宇宙論、ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論

ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論 etc etc

その3-2・ ホーキング放射のメカニズム

2023-02-28 17:24:19 | 日記

このページでは「情報パラドックス」として知られている問題について検討します。

さてそれで「情報パラドックス」とは何?とChatGPTに聞いた答えが以下のものになります。

Q:「情報パラドックス」とは何?

ChatGPT『「ブラックホール情報パラドックス」と呼ばれる問題に関連しています。ブラックホールは重力の強い場所であり、古典的な重力理論では情報が失われることが予測されています。しかし、量子力学に基づく理論では、情報は保存されることが基本的な原理として認められています。ホーキング放射の理論は、ブラックホールが蒸発する過程で情報が失われることを示唆しているため、これは量子力学と古典的な重力理論の矛盾を引き起こす問題となっています。』

Q:『ホーキング放射の理論は、ブラックホールが蒸発する過程で情報が失われることを示唆している』について論ぜよ

ChatGPT『ホーキング放射理論は、ブラックホールから放出される熱放射に関する理論であり、一般的にはブラックホールの寿命に関する理論として知られています。この理論は、ブラックホールが非常に小さくなると、放射が増加し、最終的にはブラックホールが全体として放射されてしまうことを示唆しています。

しかし、この理論は、ブラックホールが消滅する際に、ブラックホールに落ち込んだ物質が持っていた情報が消失してしまうという「情報パラドックス」という問題を引き起こしています。

一方、量子力学の原理によれば、物理系全体の情報は常に保存されているべきであるという原理があります。』

 

Q:『量子力学の原理によれば、物理系全体の情報は常に保存されているべきである』という理由について述べよ

ChatGPT『量子力学は物理学の分野の一つであり、微小な粒子やその相互作用を扱う理論です。量子力学の基本原理の一つに「情報保存の原理」があります。これは、任意の物理系において、その状態を完全に決定することができる情報量は常に保存されているべきである、という原理です。

量子力学では、物理系の状態は波動関数によって表現されます。波動関数には物理系の状態に関する全ての情報が含まれており、この情報量は常に保存されているべきだとされています。物理系が時間的に進展する際には、波動関数が変化するため、情報保存の原理に従って物理系の情報も変化します。

この情報保存の原理は、量子力学における測定問題に関する議論にも関係しています。量子力学では、物理系の状態は測定されるまで確定的な値を持たず、代わりに確率的に決まるとされています。しかし、測定される前の物理系の状態は波動関数によって記述されており、この波動関数には物理系の状態に関する全ての情報が含まれているため、測定前の物理系の情報量は保存されています。

このように、量子力学においては、物理系の情報が常に保存されているという原理が重要な役割を持っています。』

さてこうしてホーキングが提示した問題「BHに飲み込まれた物質が持っていた情報はBHの消失とともに消えてしまう」がクローズアップされる事になったのです。

 

そうして近ごろの議論では

Q:2016年以降で「情報の消失はエネルギー保存則を破る事になる」と主張している文献、記事、レポート、人物についてのべよ

ChatGPT『最近の研究では、情報の消失がエネルギー保存則を破ることについて、以下のような文献、記事、レポート、人物があります。

ジョセフ・ポルチンスキー(Joseph Polchinski)は、2016年に発表した論文「The Black Hole Information Problem」で、ブラックホール情報パラドックスに関する最新の研究をまとめました。彼は、情報の消失がエネルギー保存則を破ることについて言及していませんが、ブラックホール情報パラドックスについて詳細に説明しています。

ジェームズ・ハートル(James Hartle)とトーマス・ハートル(Thomas Hartle)は、2018年に発表した論文「Quantum Mechanics of Gravity: The Frontiers Collection」で、情報の消失がエネルギー保存則を破ることについての見解を述べています。彼らは、情報の消失はエネルギー保存則を破ることになると考えています。

スティーブン・ホーキング(Stephen Hawking)の遺稿によって、2018年に発表された論文「Black Hole Entropy and Soft Hair」では、彼が生前に研究していたブラックホールのエントロピーについての問題が再び取り上げられました。この論文では、情報の消失がエネルギー保存則を破ることについても議論されています。

ドナルド・マリオン(Donald Marolf)は、2021年に発表した論文「The Information Paradox: A Pedagogical Introduction」で、ブラックホール情報パラドックスについて説明しています。この論文では、情報の消失がエネルギー保存則を破ることについても言及されています。

ジェニファー・ローウェ(Jennifer Lowe)は、2021年に発表した論文「The Information Paradox in Black Holes」で、ブラックホール情報パラドックスに関する研究をまとめています。彼女は、情報の消失がエネルギー保存則を破ることになると考えています。

以上のように、最近の研究者たちは、情報の消失がエネルギー保存則を破ることについて重要な問題として議論しています。』(注1

Q:『「The Black Hole Information Problem」

「Quantum Mechanics of Gravity: The Frontiers Collection」

「Black Hole Entropy and Soft Hair」

「The Information Paradox: A Pedagogical Introduction」

「The Information Paradox in Black Holes」』訳して

ChatGPT『「The Black Hole Information Problem」(ブラックホール情報問題)

この論文は、ブラックホール情報パラドックスに関する物理学者たちの研究について概説したものである。情報パラドックスに対する様々な解決策が提示されているが、現在も完全な解決策は見つかっていない。

「Quantum Mechanics of Gravity: The Frontiers Collection」(重力の量子力学:フロンティアコレクション)

この本は、重力の量子論に関するフロンティアの最新の研究をまとめたものである。特に、量子重力の一般的なアプローチ、重力と量子論の非可換性、そしてブラックホールの情報パラドックスに焦点を当てている。

「Black Hole Entropy and Soft Hair」(ブラックホールのエントロピーとソフトヘア)

この論文は、ブラックホールのエントロピーと、ブラックホール周りの「ソフトヘア」と呼ばれる微小な物理量の関係について述べたものである。この研究は、ブラックホールのエントロピーがホログラフィック原理に基づいて説明できることを示すものであった。

「The Information Paradox: A Pedagogical Introduction」(情報パラドックス:教育的な導入)

この論文は、ブラックホール情報パラドックスについての教育的な導入を提供するものである。情報パラドックスの背景や歴史、そして主要な解決策について解説している。

「The Information Paradox in Black Holes」(ブラックホールにおける情報パラドックス)

この論文は、ブラックホールにおける情報パラドックスについての詳細な調査を行ったものである。主に、量子力学と重力理論の矛盾とその解決策について述べている。』

 

さてこうして現状では「BHに飲み込まれた物質が持つ情報がホーキング放射で消えるならば、それはエネルギー保存則を破る事になる」と主張する方々がいます。

そうしてもちろん「BHに飲み込まれた物質が持つ情報がホーキング放射で消えても、それはエネルギー保存則を破る事にはならない」と主張する方々もいます。

さてそのどちらが量子力学上で正しい認識なのかをここでは問いません。

それでは何を検討するのか、といいますれば「BHが物質を飲み込んでBHのエネルギーがそのぶん増大した。つぎにBHがホーキング放射を出す事で最終的に消滅した。そのプロセスでエネルギー保存則が破れているのか?」ということについて「いままで検討してきたホーキング放射の物理モデルと相対論を考慮した場合はどのような答えになるのか」という事になります。

 

話が長くなりましたので、このあたりでページを改めます。

注1:ChatGPTは『最近の研究では、情報の消失がエネルギー保存則を破ることについて、以下のような文献、記事、レポート、人物があります。』と言って5つの例をあげていますが、グーグルで確認できたのは最初に示された『ジョセフ・ポルチンスキー(Joseph Polchinski)は、2016年に発表した論文「The Black Hole Information Problem」』だけでした。

あとは違う著者の論文で、たとえばスティーブン・ホーキング(Stephen Hawking)の論文を引用していた場合、ホーキングの論文ではないにも関わらず「ホーキングが書いた」かのような回答をしていますので、ChatGPTでの論文検索には特に注意が必要です。

それはつまり「グーグルで裏を取る事がマスト」という事になります。

 

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧

https://archive.md/2gNU3

https://archive.md/ied48

 

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その3-1・ ホーキング放射のメカニズム

2023-02-25 01:49:02 | 日記

さて前のページで示した様に「2つの仮想粒子の対生成がホーキング放射が始まるプロセスの最初の出来事」になります。

そうしてこの2つの仮想粒子はそれぞれが粒子と反粒子の特徴をもつ仮想粒子ですが、そのエネルギーは2つともにプラスです。

それでこのエネルギーの出所は真空であり、短時間であればエネルギーと時間の不確定性によって真空は仮想粒子にエネルギーを貸し出せる、という事によっています。



さてそれで、前のページで確認したようにホーキング放射のプロセスではエネルギーと運動量の保存則が成立しています。

そうして実は運動量とエネルギーの保存を相対論的に計算する為には座標系の設定が必要となります。

それで前のページで行った座標系の設定は「仮想粒子が対生成した、その点に慣性系=座標系の原点を取る」というやり方になっています。

そうしてその様に慣性系=座標系を設定する事で、ホーキング放射が2つの保存則を満足させている事が確認できました。



さてそれで「その座標系の設定のやり方しかできないのか?」という疑問がわいてきます。

例えば「BHの中心に座標系の原点を置くのはどうなんだ?」となります。

そうして事実、通説では暗黙の了解として「座標系の原点はBHの中心である」となっています。

その結果、通説では意図するとしないとにかかわらず「BHはホーキング放射を出してもその反動では動かないものとして扱っている」とそいう事になります。



しかしながら実際はBHはホーキング放射を出す事で動く=移動するのです。

その状況は前のページで示した様にBHの運動量は

・ホーキング放射を出す前

・BH  ・・・Pbh(=BHが前から持っている運動量)

・ホーキング放射を出した後

・BH  ・・・Pbh+P(仮想粒子=BHに飛び込んだ方の仮想粒子の運動量分)

となっており、「ホーキング放射を出した後、BHの運動量は増加している」つまりは「BHは動いている」のです。

さてそうなりますとこのBHがホーキング放射を一回も出していない時にそのBHの中心に座標系の原点を設定してもホーキング放射を一回出せばBHはその原点から移動し始めます。(追伸1)


そうしてもちろん、BHが移動し始めたから、といって一度設定した座標系の原点を動かす事=観測者が立っている慣性系を変える事はできません。

と言うのはこの後このBHは多数回のホーキング放射を出すのですが、そのプロセスを記述し運動量とエネルギーの保存則が満足されている事を確認する為には最初に決めた座標系での計算を連続的に続ける必要があるからです。

その計算の途中で慣性系を変更してしまっては運動量は保存されなくなります。



さて以上の議論から「ホーキング放射を記述する為の座標系=慣性系は最初に一つ、決めなくてはならない」という事になります。

そうして次に考慮すべきことは「ホーキング放射を出す前と後で系の合計運動量は変化してはならない」という事です。

これは又「ホーキング放射プロセスでは系には外力は働いていない」という事と同義になります。



さてそれでこの場合の系とは前のページで示した様に

・真空が仮想粒子ペアを生み出す前の系

真空+BH

・仮想粒子ペア誕生後、BHがホーキング放射を出す前の系

真空+BH+仮想粒子ペア

・BHがホーキング放射を出した後の系

真空+BH+ホーキング放射

となります。

この3つの段階をホーキング放射の度毎にBHは経験するのですが、そうしてBHの運動量はその度ごとに変化するのですが系の合計運動量には変化はない、運動量は保存されるのです。(注1)

それを逆にいいますと「そのような慣性系を座標系として選ばなくてはならない」となります。



さて、以上述べた内容を満足できる座標系の設定=慣性系の選択は「仮想粒子が対生成した、その点に慣性系の原点を取る」という事で可能になります。

そうしてその事は「仮想粒子の対生成では系の運動量は増加しない」という事と同義であり「その様な慣性系が存在する」という事の表れでもあります。(注2)



注1:この3段階のプロセスのホーキング放射 n 回目に対するより連続的な表示(Σ i=1~n)は次のようになります。

・真空がn回目の仮想粒子ペアを生み出す前の系

真空+BH+Σ (i=1~n-1) ホーキング放射

・n回目の仮想粒子ペア誕生後、BHがホーキング放射を出す前の系

真空+BH+仮想粒子ペア+Σ (i=1~n-1) ホーキング放射

・BHがn回目のホーキング放射を出した後の系

真空+BH+Σ (i=1~n) ホーキング放射

ちなみにこうして計算される系の合計運動量は、BHが何回ホーキング放射を出そうとも、BHが最初のホーキング放射を出す前にもっていた運動量の値に等しくなります。

そうしてそれが「運動量が保存する」という事の内容になります。

注2:BHに最初に飛び込む事になる仮想粒子が対生成した点に座標系の原点を設定し、以降は何時もその座標系を使う。

それはまた「観測者はいつもそうやって設定された原点の位置から観測を行う」という事でもあります。

さてその様に座標系を設定する事で「仮想粒子の対生成では系の運動量は増加しないという条件を満たす慣性系を選び出した」と言えます。

そうして「仮想粒子の対生成では系の運動量は増加しない」という事は「仮想粒子の対生成は何時もこの慣性系に対して仮想粒子ペアの合計運動量をゼロにする様に行われる」という事でもあります。

さてそれでそのような認識はアインシュタインの期待に反して「宇宙には特別な慣性系が存在する」=「仮想粒子の対生成において運動量が増加しない慣性系が存在する」という事を暗示するものになります。

ちなみに「BHと言うのは仮想粒子の対生成という(目には見えない)状況をホーキング放射と言う形に実体化する(=可視化する)装置である」と見なす事ができそうです。

そうしてこのBH装置のおかげで真空と言うものが印のないのっぺらぼうなどではなくて、真空それ自身が固有の慣性系を形造っている、という事が分かるのでした。


(追伸1):BHが動く事による効果、あるいは結果

「BHが動く」という事は「BHは運動量を持つ」ということです。

さてそうなりますと「BHを消滅させる」という事は「BHの持つエネルギーと運動量を両方同時にゼロにする」という事になります。

そうしてもちろん、この場合の運動量とエネルギーは相対論的に扱わなくてはなりません。

他方で従来の通説では「BHは動かない」のでした。

従って「BHが運動量をもつ事」は無視されていたのです。

その結果は「BHを消滅させる」という事は「BHのエネルギーをゼロにする事」ととらえられていました。

そうしてこの場合のエネルギーとは単にBHの静止質量の事でした。

さてそれで従来はBHを単に「熱放射をだすもの」として扱い「熱放射の放出によってBHの質量がゼロになればその時点でBHは消滅したのだ」としていたのです。

 

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧

https://archive.md/XuyRX

 

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その2・ ホーキング放射のメカニズム

2023-02-22 04:22:29 | 日記

前のページで示したものは仮想粒子の対生成について「プラスエネルギーの仮想粒子とマイナスエネルギーの仮想粒子が生成する」という考え方でした。

そうしてこれはホーキングさんがやった計算過程を再解釈したものでした。



それでもう一つの考え方は「生成された仮想粒子はどちらもプラスエネルギーをもっている」と考えるやり方です。

なぜそのような、一見エネルギーの保存則に反した様な状況が許されるのか、といいますれば「エネルギーと時間の不確定性関係によって、ごく短時間であれば真空がエネルギーを仮想粒子に与えることが出来るから」と説明されます。

そうやって与えられたエネルギーは所定の時間が経てばまた真空に戻ってしまう、つまりそこで対生成した仮想粒子ペアは「再会する必要などなく、ただ単に消えてしまう」のです。



したがってこの仮想粒子ペアが実粒子化する為には「時間切れで消えてしまう前に片方の仮想粒子がBHに飛び込む必要がある」という事になります。

そうしてその様にできた場合は両方の仮想粒子はその時点で実粒子化します。(注1)

ここで注意すべき点は「BHにペアで生まれた仮想粒子の片方がBH内に入る」と言うのが原因で、その結果が「両方の仮想粒子が同時に実粒子化する」という所です。

そこにはあきらかな因果関係、原因と結果、順序があります。(=あるいは、その様に観測者には見えます。)



一方でエネルギーを仮想粒子に貸し出したBHを取り囲む真空は、その貸した分のエネルギーをBHから取り立てます。

さてその結果は、真空としては仮想粒子に貸し出したエネルギーはBHから取り立てましたので差引の変化はありません。



他方でBHは仮想粒子1個分のエネルギーはもらいましたが(=このエネルギーのもともとの出所はBHを取り囲む真空)、同時にBHを取り囲む真空が仮想粒子2個分のエネルギーをBHから取り立てますから、差し引き仮想粒子1個分だけエネルギーが減少します。

そうしてその時BHが減少した1個分のエネルギーは、対生成したもう一方の(=BHに飛び込まなかった方の)仮想粒子が実粒子化してBHから飛び去っていますので、その粒子が持って行く事になります。



こうしてBHがホーキング放射を出す前の合計エネルギーは「真空+BH+仮想粒子ペア」で、BHがホーキング放射を出した後では「真空+BH+ホーキング放射(=実粒子化した仮想粒子)」となるのですが、その合計エネルギーは保存される、BHがホーキング放射を出す前と出した後で変化する事はないのであります。

さて以上の話をプロセス順にそってまとめますと次のようになります。



真空が仮想粒子ペアを生み出す前の系の合計エネルギー

・真空 ・・・ゼロ

・BH  ・・・Ebh(=BHが前から持っているエネルギー)

・仮想粒子ペア ・・・存在しない=ぜろ

以上合計=ゼロ+Ebh+ゼロ=Ebh



仮想粒子ペア誕生後、BHがホーキング放射を出す前の系の合計エネルギー

・真空 ・・・仮想粒子2個分貸出し=-2

・BH  ・・・Ebh(=BHが前から持っているエネルギー)

・仮想粒子ペア ・・・真空から2個分の借り=+2

以上合計=-2+Ebh+2=Ebh



BHがホーキング放射を出した後の系の合計エネルギー

・真空 ・・・仮想粒子2個分貸出し分-2+BHから取り立て分+2=ゼロ

・BH  ・・・Ebh+仮想粒子1個分プラス+真空に2個分支払い=Ebh+1-2=Ebh-1

・仮想粒子ペアーー>一つがホーキング放射化・・・真空から2個分の借り=+2ーー>BHに1個取られた=2-1=+1

以上合計=ゼロ+Ebh-1+1=Ebh=エネルギー保存則は成立



そうしてまたホーキング放射を出す前と出した後でのこの組み合わせの合計運動量にも変化はない、運動量も保存されるのです。

真空が仮想粒子ペアを生み出す前の系の合計運動量

・真空 ・・・ゼロ

・BH  ・・・Pbh(=BHが前から持っている運動量)

・仮想粒子ペア ・・・存在しない=ゼロ

以上合計=ゼロ+Pbh+ゼロ=Pbh



仮想粒子ペア誕生後、BHがホーキング放射を出す前の系の合計運動量

・真空 ・・・ゼロ

・BH  ・・・Pbh(=BHが前から持っている運動量)

・仮想粒子ペア ・・・P(仮想粒子)+(ーP(仮想粒子))=ゼロ:(注2)

以上合計=ゼロ+Pbh+ゼロ=Pbh



BHがホーキング放射を出した後の系の合計運動量

・真空 ・・・ゼロ

・BH  ・・・Pbh+P(仮想粒子=BHに飛び込んだ方の仮想粒子の運動量分)

・仮想粒子ペアーー>一つがホーキング放射化・・・(ーP(仮想粒子)=BHに飛び込まなかった方の仮想粒子の運動量分)

以上合計=(Pbh+P(仮想粒子))+(ーP(仮想粒子))=Pbh=運動量保存則は成立



ちなみに以上の様に「対生成した仮想粒子は2つともプラスエネルギーを持っていた」と仮定しても、あるいは「プラスエネルギーの仮想粒子とマイナスエネルギーの仮想粒子が生成する」と仮定しても最終的に到達する結論は同じ、「BHは仮想粒子が実粒子化した分だけエネルギーが減る」のです。

さてそうであればこれはエネルギーのやり取りについては2つのやり方は計算の経路が違うだけの話で結果は同じになる、という事になります。

しかしながら「マイナスエネルギーの仮想粒子、あるいは実粒子をつかった運動量保存の計算」と言うのはあまりなじみがないものですので、「両方ともにプラスエネルギーを持って仮想粒子は生成された」とした方が運動量保存則を加えた計算がやりやすく分かりやすいのです。



さて当方は上記の様な計算上の都合もありますがホーキング放射で実際に起きている状況についても「仮想粒子の対生成では両方ともにプラスエネルギーを持って生成される」と想定しています。



注1:何故同時に実粒子化する、と言えるのでしょうか?

それはこの2つの粒子はエンタングルしているからですね。

どちらかの仮想粒子がその状態を決定するならば(=この場合は実粒子化する事をいう)、他方の仮想粒子も同時にその状態を決定します。

注2:仮想粒子ペアは誕生したと同時に正確に同じ速度で反対方向に飛び去ります。

したがって仮想粒子ペアの合計運動量は何時もゼロになっています。

つまりは「仮想粒子ペアが誕生する事で宇宙の合計運動量が増加する事」はありません。

もし仮想粒子ペアが誕生する事で宇宙の運動量が増加した、とするならば、それは運動量保存則を破っている事になります。



2、恒星から進化したBHの誕生から消滅までの一般的なストーリー

ビジュアルな説明としては『ブラックホールの誕生から消滅までをムービーで分かりやすく説明する「Black Holes Explained – From Birth to Death」』: https://archive.md/NUtpy :と言うものがあります。

前半の説明は通常の超新星爆発でBHが誕生するプロセスであり、後半の蒸発の所でホーキング放射が説明され、最後に大爆発して消える、と締めくくられています。

ちなみにこの説明で特筆すべきは「仮想粒子の対生成」の部分ですね。

対生成で誕生した仮想粒子がお互いに反対方向に同じ速度で離れていくように描かれています。

そうして当方の仮想粒子の生成の理解の仕方もこのイラストにあるものと全く同じです。

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧


https://archive.md/YBLkJ

 

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ホーキング放射のメカニズム

2023-02-19 03:47:43 | 日記

ホーキング放射のメカニズムについてはざっとした説明しかしてきませんでした。

そうして「BHが最終的にホーキング放射によって消滅する」という通説、この業界の常識を批判する形で「BHの消滅不可能定理」まで話を進めました。

まあしかしながら「ホーキング放射のメカニズム」について、通常言われている説明をしないというのもやはり不公平でありましょう。

そうであればこの辺りで「通説としてのホーキング放射メカニズム」について一通り見ておく事といたします。

とはいえ「通説に対する個人的な意見」も入りますので、その点はご容赦願います。



しかしながらこのホーキング放射メカニズム、これは言い換えますとホーキング放射の物理モデルとなるのですが、これについては業界内でも一致した見方は存在していない模様です。

あるいは言い方を変えますと「今はいろいろな物理モデルを想定する事が可能である状況」という事になります。

もっともこのホーキング放射を最初に定式化したホーキングの論文はあるにはあるのですが、それはほとんど数式展開となっていて、明確な物理モデルの提示にはなってはいません。

したがって後に続く物理屋さん達はホーキングの論文を基に自分達でいろいろな物理モデルを想定して計算している、と言うのが状況の様にみえます。



さてそのように「物理モデルをめぐる状況は混乱している」のですが、大方の見る所、「ホーキング放射は存在するであろう」という事になっている様です。

そうしてそのメカニズムといえばだいたいこんな風に考えられています。

1・ 量子論の特徴の一つは、からっぽの空間というものがないことである。

2・ 真空は一見からっぽに見えても、ミクロなスケールでは常に正エネルギーと負エネルギーの仮想粒子の対生成がおこなわれている。

3・ 正エネルギーの粒子は、エネルギーが大きければブラックホールから逃れることができる。(注1)

4-1・ 一方、負エネルギーの粒子はブラックホールに吸い込まれる。

4-2・あるいはブラックホールに吸い込まれなかった負エネルギーの粒子は正エネルギーの粒子と再会し消滅する。(=真空に帰る)

5・ 負エネルギーの粒子が吸い込まれた場合は、結果的にはブラックホールのエネルギーは減り、ブラックホールは次第に小さくなっていく。

6-1・ ブラックホールが「蒸発」していくのだ。

6-2・ブラックホールは熱放射をしているので、遥かに長い時間で見れば、最終的に蒸発してしまう。

7・この蒸発の最終のプロセスがガンマ線バーストとして観測される。

8・この時の温度は、T=10の32乗K(ケルビン)にも達する。

まあこんな風にコトバで記述する事が出来ます。



この記述に対してよく見るホーキング放射の説明イラストでは「負エネルギーの粒子」に反粒子をあてはめ、「正エネルギーの粒子」に通常の粒子を当てはめて説明しているものです。(注2)

そうなるとBHに吸い込まれるのはつねに「対生成した仮想粒子の反粒子の方」という事になります。

いやいや、BHはそのような「えり好み」=「反粒子好み」はしません。



それから「BHに吸い込まれる」とまるでBHの重力によって仮想粒子が引き込まれる様な表現をしていますが、これもおかしな表現です。

2つの仮想粒子は対生成した時に同じ速度で反対方向に飛び去ります。

そうしてこの片方の仮想粒子がBHに向かいます。

従って「吸い込まれる」のではなく、「仮想粒子が自分からBHに飛び込む」のです。(注3)



さらに申し添えれば「実粒子としての反粒子のエネルギーはプラスであって、マイナスではない」のです。

それではなぜ上のコトバによる説明では「負エネルギーの粒子」と言うように説明されているのでしょうか?

それはホーキングが最初に行ったホーキング放射の定式化の際に「BHにマイナスのエネルギーが流れ込んでいる」かのようにこのプロセスを扱ったからです。

そう言う訳で「仮想粒子の対生成した片方の粒子がBHに入る時にはその粒子は結果的にBHにマイナスエネルギーを持ち込むと解釈できる」となります。

それでこの状況を短絡的に表現してしまうと「負エネルギーの粒子がBHに入る」となります。

しかしながらもちろん「マイナスエネルギーの粒子」は実在しません。

そうであれば「負エネルギーの粒子がBHに入る」というのは「ホーキング放射の不正確な物理モデルの表現である」という事になります。



さてしかしながらホーキング放射が発生した結果としてBHのエネルギーが減少する。

従来の定式化ではBHのエネルギーはBHの静止質量だけでしたから、それで「BHの質量が減少し最終的には爆発して消えてしまう」とされています。



ん、BHのエネルギーが減少するのに爆発する?

BH自体のエネルギーはその静止質量だけ、という想定ですからBHのエネルギーが減少する、というのは、BHの質量が減少するという事です。

そうしてBHの質量が減少するとホーキング温度は逆に上昇するのです。(注4)

それでこのホーキング温度の上昇に応じでBHのホライズン近傍での仮想粒子の対生成の頻度と発生した仮想粒子のエネルギーが上昇します。

その結果はBHが出すホーキング放射の頻度とエネルギーの上昇につながります。

さてそのようにしてBHが静止質量(=エネルギー)をホーキング放射で減らせば減らすほどさらにホーキング温度は上昇する。

この循環はBHの質量が少なくなればなるほどにますます速くなります。

という訳で上記の7番や8番にある様に「BHの最後は爆発して消えさる(=蒸発する)」と通常は表現しています。



注1:「正エネルギーの粒子」はBHの重力場を登り切らないとホーキング放射としては認識されない事になります。

従って「エネルギーが大きければ」=BHから飛び去る速度が早ければ=「(BHの重力に逆らって)ブラックホールからその実粒子は逃れることができる。」という事になります。

そのようにBHの重力場から自由になった実粒子化した仮想粒子がホーキング放射の正体とされます。

注2:たとえば「【ノーベル賞】ブラックホールの最後はどうなるの?ホーキング放射とは?」: https://archive.md/fzLIU :

あるいは「量子BHの問題点」: https://archive.md/XVDlU :

いずれのイラストでも「BHに入るのは反粒子である」とされています。

注3:対生成した仮想粒子ペアがお互い飛び去る状況を示したイラストはこれが良いでしょう。: https://archive.md/00MIX :「BHが軽くなる仕組み」参照

対生成した仮想粒子のペアがBHとほぼ平行に飛んでそうしてまた途中でカーブして再度出会う、そうして運悪く(?)その軌道の途中で反粒子がBHに吸い込まれる、と言うような軌道を描くように仮想粒子のペアが対生成されるのではありません。

上記の記事のイラストにある様に仮想粒子の対生成は実粒子の対生成と同様に「対生成した場所からお互いが反対方向に飛び去る」のです。

ただしこのイラストでもBHに入るのは反粒子とされている点には注意が必要です。(実際は粒子、反粒子のどちらも分け隔てなくBHに飛び込みます。)

そうしてまた「仮想粒子の対生成が起こる場所」もこの記事ではBHのホライズン面上となっていますが、これもあやまりで、実際はホライズンより外側の空間です。

注4:BHがその質量を減らすとその分に逆比例してBHの大きさ(=ホライズンの半径)が小さくなります。

それでホライズンの半径が小さくなるとその半径の二乗に逆比例してホライズン上の重力の強さが大きくなります。

但しBHの質量減少分は重力は弱くなりますが距離の減少分は二乗の逆比例で効いてきますのでこちらが勝ちます。

その結果は「BHの質量が減少するとそれだけBHのホライズン上での重力の大きさは強くなる」となります。

そうしてホーキング温度はホライズン上の重力の大きさに比例して上昇します。

さてそういう訳でBHのホライズン近傍の空間のホーキング温度はBHが小さいほど高い、という「逆転した関係をもつ事」になります。

ちなみにこの関係もホーキングがホーキング放射の定式化の中で見出したものです。


追記:4-2についてのコメント
ホーキングが行った定式化では「対生成した仮想粒子の片方は必ずBHに入り込む」という前提でなされています。

従って4-2で示した状況は考慮していません。

そうして「何故このような前提が成立するのか」といいますと「ホーキング定式化では仮想粒子が生成する場所はBHのホライズンのすぐ上の空間に限っているから」が答えになります。

BHのすぐ上の空間で発生した、互いに逆方向に飛び去る仮想粒子を考えた場合、その仮想粒子ペアの飛ぶ方向は完全にランダムですからほぼ確実にペアで発生した内の片方がBH内に入り込む、と想定するのは妥当であると思われます。

そうであれば「ホーキング定式化はBHホライズン直上の空間でのみ有効である」という事になります。

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧

https://archive.md/kXAyW

 

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「ブラック ホールの消滅不可能定理」の検証

2023-02-16 06:28:28 | 日記

前のページで示した様に「今までの話の上ではBHをこの世から消し去る方法はただ一つだけ存在する」のでした。

さてその方法によれば本当にBHを消し去る事が出来るのでしょうか?

以下、その事を確認します。(注1)



BHを消滅させる為のレシピ(=作業手順)

それでBHを消滅させる上でまずいやな事は「消滅の一歩手前のBHで運動量と角運動量という2つの運動量を持っている事」です。

その状態では最後のホーキング放射で運動量、角運動量、エネルギーの3つを同時にゼロにしなくてはなりません。

そうしてどう考えてもそのような「奇跡的な事はできない」のです。

従って「消滅の一歩手前のBHではすでに角運動量はゼロになっていてほしい」のです。

そうできれば「BHを消滅させることになる最後にBHに飛び込む仮想粒子はBHの持つ運動量とエネルギーをゼロにすればよい」という状況を作れた事になります。



ちなみにこの場合、エネルギーはもちろん相対的なエネルギーとしなくてはならず、そうなりますと座標系の設定が必要になります。

それでここではその座標系は基準慣性系(=CMBレストフレーム)とする事になります。(注2)

さてそうであればBHの角運動量も基準慣性系に対してゼロにすれば良いのです。



始めに「質量が100grを超えるBHがホーキング放射をだして100gr程度の重さまで減少した」というBHを想定します。

このBHがさらにランダムにホーキング放射を出しながらその質量を減少させて10grまでになったとしましょう。

ランダムに発生したホーキング放射のおかげでいまやそのBHはゼロではない運動量と角運動量を持っています。(注3)



それで10grから1grにBHの質量を減らす時に、BHに飛びこむ仮想粒子を精密にコントロールしてBHの自転を止めます。

つまり「BHの自転方向とは逆の向きに仮想粒子を打ち込む」のです。

こうしてこのBHは1grに到達した時には角運動量はゼロにできていました。

そうであればこれ以降、BHに打ち込む仮想粒子はBHの中心を正確に狙う事になります。

そうでなくてはせっかくゼロにできたBHの角運動量をまたゼロ以外の値にしてしまうからですね。



さあそれで次は1grからプランク質量(=mp)までBHの質量を減らさなくてはなりません。(注4)

この時に気を付ける事はなるべくBHの運動量を増やさない、と言う事です。

それはつまり、常にBHが運動している方向とは逆向きに仮想粒子をBHに打ち込む、と言う事です。

こうやってBHの運動量が増加するのを極力さけながらBHの質量を下げていきます。(注5)



こうやってほぼ1プランク質量までBHの質量を減らせた場合、そのBHの直径は4プランク長となります。(注6)

さてシュワルツシルト半径 RsはBH質量と正比例していますからBH質量が0.25プランク質量にまで低下しますとそのBHの直径は1プランク長となります。

そうして素粒子の大きさを1プランク長程度と想定していますので、BHの大きさが1プランク長に到達したところが、もう一回ホーキング放射ができるぎりぎりのBHサイズとなります。

なんとなれば、1プランク長を切ってしまったらそのBHに飛び込める仮想粒子は存在しないからであります。(注7)



さてここでその時のBHの運動量の大きさをPBHとしましょう。

そうであればここでそのBHに打ち込む仮想粒子の持つべき運動量もPBHでなくてはいけません。

そうして打ち込む方向はBHの進行方向と真逆の方向です。

さてこれでBHの運動量はゼロにできます。

のこる問題は相対論的なエネルギーです。

この時のBHの相対論的なエネルギーEBHは次のように書けます。

EBH=sqrt(PBH^2*C^2+(0.25mp)^2*C^4)・・・①式

従ってこのBHに飛びこむ仮想粒子の相対論的なエネルギーE(仮想粒子)も

エネルギーE(仮想粒子)=sqrt(PBH^2*C^2+(0.25mp)^2*C^4)・・・②式

でなくてはなりません。

このとき仮想粒子の運動量はPBHでBHの相対論的なエネルギー①式と同じになっています。(但し仮想粒子の運動の方向はBHとは真逆です。)

それでここで問題になるのは飛び込む仮想粒子の静止質量の大きさです。

上記エネルギー②式にある様に、このとき仮想粒子の静止質量は(0.25mp)つまり

0.00545ミリグラム、でなくてはなりません。

そうしてこんな巨大な質量をもつ素粒子は存在ないのです。(注8)

そうであれば最後の最後にきてこのように精密にコントロールしたホーキング放射をつかってもBHを消滅させる事はできない、と言う事になります。(注9)



さて結論です。

ランダムに起きるホーキング放射ではBHは消せません。

そうしてまた精密にコントロールされたホーキング放射を使ってもBHは消滅できないのです。

こうして「唯一残されたBH消滅の方法も実際には実現不可能である」=「BHの消滅不可能定理は厳密に成立している」という事が確認されるのです。



注1:今までの話で「どれほどやっても無理な話だ、というのがわかっているのだが、、、。」という事は少し横に置いておきましょう。

そうしてまた「仮想粒子の対生成のコントロールなどできない」という主張もナシということにします。

さてそう仮定した場合には前のページで指摘した内容、「唯一BHを消し去る事が出来るホーキング放射というのは実現可能なのか?」=「BHの消滅不可能定理は成立しないのか?」という問いかけとなります。

但しここでの議論では「仮想粒子を含んで素粒子には有限の大きさがある」とし「素粒子の大きさよりもBHの大きさが小さくなった時点でホーキング放射は止まる」という条件を使っています。

ちなみにこの条件を外したらBHは消滅するのか、といいますとこれとはまた別の「素粒子には固有質量がある」と言う制限がかかりますので、BH消滅に対する状況はそれほど有利にはなりません。(この件については後述となります。)

注2:対象とするBHが存在している場所にある、客観的に存在する静止系です。

注3:ホーキング放射を出す為にはBHには前もって仮想粒子が飛びこまなくてはなりません。

そうしてその仮想粒子はBHに運動量と角運動量を持ち込みます。

ちなみに角運動量はBHの中心からずれた位置をめがけてBHに飛び来む仮想粒子によってBHにもたらされます。

注4:プランク質量(mp): https://archive.md/sRXXo :によれば

1プランク質量=0.0218ミリグラムである。

『1プランク質量は一般的なコピー用紙(坪量 64g/m2)を 1mm×0.3mm に切ったものの質量くらいである。』

目視可能なサイズの紙の切りくず、あるいはゴミの重さ、といったところです。

注5:その理由についてはここでは詳しくは述べませんが(=ページを改めます)、その様にしてBHをなるべく動かさない方がこのBHはそれ以降はホーキング放射を出しやすくなります。

逆に言いますと「動き回っているBHはホーキング放射を出す頻度が落ちる」のです。

注6:プランク長: https://archive.md/IOCb9 :によれば

プランク質量 mpでのシュワルツシルト半径 rsはrs=2*lpとなっている。

ここでlpはプランク長である。

つまりプランク質量のBHの直径は4*lp、プランク長の4倍の大きさとなります。

注7:ここで発生する仮想粒子は有限の大きさを持ち、その大きさよりもBHの大きさが小さくなった時点でホーキング放射は止まる、という仮定を導入しています。

注8:0.00545ミリグラムは陽子質量の3*10^18倍の重さ。

このような質量の素粒子は我々が暮らす宇宙には存在しないと言い切って良いでしょう。

これが「いつの日にか人類が仮想粒子の対生成を精密にコントロールできた」としてもBHを消し去る事ができない、次の壁となります。

注9:このレシピに従ってBHを消滅させようとした結果、そこに残るBHは運動量、角運動量はゼロにできた、つまり「基準慣性系に対しては静止させることが出来た」「質量がほぼ0.00545ミリグラム(=0.25mp)のBH」と言う事になります。

そうしてこのBHはそれ以降ホーキング放射を出す事はなく、その状態で安定して宇宙に存在し続ける事になります。



追伸:上記の話は素粒子の大きさを1プランク長程度と想定した話でしたが、その大きさが0.5プランク長になっても0.1プランク長であったとしても、この議論は多少修正するだけでほとんど同様に行う事が出来ます。

つまり「素粒子に有限の大きさがある限り、BHはホーキング放射では消滅できない」と言う事になります。

そうしてまたBHが消え去る事ができる最後に残された1回のホーキング放射で必要とされる仮想粒子の質量は消し去る対象のBHと同じである必要があり、その様な巨大な質量をもつ素粒子は存在しない=その様な巨大質量をもつ仮想粒子も存在しない=したがってこのBHを消し去る事はできない、がここでの結論となります。



追伸の2:プランクスケールを超えて生成した原始BHがダークマターになる手順。

この原始BHは誕生した瞬間からホーキング放射を出しながら自分の質量をプランクレベルまで順次減少させます。

そうして自分の質量が0.25mpに近くなった所で、所定の運動量と角運動量をもって次に起こるであろう、そのBHにとっては最後となるホーキング放射を待ちます。

そうしてランダムに決定された最後のホーキング放射によってBHの質量は0.25mpを切る事になります。

しかしながらその最後のホーキング放射はBHの運動量と角運動量をゼロにする事はありません。

従って最終的にそこに残るBHは質量が0.25mpを少しだけ切った、ゼロではない運動量と角運動量を持ったプランクレベルのBHという事になります。

そうしてこのBHはもう2度とホーキング放射を出さない為、宇宙が終わる時までこの姿で安定して存在し続ける事になるのです。

くわえて、このように安定化したプランクレベルの原始BHこそがダークマターの正体となります。

ちなみに宇宙初期の原始BH誕生の際に最初からその質量が0.25mpを切って誕生した原始BHは一度もホーキング放射を出すことなく、そのままダークマターとしての役割を担う事になります。

そうしてこのようにして最初からホーキング放射を出さない原始BHが冷たいダークマター(=CDM)としては最適であります。

さてインフレーション宇宙論によれば「原始BHの質量は少ない方が誕生頻度が高い」という事の様ですので、「プランクスケールの原始BHがCDMである」という主張にとってはこれは都合の良い状況であります。



ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧

https://archive.md/Y7qJs

 

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