銀の人魚の海

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瞳の奥の秘密~5つの瞳

2010-08-16 | 2010年鑑賞新作映画
昨年のスペイン映画祭上映作だそう。
原作者とカンパネラ監督の共同脚による25年にわたる大河ドラマと
云ってもいいような、過去と現在が交差する74年からのアルゼンチンの物語。

瞳が重要で私は、ここでは5つの瞳を想った。

男女二組と犯人の瞳。
それが過去と現在で繋がる。

そして、もう1つはあきらめた男とあきらめない男の物語でもある。

女の物語としては幸せを一瞬で失った若き女性と
出世はするが、愛を得ていなかったような女性の物語で
ハッピエンドでもある長い愛の話だ。

もっと複雑な推理ものかとおもったら、意外とそうではなく
犯人が捕まるが、その後また展開があり、
もしかして?あの人がと思ったりは外れた。

ラストは予想外だったが、あのセリフなどから、
よく考えればそこへ行きつくとわかる。
私は、よくやった!と言いたい。

音楽はピアノ曲で始まり、途中からバイオリンに変わる。
上品な入れ方でとても良かった。

ここから多少ネタばれあり。



死刑に対する考えの映画でもあり、あの夫は死刑には反対という。
それがキーワードでもあるが、気づかなかった。

リベンジのすごさは「セブン」みたいに?でも
あの男は体も痩せてなく歩くこともできていた。
私なら、もっと残酷にするだろう!(^^)!

あそこまで達成したのだからアルゼンチンという国でも、
神を考えないでもいいのでは・・
その愛は、もうその領域は超えている。

愛、の強さというより彼の生きがいになったのだろう。

諦めない。

一方、書記官であるベンハミンは
彼女を身分違いとあきらめ去っていく。

彼は裁判所の書記官という役だが刑事みたいなこともしている。
当時の警察、裁判所など政治の混乱が見られ、
当たり前のようにあの彼は釈放されてしまう時代だった。

部下、パブロもあっけなくなくなり
ベンハミンはすべてを失う日々となるが
その間に、あの夫はしぶとく復讐の鬼となっていたのだ。

これだけ愛されれば言うことはないだろうが妻は帰ってこない。

銀行員と書記官という二人の対比も興味深い。

シーンでは、日本ではJ1に当たる
サッカーチーム、ラシンの試合光景が圧巻だ。
ふかんシーンからカメラが降りていきスタジアム全体を映す。

犯人を何万の中から探すという技。
カメラは多分1カットでそれを追う。
汚い、男がほとんどのスタジアム光景はサッカー好きには
わくわくシーンか・・

パブロ役は眼鏡の少しWアレン似、背を高くした感じで
ユーモアもあるアルコール依存者、彼の言葉が笑いを誘う。

いつも軽く人を笑わせていた彼は
皮肉にも人生をあきらめたように、身代わりのようなラストを迎える。

扉も印象に残った。
ラスト、扉を背景にスペイン語でタイトルが出る。

扉を壊すシーン、スタジアムでのトイレの扉、
夫が玄関の扉から、あの扉へ行くシーンなど幾つかの扉があった。

駅とホームも印象的だ。

冒頭ベンハミンが去る駅、追う彼女、同じシーンがラストへ繋がる。
地下鉄の駅では夫が辛抱強く待つ。

群衆の中の誰か?もある。
駅で、スタジアムで多数の中からひとりを見つける。

70年代当時からの建物なども見どころで
ヨーロッパ色が強いアルゼンチンの国を見る映画でもある。
大理石らしい床の柄が今も頭にある。

日本の7・5倍に4千万人。
平地で草原が多いのだろう。
延々と続く人里離れた場所なら、あの設定も可能だと思う。

頭いいな、夫、と。


パンフより幾つか。

アルゼンチンでは昨年公開され34週のロングランだそう。

当時の政治は腐敗していたから、こういう原作がかけたと思う。
原作と映画とは、違っているところもかなりあるようで
幾つかの変更がパンフに書かれている。

検事になった彼女の夫の事、家族の様子などは映画では
1回も出ないが原作ではどうなのだろう。

翻訳はされていない?だろう多分。(調べたらなかった)

イレーネ役のソレダはタンゴ歌手としても活躍しているそうで納得。

カンパネラ監督作は、これが初公開。
監督は
「これは国家の記憶でもある。軍事政権前の恐怖がある」と
語っているが、確かに死刑論、政府論、警察と裁判所、
キャリアとノンキャリアなど単なる愛、推理だけではない物も
多数入った話だ。

原作者。
エドワルド・サチェリ。67年ブエノスアイレス生まれ、
詳しくは不明とある。
大学で教えたり裁判所に勤務の経験がありサッカー好きで
サッカーテーマの短編で読者をとったと。

「瞳の問いかけ」が原作、映画公開にあたり改題された。

アマゾンで検索かけてみたら、和書ではなかった。

殺人犯が終身刑でも釈放された当時の現実を書きたかったと。

撮影は08年2か月、ブエノスアイレスを主なロケ地とした。

アルゼンチンの裁判所は、判事、判事補、書記官。
パブロは書記官ベンハミンの部下である。

70年代の政治状況は。
74年世界初の女性大統領イサベルが誕生するが
力量にかけ政治は不安定、悪化する。
76年、クーデターにより軍事政権が誕生、国民を弾圧し
3万人が犠牲になった。

この背景を知っていた方が、この映画を理解できると思う。
大変な時代に必死で生きた男たちの話でもある。

この映画は国民の6・2%が見たそうで、250万人。

ベンハミンが身を隠した地域フフイは、
北はボリビア、西はチリに接する州で、ブエノスアイレスから1643キロ。
広いな~~
年の半分は雨が降らない太陽が照りつける地域だそう。

南米映画の醍醐味を見た1作となった。


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4 コメント

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Unknown (zooey)
2010-09-04 00:15:42
Wアレン似のパブロが
とぼけたいい味を出していましたね。
彼の友情には泣けました。
(あの身代わり説はベンハミンの想像に過ぎないとはいえ…)
深刻な内容のストーリーなのに、時々クスクス笑えたのは、彼の存在に負うところが多かったですものね。
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Unknown (アリエル)
2010-09-04 10:54:35
アレンより、体が少し大きい感じですが
いうこと、セリフ、態度、メガネも
似てました。
彼の存在は、確かにこの映画では大きいし、深刻な中、ゆるむ感じが良かったです。

この映画、再見すると、もっとわかることもあると思います。
いつかDVDが出ればみたいです。

昨日の夕刊でも満員御礼とありました。
今は都内、新宿武蔵野館でも上映してますね。
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報告とお礼に参上しました。 (ヤマ)
2014-07-10 22:50:06
アリエルさん、こんにちは。

 今日付けの拙サイトの更新で、こちらの頁をいつもの直リンクに拝借しております。

 とても丁寧に周到に作られた映画であることがよく分かる観賞文ですね。こういう作品を観ると、本当にシーンやショットの重要さを改めて知らされるような気がしてきます。

 主題的にも瞳同様に、なかなか奥深く様々なものが提起されていて、「死刑に対する考えの映画」とお書きの部分についても、非常に深いものが込められていましたね。

 拙日誌でも言及している「薬を注射して楽に死なせるよりも、虚しい日々を生涯送る終身刑を」との台詞とともにリカルドの果たしたことは、ネグレクトに勝る虐待はないと言われることと繋がっています。そして、死刑制度への問い直しとして、いわゆる人道主義とは異なる視座の提示という意味合いが含まれていて、 非常に触発力のある作品になっていましたね。

人にとって、自身の命を奪われる以上の苦しみを与える犯罪に対して、刑罰というものは、いかにあるべきなのか。 報復? 教育? どちらも難題なんですよね。死を与えることで遺族の報復感を満たせるほど単純ではないし、教育を施したからといって更生させられるとは限らないですし…。

 扉の御指摘もとても興味深く拝読しました。どうもありがとうございました。
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Unknown (アリエル)
2014-07-11 00:40:10
リンクありがとうございます。
四年前なので、忘れていることもあります。
南米映画は何故か好きなのです。異郷だからか、ボサノバが好きだからか。
映画祭でも、南米の到底公開されないだろう、他では見られない、作れない映画を楽しんだりしてきました。
この映画はかなり緻密な構成です。死刑、犯罪、復讐、いろいろな難問が絡み合っています。
一言で軽く言えない物が詰まっている映画でした。
アルゼンチンといえば、W杯決勝へ。
オランダが勝って欲しかった。PKは嫌いなので、決勝はPKなしでいってほしい!
TVで見た、オランダ、ロッペン、ファンペルシーの子供たち、可愛かった!
今日は深夜にiPadでコメントしました。台風は都心、静かです。
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