言語空間+備忘録

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年金給付減額の論理

2009-05-20 | 日記
吉川洋 『構造改革と日本経済』 (p.138)


 年金給付の抑制(カット)を行う際に考慮しなければならない大切なポイントは、「高齢者は非常にばらつきの大きい集団だ」ということである。二〇代の人一〇〇万人をみると、経済力、健康などのばらつきは小さい。これに対して六〇代、七〇代の人一〇〇万人では経済力、健康のばらつきが非常に大きい。「平均的」な給付水準をカットする際、この事実が十分に考慮に入れられなければならない。具体的には経済的に恵まれた富裕な高齢者の給付カットを大きくし、逆に低所得層の給付カットは小さくなるような制度改革を行う必要がある。現在議論されている年金の所得税法上の優遇措置の見直しは、こうした理念からみても望ましい方向だと言える。
 ここで公的年金の意義について改めて考えてみると、給付には二つの異なる性格があることに気づく。一つは現役時代に積み立てた見返りとして一定年齢に達したとき当然受け取るべき「権利」(entitlement)としての側面である。通常は年金の給付としてこの側面だけが考えられている。
 しかしもう一方で公的年金には高齢になったときの健康や経済力が不確実であることに対する「保険」(insurance)としての側面もある。第二の側面からすれば一定の年齢に達しても健康で経済力が十分にあれば満額の給付を受けなくてもよいだろう。こうした考え方も成り立つはずだ。年をとっても元気で経済力のある人は、あたかも火災保険に入って家が焼けなかった人と同じだと考えるのである。


公的年金の給付を抑制(カット)しなければならない、という結論がさきにあり、あとから根拠を考えていると思われるところがひっかかりますが、説得力があります。

経済力をもつ高齢者も彼らの経済力に対して、「相対的にわずかな」給付カットに (さほど) 不満はないだろうと思われます。