。そのかわりに、毎回、同じゼミに所属する女子学生仲間が作品に華を添える。

でこぼこコンビの刑事2人もなくてはならない重要なキャストだ。 特に女刑事の瀧村万智子(滝沢沙織)は、背が高くて颯爽としているくせに、チョンボばかりするところが可愛い。

毎回違うゲスト女優陣も素晴らしい。

第1話 伊藤裕子

第2話 中越典子、蒼井そら

第3話 岡本綾、杏さゆり

第4話 浅見れいな、能世あんな

第5話 大塚寧々、朝加真由美

第6話 安藤希、真行寺君枝

☆ ミステリーとしてのおもしろさ
ミステリーとしても、毎回、十分に楽しめた。
レギュラーの出演者がいて、毎回、ゲスト出演者がいるのだから、ミステリーとしては、厳しい条件である。
どうしてかというと、犯人は、レギュラー以外の人物で、しかも、重要な役なのだから、ゲストの中で最もギャラの高そうな俳優とならざるを得ないからだ。
そうなれば、出演者一覧を見れば、犯人がほとんど判ってしまう。それにも拘わらず、毎回楽しめたのは、脚本や俳優が優れていたからにほかならない。
例えば、「やまんばに呪われた村」では、大塚寧々と朝加真由美の熱演が実に見応えがある。
謎解きには直接関係ない部分ではあるが、倉持紫乃(朝加真由美)が、村人から山姥と呼ばれ迫害を受けてもなお村を離れなかった理由が、恋人を待ち続けるためだったと知った時、わたしは思わず泣いてしまった。
それまでの伏線も見事だったのだが、やはり朝加真由美と大塚寧々の演技力によるところが大きい。
上質のミステリーとは、その謎解きよりも、その核心に触れる前段階の状況設定がどれだけ作り込まれているかにかかっていると思うのだ。そういう意味で、この作品は、どのエピソードをとってみても、非常に丁寧に作り込まれており、だからこそ、ミステリーとして堪能できたのである。

☆ そのほかのことがらについて
音楽(窪田ミナ)が素敵なんだな。いかにも、民俗学っていうか、日本的で伝承の世界に誘うような・・・。

それと、オープニングのデザイン。

すっごくお洒落。こういうところにまで、手抜きせずに仕上げているのは素晴らしい。


非常におもしろかった。
5枚のボリュームもあっという間だった。
最後の方は、観終るのが惜しくなったくらいだ。
minaのお勧めの作品のひとつに加えようと思う。
ハートは2.5個。
原作と比較してみるのも、一興と思う。



☆公式サイト

ミステリー民俗学者 八雲樹 DVD-BOX

ジェネオン エンタテインメント

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7 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
テレビで (猫姫少佐現品限り)
2005-12-23 01:04:16
ちらっと見たことあります。

レンタル、あるのかなぁ、、、
返信する
猫姫少佐現品限りさまへ (mina)
2005-12-23 09:43:33
レンタル、あります。

今のところ、全く人気がないみたいで、いつ行っても、5巻全部揃っています。

こんなにおもしろいのに、どうしてなんだろうと不思議です。

あっ、ひょっとしてわたしが変っているのかも・・・。
返信する
 (mina)
2005-12-24 13:51:53
「亡国のイージス」を観ていたら、古来より日本民族は、「恥の文化」のうえに成り立ってきたが、昨今はその伝統が失われて云々のナレーションが流れた。

それとは、直接には関係ないけれど、民俗学の大家は「柳田國男」なのであって、「柳田邦夫」ではなかった。「柳田邦夫」は、「零戦燃ゆ」の著者でした。

赤っ恥っ!!!

穴があったら入りたい。

急いで、訂正しました。
返信する
どうもです。 (たあご)
2005-12-24 19:41:14
TB、コメントありがとうございました。

『八雲樹』はミッチー目当てで見たのですが、内容的にも私には満足のいくものでした。

是非とも続編を見たいものです。
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誰か教えて下さい! (ちかへい)
2006-07-02 12:24:51
ミステリー民俗学 八雲樹のBGMで流れている(雅楽?)詳細をご存知でしたら教えて下さい!サントラがないため全く分かりません・・・。
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ちかへいさまへ (mina)
2006-07-09 12:21:33
わたしもこのBGMが素敵だなぁと思い、インターネットで検索してみたのですが、サントラはないようですね。

「窪田ミナ」という方は、相当有名な音楽家のようですから、地道に検索していけば、辿り着くかもしれません。
返信する
minaさまへ (ちかへい)
2006-07-11 23:30:34
すっかり諦めてしまっていたのですが、ご連絡頂きとても嬉しかったです!地道に探してみますね^^ありがとうございました。
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