宇宙論、ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論

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その4・ブラックホールの寿命計算

2023-04-05 09:04:47 | 日記

さて次は『2、BHのホライズン上での重力の強さから計算される典型的なエネルギーをもつ仮想粒子(=光)の波長はホライズン直径の14倍になっている。

つまりホライズン上で発生した仮想光子は自分の波長よりも小さなBHに吸収されなくてはならない。

つまり「発生した仮想光子は100%、BHに吸収される事はない」=「ホーキング放射はその分、出力が低下する」のである。

そうしてその吸収確率はBHによるレイリー散乱の確率に似たものと推定できる。』についてです。

 

さて、まずは「BHに入れる光の波長はBHホライズンの直径が上限である」と想定し、話を進める事とします。

つまり「BHの直径よりも大きな波長をもつ光はBHには入れない」とするのです。

その場合、その限界波長はどれぐらいになるのでしょうか?

 

質量MのBHのホライズン半径RsはRs=2*G*M/C^2 .でした。
直径が限界波長 λ になりますから限界波長 λ=4*G*M/C^2 です。
その時の λ に対応する光の限界周波数 ν は ν=C/λ=C/(4*G*M/C^2)=C^3/(4*G*M)です。

そしてその時のBHのホーキング温度TはT=ℏ*C^3/(8*pi*Kb*G*M)。
プランク則よりその温度の時の最も多く放出される光子の振動数νpは (生h)*νp = 2.82*Kb*Tから
νp=(2.82*Kb*T)/(生h)
生h=ℏ*2*Piを代入して
νp=(2.82*Kb*T)/(ℏ*2*Pi)
上式にT=ℏ*C^3/(8*pi*Kb*G*M)を代入して整理すると
νp=(2.82*C^3)/(16*Pi^2*G*M)

次にνがνpの何倍になっているか調べます。
レシオRはR=ν/νp=(C^3/(4*G*M))/((2.82*C^3)/(16*Pi^2*G*M))

整理して
R=(4*Pi^2)/2.82=13.99942≒14

そういうわけで、BHが受け入れ可能な光子の振動数はBHのホーキング温度Tで計算される黒体放射スペクトルのピーク周波数νpの14倍以上からである、と言う事が分かるのでした。

その事は又、波長 λ =C / 周波数ν ですからBHが放射するホーキング放射で最も多く放出される光子の振動数νpのもつ波長 λp はBHの直径の14倍、という事になります。

つまりは「発生する主なホーキング放射の波長に対してBHの直径は14分の1でしかない」という事になります。

 

さてそれで、ホーキング放射が起きる為にはまずは仮想粒子、但しこの場合は仮想光子になりますがそれがBHに入らなくてはなりません。

しかしながらBHの大きさの14倍もある波長の光がBHに入る事ができるのでしょうか?

BHが相手を吸収できるのはBHのホライズン直径以下の大きさのものに限る、とは従来からの当方の主張であります。

そうであればここでもその様に主張しなくてはなりません。

しかしながら今回、吸収するべき相手は波長と言う大きさを持つ波です。その様な波に対してどのように考えればよいのでしょうか?

 

それで注目すべきは「仮想粒子のBHによる吸収は、BHによる仮想粒子の観測である」という見方です。

この場合、吸収されるべき相手は仮想粒子の波動関数であり、それがBHによって観測される=吸収されるのです。

そうしてその際に起こっている事は「観測による波動関数の収縮」です。

つまり「広がったままでの波動関数ではBHの中に納まりきれませんが、それが観測によって光子に収縮する、そうなれば光子の大きさはプランク長とみなせますので、BHのサイズがプランク長を下回るまで光子はBHの中に入れる」とそういう事になります。(注2)

 

それで次は仮想粒子の波動関数の2次元の広がりをSとすればそれはBHの半径Rsを使って次の様に表せるであろう、となります。

S=pi*(14*Rs)^2

それに対するBHの2次元の広がりは Pi*Rs^2 と表せますから散乱効率=吸収効率は(注1)

吸収効率=(Pi*Rs^2)/ (pi*(14*Rs)^2)

=1/14^2

=0.0051

となります。

つまり「波長の長い仮想粒子の波動関数をBHが取り込める確率は200分の1程度」という事になるのです。

これによって従来の寿命式よりもBHの寿命は200倍に伸びる事になります。

 

注1:散乱効率(散乱断面積との関係): https://archive.md/Va63T :

『単一粒子が一様な入射光に照射されるとき,全方向に散乱される光の総エネルギーを入射光強度で除すると面積の単位を有する量が得られる。これをその粒子の散乱断面積という。つまり入射光強度に散乱断面積を乗ずると散乱光の総エネルギーが得られる。散乱断面積と粒子の投影面積との比を散乱効率という。・・・』

参考文献:「光の散乱」テキスト : http://fir.u-fukui.ac.jp/thzlab/files/Lectures/Tani/optical_scattering.pdf :

散乱効率を考える場合、入射する光は平面波として扱います。そうしてその光を散乱する事になる対象物が入射してくる光に対してもつ2次元の大きさ=散乱断面積を考慮して、散乱効率がもとまります。

この考え方をBHに吸収される事になる仮想光子にあてはめたものが、上記の議論内容です。

注2:BHの直径が1プランク長未満になったらどうなるのか?

仮想光子がBHに衝突してそこで観測が行われたとしても、その結果、波動関数が収縮したとしても、そこに現れる仮想光子の大きさは1プランク長程度。

そこで見方は2つに分かれます。

従来からの当方の主張では「光を含めてどのような仮想粒子も直径が1プランク長未満のBHには入れない」と言うものです。

そうしてもう一つの見方は「ある確率で1プランク長未満の小さなBH内にそれより大きなサイズの1プランク長の仮想光子は入る事が出来る」とするものです。

それでその場合、これは「トンネル効果に似た現象」としてとらえる事が出来そうです。

さてそれで「事実はどっちだ?」と聞かれても今のところは誰もその答えを知りません。

ちなみにこのあたり通説の寿命式では仮想光子の大きさはゼロ、つまり「点粒子」としていますので「BHのサイズがどれほど小さくなっても仮想光子はそのBHの中に100%入れる」として計算しています。

 

追記:ホーキング計算機による確認 :https://www-vttoth-com.translate.goog/CMS/physics-notes/311-hawking-radiation-calculator?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc

質量を「1地球質量」で入力

BHの半径が0.00887mとなる。

この2倍がBHにはいる事ができる光の波長の上限になる。

上限波長=0.01774m

その時にプランク則よりその温度の時の最も多く放出される光子の振動数νpから求めたホーキング放射波長は0.24836m(上記波長を14倍したもの)

他方でホーキング計算機は「Peak photons」として同様の計算を行っている。

但しデフォルトの単位が「eV」になっているので、これをmに代えると

Peak photons 波長=0.178617m

を得る。

一方で本文計算での結果は0.24836m

オーダーは合っているものの数値が微妙に違っている。

これは本文計算での黒体放射のピーク位置は周波数でとらえているのだが、ホーキング計算機はそれとは違う方法でピーク位置を計算している事による。

それで、ホーキング計算機の数値を使うならば倍率14倍は

0.178617/0.01774≒10.07≒10.1倍

という事になる。

以上、ご参考までに。

ちなみに黒体放射光のピーク位置については: https://archive.md/Nh670 :を参照願います。

 

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧

https://archive.md/35Lem

 

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