箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

祝 第45期生の旅立ち

2019年03月14日 14時03分12秒 | 教育・子育てあれこれ






本日、箕面三中第45回卒業式を挙行しました。

会場舞台には3年生制作の大壁画、会場後方には、在校生制作の「飛」と「挑」が飾られました。

45期生のみなさんにとって、記念となり、生涯の思い出となる卒業式となりました。


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第45回卒業式校長式辞

厳しかった冬の寒さがようやくゆるみ、箕面の野山も、少しずつ明るい色に染まりだしました。

ここ瀬川の地でも、校庭の木々が芽吹く瞬間をいまか、いまかと待ち望んでいます。

春の風が心地よく頬を打つこのよき日に、第45期生190名が、箕面三中を巣立っていく時がやってきました。

卒業生の皆さん、先ほどみなさん一人ひとりに卒業証書をお渡ししました。

箕面三中の教育目標は、「自立に向かう生徒」です。その意味で、私はみなさんに、いわば「自立へのパスポート」を授けたのです。箕面三中ご卒業おめでとうございます。

本日の卒業式には、ご多用中のところ、藤迫稔箕面市教育委員会教育長様がお越しです。

また、来賓として、たくさんのみなさま、地域の方々にご臨席いただいております。卒業生の晴れの門出を祝うため、駆けつけてくださいまして、まことにありがとうございます。心よりお礼申しあげます。

保護者の皆様、お子さまたちにとっては、思春期まっただ中の、心が揺れる三年間でした。ですから、子育てについて、喜びも多かった反面、悩まれたこともあったでしょう。

しかし、今このように、豊かに、大きく、成長されたお子様の姿の後には、日頃の子育てのご苦労がここに実り、鮮やかに色づいています。きっと万感の思いでおられることと存じます。

教職員を代表しまして、私からみなさんのご苦労に対して最大のねぎらいと敬意を払います。そして、お子さまのご卒業おめでとうございます。
 
さて、卒業生のみなさん、『君たちはどう生きるか』という本を知っていますか。この本は1937年に、児童文学作家の吉野源三郎さんが書きました。

2017年には、『漫画 君たちはどう生きるか』が人気を集め、昨年は、年間で最もよく売れた本となりました。

この本には、コぺルくんという中学二年生が主人公で登場します。コペル君には、おじさんがいます。そのおじさんは、コペル君にとっての大切な相談相手であり、よいアドバイスをたくさんくれるのです。

そのおじさんのコペル君への言葉を、みなさんに紹介します。

みなさんも、コペル君と自分自身を重ねて聴いてください。

「ところで、君自身はどうだろう。君自身は何を作り出しているだろう。世の中からいろいろなものを受け取ってはいるが、逆に世の中に何を与えているだろうか。

あらためて、考えるまでもなく君は使う一方で、まだ何にも作り出していない。

毎日の三度の食事、お菓子、勉強に使う鉛筆、ペン、紙類・・・。まだ中学生の君だけど、毎日、ずいぶんとたくさんのものを消費して生きている。服や、靴や、机などの道具。

住んでいる家なども、やがては使えなくなくなるのだから、やはり少しずつなし崩しに消費しているわけだ。

してみれば、君の生活というものは、消費専門家の生活といっていいね。生み出してくれる人がなかったら、それを味わったり、楽しんだりして消費することはできやしない。生み出す働きこそが人間を人間らしくしてくれるのだ。」

おじさんからのコペル君へのこういう話を聞けば、箕面三中の卒業生のみなさんも消費専門家の生活をしていることになります。

しかし、おじさんは言葉を続けます。

「君は、毎日の生活に必要な品物ということから考えると、たしかに消費ばかりしていて、なに一つ生産していない。

しかし、君は自分では気がつかないうちに、ほかの点で、ある大きなものを、日々生み出しているのだ。それはいったい、なんだろう。

コペル君。僕は、わざとこの問題の答えを言わないでおくから、君は、自分でその答えを見つけてみたまえ。決して、ひとに聞いてはいけないよ。

お互いに人間であるからには、誰でも、一生のうちに必ずこの答えを見つけなければならないと、僕は考えている。」

おじさんの言葉はここで、終わっています。そして、答えは『君たちはどう生きるか」の本の最後まで読んでも出てきませんでした。

卒業生のみなさんもコペル君と同じように、消費ばかりの生活をしています。そこで、私はみなさんに問います。

みなさんは自分では気がつかないうちに、ほかの点で、ある大きなものを生み出しています。それはいったいなんでしょう?

みなさんが日々生み出しているものに、ひょっとすると、これが正解というものはないのかもしれない。

今日が卒業という日に、校長からこのように問われて、答えがわからないまま卒業していくのは、気持ちがすっきりしないでしょう。

そこで、私がおじさんの言葉から読み解いた答えを、みなさんに卒業への「はなむけ」のメッセージとして伝えます。

私の考える答えとは、みなさんが、日々「つながり」を生み出しているということです。その「つながり」とは、学年の友だちとの、仲間としてのつながりです。また、みなさんの先人から受け継いだいのちのつながりを生み出しているのだと、私は考えます。

そこで、卒業生のみなさん、三中での三年間をふりかえってみてください。

文化祭、体育祭、修学旅行などがありました。また教室での、友だちとのたわいもない会話などもありました。

そのふりかえりのどこを切り取っても、すべての思い出がキラキラと輝いて見えます。みなさんは、周りの仲間のことに目を向け、考え、行動してきました。第45期生としての仲間のつながりを生み出してきたのです。

その一方で、みなさんには、学習や部活で思うような成績を残せないことがあった。友だち関係で悩み続けたこともあった。学校に行こうとしても、登校できなかった。自分の居場所を見つけるため、さまよい続けた日もあった。

つらくて、苦しくて、悔しくて、涙を流した日もあった。

しかし、悩み・迷い・悔しさをくぐり抜け、親から引き継いだ命のつながりを生み出し、いまここにあなたは生きていて、存在している。そして、いま、卒業という門出を迎えている。

この人とのつながりといのちのつながりが、みなさんが生み出したものとして、本当に意味のあることだと、私はつくづく思います。

よく今日の日を迎えることができました。だれ一人欠けることなく、卒業を迎え、校長として、私にとって、最後の卒業生を送り出すことは、感極まる思いがします。

締めくくりとして、みなさんにこの言葉を伝えます。

「君たちはどう生きるか」。

再度問います。

「君たちはどう生きるか」。

この問いを、私からみなさんへの、最後の言葉として贈ります。

さあ、いま私は、みなさんへ自立への旅立ちを許します。

三中はいま、風船の糸を外します。

三中で楽しかったことを宝にして、苦しかったことを支えにして、糸が外れた風船は、自立への旅が始まります。

みなさん一人ひとりがゆったりと、大空を旅するような、前途ある未来を心より祈っています。

以上をもちまして、第45回卒業式の校長式辞とさせていただきます。

平成31年(2019年)3月14日 

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卒業の歌 → 「大地讃頌」(クリック)





3年教職員にとって、3年間はではなかったですが、しい道のりでした。

45期生の前途に幸あれ。