宇宙論、ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論

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その4・ ホーキング放射のメカニズム

2023-03-06 01:54:49 | 日記

1、BHがプランク質量に到達した時の状況の確認

さてそれで最初のページで以下の様に述べました。

『6-2・ブラックホールは熱放射をしているので、遥かに長い時間で見れば、最終的に蒸発してしまう。

7・この蒸発の最終のプロセスがガンマ線バーストとして観測される。

8・この時の温度は、T=10の32乗K(ケルビン)にも達する。』

それでこの状況を一応確認しておきましょう。



さてそれで計算のスタートラインはBHがプランク質量に到達した所からです。
プランク質量MpはMp=2.176*10^(-8)(kg)=21.76μgとなります。(注1)

その時のBHの半径Rsはプランク長さLpの2倍。(Lp=1.616*10^-35m)(注2)

その時のBHのホーキング温度TはT=5.639*10^30(K)。(注3)

そしてその時に一番放出される確率の高い周波数νによる放出エネルギーは

hν = 2.82 kT であり、(ここでkはボルツマン定数)(注4)

E=⊿M*C^2によって質量換算をすると2.443E-09(kg)となります。



これをエネルギーEに戻すと

hν = 2.82 kT=2.82*5.639*10^30*1.381×10^−23

=21.96*10^7(ジュール)

8番でホーキング温度が「10の32乗K(ケルビン)」と言ってますが、これは本当にBHが消え去る直前の温度の様です。

そうしてちょうどプランク質量のBHではホーキング温度Tは

T=5.639*10^30(K)。



さてこの温度ではBHはガンマ線を出すと7番では言っています。

光のエネルギー、この場合は光子一個のエネルギーなんですがそれが

E=21.96*10^7(ジュール)

だとガンマ線になる、という訳です。



さてこのガンマ線、E=hν=PC という関係があります。

従ってこのガンマ線の運動量P は P=E/C で求まる事になります。

それで

P=E/C=21.96*10^7/ 299 792 458 (m / s)

=21.96*10^7/ 2998*10^5

=0.7325

と求まります。



さてこれだけのガンマ線が出たのですから、同じ強さのガンマ線がBHに飛び込んでいた、という事になります。

つまりはこれほどの強さのガンマ線の仮想粒子ペアが誕生して、その片方がBHに飛び込んで実粒子化した。

同時に始めからBHから離れる様に発生していた仮想ガンマ線が実粒子化して、リアルのガンマ線に変わってホーキング放射化した訳です。



さあそれでこの時にBHの質量はプランク質量からそこに飛び込んだガンマ線のエネルギー分だけ小さくなっています。(注5)

小さくなったBHの質量Mを計算しますと⊿M=2.443E-09(kg)より

M=2.176*10^(-8)ー2.443*10^-09(kg)

=1.932*10^(-8)(kg)



そうして運動量PはP=MV ですからBHの運動速度Vは

V=P/M=0.7325/ 1.932*10^(-8)

=0.379*10^8

=37900000m/S

光速が299 792 458 (m / s)でしたので光速比で

V/ C≒0.126



まとめますと

止まっているプランク質量(=2.176*10^(-8)(kg))のBHのその質量で想定されるホーキング温度Tは

T=5.639*10^30(K)

その温度で最も多く対生成するガンマ線の光子一個当たりのエネルギーEは

E=21.96*10^7(ジュール)

その光子の運動量Pは

P=0.7325

他方で仮想ガンマ線がBHに飛び込む事でBHの質量は減少するのだが、減少後のBHの質量Mは

M=1.932*10^(-8)(kg)

BHはガンマ線としてホーキング放射を出した反動で動き出す。

その時のBHの速度Vは

V=37900000m/S

そうしてこの速度は光速の13%程に相当する、という訳です。



以上の様に

1、プランク質量近傍までBHの質量がホーキング放射を出す事で軽くなる事。

2、BHの質量が減る事でホーキング温度が上昇し、それによって対生成で発生する仮想ガンマ線のエネルギーレベルが上昇する事。

この2つの要因が相まってホーキング放射はBHをホーキング放射が出る方向とは逆の方向に動かす事になります。

ちなみに仮想粒子の対生成が起きた時、2つの仮想粒子が飛ぶ方向は真逆ですが、BHにとってはその飛ぶ方向は3次元空間でランダムな方向になります。

従ってこのレベルまでBHの質量が軽くなると光速の10%以上の速度でBHはランダムウォークし始める事になります。

もちろんこのレベルまでBHの質量が軽くならなくても、その質量に応じたホーキング放射で実はBHは3次元空間でランダムウォークしているのが実状です。



さてここで注目すべきは「ペアで対生成した仮想粒子はまたその2つが衝突する様な、途中でカーブする様な軌道は取らない」という事です。

そうではなくて実粒子の対生成と同じく、「対生成したポイントから逆方向に2つの仮想粒子はとびさる」、上記のガンマ線の例では「2つのガンマ線は反対方向に飛び去る」のであって「光の軌跡が何らかの力によって曲げられてカーブを描く」などという事は起ってはいない、という事になります。



注1:プランク質量: https://archive.md/sRXXo :参照の事。

注2:プランク長さ: https://archive.md/WEQhm :参照の事。

注3:ういき:ブラックホールの絶対温度 T が次式で定義される。: https://archive.md/ukDpy :参照の事。

注4:プランクの法則: https://archive.md/Nh670 :参照の事。

注5:ホーキング放射の計算ではホーキング放射として観測されるエネルギーは最終的にBHからの持ち出しとして定式化されます。

 

 

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