言語空間+備忘録

メモ (備忘録) をつけながら、私なりの言論を形成すること (言語空間) を目指しています。

李登輝の馬英九分析

2011-02-07 | 日記
櫻井よしこ 『異形の大国 中国』 ( p.330 )

 08年1月12日の台湾立法委員(国会議員)選挙はおよそすべての予測を超える野党国民党の大勝利だった。台湾は、総人口の85%を台湾人(本省人)が占める一方で、蔣介石らとともに台湾に逃れてきた中国人(外省人)は約12%である。その台湾で、台湾人の政党である民進党が結党以来の大惨敗を喫したのだ。
 勝利した国民党は、定数113議席の3分の2を上回る81議席を獲得、27議席にとどまった民進党を圧倒した。国民党は総統を罷免することが出来る3分の2を易々と得た。さらに諸派・無所属議員から4人を加えると4分の3の85議席となり、憲法改正さえ可能な圧倒的な力を手に入れたわけだ。3月22日に予定されている総統選挙で、たとえ民進党候補が勝ったとしても、これでは非常に難しい政権運営となる。
 国民党の迫害を受けて長年日本で亡命生活を送った経験のある金美齢氏は、民進党の敗北は07年の日本の参議院議員選挙での自民党の敗北より深刻だと強調する。
「日本には衆参両院がある。しかし、台湾は一院制です。台湾立法院での大敗北の意味は深刻なのです」
 なぜ台湾人の政党は敗れたのか。経済成長の鈍化、失業者の増加、高齢者福祉の停滞といった、国民生活を重視しなかったとの批判に加えて、陳水扁(ちんすいへん)総統の身辺の汚職や腐敗問題、台湾人意識を高揚させようと中国への対立姿勢を煽った結果、中国との関係がまったく進展しなかったなどの指摘がある。
 そうした意見とは逆に、陳政権はよくやったという見方もある。
「陳総統は野党多数の下での議会運営を強いられてきたのです。国民党などの反対で思うような政策が施行出来ないなかで、たとえば台湾の株価は07年1年で8%を超える伸び率を達成しました。一方、日本はマイナスでした。陳政権は日本よりも良い結果を残したのです」と金氏。
 そうした事を忘れ、かつて国民党が継続して行っていた台湾人への迫害、白色テロの恐怖も、有権者は既に忘れているとも、金氏は語る。
「中国の脅威にどう対処するかという国の安全や独立のことよりも、生活第一という馬英九(国民党前主席)の訴えに人々は魅かれるのです。愚かなことだと思います」

★国民党への李登輝氏の懸念

(中略)

 李登輝氏は…(中略)…馬氏の考えは次の3点にまとめられると指摘する。①自分は中国人だという意識、②台湾は(台湾ではなく)中華民国だという信念、③中華民国の(中国重視、台湾軽視の性格をもつ)憲法は維持し、改正しないという立場、である。
 台湾では「あなたは何人(なにじん)か。台湾人か、中国人か」との問いに、70%の人が自分は台湾人だと答えるようになった。ほぼ全員が「自分は中国人」と答えていた李登輝氏の総統就任以前の台湾とは様変わりだ。本省人として初の国民党主席を務め、その後、台湾独立に向けて備えてきた李登輝氏は語る。
「国民はかなり強い台湾人意識を持っています。ですから、馬氏が総統に就任しても、公然と大陸に擦り寄ることは出来ないでしょう。馬氏は今のところ、少なくとも中国の言いなりにならないという印象を植えつけるように、心を配っています」
 だが、自分を中国人ととらえ、台湾は中華民国であり、憲法は改正しないと馬氏が考えていること自体、すでに中国に大きく歩み寄っていることを意味するのだ。その馬氏が率いる国民党の勝利を、中国は明らかに大歓迎している。余裕ある静観を決め込む中国を、李登輝氏は、「弾力的で静かな台湾政策で成功をおさめた」と評す。


 李登輝氏は、馬英九氏の特徴は「①自分は中国人だという意識、②台湾は(台湾ではなく)中華民国だという信念、③中華民国の(中国重視、台湾軽視の性格をもつ)憲法は維持し、改正しないという立場」であると指摘している。
 08年1月12日の台湾立法委員(国会議員)選挙はおよそすべての予測を超える野党国民党の大勝利だった。国民党は定数113議席の3分の2を上回る81議席を獲得、27議席にとどまった民進党を圧倒した、
 と書かれています。



 著者は、
 台湾では「あなたは何人(なにじん)か。台湾人か、中国人か」との問いに、70%の人が自分は台湾人だと答えるようになった。ほぼ全員が「自分は中国人」と答えていた李登輝氏の総統就任以前の台湾とは様変わりだ。
と書いておられます。この調査が「いつの時点の」調査なのか、そこのところが書かれていないのでわからないのですが、

 「台湾人か中国人か」で引用した資料によれば、
 台湾の人口の八四パーセントは、もともと台湾にいた人々ではなく、中国からやってきた人々だといわれている。だが二〇〇四年に台湾の名門、国立政治大学が行なった世論調査によると、四一パーセントの人が自分は台湾人だと答えている。一九九三年、十二年前の調査では台湾人だと答えた人は一七パーセントだったから、この十年あまりで大きく増えたわけである。
 一方、中国人だと思っている人は、一九九三年の調査では、二〇パーセント以上だったが、今回の調査では一〇パーセント以下に減ってしまっている。
ということなので、

 おそらく著者(櫻井よしこ)が執筆した時点(2007~2008年頃)における最新の資料による数字ではないかと思います。傾向として、「自分は台湾人である」と考える人が増えつつあることが、「台湾人か中国人か」で引用した資料には示されているからです。直近(昨年)の選挙においても、「台湾の五大都市市長選結果」には強烈な台湾人意識が示されており、この傾向、すなわち「自分は台湾人である」と考えている者が増え続ける傾向は現在も続いているものと思われます。

 とすると、「台湾人のアイデンティティー」は着実に形成されつつある、とみてよいと思います。



 李登輝氏によれば、馬英九氏の特徴は「①自分は中国人だという意識、②台湾は(台湾ではなく)中華民国だという信念、③中華民国の(中国重視、台湾軽視の性格をもつ)憲法は維持し、改正しないという立場」である、ということになります。台湾に住んでいる台湾人の分析ですから、この分析は「正しい」とみてよいでしょう。

 著者は「自分を中国人ととらえ、台湾は中華民国であり、憲法は改正しないと馬氏が考えていること自体、すでに中国に大きく歩み寄っていることを意味するのだ」と書いておられます。著者が執筆した直後の選挙で馬英九は台湾総統に当選したわけですが、
台湾が憲法を改正して独立を宣言しようとすれば、「中国がなにをするかわからない」以上、この部分は問題視するにあたらない
と思います。この部分は「現状維持」にほかならず、「現実的な選択」だとみなければなりません。

 問題になりうるとすれば、馬英九の「①自分は中国人だという意識」ですが、馬英九が政治のうえで「現状維持」路線をとるかぎりは、問題とするにはあたらないと思います。馬英九が「自分は台湾人だと考えていようが、自分は中国人だと考えていようが、要は台湾にとって最善の政治をすればよい」からです。

 問題は、「なにが台湾にとって最善なのか」であり、馬英九は「台湾問題についての米中台の姿勢」でみたように
台湾海峡で戦争が勃発しても決して (never)米国に台湾への支援を求めたりはしない、などと語った
りして親中路線、経済成長重視の政治を目指したところ、台湾人の支持を失いつつある、と考えられます (上述の「台湾の五大都市市長選結果」参照) 。

 したがって台湾人が考える「台湾にとって最善」とは、「経済成長しつつも、中国とは一線を置いた距離を保つこと」だと考えられます。

 今後、馬英九は中国と微妙に距離を置く政策をとらざるを得ないと考えられ、「すくなくとも馬英九政権においては、台湾と中国がひとつになることは、あり得ない」と考えてよいのではないかと思います。つまり、
「国民はかなり強い台湾人意識を持っています。ですから、馬氏が総統に就任しても、公然と大陸に擦り寄ることは出来ないでしょう。馬氏は今のところ、少なくとも中国の言いなりにならないという印象を植えつけるように、心を配っています」
という李登輝の予想は、「正しい(正しかった)」とみてよいのではないかと思います。



 問題は次の選挙(2012年)ですね。



■関連記事
 「中国は「2012年の台湾統一」を目指している

『対北朝鮮・中国機密ファイル』

2011-02-06 | 日記
櫻井よしこ 『異形の大国 中国』 ( p.313 )

 07年に出版された『対北朝鮮・中国機密ファイル』は、北朝鮮、中朝関係、韓国、さらにはアジアのなかの日本への、中国人の見方を理解するうえで極めて役に立った。
『機密ファイル』は文字どおり、中国政府中枢部の握る機密情報を書いたものだ。中国共産党の現役官僚を中心とする複数の人物が「欧陽善」というペンネームで書いたのが同書である。北朝鮮と中国の暗闘の歴史の詳細は、真に驚くべき内容だ。同書は、具体的かつ詳細な事例をあげて、昔も今も変わらぬ北朝鮮の徹底した中国嫌いの実態を抉り出している。たとえば、1950年6月25日に北朝鮮の攻撃で始まった朝鮮戦争の勃発を、金日成は毛沢東には知らせず、毛はそのことを外国の新聞のニュースで初めて知ったという。それから56年後の2006年7月のミサイル発射実験を、金正日は父親同様、中国に全く知らせることなく行った。同年10月9日の核実験は、一応、事前通告はしたが、それは実験の、わずか20分前という切迫した場面でのことだった。その結果、胡錦濤国家主席らが北朝鮮の通告を知ったのは、核実験直後だったという。
 中国嫌いは南北両朝鮮が共有する想いだ。前ソウル市長の李明博氏はソウルの中国語表記「漢城」を「首爾」に改めた。韓国政府は80年代から漢城は中国人が勝手につけた植民地主義的命名だとして変更を申し入れていた。中国側は応じなかったが、韓国側はさっさと変えてしまったわけだ。

★南北朝鮮に譲歩する中国

 では、中国嫌いを鮮明にする南北朝鮮に、中国はどう対処してきたか。触らぬ神に祟りなしとばかりに、終始及び腰だったと、欧陽善は強調する。とりわけ北朝鮮との関係は、中国の一方的譲歩によって成り立ってきた、とまで分析する。
 そのことは、歴史問題にも思わぬ影を落としている。抗日戦争のとき、日本軍に編入された朝鮮人兵士は日本人兵士より「凶暴」だったが、戦後の愛国教育のなかで、中国は朝鮮の罪を不問にし、それらすべてを日本の責任として日本だけを責めたというのだ。それだけ朝鮮半島に対しては "遠慮" しているのである。
 中国の北朝鮮に対する譲歩は領土についても同様だという。金日成ゆかりの聖地とされる長白山は元々中国領だった。北朝鮮が「朝中友好の大局」を楯に北朝鮮に移譲してほしいと要求したとき、毛沢東は長白山の分水嶺の東側の三つの峰と、その頂上にある天池の湖面の約4割を、気前よくプレゼントした。すると北朝鮮は間髪を入れず、黒龍江省の一部、吉林省の大部分と遼寧省の全てを要求した。中国は直ちに断ったが、日中関係のなかで、日本の領土である尖閣諸島や排他的経済水域をあくまでも中国領だと主張する対日強硬姿勢の中国が、北朝鮮の前では、姿を一変させているのが興味深い。
 北朝鮮の不法、不誠実な手法ゆえに、貿易、投資においても、中国は常に「被害」を受けてきたと同書は主張する。その結果、中国商務部(省)は、北朝鮮取引きで騙されないための警告書を作成した。そこには、具体的に北朝鮮の騙しの手口が書かれているが、よく読めば、これらの手口は、日本人や日本企業が中国投資で騙される中国式手法そのままである。
 では中国は、中国が騙され続け、それでも譲歩し続けてきた厄介な相手の北朝鮮をどのように分析しているのか。中国最高レベルの軍事大学である国防大学は、旅団長もしくはそれに準ずる軍事参謀、そして高級軍事研究者しか入学が許されないエリート養成施設だ。同大学が核を保有した北朝鮮を分析しているのを見ると、結論は、「中朝間の軍事的衝突は不可避」「中国は朝鮮との戦争に備えなければならない」というものだった。

国益のための敵情分析とは

 北朝鮮の核は韓国の朝野の支持を得ているのであり、それは将来、中国及び日本と対等に渡り合うための切り札であると位置づけて、朝鮮半島情勢の推移に並々ならぬ警戒心を抱いているのだ。
 核をもった北朝鮮が脱中国化を進めるいま、中国が「親朝反米」路線をとることはあり得ず、むしろ米国と連携して北朝鮮を抑制することが得策だと結論づける。だが、このような中国の思惑とは反対に、06年以来、米国と北朝鮮の緊密化が進んでいるのも事実である。
 中国の朝鮮民族に対する思いは、北に対するそれと南に対するそれとでは本質的に異なる。「なぜか韓国に対しては嫌悪感と軽蔑の感情」が先立つというのだ。92年に中韓国交が樹立され、両国関係は改善されたにもかかわらず、中国人の心は韓国から離れていくと、次のように書かれている。「韓国人に対しては、最初こそ強い親しみを抱くが、その国を知れば知るほど嫌悪感に変わっていく」と。
 同書で分析される日本及び、日本人像も興味深い。たとえば、韓国人に対するのとは対照的に、中国人は当初は日本人に「非常に悪い印象を持つ」が、日本に少し滞在すると、印象は「だんだん良いイメージに変わり、ついには感服へと変化する」というのだ。


 中国共産党の現役官僚を中心とする複数の人物が「欧陽善」というペンネームで中国政府中枢部の握る機密情報を書いた本、『対北朝鮮・中国機密ファイル』は、北朝鮮、中朝関係、韓国、さらにはアジアのなかの日本への、中国人の見方を理解するうえで極めて役に立った、と書かれています。



 私もこの本は知っていますが、ペンネームで書かれた本の内容を、「どこまで信用してよいのか」が気になります。

 ペンネームで書かれているなら、「真実ではない可能性」を考えなければならないと思います (もちろん実名であっても信用に値しない場合もありますし、逆に仮名であっても信用に値する場合もあります。今回の場合、仮名であるからこそ信用に値する、と考える余地もあります) 。



 しかし、それを言えば、「中国共産党秘密文書「日本解放第二期工作要綱」」も偽物かもしれないし、「中国は「2012年の台湾統一」を目指している」という情報も虚偽かもしれないわけです。どちらも、「機密情報」に基づいていることには変わりなく、「機密情報」が実名で公開されることは (情報公開制度によって数十年後に公開される場合を除けば) まず考えられないといってよいでしょう。

 したがって、仮名による情報であっても、「それなりの信憑性がある」とみてよいのではないかと思います (もっとも、「わざと虚偽の情報を流す」という「作戦」もあり得ることから、「公開情報」や「たしかな情報」との整合性に気を配りつつ、匿名による情報の信憑性を判断するに越したことはありません) 。



 著者(櫻井よしこ)が「どのように読んだのか(単純に信用してしまったのか)」は、私にはわかりませんが、この本の内容が検討に値することはたしかだと思います。

 機会があれば、引用・検討したいと思います。

東シナ海問題と国際ルール

2011-02-04 | 日記
櫻井よしこ 『異形の大国 中国』 ( p.308 )

 東シナ海問題について、日本側は中間線を以て日中の海の境界線とすべしとの立場だが、中国側は中国の大陸棚は沖縄トラフまで続いており、そこまでが中国の海だと主張する。中国説では、わが国固有の領土の尖閣諸島も中国領になる。

(中略)

 国際社会における海上境界の線引きを見れば、中間線を主張する日本のほうが圧倒的に正しい。1980年代から現在までの約30年間、国際社会は中間線を基本として係争海域の問題に決着をつけてきた。
 たとえば地中海に浮かぶ美しい島国マルタとリビアの海上境界線は1985年に「等距離原則」で決着した。このときの合意、国際司法裁判所による「リビア・マルタ大陸棚境界画定事件判決」では、「海底の地質学・地質構造学的特性は各国の権原の証明に無関係」とも定めた。つまり、大陸棚がずっと続いているから、大陸棚の端まで全てを自国の海とする中国式主張は認められないという判決だ。
 但し、調整の余地はある。それが海岸線の長さである。リビアの海岸線はマルタのそれよりもかなり長い。その分を配慮して、中間線を少し北に移動し両国の境界と定めた。同判決はその後の判例にも影響を与えた。以降の海域境界の画定は93年のデンマークとノルウェー、99年のエリトリアとイエメンなど、いずれも中間線を基本としてきた。
 境界線が画定出来ないときも、国際社会は係争海域での共同開発についての一般的ルールを築き上げてきた。原則は均等なる分配である。
 たとえばマレーシアとタイは1979年及び90年に係争海域での共同開発に合意し、利益は正しく二分すると合意した。89年にはオーストラリアとインドネシアが、92年にはマレーシアとベトナムが同様の合意をした。
 無論、"均等" ではないケースもある。02年のナイジェリアとサントメ・プリンシベの合意は6対4の分配だ。02年のオーストラリアと東ティモールは1対9だ。それでも、互いに分け合うことを基本にしているのが国際社会の現状である。中国には国際社会の主流を成すこの種の解決法を尊重する姿勢が見られない。


 中国には国際社会のルールに従おうという姿勢が見られない。東シナ海問題は、国際ルールに基づいて解決されるべきである、と書かれています。



 著者の主張はもっともだと思います。

 しかし、それならなぜ、日本は「国際司法裁判所」による判決を求めないのでしょうか。著者は「日本は国際司法裁判所に訴えて解決すべきである」と主張してもよいはずです。なぜ、著者はそれを主張しないのでしょうか。

 「話し合い」が進まない以上、日本としては「国際司法裁判所に訴える」ことが現実的な選択肢であるはずです。このまま、中国側が態度を変えるのを待ち続けるというのは、すくなくとも合理的ではありません。



 もちろん裁判をすれば、「新しい原則」が裁判所によって判示されることもあり得ます。したがって「日本の主張が通らず、中国の主張が正しいとされる可能性もある」わけですが、その可能性はかなり低いとみてよいと思います。

 というか、「次第に中国の国力が増しつつある」現状を考えると、「早く訴えなければ、ますます中国の主張が通りやすくなる」のではないでしょうか。裁判所の判決にも、そのときの国際情勢 (国家間の力関係) が影響してくるのではないかと思います。



 日本が訴えない理由は、おそらく、日本は中国に「配慮している」からだと思います。しかし、「日本国民の総意で」配慮を続けているのであればともかく、そうではない以上、「日本の国益を犠牲にして中国に配慮し続ける」のは、「おかしい」と考えなければならないと思います。

 昨年の尖閣諸島沖事件における日本国内の世論を考えれば、まず間違いなく、ほとんどの国民は中国に配慮し続けることは望んでいないと考えられます。中国側がガス田開発を続けているなか、無視されるとわかっていて「中止要請」を続け、日本側の資源までもが吸い取られてもなお、「話し合い」を求め続けることを望む日本国民は、「ほとんどいない」はずです。

 どうして日本は中国に「配慮し続けている」のでしょうか。おかしいと思いませんか?

中国、空母の実戦配備寸前

2011-02-03 | 日記
櫻井よしこ 『異形の大国 中国』 ( p.283 )

 2007年6月19日、参議院外交防衛委員会で民主党の浅尾慶一郎議員が興味深い質問を行った。5月12日の「ボイス・オブ・アメリカ」(VOA)で、キーティング米国太平洋艦隊司令官が中国の空母建設に米国は手を貸す用意があると発言した件についてだった。
 キーティング司令官は「もし中国が航空母艦建造計画を進めるのであれば、彼らが望むレベルまで、また我々が可能なレベルまで助力するであろう」と5月12日の記者会見で発言した。キーティング司令官は同会見に先立って呉勝利(ごしょうり)中国海軍司令官と昼食を共にし、その席で空母の建設や維持の複雑さと困難について中国側に詳しく説明したそうだ。
 右のVOA放送から1か月と1週間後に、浅尾氏が質問したのだが、外相も防衛相もキーティング発言については全く知らなかったと答えた。同発言への認識を質問されて、久間章生防衛相は「何ともコメントしようがございません」と答えている。
 久間防衛相はさらに、中国に対しては空母の保有は莫大な維持管理費を要すること、限られた予算のなかで一方を確保すれば他の分野を削ることになると伝えてきたことなどを紹介し、「これから先、注目していこうとは思っております」と答えた。
 なんと的外れの反応であろう。キーティング司令官や久間防衛相が指摘する莫大な予算の必要性などは、中国は疾う(とう)の昔に承知である。言っても意味のないことは言わぬがよいのである。
 空母についての中国の考え方はすでに明確にされている。1989年3月17日の『解放軍報』は、中国が空母を保有することは中国の経済力・技術力の問題ではない、中国の国益の問題であるとして、次のように書いている。
「今世紀の初頭に艦載航空兵が出現して以来、海洋制空権がなければ制海権はないこと、制海権は海洋制空権と一つの統一体をなしていることが実戦により証明されている。艦載航空兵は海軍航空兵の主体であり、航空母艦は艦載航空兵が欠くことのできない活動基地である。航空母艦が必要であるかどうかは、装備建設の問題でなく、つまるところ海洋制空権を必要とするかどうかの問題である」(『甦る中国海軍』)

★台湾併合後も見据えた中国

 空母を持つことは、コストや経済を超えた中国の大国家目標なのだ。中国問題の専門家、平松茂雄氏が語る。
「中国は1970年代半ばにすでに南シナ海の西沙諸島に手を伸ばし、中国領土としました。当時から強力な海軍力の構築、そして空母保有への野望は明らかでした」
 中国が南シナ海の島々全て、南沙、西沙、中沙、東沙の各諸島全てが中国領土だと宣言したのは1974年1月11日だった。続く1月17日、彼らは南ベトナム軍を攻撃し1月20日には西沙諸島を支配下に入れた。
 表向きは中国とベトナムの戦いだったが、背景にはソ連海軍のアジア進出と、それに断固対抗する中国の決意があった。当時、米国はベトナム戦争で苦戦し、英国も60年代後半にはスエズ運河以東から撤退していた。ソ連はその機に乗じてインド洋に進出し、勢力を拡張していたのだ。
 ソ連太平洋艦隊がマラッカ海峡を通過するようになり、閉鎖されていたスエズ運河の通航が再開されようとする状況を、中国は脅威ととらえ、1974年5月12日の『人民日報』は次のように報じた。
「(スエズ運河の再開によって)黒海から紅海、インド洋、ペルシア湾にいたる(ソ連の)海上補給線は1万1000マイルから2000マイルへと短縮され、かつソ連のインド洋における海軍力を一歩強めさせる」
 中国の対ソ恐怖心は募り(つのり)、ソ連に対抗するために79年1月に米国と国交を樹立した。当時の中国は、日本に対してもソ連の脅威に備えるために軍事費をGNP比1%から2%に倍増すべしと勧めていたほどだ。
 そして85年、中国は豪州から空母「メルボルン」(1万6000トン、55年就役)を購入、暫くして一般に公開した。平松氏が語る。
「ウクライナから購入した空母ワリヤーグも、中国は公開しました。空母保有への意図を見せつつも、直ちに空母建造に取りかかる段階ではないことを知らしめ、国際社会に不必要な疑念を抱かせないようにと、考えているのです。しかし、彼らはメルボルンの隅から隅まで眺めたはずです。他国にとってどれだけ老朽化したものであろうと、中国軍人にとっては初めて目にする空母です。必要な知識を全て吸収したうえで、スクラップにしたはずです」
 中国の空母購入に国際社会は「老朽艦にすぎない」などとして冷ややかだった。この冷めた見方も、ある意味で中国の狙いでもある。
「中国は慎重です。彼らは空母保有を悲願としてはいますが、当面の目標は台湾併合です。それを達成するまでは空母は必要ではないし、保有しないと、私は思います」と平松氏。

★「作戦対象は、米国と日本」

 だが、台湾を手に入れたとき、状況は大きく変換する。中国は南シナ海、東シナ海から一挙に西太平洋を手中におさめ、太平洋及びインド洋を望む立場に立つ。西太平洋を挟んで、米国と対峙する構図だ。それが中国の長期戦略である。太平洋全体の制海権を手にしようと考えるからこそ、彼らは日本の領土である沖ノ鳥島を島と認めず、その周辺を日本の領海とも排他的経済水域とも認めずに海洋調査を繰り返してきた。米海軍と覇を競うには、まずその海域を熟知しておくことが必須条件である。
「台湾を奪ったとき、中国は初めて空母を駆使して西太平洋から外洋へと展開するはずです。そのときに備えて彼らは空母を建造し外洋海軍の精鋭を育てるでしょう。その時期は2020年から2030年以降、遅くとも建国100年にあたる2050年頃だと考えます」(平松氏)
 この際、中国軍の最高教育機関である中国国防大学がまとめた「2010年の中国国防計画」を、日本人は心に刻んでおくべきだろう。そこにはこう書かれている。
「2010年以前に、中国が航空母艦を就役することはない。だが日本の『おおすみ』級の揚陸艦に似た準空母を建造して、空母建設、使用経験を蓄積し、水陸両用作戦の要求に応じることはできる」「今後十年の中国の主要な作戦対象は、台湾と台湾海域に介入する可能性のある米国と日本である」
 日米両国を当面の敵としたうえで、右計画はこうも記す。「(対日米の)作戦には陸地発進の戦闘機で基本的に任務は達成できる」
 中国軍の自信過剰なほどの姿が見えてくる。だが、中国の空母建造に手を貸してもよいと語る米軍司令官や、その重要発言を1か月以上も知らずにいた日本の防衛相の迂闊さを見れば、中国が自信を持つのも当然なのである。


 中国の国防計画によれば、「2010年以前に、中国が航空母艦を就役することはない」が「日本の『おおすみ』級の揚陸艦に似た準空母を建造して、空母建設、使用経験を蓄積し、水陸両用作戦の要求に応じ」ることになっている。「中国の主要な作戦対象は、台湾と台湾海域に介入する可能性のある米国と日本である」とも書かれている、と書かれています。



 米軍のキーティング太平洋艦隊司令官の発言、
「もし中国が航空母艦建造計画を進めるのであれば、彼らが望むレベルまで、また我々が可能なレベルまで助力するであろう」
については、
どこまで本気なのかわからない
ので、ここではとりあえず、考えないことにします。

 今回、取り上げたいのは、中国の意志です。
1989年3月17日の『解放軍報』は、中国が空母を保有することは中国の経済力・技術力の問題ではない、中国の国益の問題であるとして、次のように書いている。
「今世紀の初頭に艦載航空兵が出現して以来、海洋制空権がなければ制海権はないこと、制海権は海洋制空権と一つの統一体をなしていることが実戦により証明されている。艦載航空兵は海軍航空兵の主体であり、航空母艦は艦載航空兵が欠くことのできない活動基地である。航空母艦が必要であるかどうかは、装備建設の問題でなく、つまるところ海洋制空権を必要とするかどうかの問題である」(『甦る中国海軍』)
ということなので、中国側は、間違いなく空母を持とうとしていると考えてよいでしょう。



 さて、今年は2011年、つまり2010年を過ぎています。

 「2010年以前に、中国が航空母艦を就役することはない」ということは、そろそろ空母の実戦配備が近いのではないか、と考えられます。



グーグルアース・都市伝説先生とおもしろ画像」の「中国の湖に浮かぶ空母・グーグルアースおもしろ画像

中国国内の湖に浮かぶ空母です。
何かのアトラクションでしょうか?
それにしても巨大です。観光客とか来てるのでしょうか?
テレビなどでも、あまり見たことがありません。
一体どうして内陸の湖に空母を浮かべようと思ったのか?
これを考えた中国人のアイデア、発想、着眼点に脱帽です。

●中国の湖に浮かぶ空母

31° 6'18.01"N, 121° 0'50.41"E


 上記の座標、「31° 6'18.01"N, 121° 0'50.41"E」を指定して「Google マップ」で衛星写真を見ると、

   陸地の真ん中にある湖に、空母が造られている

ことがわかります。おそらく、中国はここで空母を「造る練習」や「乗組員の練習」「艦載航空機離着陸の練習」を続けてきたのではないかと思います。

 中国は将来に備え、
  1. 「一気に」空母を造って
  2. 「熟練した乗組員」を乗せて、
  3. すぐに実戦で使えるように  準備をしてしてきた
のでしょう。上記ブログ主とはすこし違う意味で、「これを考えた中国人のアイデア、発想、着眼点に脱帽です。」



 そして、ついに中国空母の動画がネットにアップされたようです。



ウォール・ストリート・ジャーナル 日本版」の「【ブログ】中国初の空母とされる映像がネットに登場」( 2011年 2月 1日 17:59 JST )

 中国の次世代ステルス戦闘機が試験飛行する映像が公開され、世界に衝撃が走ってから1カ月足らずで、中国初の空母とされる映像がインターネットにアップされた。

 映像は、中国が1998年にウクライナから購入した「ワリャーグ」のようで、改修作業が行われている中国北東の大連造船所内を移動中のものとされる。

 この粒子の粗い映像の撮影年月日や撮影者は不明。米軍関係者は、同空母が今年か来年に就役するとみているが、映像では空母の性能など新情報は示されていない。

 先週末にネットにアップされて以来、この動画は75万以上のページビューを稼ぎ、中国の軍事オタクの間で話題になっている。

 中国当局は、軍事施設付近の警備を強化し、政治的に微妙な題材はネットでのアクセスをブロックするか削除するのが普通。ネット掲載者の身柄を拘束することもある。

 しかし、当局はこの種の映像の視聴を容認しているようだ。ステルス戦闘機「殲20(J20)」の映像もネットで見られるようにしたのは、外国に対し中国の軍事力を誇示するほか、民族主義的な傾向を強めている国内の視聴者にも印象づけようとする狙いもあるようだ。

 中国は今後国力を誇示するとみられるが、空母は中国軍近代化推進の中核部分と考えられている。

 軍事専門家によると、「ワリャーグ」(艦名は「施琅」と改名されているとみられる)は、将来の国産空母の配備に備え、パイロットや航空機の訓練用の浮かぶプラットフォームとしてのみ利用される可能性がある。

 これら国産空母の少なくとも5隻は2020年代に配備されるとみられる。同空母には、ロシアが売り込みを目指しているSu33戦闘機か、Su33戦闘機の中国版(昨年サイトにアップされた)が積載される。

 米当局者によると、中国は対艦弾道ミサイル(ASBM)も配備するとみられるため、米国は台湾など地域紛争に中国が介入するリスクの再検討を迫られることになる。

 米国は1996年、中国が台湾沿岸沖にミサイルを発射したことを受け、空母2隻を台湾海峡に急派した。昨年も北朝鮮が韓国領島を砲撃したため、中国から抗議があったが、米軍は韓国軍と合同軍事演習を実施した。

 マカオに拠点を置く企業が1998年、カジノに改装するとしてエンジン、兵器、航行システムのない「ワリャーグ」を2000万ドルで買い取った。2000年に中国に向かったが、トルコ当局が大き過ぎるとしてボスポラス海峡の通行を認めず、1年余り黒海で足止めされた。結局2001年に通行を許可された。

 しかし、「ワリャーグ」はマカオではなく大連にえい航され、以来改修作業が進められていた。ここ数年、同空母とされる映像がネットでアップされたが、改修作業が大幅に進んでいることが示された。

 カナダで発行されている軍事専門誌カンワ/アジアン・ディフェンス(電子版)によると、同空母の居住・作業区間、エンジン、航行システム、発電装置などの改修は今月でほぼ終了したという。昇降機や飛行甲板など追加作業はまだ必要とされる。ただ、作業がいつ完了するかは不明という。

 追記:読者の指摘により、空母映像の最後の部分は、1995年に就役したロシアの空母アドミラル・クズネツォフに似ているという。

記者: Jeremy Page


 中国初の空母とされる映像がインターネットにアップされた。映像は、中国が1998年にウクライナから購入した「ワリャーグ」(艦名は「施琅」と改名されているとみられる)のようで、改修作業が行われている中国北東の大連造船所内を移動中のものとされる。カナダで発行されている軍事専門誌カンワ/アジアン・ディフェンス(電子版)によると、同空母の居住・作業区間、エンジン、航行システム、発電装置などの改修は今月でほぼ終了したが、昇降機や飛行甲板など追加作業はまだ必要であり、作業がいつ完了するかは不明だとされている。今後、米国は台湾など地域紛争に中国が介入するリスクの再検討を迫られることになる、と報じられています。



 問題の動画はこれ(↓)です。

http://v.youku.com/v_show/id_XMjM5OTEzNzUy.html

 動画のなかで、空母が「動いている」ので、改修作業は「ほぼ終わっている」とみてよいのではないかと思います。



 「中国は「2012年の台湾統一」を目指している」とすれば、タイミングが一致します。つまり逆にいえば、中国は「2012年の台湾統一」を目指しているという情報が正しいことを示しているのではないかと思います。

 日本はいま、大変な状況になりつつあります。のんびりしている場合ではありません。



■追記
 再考しました。本当にグーグルマップに載っているのが「訓練施設」であるなら、空から見ればバレバレのところに中国軍が訓練施設を作っていることになります。中国はそこまでバカではないでしょう。したがって、あれは本当に「テーマパーク」だと考えるべきかもしれません。
 なお、空母の動画ですが、コメント欄に「これが空母?」という書き込み(中国語)もあったので、その旨付記します。