mimi-fuku通信

このブログを通して読み手の皆様のmimiにfukuが届けられることを願っています。

NHK2011『日本怪談物語&妖怪・日本の闇の物語』:恐怖の本質。

2011-08-14 00:00:00 | 文芸・思想・書物

 『日本怪談物語』

 放送局 :NHK総合
 放送日 :2011年8月15日(月)
 放送時間 :午前0時35分~午前2時5分(90分)
 *14日(日曜日)深夜の放送です。

 新日本風土記スペシャル
 『妖怪~日本の闇の物語~』

 放送局:BSプレミアム
 放送日 :2011年8月19日(金)
 放送時間 :午後7時~午後8時30分(90分)

 <mimifukuから一言>

 3年続きで紹介する“話芸による怪談番組(地上波デジタル)”。
 今年も恒例、お盆の深夜の放送は、
 昨年、一昨年と放送された『百物語』とは趣向を変えた、
 怪談文学の傑作として名高い、
 「東海道四谷怪談」、「小幡小平次」、「牡丹燈籠」
 等を中心に紹介される時間短縮バージョン。
 過去の2回の放送は何れも再放送がなく、
 今回の番組も再放送は微妙な事から、
 お見逃しのないように!
 *第1回を見逃した!再放送お願い(笑)。

 また昨年、一昨年と放送された、
 『最恐!怪談夜話(BSデジタル)』
 について今年の8月には放送の予定がなく代りとして?
 新日本風土記スペシャル:『妖怪~日本の闇の物語~』
 が放送されこれまでとは視点を変えた番組制作となっている。
 
 昨年(2010年)の私の番組紹介を読み返すと下記の文書で締められている。
 >“蛇(へび)に呪いをかけたのは人々を蛇から遠ざける先人の知恵である”
 >~呪いの多くは子供を危険から守るために親達が創造した知恵である~
 >~同時に“もののけ”などの精神的な負担を人々に与えた事実も否めない。
 >詳しくは述べない。
 >言葉の意味を各々で考えていただきたい。
 >この続きは、
 >来年の怪談物語で続けよう。

 その続きは下段で触れるとして、
 “怪談&妖怪”について少しだけお勉強。

 怪談の源流を探れば宗教的な概念に行き当たる。
 しかしそれ(宗教)とは別に、
 “もののけ(物の怪・ものの化)”については、
 平安時代の日本の代表的な文学である、
 『源氏物語』『枕草子』にも記述され、
 “もののけ”とは〝物の気に憑かれる〟を意味するものと考えられ、
 祈願×呪術は平安時代に日本に齎された密教(新宗教)の発展に伴い、
 人心に大きな影響を与えたとの見方を見出す事もできる。

 “祈祷や呪術は平安時代において最先端の科学であり医術”
 
であったと考えられ、
 人々(主に権力者)は仏の力を信じ寺院を建立し仏像を彫り写経に力を入れた。
 恐らくは“文字=漢字・梵字”に魔力や神秘性を見出す事でお札やお守りが誕生。
 また一心不乱に写経(書道行為)する事で一時でも世俗の不安から解消できる事実。
 現代の混沌とした学問とは違う当時の学問は心の慰めでもあったように思える。
 *現代人にとって心の慰めは信仰よりも娯楽性を重んじる。

 宗教的な概念として平安・鎌倉時代に描かれた不思議な絵画。
 その多くが国宝・重要文化財にも指定されている。
 地獄(六道)をあらわした、
 *国宝:『地獄草紙絵巻』(奈良国立博物館蔵)
 *国宝:『北野天神縁起絵巻』(北野天満宮蔵)
 *国宝:『六道絵』(聖衆来迎寺蔵)
 餓鬼(六道)を表した、
 *国宝:『餓鬼草紙』(東京&京都国立博物館蔵)
 中国の影響を強く受ける、
 *国宝:『辟邪絵』(奈良国立博物館蔵)
 は江戸期に流行った怪談文学よりも遥か以前の物語。

 日本美術から学ぶ不思議な世界は、
 毎年8月頃の国立博物館・常設展でも展示され、
 手持ちの資料(博物館ニュース&だより)では、

 ▽東京国立博物館(2002年夏)
 *『天狗草紙絵巻』(延暦寺蔵)
 *『土蜘蛛草紙絵巻』(東博蔵)
 *『百物語』より「さらやしき」(葛飾北斎作)
 *『百物語』より「お岩さん」(葛飾北斎作)

 ▽京都国立博物館(2006年夏)
 *『光明真言功徳絵巻』(明王院蔵)
 *『融通念仏縁起』(禅林寺蔵)
 *『矢田地蔵縁起』(矢田寺蔵)
 *『仏鬼軍絵巻』(十念寺蔵)
 *『百鬼夜行図』(真珠庵蔵)
 *『日高川草紙』(個人蔵?)
 
~年によっては『餓鬼草紙』も展示された。
  
 などが展示されており(私は全作品鑑賞済)、
 美術作品としてての視点だけでなく、
 日本の文化を知る一級の資料としても重要で、
 多くは(宗教的)啓蒙の目的として制作されたと考えられるが、
 当時の制作者の想像力は最先端の科学(SF)だったとも捉えられる。
 *そのほかにも奇想天外な絵巻(天狗と妖怪の大戦争等多数)があり、
 興味があれば上記のキーワードを検索して何れは本物に触れれば楽しい。

 呪術(儀式)についての資料は縄文時代の遺跡からも出土されており、
 “もののけ⇔物の気に憑かれる(=精神状態の不安定)”は、
 医療(疫病)も気象(食料・保温)も神の思し召しの時代に於いて、
 現代以上に精神の安定を保つ事は難しく“憑依=錯乱”は、
 神仏への帰依を強める結果になったとも考えられ、
 現代人が考える想像力とはまるで違った“怨霊の実態”を鎮めるために、
 多くの人々が心を砕き寄進したのだろう。
 *国宝:『北野天神縁起絵巻』(北野天満宮蔵=鎌倉時代の制作)では、
 大宰府(福岡県)に左遷させられた菅原道真の怨霊の祟りが示されている。

 江戸中期以後の怪談文学は平安時代の宗教的な意味合いから大きく外れ、
 読み物(娯楽)として成立している事は時代の変化(大航海時代以後)が顕著で、
 東洋思想(文化)から西洋思想(文化)が流入した事実(文明の進歩)に着目すれば、
 時代の中での怪談話(怨霊=成仏できない霊魂×人間の遭遇)は、
 人の心(脳の働き)が創作する怪談話に時代の映し鏡として捉える事もできる。

 >“蛇(へび)に呪いをかけたのは人々を蛇から遠ざける先人の知恵である”
 >~呪いの多くは子供を危険から守るために親達が創造した知恵である~
 >~同時に“もののけ”などの精神的な負担を人々に与えた事実も否めない。

 今回示した文書の内容は、
 私が昨年示した怪談に思うイメージとは違った見方を敢えて行った(視点の変更)。
 昨年の内容に沿えば、
 呪いの多くは子供を危険から守るために親達が創造した知恵である”
 の言葉の意味は、
 “危険には近づけたくないと思う気持ちが池(子供と水辺の事故)に河童”
 を見出し、
 “毒のない日本の蜘蛛は吉兆であっても毒のある外国の蜘蛛は呪いをかけられた”
 との世俗的な事例(伝承=言い伝え)などから考えた。

 しかしどんなに時代が変ろうと、
 “生(=存在)”の不思議や、
 “不条理な死”の不思議についての答えを見出す事はできず、
 誰か1人でも鎮めるべき心(慰め)を抱くなら、
 鎮魂のための送りの文化(風土)を継承する事は当然で、
 「霊魂も妖怪も地獄も天国もなく、あるのは“今”だけなのだ」
 と物知り顔で語る輩の合理的な考えを私は否定する。

 と同時に、
 “もののけ⇔物の気に憑かれる(=精神状態の不安定)”
 とは怨霊や妖怪の仕業だけではなく

 “物の気に憑かれる”とは、
 “根拠のない恐怖”の場合も多く、
 “放射能と言う目に見えないもののけ”が、
 2011年8月14日の日本を彷徨っている事実。

 もののけとは何か?

 私達は“実態のある恐怖”とは別に、
 3月11日以後、
 “現代のもののけ=実体のない恐怖”
 に取り憑かれてはいないか?

 もののけとは、
 “人の心(=脳の働き)に住みつく得体の知れない恐怖”
 であると同時に、
 “心に住みついた恐怖(=もののけ)”
 こそが<恐怖の本質>であり、
 時に人は、
 “心の安定を保つために根拠のない差別をも生みだす”
 
ことも歴史の事例(魔女裁判等多数有)を見ても明らかだ。

 歴史(過去の事例・現象)を学ぶ。
 それは人の心の動き(働き)を学ぶ事であり、
 世界を突き動かすのはとどのつまり人の心だ。

 そんな視点を片隅において怪談話を聞けば、
 庶民大衆の低俗な発想などとは誰も言えない。

 もう一度“同じ言葉”を繰り返す。
 
 
どんなに時代が変ろうと、
 “生(=存在)の不思議”や、
 “不条理な死の不思議”
 についての答えを見出す事は誰にもできず、
 誰か1人でも鎮めるべき心(悲しみ・不安・怒り)を抱くなら、
 鎮魂のための送りの文化(風土)を継承する事は当然で、
 「霊魂も妖怪も地獄も天国もなく、あるのは“今”だけなのだ」
 と物知り顔で語る合理的な考えを私は否定する。


 <ブログ内:関連記事>
 *NHK2010『日本怪談百物語&妖しき文豪怪談』:怪談の考察
 http://blog.goo.ne.jp/mimifuku_act08/e/544c4efe56a189ac8dbc93d332d46e9c

 *怪談夜話2009:怪談映画/話芸/Jホラーの秘密(NHK)
  http://blog.goo.ne.jp/mimifuku_act08/e/76a9a3797e1286d14e6035e1dc848d5d
 
 
*日本の怪談2008/名作映画放送:NHK-BS2(番組情報)。
  http://blog.goo.ne.jp/mimifuku_act08/e/863101c25b35f2b88761533d1e711e5a 


 ~以下NHKホームページより記事転載。

 『日本怪談物語』

 人間のさまざまな情念を語り伝えてきた日本の伝統文化「怪談」。
 90分にわたり黒木瞳、近藤正臣ほか個性豊かな読み手たちが怪談を語る。
 怪しげな映像の中、迫真の朗読劇。

  【番組詳細】
  一昨年、昨年と、
 夏の深夜に放送し好評を得た『日本怪談百物語』。
 日本伝統の怪談を個性豊かな俳優陣が朝まで語り聞かせる番組だ。
 3回目を迎える今夏は語り手の妙を生かした演出はそのままに、
 見やすい89分にして放送する。
 今回の特色は江戸時代に書かれた怪談を中心にすえた内容だ。 
 この時代は太平の世。
 士庶や男女の性別を問わず様々な形で怪談が好まれ怪談本が全盛を博した時代。
 文化や芸術にまで大きな影響を与えた。
 鶴屋南北「東海道四谷怪談」。
 山東京伝の「小幡小平次」。
 三遊亭円朝の「牡丹燈籠」。
 などの名作怪談や、
 江戸時代の女の園“大奥”や“遊郭”を舞台に描かれた愛憎渦巻く話。
 さらに厳しい身分制度による侮蔑から巻き起こった怪談話など、
 身のすくむ様な恐ろしい怪談を語りつくす。

 
<出演>
 黒木瞳、近藤正臣、小島聖、
 藤本隆宏、新妻聖子、熊田かほり
 

 『妖怪~日本の闇の物語~』

 夏のスペシャルは日本人の大好きな「妖怪」を訪ねる旅
 それはまた妖怪を生み出した土地の暮らしと歴史を知る旅

 【番組詳細】
 子どものころ河童(かっぱ)行列を見たと言う熊本の女性。
 宮崎の実家に住むという「くろちゃん」という妖怪を探る女性。
 予言獣「くだん」と伝わるミイラを譲り受けて人生が変わった男性。
 町中あちこちに妖怪の出現記録があり妖怪屋敷を作った四国の町。
 先祖が実際に体験したという妖怪退治の記録を代々受け継ぐ広島の家族。
 日本の各地には今なお「実話」として伝わる妖怪の物語が残されている。
 その証言からはアニメや漫画で見慣れた姿とは違った妖怪の姿が浮かび上がる。
 つい最近まで日本人は妖怪と共に暮らす世界観の中に生きていた。
 今も心の中は妖怪の住まう闇の世界とあいまいにつながっている。
 その豊かでおもしろく恐ろしくも温かい世界に暮らす人たちの、
 証言を集めて全国を旅する。
 それはまた妖怪を生み出した土地の暮らしと歴史を深く知る旅でもある。
 東京のある小学校が行う身近な妖怪探しの実習にも密着しつつ、
 日本人の愛する妖怪世界を描き出す。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2011年8月11日の日記... | トップ | 『全日本高校・大学ダンスフ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

文芸・思想・書物」カテゴリの最新記事