しばらくすると、「この町の修理の人があいにく日曜なので来られない。一番早く来てくれる修理のところへ連絡した。一時間くらいでこれるだろう。」
そしてその間何度も「大丈夫です。みんな」とガイドが答える。
始めは皆立っていたが、時間がかかりそうだとわかったので、やがて全員エレベーターの中に座り込んだ。
「これはいけない!」と思った私は、最初は緊張をほぐすため、折り紙を折って、みんなの気持ちを故障からそらそうとした。
音声が「もう少しお待ちください。修理の人が来ます」
ベンは「パリからか?」とジョークを言って苦笑いだった。
しかし時間が長くなってくると、かなり暗いし、隣のエレベーターの人たちはガラス越しに私たちをのぞき込んで、それからぞろぞろ降りていく。何だかうらやましいが「見世物」状態で、余計不安が募ってくる。
しかし、こういうとき、慌ててはいけない。
「必要なものはありますか」と音声。
ベンも不安になってきたのだろう。「のどが渇いている」と答えていた。
そこで、鞄を探すとガムが数枚あった。それを皆で分けた。
そして、1時間かもう少し経ったころ、修理の人がやってきた。
私はまだ「フランスにしては早かったじゃないか」と思うくらいだったので、他の人たちより少しは余裕はあったと思う。
こういう時はどうしようもないのだ。信じて待つよりは。
また、エレベーターがたぶん20人乗りくらいの少し大きめのエレベーターだったこともあって、比較的冷静に待てたかもしれない。
やがてエレベーターは再びゆっくり、しかし時々ガタガタしながら最上部まで上がった。つまり最初に乗ったところだ。
でもそれからももたもたして、すぐには開かなかった。
さらに15分くらいはかかったとおもう。
最後には、「エイヤー」のような感じで力任せにこじ開けたらしく、やっと開いた。
しかもまだ50㎝くらい段差があって、手を引っ張てもらわないと出られないくらいだった。
ドアが開いて真っ先に飛び出したのは、なんと!!!「ガイド」の女性だった。
予想通り?だったので、クスッとなりそうだった。
ペットボトルを手にした責任者が待ってくれていた。
この人はガイドが真っ先に飛び出たことを何と思っただろう?と思ったのは、私だけだったかもしれない。
どこかの国のクルーズ船がいつだったか遭難したとき、真っ先にとび出たのは船長だったという話を思い出した。
それにしても乗るときによくトイレに行っておいたものだ。おかげでそのことは大丈夫だった。やれやれ。