宇宙論、ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論

ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論 etc etc

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと・15・ホーキング放射のシミュレーション(3)

2019-03-24 01:11:45 | 日記
さて、提示したホーキング放射のモデルで寿命の計算は一応出来るようになりました。
しかしながら、ずうっと言ってきた問題「仮想粒子の到達距離の話」の決着がまだついていない様です。
それでこのページではその事について今回提示したモデルを使って検討してみます。

まずはエネルギーと時間の不確定性関係。
ΔE*Δt=h/2程度というのが厳しめの数値の模様です。<--リンク
ちなみにこのページではhはすでにプランク定数を2*Piで割っているものとします。

さて例によって中心から距離rの位置にある粒子生成点を取り上げます
まずはrをホライズン半径Rsで割ってXとします。

その位置の温度Trはホライズン温度Tsを使ってTr=Ts*(1/X^2)と書けます。
Tsが出ましたので、プランクの放射則にその値をいれると、Tsでのスペクトルが出てくるのでした。
そのスペクトルのピークの位置はΔE/2= hν = 2.82 Kb・T です。<--リンク
ただしここで、真空から借りたエネルギーはΔEですが、2つの仮想粒子に等分に分けられるので、粒子一つ当たりのエネルギーはΔE/2となります。

そうなりますと仮想粒子の存在時間ΔtはΔt=(h/2)/ΔE=(h/2)/(2*2.82・Kb・Tr)=(h/2)/(2*2.82・Kb*Ts/X^2)。
ホライズン側に飛んだ粒子の飛行距離Δlは速度を光速とするとΔl=C*(h・X^2)/(4・2.82・kb・Ts)

Ts=(h・C^3)/(8・Pi・Kb・M・G)を入れて整理すると
Δl=((2・Pi・X^2)/2.82)*(M・G/C^2)
Rs=2・(M・G/C^2)を使って
Y=Δl/Rsを求めます。
ここでYはRs単位系(勝手にそう呼んでいるのです。)で表した飛行継続距離となり、
Y=(Pi/2.82)・X^2=1.114*X^2となります。

これで温度Trで一番多く生成される仮想粒子の飛行距離が計算できました。

次に例のBH到達可能性を示す円錐を考えます。
BHまでの一番長い距離はその円錐を作っている接線であり、その接線の長さはXをつかってsqrt(X^2-1)となります。

それで、Yの値がこのsqrt(X^2-1)より大きければ仮想粒子はBHに到達可能なのだが、短いと到達する前に仮想粒子は消滅する、そういう事になります。
それで、比率1.114X^2/sqrt(X^2-1)の値を調べる事になります。

ここでまたしてもWolfram|Alphaさんの出番です。<--リンク
上記の式をコピペして極小値と書いてリターン。
X=1.41421の時に2.228と返ってくるはずです。
2.228が最悪条件ですので、幸いなことに一番多く発生する仮想粒子は円錐の側面を含み、円錐の中のエリアに飛んでいればBHに到達できると、そう判断できます。

しかしながら、この粒子のエネルギー量の2.228倍となった仮想粒子の存在可能時間は1/2.228倍となり、つまり円錐側面に沿った飛行距離がBH到達ぎりぎりという事になります。
そして、それを超えたエネルギーを持った仮想粒子はこの円錐側面に沿って飛行した場合はBHに到達できない、という事になります。
つまり、一番多く発生する粒子の振動数の2.228倍を超える振動数に対応したエネルギーを持つ仮想粒子が発生した場合はBHに到達するのはより難しくなる、という事になります。
それらの仮想粒子は所定の飛行コースには入っているのですが、飛行時間が足りない、航続距離が足りないという事が起こりえます。

この部分の効果、エネルギーがある値より高い、高周波側の仮想粒子がBHに到達しにくくなる、と言う要素は前回・14で提示した計算式には反映されていません。
したがってその効果を考慮にいれますと、BHの寿命は前回提示した計算式よりは多少は延びるであろう、という事になります。


以下、最悪条件X=1.41421の時の状況を確認しておきましょう。
Wolframを使います。
プランクの放射則を簡略化した式x^3/(e^(x/100)-1)を使います。(注2)
ここでxは振動数を表しています。
「x^3/(e^(x/100)-1) ,0<x<1500」<--こんな風に書いて入力するとスペクトルグラフが出てきます。

x=282にグラフのピークがあります。
この振動数の2.228倍ですと628になります。
0からその値まで積分します。
「0から628の範囲でx^3/(e^(x/100)-1)を積分」を入力、
答えは5.726*10^8です。
ちなみに2000あたりまでの積分でこのグラフは飽和し、値は6.494*10^8です。
ですので振動数628までですと88.2%ほどは問題なしですが、のこり12%程度は予想したエネルギー放射に届かないという事になります。

このような状況はXが1の方に、あるいは2の方に移動するにつれて改善されていくのは、「1から3の範囲で1.114X^2/sqrt(X^2-1)の極小値」と入力したグラフ形状から読み取る事が出来ます。
そうして付け加えますれば、もしそのグラフの値が1<x<3の範囲でどこでも4以上であったとすれば「ホーキングさんが考えたこと・14」で提示した式が何の修正をする必要もなく使えたという事であります。(注1

円錐の側面にそった場合の評価は以上ですが、円錐の中心線に沿った場合はどうなるのでしょうか?
その場合は、比率1.114X^2/(X-1)の極小値を調べればよい事になります。
WolframによればX=2で4.456がその値です。
つまり中心線近傍であればグラフは1<X<3にて4以上を十分にキープできている事になります。

振動数x=282*4.456=1256で同様に0から積分してみます。
「0から1256の範囲でx^3/(e^(x/100)-1)を積分」
答えは6.485*10^8で飽和値の99.86%をカバーしますので、中心線近傍では実質上の問題はなくなります。


以上、見てきましたようにX=1.41付近で条件が最悪となり、スペクトルグラフの高周波側に相当する仮想粒子群にロスが発生する事が分かりました。
これは結局ホーキング放射の出力を下げる事につながり、ひいてはBHの寿命が前回掲示した式での計算よりも多少延びるであろう事が予想されます。

注1
さて、当方の感覚からしますと、ここでは自然は、宇宙は妙に渋ちんに見えます。
真空が貸し出すエネルギーと時間の積の値が中途半端に見えます。
中途半端に周波数カットをしている様に思えて仕方がないのです。

「ΔE*Δt=h/2程度」では「太っ腹」ではありません。
ですからきっと宇宙はこの場合は「ΔE*Δt=h程度」と対応してくれているに違いないものと、密かに思っております。

注2
元々のプランクの式にはhとKbが入っていますが、それを1にします。
そうしてこの場合はホーキング温度、ではなく仮想温度Tを100に設定しています。
そうすると hν = 2.82 Kb・Tの式からピーク周波数が282となる事が分かります。

この層の10倍の温度を持つ仮想粒子発生層でも同様に考えます。
ピーク周波数は2820となりますが、後の議論は上記本文の繰り返しとなります。
そして各積分の値そのものは変わりますが、%で表された数値は変わる事はありません。
それが「プランクの式は温度に対しては形は変わらない」という事の意味になります。

ちなみに上記式に現れている hνのhは生のプランク定数であって、2*Piでは割られていませんが、幸いな事にこの部分のhが式の変形の所に現れる、という事はないのです。


・ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧<--リンク


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ダークマター・ホーキングさんが考えたこと・14・ホーキング放射のシミュレーション(2)

2019-03-21 21:55:27 | 日記
「ホーキングさんが考えたこと・13」でより具体的なホーキング放射のモデルを作る事ができましたので、離散的なホーキング放射のシミュレーションが可能になりました。
そうではありますが、BH質量が放射の量子性、離散性をを考量する必要がある前の段階では、従来の様な「古典的な連続放射モデル」がパフォーマンスに優れています。
それで以下、このシミュレーションモデルに従った場合の放射計算について述べていきます。

質量MのBHが単位時間に放射するエネルギーEは従来はこのように書かれていました。
E=σ・T^4*4・Pi・Rs^2
Rsは当該BHのホライズン半径、σがシュテファン=ボルツマン定数でありTは通常は熱力学温度ですが、ここにホーキング温度を代入します。
そして、σ・T^4の部分がStefan-Boltzmann の法則でありそれに放射体の表面積をかける事で全放出エネルギーEが求まる、そのように想定しています。

それに対して、ホライズン上空に多層に重なる仮想粒子放出層を想定するのが今回のやり方になります。
一番下の層は従来通りの記述になります。
そこから微小距離Δrだけ上に上がった放出層を考えます。
この層は上に上がった分だけ重力が弱まり、従ってその分ホーキング温度Tが下がる事になる、と言うのは前回の説明でした。
そうやってこうした放出層を何段にも積み重ねる事で、たとえばホライズン半径の2倍の地点にまで到達する事が可能です。

さてN番目の層までのBH中心からの距離をrとします。
このN番目の層の全放出エネルギーEを考えます。
それはStefan-Boltzmann の法則に従ってEr=σ・Tr^4*4・Pi・r^2と書くことができます。

ここで必要になるのはN番目の層の温度Trの値です。
そこで思い出す必要がある事は、ホーキング温度Tはその場所の重力の強さに比例する、という関係です。
BH中心から距離rの位置の重力の強さArはAr=G*M/r^2となります。
そしてその場所の温度Trは比例定数Bを使って、Tr=B*Arと書けます。

ホライズンでの温度をTsとし、その場所での重力の強さをAsとします。
ここでも当然Ts=B*Asが成立しています。
そしてAs=G*M/Rs^2です。

そうなりますとAr/As=(G*M/r^2)/(G*M/Rs^2)=Rs^2/r^2.
Ar=As*(Rs^2/r^2).
Tr=Ar*B=As*(Rs^2/r^2)*B=Ts*(Rs^2/r^2)である事がわかります。

その結果は
Er=σ・Tr^4*4・Pi・r^2=σ・(Ts*(Rs^2/r^2))^4*4・Pi・r^2になります。
ここで変数XをX=r/Rsとして導入し、上記をXを使って書き直します。
r=X・Rsであることに注意して
Er=σ・Ts^4・(1/X^2)^4*4・Pi・Rs^2*(X^2).
この式の前半が温度に関する部分で後半が仮想粒子放出層の表面積になります。

ところで、一番下の層では発生した仮想粒子の片方は必ずホライズンに飛び込むのでした。
しかしながら実はホライズンの接平面方向に飛んだ場合に限って、この粒子ペアはBHに吸収される事はないのです。
まあそれはそれとして、ホライズンから少しでも上空に離れますと、仮想粒子生成点を頂点として、BHホライズンに接線を引き、それをぐるっと一回しして出来上がる円錐の内部方向に発生した仮想粒子である場合のみ、BHはそれを吸収する事が可能となります。
その円錐を外れますと、仮想粒子はBHに吸収されることなく消える、という事になります。

さてこの円錐の一回しした接線と円錐の中心線のなす角度をΘとしますとこの円錐の立体角ωは以下のようになります。
ω=2π(1−cosθ)<--リンク

N番めの層を考えているので、その層までの距離はrです。
そうして半径Rsのホライズン球に対して距離rから接線を引き、円錐を作る事になります。
そうやってΘが決まりωを決める事が出来ます。

その状況全体を値Rsで割る事で球の半径は1となり、距離rはXとなりますが、Θとωの値は変わりません。
この状況でcosθはsqrt(X^2-1)/Xとなる事は絵をかいて確認をお願いします。
最終的にωはω=2π(1−cosθ)=2・Pi・(1-sqrt(X^2-1)/X)となります。

仮想粒子はペアで反対方向に飛び去る事を考慮してBHに飛び込める有効な粒子の割合はこの立体角を2・Piで割った値になります。
これが粒子発生を想定する球の表面積にかかる補正係数となりますから、N番めの層の表面積は最終的に
4・Pi・Rs^2*(X^2)ーー>4・Pi・Rs^2*(X^2)*(1-sqrt(X^2-1)/X)
に変わります。

以上からErは
Er=σ・Ts^4・(1/X^2)^4*4・Pi・Rs^2*(X^2)*(1-sqrt(X^2-1)/X)
↑=σ・Ts^4*4・Pi・Rs^2*(1/X^2)^4*(X^2)*(1-sqrt(X^2-1)/X)
↑=σ・Ts^4*4・Pi・Rs^2*(1/X^6)*(1-sqrt(X^2-1)/X)
↑=Es*(1/X^6)*(1-sqrt(X^2-1)/X)

こうして一番下の層、それは従来は全放出エネルギーを表す、とされていたものですがそれに所定の補正値をかける事でN番めの層の放出エネルギーを表す事が出来ます。
さて、それぞれの層の厚さはΔrとしましたがこれもRsで割る事によりΔxとなり、あとはこの層を足し合わせる、積分すれば補正値が求まる、という事になります。

「ホーキングさんが考えたこと・13」で示しました様に、ホライズン上空に2倍のホライズン半径にあたる距離までの放出層を考えればまずは十分であろうとしました。

ここでWolfram|Alphaさんの出番です。<--リンク
「微積分と解析 」を選んで「定積分」に行きましょう。
クリックすると何やら出てきます。
積分範囲と式(1/X^6)(1-sqrt(X^2-1)/X)を入力(コピペ)しましょう。
少々苦労するやもしれませんが、頑張ってみて下さい。

積分範囲1から2では   0.10124
積分範囲1から3では   0.10179
積分範囲1から無限では  0.10183
積分は発散ぜず、ホライズンからホライズン半径の2倍、X=3まで層を積み重ねれば十分である事が分かります。

従来方法ではEs=σ・Ts^4*4・Pi・Rs^2が単位時間当たりBHが放出する全放出エネルギーである、とされていました。
提案方法では補正係数0.10179を掛けたE=0.10179*Esが妥当であろう、という事になります。

こうして、BHの寿命は従来の約10倍にのびる事になった、とそういうお話であります。

注1
しかしながら、いずれにしましてもホーキング温度Tが熱力学温度Tと同等である、という証明はなされておりません。
そうでありますから、相対比較はこうして可能にはなりましたが、絶対値としての寿命はどうなんだ、という事については、「BHの放射を実測せよ」、あるいは「ほかの方法でホーキング温度Tが熱力学温度Tと同等である事を証明せよ」が答えになるかと思われます。

観測ロボットさんへ
ホライズン上のホーキング放射強さを1.0としたときX=1.1では0.329、X=1.2では0.150、X=1.25では0.105、X=1.5では0.0224となります。
上記の計算結果からわかる様に「ホーキング放射の起きている現場」はホライズンすれすれの所だけではなく、例えばホライズン上空の距離がX=1.25という場所でも放射現象は起きておりそれを観測するのはそれほどに「命がけ」という事でもない、ということであります。

ちなみにBHの発光の様式、空間発光でしかも指向性を持つような発光体と言うものは人類は今までに遭遇した事が無く、非常に特異的な発光パターンが観測できると予測されます。
それはホライズン中心部からはとても強い光のビームが出ている、それはまるでこちらに照準を合わせているかの様にも見えますが、それに対してホライズン周辺部からはあまり光が出てこない、そういう特異的なパターンを示しますので、まず見間違うという事は起こらないと予想できますので、以上の事をご確認の上測定をされますようによろしくお願いします。

注2
Wolframで1から1.0001を積分範囲として指定し、実行して「積分の視覚的表現」を見てみると、それぐらいホライズンに近くて薄い層を指定すれば「補正係数は1と出来る」という事が一目瞭然、とても良く分かります。
そしてそれがホーキングさんが世界で最初に見た状況であると思われます。


・ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧<--リンク

PS
イチロウが引退したみたいだ。
少しショックだけれど「お疲れさん」のコトバを贈りましょう。


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ダークマター・ホーキングさんが考えたこと・13・ホーキング放射のシミュレーション

2019-03-21 15:25:23 | 日記
論文と言うのはちゃんとまじめに読まなくてはいけません。
「Hawking 輻射とブラックホールの蒸発」山内さんに書いてありました。
『Schwarzschild ブラックホールの表面重力は κ = 1/4M であるので,T = 1/ 8πM となる.
今まで1として扱ってきたプランク定数h と光速 c,重力定数 Gを復活させるとT=hc^3/8πkBMGとなる.(kB はボルツマン定数)』

ホライズンの位置での重力の強さを κと書いてκ = 1/4Mとしています。
ホライズン半径Rs=2*G*M/C^2、そうしてその場所でのBHの質量Mによる重力加速度をkとするならばk=G*M/Rs^2となります。
従ってホライズンでのkをksとするとそれは結局ks=C^4/4GMとなります。

つまりホーキングさんがやったのは、本当にホライズン上の無限小上空での微小な厚さΔでの解析結果であります。
そこでの解析結果として「黒体放射スペクトルを得た」と言っているのです。
そうして、そうであるならばBHは黒体と見なせ、その表面温度はT(K)である、従って後は「Stefan-Boltzmann の法則より云々」とそうなったのでした。


しかしながら実際はその上の層も重力を受けて仮想粒子の対生成をしており、またさらにその上もそうなっていて、そうして発生した仮想粒子がその存在時間中にホライズンにまで到達できる位置まで、ホライズン上空にそうやっていくつもの層が重層的に重なっており、本来はそれらの全ての層からの放射を足しこまなくては、積分しなくては全放射エネルギーは求まらないのでした。

そうして、そのように考えますれば、BHから離れて放射を観測する観察者にとっては、それはもはや「黒体放射スペクトルとはとても呼べないようなスペクトル」になる事は明らかな事であります。
何故ならばホーキング温度Tは所定の比例係数とその場所のでの重力の強さkとの積で表され、kはそれぞれの層が存在する位置がBH中心からどれほど離れているか、その距離をrとすれば、rの関数k=G*M/r^2となるからであります。
ちなみにホライズン半径Rsでの重力強さはksでしたがホライズン半径の倍の位置の重力強さは(1/2)^2*ks、距離が3倍ですと(1/3)^2*ksとなります。
(BHの質量Mによらないので、この表現方法は便利です。)

さてそうなりますと、ホーキング放射を出している一番下の層の温度が一番高く、その上の層の温度はそれよりも少し低く、その上はもっと低く・・・そうやっていくつもの層の重なりでのそれぞれの温度を算出し、その温度での放射スペクトルを仮想粒子がホライズンに届くかどうかを確認しながら、その各層のスペクトルを全部足しこんで、ようやく質量Mの時のBHの放射スペクトルが求まる、そういう事の様です。
そして、その放出層の積分に似た和分を取る範囲はホライズンからちょうどホライズン半径分だけ上空まで行えば実用上は問題がなさそうであり、厳密に、というのでもホライズン半径の2倍までの上空で十分の様に思われます。

各層のスペクトルを足しこむ際には、その層が持っている表面積がホライズンの表面積の何倍にあたるか、それを比例乗数としてその層のスペクトルにかける事を忘れてはいけません。
加えて粒子発生層がホライズンから離れるに従って、対生成した仮想粒子の片方が何時もすべてホライズンに向かう、とは限らず、ロスが発生する事も考慮する必要があります。

このような各層ごとのスペクトルの足し合わせ、と言うのは当該のBHには常にホーキング放射で失われたエネルギーが外部から補給される、つまり外部と熱平衡状態にある、という事を前提にしています。
実際にはそのような状況は例の2.7Kの宇宙放射とつり合いにあるBHでしか実現されていませんが、質量MのBHの実際のホーキング放射スペクトルを求める、というのであれば、そのようにするのが妥当であります。

そうして、そのようにして足しあわされたスペクトルはもはや黒体放射スペクトルの形状ではなくなり、そうしてそのスペクトルの持つ意味も本来の分光放射輝度I(v、T)と言う意味ではなく、BHのホーキング温度Tに対応した周波数別の放射の相対確率と見なすべきものへと変わります。<--リンク
そうやってBHの質量Mの数値ごとにスペクトルで表された周波数別の放射確率を決定する事ができます。
それができましたら、あとは仮想粒子の対生成が起こる位置、そして放射の起こる方向、それから周波数(つまり仮想粒子が持つことになるエネルギーの大きさ)それについてはスペクトルとして表された相対確率の大きさを考慮しながら、モンテカルロ法を使ってホーキング放射をシミュレートする、という事が可能になると思われます。

注1
上記でも述べましたが、各層のスペクトルを足し合わせた形状は温度Tの黒体放射スペクトルに対してピーク位置は周波数が低い方にずれ、また周波数の高い方のスペクトルは低い値に抑制された形になります。
つまり、温度Tの黒体放射を想定した場合よりも全放射エネルギーは抑えられる、したがってBHの寿命はその分だけのびる、という事になります。

注2
スペクトルを足し合わせたものが相対確率になる、と書きましたが、これは質量M1の時のスペクトルと質量M2の時のスペクトルを比較すれば相対的にどちらの場合の方が放射が起こりやすいかは決める事ができる、つまり放射効率の比較はできる、という意味になります。
しかしながら、絶対値としてのBHのホーキング放射効率、質量MのBHの時間当たりのホーキング放射での全放射エネルギーについては実測値は存在せず、したがって計算で得られた相対確率に時間をいれて放射効率(W)とする事は今のところは出来ない、という事になります。
それでも量子論で「あからさまにWが明示されたホーキング放射の計算」が出来るのであれば話は変わってくるのでしょうけれど。
それもなかなか難しいものと思われます。

注3
以下、ご参考までに。
「重力崩壊するダスト時空の量子化による 厳密な Hawking 輻射の導出」<--リンク
『・・・先ほどは地平面付近で近似をしたが、厳密な積分は級数展開することによって求められる。
最も優勢な項が (23) 式を与え、その他の項は補正項となる。
|β| 2 に対する最もの単純な補正項を計算すると、 |βωω′ | 2 ( 1 + 4 (3 + 10E) 2 ) (24) などとなる。
これは Graybody factor と言われる Planck 分布に対する補正因子となる。』

ホライズン上空に多層に重なる放射層を考えると、ホーキング放射は黒体放射スペクトルからずれる、というお話の様です。


・ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧<--リンク


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ダークマター・ホーキングさんが考えたこと・12・マイナス質量のBHについて

2019-03-17 03:26:42 | 日記
相対論は座標変換の話、EMANの物理ではそういっています。
そうして、やっぱり頭が混乱します。
この状況は量子論の意味を考えると頭が混乱する事に似ています。
(量子論の意味=物理的実在というしろもの)

さて「ホーキングさんが考えたこと・6」で「そうして我々の宇宙は別にマイナス質量のBHの存在を禁止している様には思えないのです。」と書きました。
まあ言いっぱなし、というのも何ですから、それなりにこのBHの事を考えてみるとしましょう。

さて、我々がBHを作ろう、と言う時には通常は「ホライズンの内側に物質を閉じ込めればよい」のでした。
重力頼りでそれを行うには、太陽の3倍程の質量の星を用意して、重力崩壊させる。
それでBHの一丁上がり、という訳です。

もう一つは宇宙の始まりの時に、空間の揺らぎ、物質存在の揺らぎ、この関係で質量密度が一定値を超えるとBHになる、これを原始BHというのでした。
その場合は特にBHのトータル質量には制限はなく、軽いBHも誕生可能という事です。


それでここにマイナス質量の物質があったとしましょう。
その物質はお互い同士反発しあいますから、それをひとまとめにしておくには力が必要です。
そうして、その力を次第に強めていくことでマイナス質量物質の密度を高め、ホライズンの中に押し込めばマイナス質量BHの一丁上がり・・・となるかどうか、調べてみなくてはいけません。

さてそれでここは「シュワルツシルト解のお世話」になるとしましょう。<--リンク
ちなみにこの解を求める時に「質量MはM>0でなくてはならない」などと言う条件はどこにも書いてありません。
従いまして、M<0であってもこの解は有効である、と判断できそうです。
ご参考までに「この解の求め方がEMAN物理」にありますので、参照願います。<--リンク


まあこの解の結果としてホライズン半径RsがRs=2*G*M/C^2となるのでした。
さて、そうであればまずはここにマイナス質量物質を1kg、用意しましたのでそのホライズン半径を求めてみましょう。
Rs=-1.49*10^-27(m)

大きさの絶対値はプランク長よりだいぶ大きいので、「それなりの力持ちの方」であれば握りつぶせば何とかなりそう、ではあります。
しかしながら問題はそこではなく、Rsにマイナスが付いている事でありましょう。
この事はつまり「握りつぶし法」では「マイナス質量のBHには達成不可能である」という事を示している様です。
マイナス質量物質を「体積ゼロ、質量密度無限大」にまで握りつぶしてもその大きさは「ゼロ」でしかなく 0>-1.49*10^-27(m)でありますから。
別のやり方を探すのが賢明というものです。


そこで登場するのが「ホーキングさんが考えたこと・6」で示した「トンネル・ホーキング放射法」であります。
まずはBHの外形をプラス質量で確保しておく。
そのあとでBHの中心にある特異点の質量をプラスからマイナスへ一気にジャンプさせる、というものです。(注1)
この方法であれば、マイナス質量の物質を集めてきて握りつぶす、という方法を取らずにマイナス質量のBHが完成しそうです。

そしてもしこのBHにホライズンがあるとすれば、それは我々の暮らすこの3次元世界ではなく、どうやら別の世界にある、という事になりそうです。
それはつまり「このBHは我々の世界ではホライズンを持たない」という事でもあります。

PS
以下、マイナス質量のBHがホライズンを持たない、という事の別の表現になります。

通常はミンコフスキー空間はシグネチャー(-1、+1、+1、+1)を持つとされている様です。<--リンク
そうして、我々が暮らす空間はこのミンコフスキー空間であって、それゆえに空間軸と時間軸が区別できる様です。

そして通常はこの空間でのシュワルツシルト解の形はEMAN物理にある様にdw(=dt)の前の係数符号がマイナスでありdrのそれはプラスになっています。
しかしホライズンを超えてBHの中に入るとこの符号が逆転します。
それはつまり、BHの中はミンコフスキー空間ではない、ということであって、ホライズンはこの2つの空間を分ける役割をしている様です。

さて、マイナス質量をもつとされるBHの場合はこの関係はどうなるのでしょうか?
係数符号の動きを+∞から中心にある特異点まで、距離rを変えながら調べますとdw(=dt)の前は常にマイナス、drの係数は常にプラスである事がわかります。
それはつまり、「特異点に至るまでミンコフスキー空間が続いている」という事であり、したがって「そこにはホライズンは存在しない」という事になりそうです。

そして「トンネル・ホーキング放射」で特異点の質量がプラスからマイナスにジャンプすると同時にホライズンが消滅し、BH内の空間もまたミンコフスキー空間に切り替わるのであります。
そうして、ホライズンを持つことをBHと呼ぶ条件であるとするならば、このBHはもはやBHとは呼ぶ事は出来ず「マイナス質量をもつ裸の特異点」と呼ばれる事になりそうです。

(注1)
特異点質量のプラスからマイナスへのジャンプについて
我々の感覚からすると「質量がプラスからマイナスへジャンプする」などという事はなかなか受け入れる事が難しいのです。
「どうしてそんな事が出来るのだ」という疑問が先立ちます。
しかしながら、それでいてホーキング放射でBHの質量が順次減っていく事にはあまり疑問を持ちません。
「エネルギーが出て行ったのだから、その分質量が減るのは当然だ」ととらえています。

しかしながらよおく考えますれば、放射の前後で両方ともに質量がプラス領域にある、とはいえホーキング放射によって中心にある特異点の質量がMからM-αにジャンプするメカニズムは実の所、何もわかってはいないのであります。
ただそのような現象が起きている、という様に認めているにすぎません。
そうして、その時でさえ質量はMからM-αにジャンプしているのですから、そのようなジャンプはホーキング放射の結果としては当然起こるものであるとBHは思っている事でしょう。
そうして当該のBHにとっては、BH人生での最後のジャンプがたまたまプラス領域からゼロをまたいでマイナス領域へのジャンプであった、という事にすぎないのであります。


・ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧<--リンク

http://archive.fo/JciAt
http://archive.fo/g1qn0
http://archive.fo/XdjFY
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ダークマター・ホーキングさんが考えたこと・11・ブラックホールの寿命計算について(2)

2019-03-14 00:40:36 | 日記

以下の議論については「Hawking 輻射とブラックホールの蒸発」山内さんを参照しながらのものになります。
しかしながら、最初におことわりしておかなくてはならない事は、これは上記論文への批判ではない、と言う事であります。
ただ単にこの論文が「ホーキング放射とBHの寿命」についてよく分かる説明をしているから参照しているのであって、他に他意はございません。
その意味では論文著者の山内さんには感謝する次第であります。

さてまずは重力場での粒子生成についての部分です。
所定の重力がある場所では仮想粒子対の生成と消滅が、重力場のない空間よりも頻繁に起こっている、そう解釈できそうです。
但し通常は不確定性原理で許される存在時間しか、仮想とはいえ、存在できない様です。

しかしここにBHに起因するホライズンがあると、対生成した仮想粒子の一方が「必ず」ホライズンに飛び込むので、その相方の粒子は実粒子化しホライズンから離れてゆく、つまりこれがホーキング放射である、そう言っておられます。
そのようにして多くの粒子がホライズン近傍の空間から飛び出してくる、それをエネルギー別に数え上げてみるとなんと黒体放射スペクトルと一致するではないか、これがホーキングさんが見つけた事の様であります。
そうして、その際にプランクの法則と照らし合わせる事でプランク則の温度Tに相当する部分が
T=h*C^3/(8*pi*Kb*M*G)
こんな風に書ける、と言う事でした。

そうして、「それじゃあBHは黒体と見なせ、その温度が計算できたのだから、エネルギー放射も計算できるよね」と言う様にロジックがつながっていくのでした。
しかしながら、T=h*C^3/(8*pi*Kb*M*G)が本当に従来使われていた温度と同じものなのか、そこがどうも怪しい、と言うのが最初の疑問です。

確かにその量を温度としてプランク則を使えばホライズン近傍から出てくる粒子のエネルギー分布は求められるのでしょうが、そのエネルギー分布を得るのにどれくらいの時間が必要だったのか不明の様です。
1秒でそれだけの粒子が飛び出してきたのか、それとも1時間観測しないとエネルギー分布のグラフが「連続したグラフ」にならないのか、いいかえますと単位面積、単位時間当たりにホライズン近傍の空間から外に向かって(あるいは観測者に向かって)飛び出す粒子数が不明である様に見えます。

そこの所が不明のまま、「いやこれは温度と見なせるから云々」というのでは、どうにも納得がいかないのです。

そうして、2番目は「ホライズン近傍」というあいまいな場所の定義です。
一体その層の厚さはどれくらいなのか?
そうして、その層はいわゆる「ホーキング温度T」で厚みがかわるのかどうか、そこが不明です。
粒子が放出される真空層の厚みは、不確定性原理によって制限を受ける事になる仮想粒子の到達距離との関係で重要になる所です。


さて、以上の様に不明なところがあるのですが、まあある程度の前提をおきながらの概算計算を以下に示します。
但しこれは一応のめどであり、「こんな風になるかなあ」程度のものとお考え下さい。

前提としては、諸式運用は従来のやり方を踏襲する。
但しホライズン上空の粒子が発生する真空層の厚さは不確定性原理による制約をくわえるものとする、という事になります。

発生する平均的な粒子一つ当たりのエネルギー、これは温度Tに比例すると考えてよさそうですが、そのエネルギーが倍になれば存在時間は半分となり、従ってほぼ光速で移動すると考えられる仮想粒子の走行距離は半分となる。
そうなると、粒子が発生する事になる真空層の厚さは半分になると仮定するのが妥当の様に思われます。

計算のスタートとなるBHの質量をミニBHとしてずうっと取り上げてきたM=1.73*10^11Kgとします。
この質量は従来計算ですと「ビッグバン直後に作られ、今頃蒸発するはず」のBH質量になります。

このBHが出来た直後のBH温度TはT=7.09*10^11(K)です。
その時の典型的なニュートリの走行距離は3.25*10^-15(m)であり、これがホライズンへの到達限界距離となります。
(これは陽子直径の8分の1程度の距離になります。)

このBHの温度がホーキング放射を出す事によって質量がへり、温度上昇してちょうど2倍の値になると、仮想粒子の到達距離は半分になる事になりますが、これを計算式の中に含めなくてはなりません。
その比例係数をRkとしますと、それは従来の温度Tでの全放出エネルギーE(T)を表すもの、それはStefan-Boltzmann の法則そのものでありますが、それに掛け算され、Rk*E(T)が修正された全放出エネルギーを表す事になります。

そしてその比例係数Rkは、今回はRk=(7.09*10^11)/Tという形になります。
つまり、計算スタート時には修正式を使った放出エネルギー計算は修正前のものと同じ値になる、但し温度上昇に従ってその値は徐々に少なくなる、と言う様になります。

この修正をくわえて、以下の諸式運用は前掲の論文に従って行ってください。
以下結果のみを示します。

修正前のBHの寿命式:A
t=(8.41E-17)*M^3(Sec)

修正後のBHの寿命式:B
t=123800000/(7.09*10^11)*M^2(Sec)

M=1.73*10^11Kg(今回のスタート条件)の時の寿命。
A式ーー>t=435445999700000000sec=138億年(宇宙年齢と同じ)
B式ーー>t=5227314502983070000sec=1658億年
修正式BによればBHの寿命は12倍に伸びます。
ちなみに修正式Bによれば138億年で寿命となるBH質量は0.5*10^11Kgとなります。

M=250000Kg(250トン)に到達してから・・・寿命まで。
A式ーー>t=1.314sec
B式ーー>t=10916073sec=126.3日
A式では「爆発的」ですがB式では「それほどでもない」のです。

ちなみにB式で1.32秒経過後に寿命となる質量は87Kgです。
この質量が1秒強でエネルギーに変わるのですから、地球上では「すさまじい爆発」と言う事になりますが、さて宇宙規模で考えますと「線香花火」でしょうか。
とてもガンマー線バーストと呼べるような現象につながる様には思えません。


以上の計算は「まあこんな事も考えられるので、もう少し真面目にBHの寿命計算はしないといけないよね」という例題であり、参考資料と言う事になります。

注1)
上記の修正式Bは基準点にBH質量M=1.73*10^11Kgを使っていますので、この質量以下のBHの寿命推定は出来ますが、この質量をこえるBHについては新たにその質量を基準点として、上記の考え方でキャリブレーションし直す必要があります。
つまり、この修正方法は2つの計算方法のスタートラインを合わせる質量によって、いくらでも異なる修正式が生まれる、と言う事です。

この任意性をなくすためには、重力場がある真空での単位体積あたりに生じている仮想粒子対のエネルギー分布とその個数、つまりは単位体積当たり単位時間で生じる仮想粒子対についての量子論からの計算結果が必要である、と言う事になるのです。

それができていれば、後はホライズンからの距離を考慮してホーキング放射の全エネルギーをStefan-Boltzmann の法則を使う事なく決める事が出来ます。
つまりはBHの寿命を正確に決定できる、と言う事になると思われます。

注2)
そしてBHが消えるかどうかの瀬戸際、ホライズンの半径が100プランク長を切る辺りからは、このホーキング放射プロセスは古典論近似計算からはなれて、離散的、確率的に計算を進める事が必要だと思われます。
そうやって何が起こるのか、本当にBHが消える事が出来るのかどうか、確認する事が必要であります。


以上の内容についてのコメント、ご感想などは
・不確定性原理と仮想粒子の対生成までお願いします。<--リンク


http://archive.fo/bh930
http://archive.fo/GW7V0

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