さあ、エンマのお迎えの時間だ。
二年前も何度か行った幼稚園へと向かう。
そして、時間。
私たちを見つけ、にこっとしたエンマ。嬉しいような恥ずかしいような、というような表情だった。
この子は5歳だが、天真爛漫な中に、少し大人びたところがあるように見えるのは、その利発さゆえかもしれない。とにかく父親のミッシェルさんはメロメロのようだ。
「この子はいたずらっこなんだよ」と滞在中もよく言っていた。つまり父親に上手に甘えて?意のままに動かして?いたりもするのだ。
エンマは、私たちが知っている彼女の曽祖母さんと性格がそっくりだとヴィルジニは言うのである。
この曽祖母さんのことも書き出したらいっぱい書けるが、この旅行記から外れてしまうので、それはまたの機会にしよう。
帰宅後、彼女の希望通り、プール遊びに早速夫はお付き合いすることになった。
滞在時、マルセイユはあまり天候もよくなく、気温もコートダジュールほど高くなかったので、水温も決して水遊びには適していなかった。
しかし、私たちの訪問に合わせてプールの掃除をしてくれたというミッシェルさんの思いも受けとめ、ここでサービスすることにした。何より、エンマを喜ばせたい。
夫はゆっくりゆっくり体を水に浸して行き、最後にどぶんと泳いだ。泳ぐといってもクロールの一掻き二掻きでもう端まで行ってしまうし、夫の脇ぐらいまでの深さだ。
そしてかわいい水着姿のエンマが現れた。彼女もじわじわと水にゆっくり入ってきた。二年前と違い、彼女は浮き輪もつけず、足も立たない深さのプールに平気で飛び込む。プールサイドから鮮やかに飛び込み、浮き上がってくるパフォーマンスで私たちをびっくりさせた。泳ぎは犬かきである。
ぽこんとお尻を見せて真っ直ぐ下に潜り、浮き上がるのを何度も見せてくれた。
たぶんちょっと水を飲んでもいるらしく、ぴゆーと口から水を吐き出すこともある。でもそんなことはお構いなし、とにかく楽しんでいる。大きな声をあげて上機嫌だ。
怖いということを知らないように見えるくらいだった。
しばらく水中で遊んだ後は、体を温めるためトランポリンが始まる。これも前回も披露済みだが、一段と上手になっている。独創的な彼女らしいトランポリンだった。
トランポリンが終わるとシャワーを浴び、二年前にプレゼントした浴衣を着て現れた。去年のハロウインでもこのお気に入りの浴衣を着て、女王様?のようだったらしい。
夕食はバーベキューだった。いつもならワインなのだが、この時ワインを遠慮したため、どうも私もワインが飲めないということが彼らの記憶になってしまったようだ。
しかし、それでよかったと思えるほど、この日床に就いてから胃が苦しく、何となく熱っぽくも感じ、早めにここで薬を飲むことにした。
たぶんニースに戻ってから昼の外食(この日のお昼は列車移動中で、抜いていたのだが)が続き、デザートも昼も夜もしっかり食べて、胃が悲鳴をあげていたのだろう。そして疲れも出てきたころだったのかもしれない。
明日動けなかったらどうしよう、ここで休んでいるしかないかと一抹の不安を抱きながら眠った。