宇宙論、ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論

ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論 etc etc

その3・ブラックホールの寿命計算

2023-03-30 03:07:26 | 日記

さて『1、仮想粒子が対生成する場所をほとんどホライズン上とし、そこで仮想粒子が対生成する層の厚さを1としている。

しかし実際はホライズンから離れた場所では重力の強さが落ちる為に発生する仮想粒子がもつエネルギーは低下する。

しかしながら上記の寿命式ではその低下分が考慮されていない。』について話します。

と言いながら実はすでにその事については以下の記事で話し終わっています。

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと・14・ホーキング放射のシミュレーション(2)

そこでの結論として従来方法ではEs=σ・Ts^4*4・Pi・Rs^2が単位時間当たりBHが放出する全放出エネルギーである、とされていました。
それに対して提案方法では補正係数0.10179を掛けたE=0.10179*Esが妥当であろう、という事になります。

こうして、BHの寿命は従来の約10倍にのびる事になった、とそういうお話になります。

そうしてこの話の要点は、といいますれば

『質量MのBHが単位時間に放射するエネルギーEsは従来はこのように書かれていました。
Es=σ・T^4*4・Pi・Rs^2
Rsは当該BHのホライズン半径、σがシュテファン=ボルツマン定数でありTは通常は熱力学温度ですが、ここにホーキング温度を代入します。
そして、σ・T^4の部分がStefan-Boltzmann の法則でありそれに放射体の表面積をかける事で全放出エネルギーEが求まる、そのように想定しています。

それに対して、ホライズン上空に多層に重なる仮想粒子放出層を想定するのが今回のやり方になります。
一番下の層は従来通りの記述になります。
そこから微小距離Δrだけ上に上がった放出層を考えます。
この層は上に上がった分だけ重力が弱まり、従ってその分ホーキング温度Tが下がる事になる、と言うのは前回の説明でした。
そうやってこうした放出層を何段にも積み重ねる事で、たとえばホライズン半径の2倍の地点にまで到達する事が可能です。』

という考え方にあります。

これは従来の放射エネルギーの考え方が「ホーキング放射はBHという黒体球体の表面(=ホライズン面)からの熱放射である」であるのに対して、提案している計算方法では「ホライズン面から上方に多層に重なっている球状のシェルを想定し、そのシェルごとに仮想粒子の発生を考える」というものになっています。(注1)

そうしてホライズンから遠ざかればそれだけ重力は弱くなりますからホーキング温度Tが下がり、結果的にその場所で発生する仮想粒子ペアのエネルギーも下がります。

それから、ホライズンから離れた事によって発生した仮想粒子が全てBHに吸収される、ということではなくなり、BHに到達できる仮想粒子の割合が減少します。

それらの事を考慮しつつホライズン上方に向かって重なっているシェルを足しこむ、実際は積分するのですがそれをホライズンからホライズン半径の3倍の所まで行った結果が修正係数として得られる、という話です。(注2)

そうやって得られた修正係数は0.10179と言う値になり、したがって従来想定よりもBHが単位時間に放射するエネルギーEsは10分の1に減少することになるのです。

それはつまり「従来計算のBHの寿命は以上の要因の修正を受け約10倍にのびる」という結論になります。

 

注1:従来方式の放射の考え方を「表面発光放射」ととらえるならば、ここで提案しているホーキング放射の在り方は「空間発光放射」という事になります。

そうしてこのような発光様式は例えばレーザーであるとかネオンサインであるとか、そういうタイプの発光様式に近いといえます。

しかしながらホーキング放射の場合は空間発光とはいえネオンサインの発光の様な等方的な発光ではなく「放射パターンは今までにない様な特徴的な指向性を示す事になる」と予測されます。

ちなみに「ホーキング放射が黒体表面からの放射ではなく、ホライズン上空の空間からの放射である」とする考え方は、たとえばSteven B. Giddingsさんも提唱しているものです。

ホーキング放射とブラックホール・50・ホーキング放射、シュテファン・ボルツマンの法則、および統一

注2:ただし上記Giddingsさんの論文によれば「積分範囲はホライズンからホライズン上方にシュワルツシルト半径の約2.6倍の位置まででよい」としています。

そうしてその場合の修正係数は0.101733になります。

さて積分範囲を1から2.6とするか3とするかは趣味の問題でしょう。

いずれにせよ3ケタでの修正係数は0.102となります。

 

追伸:太陽が黒体として扱える理由

宇宙空間に存在する球体の黒体といえば太陽です。以下チャットGPT の説明から引用

『黒体とは、全ての波長の光を吸収する完全なる放射体のことで、ある温度において放射される光のスペクトル分布は、プランクの放射則によって与えられます。太陽の表面温度は約5,500℃であり、この温度において放射される光のスペクトル分布は、プランクの放射則によって与えられる黒体放射スペクトル分布に非常に近いため、太陽は黒体と見なせます。

太陽が放射するエネルギーの総量は、ステファン・ボルツマン定数、太陽の半径、太陽の表面温度によって与えられる計算式で求めることができます。具体的には、以下の式を用います。

太陽が放射するエネルギーの総量 = 4πR^2σT^4

ここで、
・Rは太陽の半径(約6.96×10^8 m)
・Tは太陽の表面温度(約5,500℃ ≈ 5,773 K)
・σはステファン・ボルツマン定数(5.670374419 × 10^-8 W/(m^2K^4))です。』

さてこうして通説では太陽の放射エネルギーの計算と同様にBHのホーキング放射エネルギーを計算している、という事が分かるのです。

しかしながら太陽はその中心まで中身が詰まった、その中身は基本的には表面よりも高温であって、表面から熱放射が出ても表面の温度はさがらない、表面から出る放射エネルギーに対して表面に内部から供給されるエネルギーのバランスが取れている状態にあります。(表面温度は飽和状態にある、と言えます)

他方でBHといえば「中身はからっぽ」で別にBHの中からエネルギーがBH表面に供給されている訳ではありません。

ホーキング放射のエネルギー源は仮想粒子がその場所の重力の強さに応じてその場所で計算されるホーキング温度に従って発生しているだけですから、その場所のホーキング温度がエネルギー源です。(とはいえ、もともとのエネルギー源はBHの質量そのものとなります。)

そうであれば「仮想粒子が対生成で発生している、その場所のホーキング温度とその温度に対応した仮想粒子が発生している空間の厚み=層の厚み」が放射エネルギー計算のポイントになります。

そう言う訳でBHのホーキング放射によるエネルギー放射総量を求めるには「太陽に適用したやり方」ではなく「内部がからっぽのBHに対応した、BH専用のやり方が必要になる」のでした。

 

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧

https://archive.md/eAl0V

 

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その2-2・ブラックホールの寿命計算

2023-03-27 02:47:01 | 日記

さてそれで、通常言われているブラックホールの寿命式に対して「いや、その式で示された寿命よりも実際のBHの寿命は延びる」と当方が主張している根拠を述べます。

それでBHの寿命と言うのはつまるところ「BHがホーキング放射でどれだけの率でエネルギーを放出するのか?」という事で決まってきます。

そうしてホーキングによって示された寿命式は以下の様になります。

ブラックホールが蒸発するまでの時間 t は 
t = 5120*πG^2/(ℏC^4)* M0^3
となりt = 0 のときのブラックホールの質量M0の三乗に比例する.(ここではプランク定数 はℏ、光速は C,重力定数は G、)(注1)

しかしながら当方が見る所、この寿命式はホーキング放射でBHが放出する単位時間当たりのエネルギーを大きく見積もりすぎていると言えます。

それで「この寿命式が考慮していない」と当方が主張する要因(ファクター)は以下の4つです。

1、仮想粒子が対生成する場所をほとんどホライズン上とし、そこで仮想粒子が対生成する層の厚さを1としている。

しかし実際はホライズンから離れた場所では重力の強さが落ちる為に発生する仮想粒子がもつエネルギーは低下する。

しかしながら上記の寿命式ではその低下分が考慮されていない。

2、BHのホライズン上での重力の強さから計算される典型的なエネルギーをもつ仮想粒子(=光)の波長はホライズン直径の14倍になっている。

つまりホライズン上で発生した仮想光子は自分の波長よりも小さなBHに吸収されなくてはならない。

つまり「発生した仮想光子は100%、BHに吸収される事はない」=「ホーキング放射はその分、出力が低下する」のである。

そうしてその吸収確率はBHによるレイリー散乱の確率に似たものと推定できる。

3、通説の寿命式ではホライズン上のホーキング温度で仮想粒子の対生成がおきる、という前提で計算されている。

しかしながら実際は仮想粒子が対生成する、BHに一番近い場所はホライズンからプランク長だけ上空に離れた場所と想定するのが妥当である。

この差分はBHのホライズンがプランク長に比較して十分に大きい場合はほとんど無視できるが、BHのホライズン直径がプランクレベルまで減少すると無視できない効果をもつ。

それはつまり「ホライズンからプランク長だけ離れた場所の重力の強さはホライズン上の重力の強さよりも弱い」=「ホーキング温度がホライズン上よりも低い」=「発生する仮想粒子のエネルギーレベルが下がる」=「ホーキング放射エネルギーが下がる」=「BHの寿命が延びる」のである。

4、通説の寿命式は「BHは静止していて動かない」という前提で計算されている。

しかしながら実際はBHはホーキング放射を出す事で動き回るのである。

そうなると「動いているBHと発生した仮想粒子の衝突~吸収」というプロセスでBHが仮想粒子を取り込み、ホーキング放射をだすことになる。

その場合BHは運動量とエネルギーの保存則を満たしながらホーキング放射を出さなくてはならない。

そうして、通説の寿命式はその事を考慮していない。

それを考慮すると、プランクスケールまで縮小したBHが出せるホーキング放射のエネルギーに相対論による制限がかかることになる。

 

以上4つの項目がそれぞれ独立にBHのホーキング放射の単位時間あたりに出すエネルギーを制約する事になる。

つまりは「その分、上記寿命式よりもBHの寿命は延びる」という事になるのです。

さてこの4つの項目についてページを改めながら以下、個別に説明をする事と致します。

ちなみに1,2、の制約条件はBHがホーキング放射を出す時は常にその制約をうける、つまりはBHの大小にかかわらずBHのライフタイムのどこでもその制約下にあります。

他方で3,4、の制約条件はBHがプランクスケール近傍にまで縮小した時に効果を表す事になります。

これは逆に言いますと「プランクスケールまで小さくなるまでのBHには3,4、が与える事になる制約はほとんど無視できる」という事になりますので、そこまでのBHの挙動は制約条件1、2、を考慮すれば良い事になります。

そうであれば「プランクスケールまで小さくなるまでのBHの寿命については、通常の寿命式に制約条件1,2から導出される補正係数をかければ計算できる」と言う事になります。

 

注1:通説による寿命式の導出詳細については「Hawking 輻射とブラックホールの蒸発」山内さんを参照願います。

 

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧

https://archive.md/6svWp

 

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その1-2・ブラックホールの寿命計算

2023-03-24 17:29:21 | 日記

前のページの最後に

『ちなみにホーキング放射計算機は以下のページにあります。

Hawking radiation calculator : https://archive.md/8MB7i :

ここでも寿命式の導出が行われていますので、上記で不明な点があった場合は、こちらでも確認してみてください。』 と書きました。

それで少し寄り道をしてこの計算機について書いておきます。

 

始めに「ホーキング計算機の前文とあとがきの訳文」を示します。

前書き:『このページには、シュワルツシルトブラックホールのホーキング放射やその他のパラメーターを計算するJavaScriptの計算機が含まれています。

オリジナルのアイデアはJim Wisniewski氏に帰属し、彼の2006年のページ(リンク)はもう利用できなくなっているようですが、ウェイバックマシンによってアーカイブされていないため、私の機能的なクローンがまだ役に立つと思います。

Wisniewski氏のオリジナルのコードには、ウィル・マッカーシーの小説「コラプシウム」で定義された、1兆メトリックトンに相当する架空の質量単位である「スタンダード・インダストリアル・ニューブル」が含まれていました。私はこの単位を保持しましたが、初期質量として1太陽質量を使用することにしました。

Wisniewski氏のバージョンと同様に、任意の量を指定すると、他の量もそれに応じて再計算されます(ソースを参照)。ドロップダウンメニューは、それぞれの入力フィールドの使用する計量単位を選択します。

追加機能として、黒体放射曲線の単位対数に対応するBHの温度に対応する「ピーク光子」の波長、対応する周波数、および光子エネルギーの計算が含まれています。最新バージョンでは、黒い穴の効果的な面積、光の散乱、およびそれによる蒸発寿命の変化も正しく考慮されています。』

 

あとがき:『我々はまた、1.8083の数値因子を紹介しました。これは[Page 2005]での詳細な計算から得られたもので、効果の組み合わせに由来します。まず、ブラックホールの効果的な吸収面積(したがって放射面積)は、事象の地平面積に対応する4πR^2よりもはるかに大きく、実際には27/4倍大きくなります。これは大きな(6.75倍の)増加をもたらす可能性がありますが、フォトンスフィアに入るすべての光線がブラックホールの事象の地平面に捕獲されるわけではないため、緩和されます。したがって、フォトンは「素朴な」計算に比べて1.6232倍の割合で放出されます。さらに、私たちは重力子も考慮する必要があります。これらは「素朴な」率の0.1851倍で放出されます。これら2つの項を組み合わせると、全体の因子は1.8083になります。(Don N Page はまた、ニュートリノについても考慮しましたが、少なくとも1つのニュートリノフレーバーが質量ゼロでなければ、ブラックホールが非常に熱くなった最後の段階を除いて、寄与しないでしょう。)

様々な定数を代入すると、次のようになります。

t = (M/M⊙)^3 × 1.160×10^67 yr,
ここで、M⊙=1.989×10^30 kg、Ė⊙=1.989×10^30 kgです。

したがって、1M⊙のブラックホールの寿命は、現在の宇宙の年齢よりもほぼ57桁も長く計算されます。ただし、それは宇宙背景放射よりも冷たいため、放射するわずかなエネルギーも、宇宙からの熱の形でより多くを受け取ることになります。したがって、縮小する代わりに、それは成長し続けるでしょう。

実際、地球の質量の約0.75%以上の質量を持つ任意のブラックホールは、宇宙の背景よりも冷たいため、しばらくは質量が増加します。しかし、宇宙が膨張し、冷却されると、いずれブラックホールはホーキング放射によって質量エネルギーを失い始める可能性があります。』

ここで著者が述べている「1.8083」と言う数字ですが、それはこのページの最後の計算がブラックホールの寿命の計算になっているのですが、その式は通説の式に1/1.8083が掛けかれた形をしています。

つまりは「通説よりは寿命が1/1.8倍ほど短く計算される」のです。そうしてそれは最新のレポート:Hawking radiation and black hole
thermodynamics*
:by Don N Page 2005 New J. Phys. 7 203:に基づいている、と言うのがビクターViktorさんの主張です。(注1)

そうであれば「ホーキング計算機の寿命計算結果を通説の計算値に戻すには1.81倍すればよい」という事になります。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

さてそれで、以上がビクターViktorさんの「ホーキング計算機の紹介」なのですが、「あとがき」に登場してくる『ブラックホールの効果的な吸収面積(したがって放射面積)は、事象の地平面積に対応する4πR^2よりもはるかに大きく、実際には27/4倍大きくなります。これは大きな(6.75倍の)増加をもたらす可能性がありますが・・・』について以下、説明になります。(ちなみに27/4は6.75です。)

通常の寿命式はホライズンの表面を黒体の表面と見なし、そこから熱放射によってエネルギーが放射される、という前提で計算されています。

そうしてここでビクターViktorさんが指摘している事は「実はホライズン表面だけを考えたのではダメだ」という研究結果がDon N Pageの2005年の論文にあり、それを考慮した修正を行っている、というものです。

 

それから同様にして「ホーキング放射ではホライズン上空の空間まで考慮しないといけない」という論文に

Hawking radiation, the Stefan-Boltzmann law, and unitarization
Steven B. Giddings

ホーキング放射、シュテファン・ボルツマンの法則、および統一
[2015年11月25日(v1)に提出、2016年1月12日最終改訂(このバージョン、v3)]

があります。

それでこの論文を一部訳出したものが

ホーキング放射とブラックホール・50・ホーキング放射、シュテファン・ボルツマンの法則、および統一

にあります。

そうしてこの論文でGiddingsさんが主張している内容と当方が提示しているホーキング放射の空間放射モデルの関連性を説明したものが

ホーキング放射とブラックホール・52-1・ホーキング放射はどこから発生しますか?(2)

になります。

Giddingsさんはホーキング放射がでてくる場所は「シュワルツシルト半径Rsから始まって(但しホライズンそのもの:その場所は含まずに)Ra=3*sqrt(3)/2*シュワルツシルト半径=2.5981*シュワルツシルト半径つまりシュワルツシルト半径の約2.6倍の位置までの空間である」としています。

この2.5981*ホライズン半径がつくる球の表面積はホライズンの表面積の6.7501倍になります。

6.7501=(2.5981)^2

この数字がビクターViktorさんの記事にある

「実際には27/4倍大きくなります。これは大きな(6.75倍の)増加をもたらす可能性がありますが・・・」

の説明となります。

 

さてそれで、Giddingsさんが主張している数値、2.5981は当方が主張するホーキング放射の物理モデルから算出される補正係数に換算した場合には、当方の主張と驚くほどの精度で一致しているのです。(注2)

それはつまり「Giddingsさんが考えているホーキング放射の物理モデル」と「当方が主張するホーキング放射の物理モデル」は結果的に同じ結論に至っている、という事を示しています。

 

注1:ホーキングがホーキング放射を定式化したあとですぐにそれを使ってBHからどのような素粒子がホーキング放射として飛び出してくるのかを考えたのがDon N Pageでした。そうしてまさにその人が2005年でもBHの研究に携わっている、というのは感慨深いものがあります。

ちなみにDon N PageはBHのページ時間を最初に言い出した方の様です。

注2:2つのモデルの補正係数に換算した場合の値の比較

Giddingsさんが主張している数値、2.5981からは

積分範囲1から2.5981で   0.101733 を得ます。

一方で当方は3.0で十分としました。その場合は

積分範囲1から3では   0.10179

ちなみに無限遠までの積分をとりますと

積分範囲1から無限では  0.10183  となります。

なおこの補正係数の意味詳細につきましては

ホーキング放射とブラックホール・52-1・ホーキング放射はどこから発生しますか?(2)

を参照願います。

 

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧

https://archive.md/tJNZF

 

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その1-1・ブラックホールの寿命計算

2023-03-21 03:18:42 | 日記

ブラックホールがホーキング放射を出して最終的には蒸発して消えてしまう、と言うのが通説です。

この「最終的には消えてしまう」と言う部分に注目すると「いや、プランクレベルまで小さくなったブラックホールはそこでホーキング放射が止まって、安定した状態に移る」と主張する立場があり、そうして「そうなったブラックホールこそがダークマターの正体である」と主張する者達がいます。

そうして又当方もその様に主張するグループの内の一人であります。

プランクレベルまで小さくなったブラックホールがそこでホーキング放射を何故止めるのか、という事については当方の主張を含めていくつかのアイデアがある様です。(注1)

その中で当方が主張するものは「ブラックホールの直径がプランク長を下回ったら、そのブラックホールには何ものも入れない」という「幾何学的な制約条件によるもの」です。

そもそもが「ホーキング放射と言うものが対生成した仮想粒子の片方がブラックホールに吸収される、という事が発端で他方の仮想粒子が実粒子化してブラックホールから離れていく現象」でありますから、「ブラックホールに仮想粒子が吸収されなくなった時点でホーキング放射が止まる」という想定は妥当なものであります。(注2)

 

しかしながらその事は当面は横に置いておいて、さてここではブラックホールの寿命計算について話していく事になります。

と言うのも「通説で提示されている寿命計算式で考慮されていない様に見える4つの項目があるから」です。

・・・と言う話をし始めますとどうしても「それでは通説ではどうやって寿命を計算しているのか」という事になります。

そうであれば以下、通説でのやり方を振り返ってみる事になります。

 

その議論については「Hawking 輻射とブラックホールの蒸発」山内さんを参照しながらのものになります。
しかしながら、最初におことわりしておかなくてはならない事は、これは上記論文への批判ではない、と言う事であります。
ただ単にこの論文が「ホーキング放射とブラックホールの寿命」についてよく分かる説明をしているから参照しているのであって、他に他意はございません。
その意味では論文著者の山内さんには感謝する次第であります。

さてまずは重力場での粒子生成についての部分です。
「所定の重力がある場所では仮想粒子対の生成と消滅が、重力場のない空間よりも頻繁に起こっている」そう解釈できそうです。
但し通常は不確定性原理で許される存在時間しか、仮想とはいえ、存在できない様です。

しかしここにブラックホールに起因するホライズンがあると、対生成した仮想粒子の一方が「必ず」ホライズンの中に飛び込むので、その相方の粒子は実粒子化しホライズンから離れてゆく、つまりこれがホーキング放射である、そう言っておられます。(注3)

そのようにして多くの粒子がホライズン近傍の空間から飛び出してくる、それをエネルギー別に数え上げてみるとなんと黒体放射スペクトルと一致するではないか、これがホーキングさんが見つけた事の様であります。
そうして、その際にプランクの法則と照らし合わせる事でプランク則の温度Tに相当する部分が
T=ℏ*C^3/(8*pi*Kb*M*G)
こんな風に書ける、と言う事でした。(但しここではプランク定数 はℏ 、光速は C,重力定数は G、kB はボルツマン定数)

そうして、「それじゃあブラックホールは黒体と見なせ、その温度が計算できたのだから、エネルギー放射も計算できるよね」と言う様にロジックがつながっていくのでした。
しかしながら、T=ℏ*C^3/(8*pi*Kb*M*G)が本当に黒体放射で従来使われていた温度と同じものなのか、そこがどうも怪しい、と言うのが最初の疑問です。

確かにその値(=ホーキング温度)を温度としてプランク則を使えばホライズン近傍から出てくる粒子のエネルギー分布は求められるのでしょうが、そのエネルギー分布を得るのにどれくらいの時間が必要だったのか不明の様です。
1秒でそれだけの粒子が飛び出してきたのか、それとも1時間観測しないとエネルギー分布のグラフが「連続したグラフ」にならないのか、いいかえますと単位面積、単位時間当たりにホライズン近傍の空間から外に向かって(あるいは観測者に向かって)飛び出す粒子数が不明である様に見えます。

そこの所が不明のまま、「いやこれは温度と見なせるから云々」というのでは、どうにも納得がいかないのです。

そうして、2番目は「ホライズン近傍」という「ホーキング放射が発生する場所についてのあいまいな位置の指定」です。
想定している仮想粒子が対生成している場所について、その場所は厚みを持つはずです。

さてそれでは一体その層の厚さはどれくらいなのでしょうか?
そうして、その層はBHが大きい場合と小さい場合で厚さが変わるのか?それはBHのホーキング温度Tとホーキング放射がでてくる層の厚みについての質問でもありますが、そこが不明です。
そうして粒子が放出される真空層の厚みは、不確定性原理によって制限を受ける事になる仮想粒子の到達距離との関係で重要になる所です。(注4)

 

さて通説での寿命式の導出についての諸式運用詳細については「Hawking 輻射とブラックホールの蒸発」山内さんの最終ページを参照してください。

ちなみに実際にBHの寿命計算が具体的に行える「ホーキング放射計算機」は以下のページにあります。

Hawking radiation calculator : https://archive.md/8MB7i :

そうしてここでも寿命式の導出が行われていますので、上記で不明な点があった場合は、こちらでも確認していただければと思います。

 

注1:何故そこでホーキング放射がとまるのか、その具体的なアイデアの提示がないままで「そこでホーキング放射が止まる」という前提に立つと「プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターである」あるいは「プランク質量の遺物がダークマターであると考えられる」とする立場があります。(「プランク質量の遺物」についての説明は追記にあります。)

この立場は「宇宙論屋さんや天文学者さん達の立ち位置に多い様」です。

それらの方々は「ホーキング放射が止まるプロセス詳細は別の方に任せる」というものであって、その事よりも宇宙論的に、あるいは観測結果からは注目すべきは「プランクスケールの原始ブラックホール、あるいはそれが変化したプランク質量の遺物がダークマターである」という事に関心を持つのです。

そうしてまたその様な主張のやり方も「確かにありだな」と思うのです。

ちなみにこの立場の最初の提言者はホーキングであるとしてもよさそうです。

スティーブン・ホーキングが原始ブラックホールに関するダークマターの候補として言及したのは、1971年のことです。彼は、原始宇宙におけるブラックホールの形成とそれらがダークマターの主要な構成要素である可能性について、論文「Gravitationally collapsed objects of very low mass」で提唱しました。

ただしこの時のホーキングが指摘した対象の原始ブラックホールはプランクスケールから恒星質量範囲にまで多岐にわたっていました。

それから4年後の1975年にホーキングは「ブラックホールによる粒子生成」でホーキング放射を定式化しました。

そうしてこの論文によって1971年の主張はホーキング自身によって一部、否定されたかの様に見えます。(宇宙初期に誕生したプランクスケールの原始ブラックホールはすでに蒸発している、と解釈される事になりました。)

しかしながらちょうどアインシュタイン自身による宇宙定数の否定の様に「理論の提示者の読みが何時もあたる」という事は無く、「何が正しいのか」は最後は現物勝負にゆだねられる事になるのです。そうしてそれが物理学の在り方というものであります。

注2:超弦理論では「素粒子には有限の一定の大きさがある」と仮定しています。

そうしてその大きさはプランク長 lp 程度であろう、と言われています。

従ってブラックホールのサイズがプランク長を下回った時点で「全ての素粒子は、仮想粒子も含めてそのブラックホールには入れなくなる=吸収されなくなる」という訳です。

注3:何故「必ず対生成した仮想粒子の一方がホライズンに飛び込めるのか?」といいますれば、ホーキングの定式化では「仮想粒子の対生成はホライズンのすぐ上でしか起きないから」としているからであります。

その場所はホライズンから無限小距離はなれた場所ですから、仮想粒子が対生成した場合は、その片方は必ずBHに飛び込むことになるのです。

とはいえ、実はホライズンの接平面方向に対生成した仮想粒子ペアは2つともBHに飛び込まない可能性は残ります。

注4:当方が主張している「ホーキング放射の物理モデル」ではホーキング放射は黒体放射のように「対象物の表面からのみ、外部に対して放射されるのではない」となります。

それに対して空間にうかぶ球体の温度Tをもつ黒体はその表面から外部に熱放射をだす、として放射エネルギーが定式化されています。

そうしてその場合は、「放射が出てくる場所は黒体球の表面である」=「放射が発生している発光層の厚みを考える必要はない」のです。

それで従来の寿命式の算出方法はこの「空間にうかぶ球体の温度Tをもつ黒体はその表面から外部に熱放射をだす」モデルを基本にしています。

しかしながらホーキング放射はそのような「表面温度Tをもつ黒体球の熱放射と同じではない、その様には扱えない」というのが当方の主張となります。

 

追記:「プランク質量の遺物」について

宇宙の最初期の段階、インフレーションの最終段階からビックバンに移る所で物質粒子(=フェルミオン)とボゾンが生成された、それと合わせてダークマターも誕生したものと推定されます。

そうしてその時点で生まれた「プランク質量の遺物」が多数、安定して存在し続ければ、なおかつその遺物が重力相互作用しか持たないのであれば、それはダークマターとしてふるまうであろう、という想定は自然なものです。

それでその様な「プランク質量の遺物」として考えられるものは以下の様なものです。

・ホーキング放射を出さなくなったプランクスケールの原始BH

・プランクスケールに至った原始BHがBH以外の存在に質的に変化したもの

・宇宙ひもとして知られている存在

・それ以外のプランクスケールの質量をもつ、重力相互作用しかしない存在

そうしてこれらの存在は超対称性理論によって予測されているいまだ見つかっていない以下の素粒子たちとは異なります。

(WINP、アクシオン、ステルスニュートリノ、ダーク光子、etcではありません。)

そうして当方が主張するダークマターの候補は「ホーキング放射を出さなくなったプランクスケールの原始BHそのもの」となります。

 

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧

https://archive.md/0GtVy

 

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その8・ホーキング放射のメカニズム

2023-03-18 03:10:53 | 日記

前述したように最初にホーキング放射を定式化したのがホーキングで、それがこの論文です。

ホーキングの原論文は「Particle Creation by Black Holes」Received April 12, 1975:Commun. math. Phys. 43, 199--220 (1975) でありそれは

https://link.springer.com/article/10.1007/BF02345020 のページからダウンロードできます。

さてその前の論文は

Black hole explosions?:ブラックホールは爆発する?
S. W. HAWKING 
Nature volume 248, pages30–31 (1974):Published: 01 March 1974(注1)

https://www.nature.com/articles/248030a0

ここでホーキングは『この論文の目的は、これが実際に当てはまる可能性があることを示すことです。

どのブラック ホールも、ニュートリノや光子などの粒子を生成し、ブラック ホールが温度を持つ物体である場合に予想される速度で放出するようです。 (κ/2π) (ħ/2k) ≈ 10^−6 (M/M)K 。ここで、κ はブラック ホールの表面重力です。

ブラック ホールがこの熱放射を放出すると、質量が失われることが予想されます。 これにより、表面重力が増加し、放出率が増加します。 したがって、ブラック ホールの寿命は 10^71 (M/M)^−3 秒程度です。

太陽質量のブラックホールの場合、これは宇宙の年齢よりもはるかに長い. しかし、初期の宇宙のゆらぎによって形成された、はるかに小さなブラック ホールが存在する可能性があります 。 そのような質量が 10^15 gr 未満のブラック ホールは、今では(すでに)蒸発しているはずです。

寿命が近づくと、放出率は非常に高くなり、最後の 0.1 秒で約 10^30 エルグが放出されます。 これは天文学的な基準ではかなり小さな爆発ですが、約 100 万個の 1M トン(=1メガトン)の水素爆弾に相当します。・・・』

どうやら歴史的にはNatureへの投稿が先行した模様です。

 

そうしてこれらの論文を受けてドン・N・ペイジが1975 年 8 月 18 日受領で投稿した論文がこれです。物理。Rev. D 13、198 – 1976 年 1 月 15 日発行(注2)

「ブラック ホールからの粒子放出率: 帯電していない非回転ホールからの質量のない粒子」: https://journals-aps-org.translate.goog/prd/abstract/10.1103/PhysRevD.13.198?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc :

『ホーキング博士は、ブラック ホールが表面重力に比例した温度を持っているかのように粒子を放出すると予測しました。

この論文は、ホーキングの量子形式とテウコルスキーとプレスのブラックホール摂動法を組み合わせて、既知の質量のない粒子の放出率を計算します。

数値結果は、ブラックホールの質量が M≫10^17gr は総電力出力を放出する必要があります 2×10^−4×ℏc^6×G^−2×M^−2、そのうち 81% はニュートリノ、17% は光子、2% は重力子です。

これらの速度と、より小さなブラックホールからの大量の粒子の放出速度の推定値を組み合わせることで、質量Mが M<(5±1)×10^14gr.の原始ブラック ホールは(すでに)現在の宇宙の時代に崩壊したことを推測できます。』

そのペイジの次の論文がこれです。物理。Rev. D 14、3260 – 1976 年 12 月 15 日発行

「ブラック ホールからの粒子放出率。Ⅱ.回転ブラック ホールからの質量のない粒子」: https://journals-aps-org.translate.goog/prd/abstract/10.1103/PhysRevD.14.3260?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc :

『このシリーズの最初の論文 (非回転ブラック ホールの場合) の計算は、回転するブラック ホールからの質量のない、またはほとんど質量のない粒子の放出率と、その結果としてのブラック ホールの進化にまで拡張されています。

放出されるパワーは、ニュートリノの場合は 13.35 倍、光子の場合は 107.5 倍、重力子の場合は 26 380 倍まで、ブラック ホールの角運動量の関数として増加します。

角運動量はエネルギーの数倍の速さで放出されるため、急速に回転するブラック ホールは、その質量のほとんどが失われる前に、ほとんど回転しない状態までスピンダウンします。

ブラック ホール力学の第 3 法則は、荷電していないホールの小さな摂動について証明されており、極端なカー配置までホールをスピンアップすることは不可能であることを示しています。

ブラック ホールが十分に速く回転している場合、その面積とエントロピーは、エルゴスフィアで作成された粒子ペアから熱がブラック ホールに流れ込むため、最初は時間とともに増加します (極端なカー配置では無限の割合で増加します)。

回転が減少するにつれて、熱放射が支配的になり、ブラック ホールから熱が引き出され、その面積が減少します。

特定の質量のブラック ホールの寿命は、最初の回転によって 2.0 ~ 2.7 倍しか変化しません (どの粒子種が放出されるかによって異なります)。

初期質量が 5 ×10^14gr の回転しない原始ブラック ホールの場合は現在の宇宙の時代にちょうど崩壊し、最初の質量が約 7 ×10^14grで 、最大回転で作成された原始ブラック ホールの場合は今、ちょうど死んでいたでしょう。

より大きな質量で作成された原始ブラック ホールは現在でも存在しますが、最大回転速度は現在の質量によって一意に決定されます。今日、それらが十分に小さくて多くのハドロン(注3)を放出している場合、それらはほとんど回転しないと予測されます。』

 

さてホーキングは『どのブラック ホールも、ニュートリノや光子などの粒子を生成し、』といずれも質量がゼロのボゾン、フェルミオンを対象にしたホーキング放射の導出であった事を認めています。(注4)

そうしてまた、それを受けたペイジの論文でも『そのうち 81% はニュートリノ、17% は光子、2% は重力子です。』といずれも質量をもたない素粒子の放出としてホーキング放射をとらえていた。

しかしながらペイジはその次の論文では『今日、それらが十分に小さくて多くのハドロン(注3)を放出している場合、それらはほとんど回転しないと予測されます。』として「ホーキング放射が質量をもつ複合粒子を放出できる」としている。

さて、これはつまり「BH近傍の空間が曲がった場所の真空の揺らぎによって質量をもつ複合粒子の仮想粒子の対生成が可能である」と主張している事になります。

 

注1:ちなみにこのホーキングの論文の引用回数は: https://archive.md/AejyW :にあります。

それを見ますと2018年以降の急激な伸びが確認できます。

つまり「近年になってまたホーキング放射に相当な注目が集まっている」という事が言えそうです。

注2:ちなみにこのペイジの論文の引用回数は: https://archive.md/QhF8e :にあります。

それを見ますと・・・以下同上。

注3:「ハドロン」とは: https://archive.md/rBC6O :

『「ハドロン」とは素粒子・原子核物理の用語で「強い相互作用で結合した複合粒子」という意味です。身近な存在として、原子核を構成する陽子・中性子のようにクォーク3個から構成される粒子(バリオン)や、湯川博士の中間子論で有名なπ中間子のようにクォーク2個から構成される粒子(メソン)等があります。これらの強い相互作用を行う粒子を総称して「ハドロン」と呼びます。』

注4:ホーキングが放射を定式化した時代にはニュートリノは質量がゼロである、とされていた。しかし現時点では「ニュートリノは質量がゼロではない」とされています。

さてそれで、ホーキング放射で放出される素粒子の質量がぜろである場合は、放出元のBHの重力場がどれほど強くとも、BHがつくる重力の井戸をホーキング放射は上り切る事ができる、と想定する事は妥当であるように見えます。

そうして実際、ホーキングはそのような前提でホーキング放射を定式化している様にみえます。

ただし、その様なBH井戸の底からのぼってきたホーキング放射のもつエネルギーは重力井戸を登るのに相当する分だけ減少している事は間違いないと思われます。

重力赤方偏移: https://archive.md/G3mqt :を参照願います。

『重力源に近い(「重力ポテンシャルが深い」)ところから放出された光を重力源から遠く離れた(「重力ポテンシャルが浅い」)場所で観測すると,振動数が小さいほうへ変化して観測される。

振動数  が小さくなれば波長 λ が大きくなる(伸びる)。』

 

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧
 
https://archive.md/URIlw
 
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