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「ささやかに」 安藤佳子
山が人よりもはるかに大きいことを
海が人よりもはるかに大きいことを
空が人よりもはるかに大きいことを
わたしはすぐに忘れてしまう
山の木の葉がひとよりもはるかに多いことを
海岸の砂粒がひとよりもはるかに多いことを
夜空の星々がひとよりもはるかに多いことを
わたしはすぐに忘れてしまう
人の世界だけで生きていると
頭が大きくなりすぎて
心が忘れたくないことをすぐに忘れてしまう
だからここにじっと座って
大切なことを忘れないように
わたしの命とつながる命をいつも感じていたい
百年前に生まれていなかったことも
百年後にはここにいないことも
ささやかに知っていたい
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自然の力は偉大です。
ところが私たちは、そのことをつい忘れがちになります。いまや、自動車も自動で運転ができるメドが立つ時代です。
科学の力は、私たちの生活をさらに便利にしてくれそうです。
しかし、いかに科学が発展しようとも、私たち人間は、大自然の巨大な力の前にはなす術をもちません。
このことは、阪神・淡路大地震や東北大地震、台風の水害などで思い知らされました。
私たちは、「頭でっかち」になるのではなく、自然に対して、畏敬の念を保ち、時間を超え、時代を超えて命を繋げていく営みにいそしみたいのです。
それが人間がなすべきことであり、自然をコントロールすることでは、決してないのです。