宇宙論、ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論

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その5-3・ブラックホールの寿命計算

2023-04-20 04:44:15 | 日記

前のページで示した様に今回想定している制約条件はプランクスケール近傍までBHの質量が減少した時に有効になるものですから、計算の単位はプランクスケールに合わせるのが妥当でしょう。

それはつまり「自然単位系を使う」という事になります。(注1)

1、通説の寿命式の導出

さてまずは通常の寿命式の導出で自然単位系を使った場合を示します。

参考とする導出手順は相変わらず「Hawking 輻射とブラックホールの蒸発」山内さんです。

前のページで示した様にホーキング温度Tは

T=1/(8*(pi)*M)

Stefan-Boltzmann の法則より温度 T,半径 r の物体が単位時間あたりに放つエネルギー E は

E=((pi)^2*T^4)/(60)*(4*(pi)*r^2)

Schwarzchild ブラックホールの半径 r は

r=2GM/C^2=2M

 および,温度 T は

T=1/(8*(pi)*M)

代入して

E=((pi)^2*T^4)/(60)*(4*(pi)*r^2)

=((pi)^2*(1/(8*(pi)*M)^4)/(60)*(4*(pi)*(2M)^2)

ここでウルフラムに登場願う

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=%28%28pi%29%5E2*%281%2F%288%EF%BC%8A%28pi%29*M%29%5E4%29%2F%2860%29*%284*%28pi%29*%282M%29%5E2%29

答えは

1/(15360*M^2*(pi))

ちなみに同時にプロットされているグラフが単位時間あたりにBHがホーキング放射で出すエネルギーを示している。

最初のグラフではM=0の時に出力エネルギーが発散する事を示している。

しかしながらそこでの継続時間がゼロなので、出力エネルギーは発散しない。

2番目のグラフはそのあたりの状況が分かる様に拡大表示されている。

これを見ると2プランク質量あたりからホーキング放射で出てくるエネルギーが増加し始め、1プランク質量ではすでに暴走状態になっている事がわかる。

 

それで寿命式の導出に戻ると、ブラックホールが単位時間あたりに放つエネルギーを質量の欠損によるものとして

 E=M*C^2 より

 dE=dM*C^2 

C=1 なので

dE=dM

従って単位時間当たり(=1プランク秒あたり)のBHの質量減少率は

-dM/dt=E

=1/(15360*M^2*(pi))

と通説の諸式運用ではそうなっていますのでこれに従います。

変数分離をすると

-(15360*M^2*(pi))dM=dt

左辺をウルフラムで積分すると

-(15360*M^2*(pi))dM 積分

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=-%2815360*M%5E2*%28pi%29%29dM%E3%80%80%E7%A9%8D%E5%88%86

答えは

-5120*(pi)*M^3+定数

右辺の積分はt+定数

それでこの式を

-5120*(pi)*M^3+定数=t

と書くか、あるいは

M^3=M0^3-1/(5120*(pi))*t ・・・①式

(M0 は t = 0 のときの星の質量)と書き

ブラックホールが蒸発するまでの時間は M = 0 として
t = 5120*(pi)*M0^3

と書くかは、好みの問題か。
もちろん、この時の質量Mの単位はプランク質量Pmで、出てくる時間はプランク秒Pt

一応ここまでで通説での寿命式は導出できたことになります。

 

以下はその寿命式を使ってのグラフ表示での状況確認です。

①式を書きなおして(Mo=3を代入して)

y^3=3^3-1/(5120*(pi))*x ・・・②式

これは3プランク質量のBHが消滅するまでの質量の減り方のグラフの表示です。

y^3=3^3-1/(5120*(pi))*x の0<x<500000,0<y<4.0 プロット

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%5E3%3D3%5E3-1%2F%285120*%28pi%29%29*x%E3%80%80%E3%81%AE0%3Cx%3C500000%2C0%3Cy%3C4.0%E3%80%80%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88

全てのBHはこのグラフに相似的な質量の減り方をして、最後に爆発的にエネルギーを放出し消え去る、という通説の根拠がこのグラフの解釈となっています。(注2)

縦軸がBHの質量を示しますが、x=t=0が初期状態でその時のBHの質量は3プランク質量(y=3)です。

そのBHが長い時間をかけてy=1まで質量を減らした後のBHの質量の減らし方=ホーキング放射のエネルギーの出し方は次のようになります。

y^3=3^3-1/(5120*(pi))*x の0<x<500000,0<y<1.0 プロット

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%5E3%3D3%5E3-1%2F%285120*%28pi%29%29*x%E3%80%80%E3%81%AE0%3Cx%3C500000%2C0%3Cy%3C1.0%E3%80%80%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88

3プランク質量の寿命曲線と比較してみると、BHの全寿命の残り5%程の時間の間に全質量の3分の1がエネルギーに変わって放出される、という事がわかります。

まあそうであれば、通説の寿命式のみを見ていた場合は「BHは最後に爆発して消え去る」と主張するのも「無理からぬこと事」であります。

 

ちなみに3プランク質量のBHが消滅するまでの寿命は②式の左辺をゼロにしてウルフラムに入れると求まります。

0=3^3-1/(5120*(pi))*x

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=0%3D3%5E3-1%2F%285120*%28pi%29%29*x

答えは138240*(pi)だそうです。

数字に直すと434293.768・・・ですね。

 

さてこの寿命、(15360*M^2*(pi))が積分対象の関数でしたが、それを直接定積分する事でも求まります。

(15360*M^2*(pi)) の0から3まで積分

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=%2815360*M%5E2*%28pi%29%29%E3%80%80%E3%81%AE%EF%BC%90%E3%81%8B%E3%82%89%EF%BC%93%E3%81%BE%E3%81%A7%E7%A9%8D%E5%88%86

「積分の視覚的表現」があるので積分対象の関数と積分の状況が良く分かります。

それでグラフで青く色付された部分の面積が「3プランク質量のBHが消滅するまでの寿命」を表します。

そうして答えは4.3429*10^5=434290

答えが違うじゃないか、と言う人は「表示桁数を増やす」をポチっとしてください。

434293.768・・・

はい、確かに同じになりました。

以上が「通説の寿命式の導出とその確認」となります。

 

注1:自然単位系: https://archive.md/RoxL0 :

『宇宙論
Myers (2016) によると、宇宙論において使われている自然単位系では光速度 c・換算プランク定数 ħ・真空の誘電率 ε0・ボルツマン定数 kB を1とする。これまでと同様に、物理量はエネルギー(ギガ電子ボルト GeV)の冪で表す。』に準拠する。

注2:BHの寿命曲線が相似であること

初期質量が1プランク質量の寿命曲線をプロットします。

y^3=1^3-1/(5120*(pi))*x の0<x<18000,0<y<1.333 プロット

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%5E3%3D1%5E3-1%2F%285120*%28pi%29%29*x%E3%80%80%E3%81%AE0%3Cx%3C18000%2C0%3Cy%3C1.333%E3%80%80%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88

この曲線と初期質量が3プランク質量の寿命曲線は同じ形をしている、相似なのです。

この事から分かる様に「全てのBHの寿命曲線は相似である」という事になります。

 

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧

https://archive.md/GWO83

 

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