
モデルの押切もえさんは、20代の始めに「CanCam」の専属モデルになり、仕事が軌道に乗りはじめました。
その後、数年がたったころ、旅行先の海で大波に巻き込まれました。頚椎(けいつい)を損傷しました。命にかかわる大ケガでした。
仕事に穴をあける申し訳なさ、努力して積み上げたものが一瞬で崩れた絶望感、首をギプスで固められたまま、病院の天井を見ながら、ただ涙があふれ出てきました。
そんなとき、ひとりの看護師さんが「押切さんは、笑っているほうがいいですよ」と、声をかけてくれました。
「本当だ」と思ったそうです。
同じ数ヶ月を過ごすなら、泣くより笑っていよう。私は人に笑顔を届ける仕事をしているのだから・・・・・。
押切さんがそのように思えたのは、笑顔で優しく、かつキビキビ働く看護師さんの姿を見ていたからでした。
押切さんとさほど年齢の離れていない人が看護師として患者さんに接し、一日中ハードな仕事をこなし、しかも笑顔を絶やさない。その「プロ」としての姿に、押切さんは打たれたのでした。
このように、言葉は、そのフレーズに、発した人の生き方や思いが重なり、受け取る人の心に響くものなのでしょう。