宇宙論、ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論

ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論 etc etc

その6-2・ブラックホールの寿命計算

2023-04-29 03:13:55 | 日記

さて次は『4、通説の寿命式は「BHは静止していて動かない」という前提で計算されている。

しかしながら実際はBHはホーキング放射を出す事で動き回るのである。

そうなると「動いているBHと発生した仮想粒子の衝突~吸収」というプロセスでBHが仮想粒子を取り込み、ホーキング放射をだすことになる。

その場合BHは運動量とエネルギーの保存則を満たしながらホーキング放射を出さなくてはならない。

そうして、通説の寿命式はその事を考慮していない。

それを考慮すると、プランクスケールまで縮小したBHが出せるホーキング放射のエネルギーに相対論による制限がかかることになる。』についてです。

まずはBHがホーキング放射を出して、その反動で動き回る事については「・その4・ ホーキング放射のメカニズム 」で示しました。

プランク質量程にBHが小さくなるとホーキング放射で光速の10%を超える速度で動き回る事になります。

このホーキング放射の反動で動き回る事は、質量が太陽質量を超えるようなBHでは問題にならないでしょう。

しかしながらプランクスケール近傍まで軽くなったBHでは無視できない影響があります。

さてそうなりますとBHは今度は無視できない程の運動量を持ちながらホーキング放射を出す事になります。

 

それでこの時にこの動き回るBHを記述するのはもちろん特殊相対論によらなくてはなりません。

そうして相対論による記述を可能にする為には適切な慣性系をBHが運動する状況を記述する為の座標系として選ぶ必要があります。(注1)

 

さてそのようにしてBHがホーキング放射を出す事で動く、あるいは動いているBHがホーキング放射を出す、と言う状況については運動量保存則とエネルギー保存則が満たされている事が必要です。

その状況についてはすでに「・その2・ ホーキング放射のメカニズム」で示しました。

そこでは次の3つの段階について、それぞれの状況でエネルギーと運動量の保存則が満たされている事が説明されています。

1、真空が仮想粒子ペアを生み出す前

2、仮想粒子ペア誕生後、BHがホーキング放射を出す前

3、BHがホーキング放射を出した後

BHがホーキング放射を出す状況は1、に始まって3、で終わり、そうしてまた1、に戻って3、に進む、それを繰り返している事になります。

しかしながらそのいずれの段階に於いても系のエネルギーと運動量は保存されているのです。(注2)

 

以上の事を前提として本論ではBHのホーキング放射の状況を計算していく事になります。

そのようにしてホーキング放射を定式化した時にはたして通説がいう様に「BHの最後は爆発して消え去る」事になるのであろうか?

それがこの報告のテーマとなります。

そうしてそれはまたホーキングが言う様な「ホーキング放射を制約する条件はない」という主張を確認する事にもなります。(注3)

 

さてそれで実際にその計算を行う事でホーキング放射が発生する条件が定式化できます。

そうしてこれ以降、そのようにして定式化されたホーキング放射が発生する条件を示す式を「ホーキング放射の一般解」と呼ぶ事に致します。

 

注1:つまり「BHが動く」と言った時に「いったいどの慣性系に対して動いているのか」が問題となるのです。

この問題はそれ自体で大変に重要な事柄を含んでいるのですが、ここではその事に対して深入りする事はしません。

そうしてここでの適切な座標系の選び方=適切な慣性系として採用するものは「BHがホーキング放射を出すことで宇宙の運動量の合計は変化しない」、それはつまり「ホーキング放射は運動量保存則を満たすように起こる」という事を指摘しておけば十分でしょう。

従ってここで設定されている慣性系は「ホーキング放射が運動量保存則を満たす慣性系である事」を条件として設定されている事になります。

注2:以上の内容の詳細につきましては「・その2・ ホーキング放射のメカニズム」を参照願います。

注3:ホーキングは明示的にはそのようには主張してはいません。しかしながら実際はホーキングもBHの寿命を計算しており「BHの最後は爆発して消え去る」と主張しています。

そうであればホーキングは「BHが存在した場合はホーキング放射を制約する条件は何もない」という主張をしていると見なす事が出来ます。

 

追記:黒体放射近似の限界について

前述した1から3番までの制約条件はいずれも黒体放射に基づく寿命式の導出そのものに異議をとなえるものではありませんでした。

そうして黒体放射では放射は連続して起きるものである、として扱っています。

しかしながらホーキング放射は基本的に離散的に起きる現象です。

従って黒体放射の連続近似はBHの質量がプランクレベルに近づくにつれて成立しなくなります。

その限界がどのあたりにあるのか確かめておきます。

 

ここまでの話はBHを黒体とみなした、黒体放射を前提としたものでした。

そうして黒体放射そのものは一つ一つの発生してくる光子に注目するならば明らかに離散的な現象です。

しかしながら短時間に多くの光子が黒体温度に対応したプランク則に従って発生する為にそこでは統計的な扱いが可能となっています。

そうしてその様な状況を前提として通説の寿命式は成立しています。

しかしながらBHの質量がプランクスケール近傍にまで小さくなりますと、ホーキング放射を黒体放射で前提としていた統計的な扱いが出来なくなります。

それはつまりはプランクスケールでの現象を記述する時間単位はプランク秒である、という事の別の表現でもあります。

そうしてプランク秒の目でプランクスケール近傍にまで到達したBHのホーキング放射を観察するならば、それは個々のホーキング放射が全体としてはホーキング温度に対応したプランク則が与える確率分布に従うのですが、一つ一つのホーキング放射はランダムに発生している、ととらえる事になります。

そうであればそのレベル以降のBHの寿命の推定は黒体放射を基礎とした通説の寿命式に従うのではなく、ランダムに発生するホーキング放射をシミュレートした計算が必要になるのです。

 

追記の2:通説の寿命式ではホーキング放射を制約する条件は何も無い事になっています。

その為にその寿命式はBHに質量がある限りホーキング放射が可能である、という前提にたっています。

しかしながら個々のホーキング放射を見ていった場合、BHの質量がプランクスケールにまで到達するとそこでは相対論による制約がかかってくることが分かります。

その制約はBHが運動している方向とそこに飛び込む仮想粒子の方向に関係し、そしてその仮想粒子が持っているエネルギーに関係します。

それで仮想粒子のエネルギーに注目するならば、その制約条件はローパスフィルターになっている、と言えます。

つまりは「所定のエネルギーより高いエネルギーを持つ仮想粒子はホーキング放射を起こさない」という事がわかるのです。

そうしてその事はプランクスケールに至るまではプランク則を満足する形で黒体放射の分布をしていたホーキング放射スペクトル分布がもはや黒体放射ではなくなる、という事を意味しています。

つまり「プランクスケールまで到達した以降のBHの寿命は黒体放射に基礎を置く通説の寿命式では計算できない」という事になるのです。

 

追記の3:実はホーキング放射のスペクトル分布がプランク則からずれている、という話は1番目の制約条件、それは「ホーキング放射はホライズン直近の場所からのみ発生するのではなく、ホライズン上空に広がっている空間からも発生する」という「多層空間放出モデル」からも出てくる結論です。

その状況を簡単に言えば「ホライズンから離れた場所で仮想粒子が対生成する事を認めるモデル」ですので「対生成場所がホライズンから離れるに従ってその場所のホーキング温度は低下します。」

そうであればホーキング放射のスペクトル分布は単一のホーキング温度に対応したものではなく、多層に重なっているホーキング放射が発生する場所のそれぞれのホーキング温度に対応した黒体放射スペクトルが重なったものになると予想されます。

 

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧

https://archive.md/Ul0dU

 

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6-1・BHはマイナスエネルギーにジャンプするのか?

2023-04-26 06:07:04 | 日記

通常の寿命式は非相対論的エネルギー保存則のみを考量した形になっています。(注0)

そうしてまたBHの特性は「質量が減少すればそれだけホーキング温度は上昇する」のです。

そうであれば通常は「ホーキング放射でBHの質量が減少すればするほど、ホーキング放射によるエネルギー放射量は増える」となりこれが「BHは最後に爆発して消え去る」という解釈につながっています。

しかしながら「個々のホーキング放射のエネルギー量はその時のホーキング温度の制約は受けますが、ランダムに決まる」という条件を通説に加えますと「最後にBHを消し去るのにちょうどぴったりのエネルギーの放射はほとんど起こらない」という事になります。(注1)

それでその時に「BHの質量を越えるエネルギーの放射は通常の寿命式では禁止されていない」のですから最後に起きるホーキング放射のエネルギーがBHの質量を越えていた場合はBHのエネルギーはマイナスに落ちる事になります。

 

「BHの質量がマイナスになる?どういうこと?」という声が聞こえます。

BHはホーキング放射でエネルギーをBHの外に出し、その結果、自分自身の質量を減らします。

これが通説の寿命式が前提としている考え方です。

それで「BHの質量はホーキング放射を出す事で質量ゼロを目指すのですが、最後に起きるホーキング放射のエネルギーがその時のBHの質量を越えていた場合は、BHの質量はゼロを飛び越えてマイナスに落ちる事になる」のです。

そうして「その様な事が起きる確率は?」といいますれば「通説の寿命式に従うならばほぼ100%そうなる」といえます。

これが通説の寿命式に「個々のホーキング放射のエネルギー量はその時のホーキング温度の制約は受けるが、ランダムに決まる」という条件を加えた結果、出てくる「とても魅力的に思える結論」です。(注2)

 

さてしかしながら残念な事にそこで通説が使っている非相対論的エネルギー保存則にかえて相対論的なエネルギー保存則を導入しますと「BHはホーキング放射によってはマイナスエネルギーにジャンプする事はできない」という結論に導かれます。(注3)

それは実は「相対論的なエネルギー保存則がホーキング放射が起こりうる条件を決めているから」なのです。

そうしてその事を通説では見落としていたのです。(注4)

この「相対論的なエネルギー保存則による制約」はBHの質量がプランクレベルに比較して大きい場合はほとんど問題になりません。

それはBHがホーキング放射放出の反動で動き回る速度がほとんど無視できるからですね。

しかしながらBHの質量がプランクスケールになりますとBHがホーキング放射の反動で動き回る事は実質的にホーキング放射を制約し始めます。

そうしてその制約によって「BHの質量はホーキング放射ではマイナスにならない」=「ホーキング放射によって到達できるBHの質量はゼロ以上である」となります。

 

「ああそれならやっぱり通説が言う様に、BHの最後は爆発して消え去る=BHの質量がゼロになるのでは?」という声が聞こえます。

でもそこで考えなくてはいけない事は「プランクスケールに到達したBHのホーキング温度は相当に高くなっている」という事です。

そうであればその状態で発生する仮想粒子のエネルギー、それは結局ホーキング放射のエネルギーになるのですが、それも相当に大きくなります。

そうしてBHの大きさが1プランク長を越えて小さくなればその状況は一層ひどくなります。

つまり「ほとんどの発生してくる仮想粒子のエネルギーレベルがその時のBHの質量をこえる=その状態でホーキング放射が起きるとBHの質量がマイナスに落ちる」のです。

そうして「BHの質量がマイナスに落ちる事は禁止されている」のですから、BHはその条件ではホーキング放射を出す事が出来なくなります。

しかしながら黒体放射のプランク則にしたがって「たまには小さなエネルギーレベルでの仮想粒子の対生成が起きる」のです。

それでその場合には「BHはほんの少しばかりのエネルギーのホーキング放射をだし、そうしてわずかに質量を減らす」のですが、まだBHの質量はプラスのままでのこります。

 

さてこのようにしてBHは「決して到達できない質量ゼロを目指して無限回のホーキング放射を繰り返す」というシナリオが以上の定性的な議論の結論として見えてきます。

「その状況は」といいますれば「BHの最後は爆発して消え去る」という姿とは異なります。

「消え去る」のではなく「いつまでも消えない線香花火のようなBHの最後の姿がそこにある」という事になります。(注5)

 

注0:実はエネルギーと質量は同じものである、という相対論の結論は通説の寿命式の導出の中で使われています。

しかしながらBHが動き回る事によるBHがもつ事になる相対論的な運動エネルギーについては考慮されてはいません。

従ってここでは「通説の寿命式は非相対論的である」という言い方をします。

注1:この条件は通説の寿命式では「BHは黒体放射する」という前提の中にかくれて見えなくなっています。

しかしながらホーキング放射は離散的に起こる現象ですから、個々のホーキング放射エネルギーはランダムに決まります。

注2:たとえば「ダークマター・ホーキングさんが考えたこと・12・マイナス質量のBHについて」: https://blog.goo.ne.jp/rokusanasukor/e/0d5281fe4047edb5db92314c13e5ab7d : https://archive.md/XdjFY :にあるような「従来の物理通説をこえたマイナス質量のBHの誕生」と言うような「とてもわくわくするようなシナリオ」が見えるのです。

ちなみに通説の寿命式、およびホーキング放射そのものの定式化の中からは「BHはホーキング放射ではマイナスエネルギーに落ち込まない」という規制条件はでてきません。

ホーキングが提示した通説ではどこにも「BHはホーキング放射ではマイナスエネルギーにジャンプできない」と禁止する物理的な条件はないのです。

そうしてマイナスエネルギーにジャンプしたBHはホライズンを持ちませんので「そうなって初めてこのBHのホーキング放射は止まる」というのが「通説の寿命式が言外に言っている内容」となります。

それに対して「実際に存在する黒体放射の場合」は「黒体が放射を出す事で黒体そのものの温度が下がります」から、「温度低下に従って自動的に黒体放射は止まる」のです。

しかしながら「BHの場合はホーキング放射を出す事でホーキング温度が上昇する」ので通常の黒体放射がもつ「自動的に放射が止まる機構」が働きません。

その為に通説に従った場合はBHは質量ゼロ点をこえて熱暴走し、質量がマイナスになって初めてホーキング放射が止まる事になるのです。

注3:そこまでの議論詳細は「ダークマター・ホーキングさんが考えたこと・26・BH(ブラックホール)は消滅可能なのか?(4)」: https://blog.goo.ne.jp/entangle1/e/8491f78a71dc2c1d125f7363c1e842c0 : http://archive.fo/yGpMa :を参照願います。

注4:・その4・ ホーキング放射のメカニズム : https://archive.md/QtHPd :で示しました様に「BHはホーキング放射を出す事で動き回る」のです。そうして通説の寿命式はこの事実を見落としています。

あるいはプランクスケール到達以降のBHの挙動は無視して「そこまでいったらBHは消えたと同じだ」と主張している事になります。

そうであれば通常の寿命式は「プランクスケール到達以降のBHの挙動を無視した近似式である」と言う事になります。

そうして通説の寿命式が禁止していなかったBHのマイナスエネルギーへのジャンプは「相対論的エネルギー保存則により禁止」となりますが、それは又通説の寿命式に反してBHの寿命を無限に伸ばす事にもなるのです。

注5:その姿は前の章で示した「ホライズン上空に1プランク長だけホーキング温度の計算地点を上げた場合の結論」と似ています。

そうして同じような結論=「BHはホーキング放射では消滅しない」に至るのですが、前提としている条件は異なっている事に注意が必要です。

 

追記:注意すべきはここでの議論は「1プランク長を越えて小さくなったBHには何ものも入れない=それ以降はこのBHはホーキング放射を出さない」という「当方が従来から主張している制約条件は外している」という点です。

その制約条件は「仮想粒子を含めて素粒子は有限の大きさを持つ」という前提に立ちます。

そうしてこの「素粒子は有限の大きさがある」という前提そのものの確からしさは「ホーキング放射は未だ確認されてはいないが確かに存在する」という確信よりも高い確信をもって業界では認められている内容です。

それに対して「BHのホライズン直径よりも大きな仮想粒子はBHの中には入れない」という前提は「なるほど、妥当な仮説の様に見えます」がそのレベルは「妥当に見える」という程度であって「業界で広く認められている」というものではありません。

それは一つの前提として「そのような仮説が想定できる」という程度のものです。

 

さてしかしながらエネルギー保存則の相対論版である「相対論的なエネルギー保存則」というものは今では「物理学そのものの基礎を構成している」と言えるものです。

それは上で述べた「ホーキング放射は存在する」とか「素粒子は有限の大きさを持つ」とかいう主張に対して物理学者が持つであろう確信よりもさらに基本的な確信になっています。

さてそれで「その基本的な法則である相対論的なエネルギー保存則によってホーキング放射が制約される」という状況は「発生してくる仮想粒子が点粒子であろうが有限の大きさをもつ粒子であろうが、そんな事には関係なく成立している事」になります。

つまりは「今の物理学に何の推定や仮定を加える事もなく」、その上で「もしホーキング放射という現象がホーキングがいう様なプロセスで発生するならば、その現象は相対論的なエネルギー保存則と運動量保存則の制約を受ける」という事になります。

そうしてその時に「BHはどこまでもホーキング放射によって小さくなれる」という通説の寿命式が主張する立場に立った場合でもそこから出てくる結論は「BHは質量がホーキング放射でゼロになって消滅する」と言う「従来から言われているもの」ではなく、「BHはホーキング放射では消滅しない」という結論になるのです。

それを端的に言い表したものが:「ブラックホール(BH)の消滅不可能定理」:です。

それで以上の話のポイントは「BHはホーキング放射では消滅しない」というこの結論は今の物理学のよって立つ基礎の上に何かの新しい未確定な前提を追加することなく「ホーキング放射が存在してもBHはホーキング放射では消える事は無い、というロジックになっている」という所にあります。

従ってその結論はホーキング放射の通説の結論に対立していますが、それを越えて成立している「ホーキング放射の基本的な結論である」とみなす事ができます。

 

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧

https://archive.md/fCU7d

https://archive.md/hddWc

 

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その5-4・ブラックホールの寿命計算

2023-04-23 02:35:34 | 日記

2、修正された寿命式の導出

さて今度はホーキング放射が起きる場所をホライズンから上方に1プランク長だけ上げた場合の寿命式を、前のページの手順にならって導出します。

ホーキング温度Tは

T=1/(8*(pi)*M)ではなくて

T1=M/(2*pi*(2M+1)^2) に変わります。

これは前のページで導出済みの式からの引用です。

 

Stefan-Boltzmann の法則より温度 T,半径 r の物体が単位時間あたりに放つエネルギー E は

E=((pi)^2*T^4)/(60)*(4*(pi)*r^2)

Schwarzchild ブラックホールの半径 r は

r=2GM/C^2=2M

 および,温度 T は

T=1/(8*(pi)*M) ->T1=M/(2*pi*(2M+1)^2)に変更

但しホライズン上空に1プランク長、仮想粒子の発生場所を上げたのでBHの半径がそのまま黒体放射球の半径とはならず、1プランク長だけ大きくなります。

したがってrは

r=2M+1

 

これを代入して

E=((pi)^2*T^4)/(60)*(4*(pi)*r^2)

=((pi)^2*((M/(2*pi*(2M+1)^2))^4)/(60)*(4*(pi)*(2M+1)^2)

 

ウルフラムで簡約すると

(pi)^2*(M/(2*pi*(2M+1)^2))^4)/(60)*(4*(pi)*(2M+1)^2)

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=%28pi%29%5E2*%28M%2F%282%EF%BC%8Api%EF%BC%8A%EF%BC%88%EF%BC%92M%EF%BC%8B%EF%BC%91%EF%BC%89%EF%BC%BE%EF%BC%92%EF%BC%89%29%5E4%29%2F%2860%29*%284*%28pi%29*%282M%EF%BC%8B%EF%BC%91%29%5E2%29

答えは

M^4/(240*(pi)*(2*M+1)^6)

 

グラフで状況を確認します。

y=M^4/(240*(pi)*(2*M+1)^6) の0<M<4,0<y<0.000002 プロット

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%3DM%5E4%2F%28240*%28pi%29*%282*M%2B1%29%5E6%29%E3%80%80%E3%81%AE0%3CM%3C4%2C0%3Cy%3C0.000002%E3%80%80%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88

放出エネルギーは1プランク質量あたりまでは増加しますがその後は減少します。

そうして0.1プランク質量を切ったあたりからほぼゼロになってしまいます。

 

一応極大値も求めておきます。

y=M^4/(240*(pi)*(2*M+1)^6) の極大値

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%3DM%5E4%2F%28240*%28pi%29*%282*M%2B1%29%5E6%29%E3%80%80%E3%81%AE%E6%A5%B5%E5%A4%A7%E5%80%A4

M=1で1/(174960*pi) だそうです。

ちなみに通常の寿命式ではM=0で無限大に発散していましたが、こちらのケースではM=0でゼロになります。

その状況を示すグラフを追記に示します。(追記参照)

 

それで寿命式の導出に戻ると、ブラックホールが単位時間あたりに放つエネルギーを質量の欠損によるものとして

 E=M*C^2 より

 dE=dM*C^2 

C=1 なので

dE=dM

通説の導出手順に従って単位時間当たり(=1プランク秒あたり)のBHの質量減少率は

-dM/dt=E

=1/(15360*M^2*(pi))ー> M^4/(240*(pi)*(2*M+1)^6)に変更

変数分離をすると

-(240*(pi)*(2*M+1)^6)/M^4dM=dt

 

左辺をウルフラムで積分すると

-(240*(pi)*(2*M+1)^6)/M^4 の積分

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=-%28240*%28pi%29*%282*M%2B1%29%5E6%29%2FM%5E4%E3%80%80%E3%81%AE%E7%A9%8D%E5%88%86

とても長い式が解なので、式が必要な方はウルフラム出力から引用してください。

まあこれで一応、新しい寿命式が求まりました。

しかし見通しが悪い式です。

こんな式で寿命が計算できるのでしょうか?

 

そこで前のページで確認しておいた方法が役立ちます。

被積分関数を定積分すればそれが寿命を与える、というものでした。

やってみましょう。

 

(240*(pi)*(2*M+1)^6)/M^4 の0から3まで積分

実行アドレス 

https://ja.wolframalpha.com/input?i=%28240*%28pi%29*%282*M%2B1%29%5E6%29%2FM%5E4%E3%80%80%E3%81%AE%EF%BC%90%E3%81%8B%E3%82%89%EF%BC%93%E3%81%BE%E3%81%A7%E7%A9%8D%E5%88%86

答えは「積分は収束しません」です。

出力されたグラフを見ると分かりますが、BHの質量が1プランク質量を切ったあたりからカーブが上昇に転じています。

そうしてそのカーブは発散している模様で、従って積分は発散している、つまり答えは無限大なのです。

それは言い換えますと「BHの質量が1プランク質量を切った後のBHの寿命は無限」つまり「BHは消滅しない」とこの積分結果は教えているのです。

 

対比の為に以下に通説での寿命式の積分結果を示しておきます。

(15360*M^2*(pi)) の0から3まで積分

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=%2815360*M%5E2*%28pi%29%29%E3%80%80%E3%81%AE%EF%BC%90%E3%81%8B%E3%82%89%EF%BC%93%E3%81%BE%E3%81%A7%E7%A9%8D%E5%88%86

「積分の視覚的表現」があるので積分対象の関数と積分の状況が良く分かります。

それでグラフで青く色付された部分の面積が「3プランク質量のBHが消滅するまでの寿命」を表します。

そうして答えは434294プランク秒(但し「表示桁数を増やす」をポチります。)

 

3、通説の寿命式と修正された寿命式で1~3プランク質量での積分結果の比較(3プランク質量から1プランク質量にまで減少するのに必要な時間の比較)

通説の場合

(15360*M^2*(pi)) の1から3まで積分

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=%2815360*M%5E2*%28pi%29%29%E3%80%80%E3%81%AE1%E3%81%8B%E3%82%89%EF%BC%93%E3%81%BE%E3%81%A7%E7%A9%8D%E5%88%86

答えは 418209プランク秒

 

修正された寿命式の場合

(240*(pi)*(2*M+1)^6)/M^4 の1から3まで積分

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=%28240*%28pi%29*%282*M%2B1%29%5E6%29%2FM%5E4%E3%80%80%E3%81%AE%EF%BC%91%E3%81%8B%E3%82%89%EF%BC%93%E3%81%BE%E3%81%A7%E7%A9%8D%E5%88%86

答えは 1526135プランク秒

ざっと3.65≒3.7倍ほど修正された寿命式の方が寿命が延びています。

 

そうして問題は1プランク質量を切った後です。

通説では16085プランク秒でBHの質量はゼロになりますが、修正された寿命式ではそこからBHの寿命は無限になります。

 

ちなみに、ここで注意すべきは「以上の結果は通説の寿命式がホライズン上でホーキング温度を計算しているのに対して、単にホーキング温度の計算場所を1プランク長だけホライズンから上に持ち上げただけで、あとは何も変更していない」という所にあります。

にもかかわらずBHの寿命はホーキング温度の計算場所を1プランク長持ち上げただけで無限になるのです。

 

4、通説の寿命式についての考察

ここまでの議論によって通説の寿命式は以下の前提に立っている事が判明しました。

・素粒子の大きさはゼロである。(対生成した仮想粒子に大きさはない。)従ってホライズン面上を仮想粒子の発生ポイントとして指定できる。

・発生した仮想粒子は大きさがゼロである為に、どれほどBHが小さくなってもそのBHに仮想粒子は100%の確率で飛び込むことができる。(つまり、消滅寸前のBHがどれほど小さくてもそれはBHとして存在し、そこに仮想粒子が飛び込む事でホーキング放射が発生する。)

・BHはホーキング放射を出しても運動しない。(BHはホーキング放射を出す事による運動量をもたない。したがって運動エネルギーを考慮しない非相対論的エネルギー保存則だけを考慮すればよい。)

以上の前提に立つ事によって通説では「BHはホーキング放射を出す事で最後は爆発して消え去る」という結論に至っています。

しかしながら実際には上の3つの前提はプランクスケール以降のBHと仮想粒子についての物理的な状況を正しくとらえたものとはいえません。

そうであれば「通説の寿命式はプランクスケール以降のBHとホーキング放射の状況を無視した近似式である」と言えます。(注1)

 

注1:実は通説の寿命式はもう一つ無視できない暗黙の前提を持っています。

それは「BHが最後の瞬間にホーキング放射を出す事でマイナスエネルギーにジャンプする事なく質量をゼロに出来る」と「妥当な理由を示すことなく想定している事」です。

それで、その事については次のページで詳細に検討する事と致しましょう。

 

追記:通説と修正された寿命式でのエネルギー放出カーブの比較

y=M^4/(240*(pi)*(2*M+1)^6),y=1/(15360*M^2*(pi)) の0<M<6,0<y<0.000006 プロット

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%3DM%5E4%2F%28240*%28pi%29*%282*M%2B1%29%5E6%29%2Cy%3D1%2F%2815360*M%5E2*%28pi%29%29%E3%80%80%E3%81%AE0%3CM%3C6%2C0%3Cy%3C0.000006%E3%80%80%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88

赤が通説の寿命式、青が修正された寿命式のカーブです。

赤は原点に向かって発散していきますが青は1プランク質量でピークとなります。

そうして目視では3.5プランク質量あたりで修正式は通説のほぼ2分の1にまでエネルギー放出が抑えられています。

修正された寿命式で計算した場合にBHの寿命が無限になるのは、ホーキング放射として認識される前の状態、それは仮想粒子の状態なのですが、その時のエネルギーが仮想粒子の対生成が起きる位置をホライズン上空に1プランク長上げた事によって生じるホーキング温度の低下によって仮想粒子の持つエネルギーそのものが低下した事に起因しています。

つまり「修正された寿命式の本質は通説の寿命式に対して発生する仮想粒子のエネルギーを制限している所にある」と言えます。

 

次は20プランク質量あたりでの2つの寿命式の比較です。

y=M^4/(240*(pi)*(2*M+1)^6),y=1/(15360*M^2*(pi)) の19<M<21,0<y<0.00000006 プロット

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%3DM%5E4%2F%28240*%28pi%29*%282*M%2B1%29%5E6%29%2Cy%3D1%2F%2815360*M%5E2*%28pi%29%29%E3%80%80%E3%81%AE19%3CM%3C21%2C0%3Cy%3C0.00000006%E3%80%80%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88

 

20プランク質量では通説式に対して修正式はほぼ85%程度のエネルギー放出になっています。

たかだか1プランク長、ホーキング温度の計算地点をホライズン上空に持ち上げただけですが、その影響は20プランク質量、ホライズン直径では80プランク長になるのですが、そこでさえ無視できない影響をホーキング放射に及ぼしています。

ちなみにこの結果は「その5-2・ブラックホールの寿命計算」で示した温度による比較計算のグラフによる再確認にもなっています。

 

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧

https://archive.md/NX8MF

https://archive.md/kmbKl

 

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その5-3・ブラックホールの寿命計算

2023-04-20 04:44:15 | 日記

前のページで示した様に今回想定している制約条件はプランクスケール近傍までBHの質量が減少した時に有効になるものですから、計算の単位はプランクスケールに合わせるのが妥当でしょう。

それはつまり「自然単位系を使う」という事になります。(注1)

1、通説の寿命式の導出

さてまずは通常の寿命式の導出で自然単位系を使った場合を示します。

参考とする導出手順は相変わらず「Hawking 輻射とブラックホールの蒸発」山内さんです。

前のページで示した様にホーキング温度Tは

T=1/(8*(pi)*M)

Stefan-Boltzmann の法則より温度 T,半径 r の物体が単位時間あたりに放つエネルギー E は

E=((pi)^2*T^4)/(60)*(4*(pi)*r^2)

Schwarzchild ブラックホールの半径 r は

r=2GM/C^2=2M

 および,温度 T は

T=1/(8*(pi)*M)

代入して

E=((pi)^2*T^4)/(60)*(4*(pi)*r^2)

=((pi)^2*(1/(8*(pi)*M)^4)/(60)*(4*(pi)*(2M)^2)

ここでウルフラムに登場願う

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=%28%28pi%29%5E2*%281%2F%288%EF%BC%8A%28pi%29*M%29%5E4%29%2F%2860%29*%284*%28pi%29*%282M%29%5E2%29

答えは

1/(15360*M^2*(pi))

ちなみに同時にプロットされているグラフが単位時間あたりにBHがホーキング放射で出すエネルギーを示している。

最初のグラフではM=0の時に出力エネルギーが発散する事を示している。

しかしながらそこでの継続時間がゼロなので、出力エネルギーは発散しない。

2番目のグラフはそのあたりの状況が分かる様に拡大表示されている。

これを見ると2プランク質量あたりからホーキング放射で出てくるエネルギーが増加し始め、1プランク質量ではすでに暴走状態になっている事がわかる。

 

それで寿命式の導出に戻ると、ブラックホールが単位時間あたりに放つエネルギーを質量の欠損によるものとして

 E=M*C^2 より

 dE=dM*C^2 

C=1 なので

dE=dM

従って単位時間当たり(=1プランク秒あたり)のBHの質量減少率は

-dM/dt=E

=1/(15360*M^2*(pi))

と通説の諸式運用ではそうなっていますのでこれに従います。

変数分離をすると

-(15360*M^2*(pi))dM=dt

左辺をウルフラムで積分すると

-(15360*M^2*(pi))dM 積分

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=-%2815360*M%5E2*%28pi%29%29dM%E3%80%80%E7%A9%8D%E5%88%86

答えは

-5120*(pi)*M^3+定数

右辺の積分はt+定数

それでこの式を

-5120*(pi)*M^3+定数=t

と書くか、あるいは

M^3=M0^3-1/(5120*(pi))*t ・・・①式

(M0 は t = 0 のときの星の質量)と書き

ブラックホールが蒸発するまでの時間は M = 0 として
t = 5120*(pi)*M0^3

と書くかは、好みの問題か。
もちろん、この時の質量Mの単位はプランク質量Pmで、出てくる時間はプランク秒Pt

一応ここまでで通説での寿命式は導出できたことになります。

 

以下はその寿命式を使ってのグラフ表示での状況確認です。

①式を書きなおして(Mo=3を代入して)

y^3=3^3-1/(5120*(pi))*x ・・・②式

これは3プランク質量のBHが消滅するまでの質量の減り方のグラフの表示です。

y^3=3^3-1/(5120*(pi))*x の0<x<500000,0<y<4.0 プロット

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%5E3%3D3%5E3-1%2F%285120*%28pi%29%29*x%E3%80%80%E3%81%AE0%3Cx%3C500000%2C0%3Cy%3C4.0%E3%80%80%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88

全てのBHはこのグラフに相似的な質量の減り方をして、最後に爆発的にエネルギーを放出し消え去る、という通説の根拠がこのグラフの解釈となっています。(注2)

縦軸がBHの質量を示しますが、x=t=0が初期状態でその時のBHの質量は3プランク質量(y=3)です。

そのBHが長い時間をかけてy=1まで質量を減らした後のBHの質量の減らし方=ホーキング放射のエネルギーの出し方は次のようになります。

y^3=3^3-1/(5120*(pi))*x の0<x<500000,0<y<1.0 プロット

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%5E3%3D3%5E3-1%2F%285120*%28pi%29%29*x%E3%80%80%E3%81%AE0%3Cx%3C500000%2C0%3Cy%3C1.0%E3%80%80%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88

3プランク質量の寿命曲線と比較してみると、BHの全寿命の残り5%程の時間の間に全質量の3分の1がエネルギーに変わって放出される、という事がわかります。

まあそうであれば、通説の寿命式のみを見ていた場合は「BHは最後に爆発して消え去る」と主張するのも「無理からぬこと事」であります。

 

ちなみに3プランク質量のBHが消滅するまでの寿命は②式の左辺をゼロにしてウルフラムに入れると求まります。

0=3^3-1/(5120*(pi))*x

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=0%3D3%5E3-1%2F%285120*%28pi%29%29*x

答えは138240*(pi)だそうです。

数字に直すと434293.768・・・ですね。

 

さてこの寿命、(15360*M^2*(pi))が積分対象の関数でしたが、それを直接定積分する事でも求まります。

(15360*M^2*(pi)) の0から3まで積分

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=%2815360*M%5E2*%28pi%29%29%E3%80%80%E3%81%AE%EF%BC%90%E3%81%8B%E3%82%89%EF%BC%93%E3%81%BE%E3%81%A7%E7%A9%8D%E5%88%86

「積分の視覚的表現」があるので積分対象の関数と積分の状況が良く分かります。

それでグラフで青く色付された部分の面積が「3プランク質量のBHが消滅するまでの寿命」を表します。

そうして答えは4.3429*10^5=434290

答えが違うじゃないか、と言う人は「表示桁数を増やす」をポチっとしてください。

434293.768・・・

はい、確かに同じになりました。

以上が「通説の寿命式の導出とその確認」となります。

 

注1:自然単位系: https://archive.md/RoxL0 :

『宇宙論
Myers (2016) によると、宇宙論において使われている自然単位系では光速度 c・換算プランク定数 ħ・真空の誘電率 ε0・ボルツマン定数 kB を1とする。これまでと同様に、物理量はエネルギー(ギガ電子ボルト GeV)の冪で表す。』に準拠する。

注2:BHの寿命曲線が相似であること

初期質量が1プランク質量の寿命曲線をプロットします。

y^3=1^3-1/(5120*(pi))*x の0<x<18000,0<y<1.333 プロット

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%5E3%3D1%5E3-1%2F%285120*%28pi%29%29*x%E3%80%80%E3%81%AE0%3Cx%3C18000%2C0%3Cy%3C1.333%E3%80%80%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88

この曲線と初期質量が3プランク質量の寿命曲線は同じ形をしている、相似なのです。

この事から分かる様に「全てのBHの寿命曲線は相似である」という事になります。

 

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧

https://archive.md/GWO83

 

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その5-2・ブラックホールの寿命計算

2023-04-14 01:58:47 | 日記

以下、まえのページで説明した内容の具体的な計算となります。

そうしてこのページではホーキング温度について通説の寿命式に従った場合と、修正された場合の2通りを算出し比較します。

1、通説の寿命式の場合

Schwarzschild ブラックホールの表面重力をkとした時に

T=k/(2pi)の関係がある。(piは円周率)(注1)

ここでkはRsをホライズンの半径とすると

k=GM/(Rs)^2

=GM/(2GM/C^2)^2

=C^4/(4*GM)

Gは重力定数、MはBHの質量、Cは光速

それで

T=k/(2pi)から

T=k/(2pi)=C^4/(8*pi*GM) ・・・①式

C、ℏ、Kbをもどしてー>つまりℏ/(C*kb)を掛けると

T=ℏ*C^3/(8*pi*kb*G*M) <-これがリアル温度(K)を与える式

①式に戻って計算の都合上、定数piを左に動かしておく

T*pi=k/(2)=C^4/(8*GM) 

ここでC、ℏ、Kb、G、を1にすると(自然単位系にすると)

T*pi=1/(8*M)

あとでウルフラムで解くのでMをxにしておく。

ホーキング温度Tのpi倍した数値=1/(8x) ・・・②式

以上が通常の質量MのBHのホライズン上でのホーキング温度Tの算出となります。

 

2、修正された寿命式の場合

次にホライズン上から上方にプランク長だけ離れた場所のホーキング温度T1を求めます。

プランク長だけ離れた場所の重力のつよさk1は

k1=GM/(Rs+Pl)^2

ここでPlはプランク長Pl=sqrt(ℏ*G/C^3)

Rs=2GM/C^2から

(Rs+Pl)^2

=(2GM/C^2+sqrt(ℏ*G/C^3))^2

従って

k1=GM/(Rs+Pl)^2

=GM/(2GM/C^2+sqrt(ℏ*G/C^3))^2

T1=k1/(2pi)から

T1*pi=k1/(2)

=GM/(2*(2GM/C^2+sqrt(ℏ*G/C^3))^2)

Mをxに表示替えして

G*x/(2*(2*G*x/C^2+sqrt(h*G/C^3))^2)・・・③式

 

C、ℏ、Kb、G、を1にすると(自然単位系)

T1*pi=M/(2*(2M+sqrt(1))^2)

=M/(2*(2M+1)^2)

Mをxに表示替えして

T1*pi=x/(2*(2x+1)^2) ・・・④式

 

3、両者の比較

②式と④式をウルフラムでプロットしてみる

ちなみにこの式は自然単位系になっているのでプロットの横軸の単位はプランク質量となっています。

1/(4*2*x),x/(2*(2*x+1)^2)の0<x<2 プロット

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=1%2F%284*2*x%29%2C%EF%BD%98%2F%28%EF%BC%92%EF%BC%8A%28%EF%BC%92%EF%BC%8A%EF%BD%98%EF%BC%8B1%EF%BC%89%EF%BC%BE%EF%BC%92%EF%BC%89%E3%81%AE0%3Cx%3C2%E3%80%80%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88

プロットが答え、パラメトリックは無視

縦軸はホーキング温度Tのpi倍した数値だが、温度だと思えば良い

④式のグラフでカーソルを動かして最大値をさがすとx=0.5あたりがピークであるのが分かる。

これが本当に0.5なのかどうかは③式の最大値を求めれば分かる

それで

G*x/(2*(2*G*x/C^2+sqrt(h*G/C^3))^2)の最大値

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=G*%EF%BD%98%2F%282%EF%BC%8A%EF%BC%88%EF%BC%92%EF%BC%8AG%EF%BC%8A%EF%BD%98%2FC%5E2%EF%BC%8B%EF%BD%93%EF%BD%91%EF%BD%92%EF%BD%94%EF%BC%88h%EF%BC%8AG%2FC%5E3%29%EF%BC%89%EF%BC%BE%EF%BC%92%EF%BC%89%E3%81%AE%E6%9C%80%E5%A4%A7%E5%80%A4

答えが「最大値」の項にあるが、プラスを選ぶと

x=0.5*sqrt(C*h/G)

③式のhは実はℏなので

x=0.5*sqrt(C*ℏ/G)

そうしてsqrt(C*ℏ/G)はプランク質量mpそのものになっている。

従って③式は0.5*mpにピークがある、という事になります。

 

さてそういう訳で④式のカーソル読み値x=0.5は正解だったことが分かります。

そうしてその時の横軸の読みは0.06あたり。

しかしながら②式、これが従来の通説での温度の推移を示すものですが、それはx=0.5でY=0.24

つまりは④式のピーク値は従来寿命式での温度設定の4分の1にしかなっていない、という事が分かります。

 

さてつぎにどれぐらいの質量までBHの質量が減少するとこの効果が現れるのか見てみます。

1/(4*2*x),x/(2*(2*x+1)^2)の0<x<18 プロット

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=1%2F%284*2*x%29%2C%EF%BD%98%2F%28%EF%BC%92%EF%BC%8A%28%EF%BC%92%EF%BC%8A%EF%BD%98%EF%BC%8B1%EF%BC%89%EF%BC%BE%EF%BC%92%EF%BC%89%E3%81%AE0%3Cx%3C18%E3%80%80%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88

10プランク質量では無視できない温度低下がみられます。

18プランク質量でも差が確認できます。

その部分、拡大して見ましょう。

1/(4*2*x),x/(2*(2*x+1)^2)の15<x<25 プロット

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=1%2F%284*2*x%29%2C%EF%BD%98%2F%28%EF%BC%92%EF%BC%8A%28%EF%BC%92%EF%BC%8A%EF%BD%98%EF%BC%8B1%EF%BC%89%EF%BC%BE%EF%BC%92%EF%BC%89%E3%81%AE15%3Cx%3C25%E3%80%80%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88

20プランク質量での値をカーソルを動かして読み取りますと

従来定式化での温度 0.00623

④式での温度    0.00596 <-従来方式の96%相当

そうして問題なのはStefan-Boltzmann の法則より温度 Tでの放出エネルギーを計算するので

放出エネルギー∝T^4  ・・・放出エネルギーは黒体温度の4乗に比例する

従って放出エネルギーでの比較では

従来定式化での温度 1.506E-9

④式での温度    1.262E-9 <-従来方式の84%に相当

温度低下が4%ほどでも放出エネルギーの低下は16%にもなります。

 

4、以上のまとめ

ホライズン上にプランク長だけ仮想粒子の対生成する場所を移しただけで20プランク質量のBHでも相当にホーキング放射でのエネルギー放出が抑えられる事がわかりました。

そうしてより問題になるのは0.5プランク質量で温度は4分の1になりなおかつそれ以降は温度は上昇するのではなく下降する、という事です。

つまりは通説が主張している様な「BHの熱暴走=ホーキング放射を出せば出すほどBHの温度が上がり最後は爆発して消え去る」というシナリオにはならない、という事です。

0.5プランク質量に至ったBHのエネルギー放出はStefan-Boltzmann の法則より従来想定の0.4%にしかなりません。

(0.25)^4=0.0039

そうしてそれ以降はホーキング放射を出す事でBHの質量が下がればそれに応じて仮想粒子の対生成する場所の温度も下がります。

つまりは今度はBHの質量減少速度、そうしてエネルギー放出速度に「熱暴走ではなくてブレーキがかかる」のです。

その結果、BHは自身の質量をエネルギー源として、自分の質量がゼロになるまで、しかしながらそのゼロ点には有限時間内では到達できない、にもかかわらずいつまでもホーキング放射を出し続ける、というシナリオになります。(注2)

さてBHはこのシナリオでは「爆発して消え去る」のではなく「0.5プランク質量時点で最も熱く燃えるのですが、それ以降は残り火が何時までも消えない線香花火の様に存在し続ける」という事になります。

 

 

注1:寿命式導出詳細については「Hawking 輻射とブラックホールの蒸発」山内さんを参照願います。

注2:この状況を理解する為にはいまだ不明の「量子重力理論の登場」を待つ必要はありません。

ホーキング放射の物理モデルの問題であるからですね。

そうしてホーキング放射の物理モデルが当方が主張する様なものであれば、後はすでに分かっている物理法則をそれに適用すれば良いのです。

さて上記の解析によれば、20プランク質量のBHでもすでにホーキング放射にブレーキがかかっている事が分かります。

そうして20プランク質量のBHのホライズンの直径は80プランク長です。

従いまして「BHのホライズンがプランク長に達した以降のBHの挙動、ホーキング放射の様子は不明である」ので「それ以降のBHがどうなるのかは量子重力理論の登場を待つ必要がある」と良く言われるのですが、「80プランク長の大きさのBHを理解するのに量子重力理論の登場を待つ必要はない」でしょう。

ちなみに上記のシナリオでは「BHは何時までも弱いホーキング放射を出しながら自分の質量を減らしていく」ので「その質量はたとえば1000分の1プランク質量」という状況にもなるでしょう。

さてそのような状況に至った時、そのBHははたしてBHのままでいられるのか?

そのBHのホライズン直径は1000分の4プランク長です。

この問題を解くには「量子重力理論の登場を待つ必要があります」。

しかしながら通説では「1000分の1プランク質量のBHでもそれはBHとして存在してホーキング放射を出す」としているのです。

何故ならば「その質量を通過しなくてはBHは消え去る事ができない」からですね。

そうして通説によれば「BHはホーキング放射で消え去ることが出来る」とされているので「消え去る一歩手前の段階のBHがどれほど質量が小さくてもそれはBHのままで、ホーキング放射が可能である」となっているのです。

 

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧

https://archive.md/4tjCB

 

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