箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

「連帯」という価値観

2020年04月10日 07時53分00秒 | 教育・子育てあれこれ
3月18日の新型コロナウイルス感染防止に向けたドイツのメルケル首相のメッセージが光っていました。

きわめて率直で、国民の心のひだに届くスピーチでした。

まず、国民へのねぎらいの気持ちに溢れていました。

「私たちの病院や健康管理システムで働く医師、看護師、その他の人々について述べたいと思います。あなた方は、私たちのための戦いの前線にいます。最初に患者に接し、このウイルスの症状がいかに過酷なものかを目の当たりにします。日夜、人々を救うために職場に戻り続けます。とてつもない働きであり、心から感謝します。」

「ふだんめったに感謝されることのない人々に感謝を述べたい。スーパーマーケットで、レジを打ったり、棚に商品を並べたりしている人々は、今まさに最も大変な仕事をしています。国民のためにその現場にあり、私たちの暮らしを支えてくれている皆さんに感謝します。」

そして、首相はドイツ国民に「連帯」を呼びかけました。

そもそもドイツには、基本的に、日本のような地縁共同体的な人びとの相互扶助的つながりはなく、個人主義の国です。

ところが、他者を助ける人間関係はあります。

街中で車いすやベビーカーの人を、ためらいなくヒョイと持ち上げる光景はよく目にします。  

これが、ドイツ国民の精神に貫かれている「連帯」の価値観のほんの一例です。

さらに、首相は「われわれはデモクラシー(民主主義社会)である。強制からではなく、知識と参加によって生きている」と続けました。

そこには「要請」とか「自粛」という概念はありませんでした。

第2次世界大戦以来、これほど一致団結した行動が求められることはなかったとして、その試練を「連帯」と「民主主義」で乗り越えようと働きかけました。

新型コロナウイルスは、それぞれの国の社会の構造や国民の価値観を浮き彫りにするのだと思います。

日本の場合、ちがいとか個性や個を認め合う価値観を確立するという、いまの学校教育の流れがあります。

しかし、一方で「周りのみんなと外れない」という協調性、ある意味での同調性という価値観が行動規範の根底に根づいています。

だから、要請に対して自粛しなければという意識が強く働きます。

どちらがいいとかよくないという問題ではなく、日本の学校教育で、個の尊重という価値観と「絆」に代表される同調性をどう折り合いをつけ、共存させるかという課題をあらためて思います。




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