
久しぶりに映画を観ました。群像劇というもので、2~3人の人間の間で起こる幾つかの小さなエピソードがあちこちでリンクしあって全体を一つの物語として構成しているものです。けれど、偶然にもリンクはしているけれど、それはたまたまのものであって、その場その時の‘縁’で終わってしまうものなので、どろどろ感がなくて非常に都会的な雰囲気を演出しています。それにクリスマスイブの夜から明け方までの一晩の出来事を描写しているだけですし…「Foolish Heart」とは豊川悦司のジャズバーの名前です。全編にベースを基調にしたジャズ(「My Foolish Heart」という題名のジャズのようです。その他にも色々な曲が流れますが、ジャズのことは分かりません。)が流れていて、(何しろ停電の夜ですから)蝋燭屋さんの蝋燭が唯一の光として煌きます。いずれの人が抱えているテーマも深いものですが、さらっと描かれていますので、象徴的なおとぎ話しとして深刻な現実味には触れていません。が、私はしみじみとした感慨に耽ることが出来ました。人との関わりを当たり前と思ってはいけないこと…ある関係を一度手放したら、どんなに思いを深く持続させていようとも、もう過ぎ去った時や大切な人は、容易には再び私のもとには戻ってくれない。(人生は無常を常とするから、状況はどんどん移り変わってしまうものなのでしょうね。けれど、また、それが人生の妙味とも言えます…)どんなカタチであっても、‘今’というこの時に、人を‘思える’という事はきっとすごく幸せなことなんだと改めて実感できたこと。それに、どんなに辛くても、愛する人の過去をも含めたすべてを許せてこそ、人と人との優しい関係が成立するのだということ。映画の中の登場人物たちの体験を我が事のように追体験しながら、これらの想念が、ジャズのメロディーに乗って脳裏を駆け巡っていました。
★大停電の夜に