宇宙論、ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論

ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論 etc etc

中間まとめ・ブラックホールの寿命計算について

2023-05-26 01:54:16 | 日記

このあたりで一応ここまでやってきた事を振り返っておきます。

まずは通説で無視されている、BHがホーキング放射を出すにあたって単位時間にBHが出すエネルギーを制約すると思われる4つの要因をあげました。

その最後にあげたものが「BHがホーキング放射を出す事で動き回る」という事に起因して生じる「相対論からの制約」でした。

その制約はBHの質量が1プランク質量程度よりも大きい場合には無視できそうですが、それを切ると無視できなくなる様でした。

それでその制約条件を定式化したものが「ホーキング放射の一般解」として求められました。

これによって「BHはホーキング放射を出す事ではマイナスエネルギー側にジャンプする事はできない」という事が明らかになりました。

 

ちなみに「通説の寿命式ではBHはマイナスエネルギーにジャンプしない」を前提として導かれていますが「何故ジャンプしないのか?」に対する回答を提示できません。

通説に従うならば「BHはマイナスエネルギーにジャンプするのが自然」であり「そうしてようやくホーキング放射を出さなくなるから」であります。

この事については今まではだれも指摘してはいませんでした。

しかしながら当方はその事についてはかねてから疑問に思っていました。

それでその事を調べますと「BHがホーキング放射を出す事で動き回る」のであるが「その時には運動量保存則が満たされる必要がある」という事から「ホーキング放射を出す事ではBHはマイナスエネルギーにはジャンプできない」という所までは分かっていました。

そうしてその事をベースとして今回はさらに相対論的に状況を正確に記述する事で「ホーキング放射の一般解の導出」に至りました。

そうであれば「ホーキング放射の一般解が求められたのは今回が初めて」という事になります。

 

さらにこの「相対論によるホーキング放射の規制」については「発生する仮想粒子の幾何学的な大きさについては何も言及していない」という事に注意が必要です。

つまりは「発生している仮想粒子の大きさ」については「通説が前提としている、仮想粒子は大きさがない点粒子である」という前提であっても「仮想粒子には有限の大きさがある」という前提であっても「その事とは無関係に相対論による規制は同じように働く」のです。

そうしてまた「相対論による規制」ですから「今までの物理学に何か新しく前提条件を追加した事により発生した規制ではない」という所がポイントになります。

つまりは「BHがホーキング放射を出した反動で動き回る」のであればこの制約条件は「どうしても無視する事が出来ないホーキング放射の制約条件になる」という事です。

あるいは「明示できるホーキング放射の制約条件の中では一番基礎にあるもの」が「ホーキング放射の一般解である」と主張できます。

ちなみに従来からの当方の主張である「BHの直径が1プランク長を切ったBHには大きさをもつ仮想粒子は飛び込めない」=「そこでBHはホーキング放射しなくなる」ゆえに「BHは消滅しない」という事とは独立して存在しているものが「相対論によるホーキング放射の規制条件である」と言えます。

 

さてこうして「仮想粒子には大きさがない」という通説の前提に立った場合でも「相対論によるホーキング放射の規制」は働き、その結果は「静止しているBHはホーキング放射では消滅しない」という結論に至るのでした。

 

ちなみに「BH消滅不可能定理」は定性的なロジックの組み立てから導かれたものです。

そうしてそのロジックを「静止しているBHに展開した結果得られたもの」が「ここまでで導出されたBHの近似寿命式」という事になります。

そうしてその寿命式をみることで「どのような状況でBHが質量を減らしていくのか」がある程度理解する事が可能になりました。

以上がここまでの一応の「ブラックホールの寿命計算の中間まとめ」となります。

 

追記:BHがホーキング放射の反動で動き回る件についての論文など:

たとえば以下の様な論文がArxivプレプリントサーバーに投稿されています。

Hawking-Radiation Recoil of Microscopic Black Holes
Samuel Kov´aˇcik

2021年 NOV 3 Arxiv

Abstract
Hawking radiation would make microscopic black holes evaporate rapidly,which excludes them from many astrophysical considerations. However, ithas been argued that the quantum nature of space would alter this behaviour:the temperature of a Planck-size black hole vanishes, and what is left behind is a Planck-mass remnant with the cross-section of ≈ 10−70m2 , which makes a direct observation nearly impossible. Such black hole remnants have been identified as possible dark matter candidates. Here, we argue that the final stage of evaporation has a recoil effect that gives them a velocity up to ≈ 10−1 c. This would lead to a disagreement with the cold dark matter cosmological model unless the primordial black hole formation ceased shortly after the inflation era.

『微小なブラックホールのホーキング放射による反動効果:
サミュエル・コヴァチック』

『要約:
ホーキング放射によって、微小なブラックホールは急速に蒸発し、多くの天体物理学的な考慮から除外されます。

しかし、空間の量子性がこの振る舞いを変える可能性が指摘されています。プランクサイズのブラックホールの温度はゼロになり、残されるものはプランク質量の残骸であり、その断面積は約10^-70m^2です。このため、直接観測はほぼ不可能となります。このようなブラックホールの残骸は、暗黒物質の候補として考えられています。

このレポートで主張されているのは、蒸発の最終段階において(訳注:ホーキング放射の)反動効果があり、これによって残骸は速度約10^-1cまで獲得するというものです。

この結果は、冷たい暗黒物質宇宙論モデルとの整合性に疑問を投げかけます。

ただし、原始ブラックホールの形成がインフレーション時代の直後に終了した場合を除きます。』

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

世の中には当方と同じような事を考える方が居られるものです。

しかしながらこの方のレポートに先立っての当方のレポート

https://archive.md/51ZAJ

「ダークマター・ホーキングさんが考えたこと・21・BH(ブラックホール)が質量を減らす方法(2)」2019年4月29日

ですでに

『・・・そうでありますからここは前回取り上げた「ホーキングさんが考えたこと・16」での例、プランクスケールに到達したBHが出す事になるホーキング放射の例に戻ってこの事を検討する事としましょう。

・・・

従ってこのBHは光速の13%程度で自分がホーキング放射したニュートリノとは反対方向に走り出す事が分かります。』

が存在していました。

つまりは「プランクスケールのBHが光速の13%ほどで走りだす」という報告は「当方の方が2.5年ほど早かった」のです。

ま、一応こうやって「当方の主張は単なるArxiv論文のパクリではない」という事を示しておくのもそれほど無駄な事ではないでしょう。

 

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧

https://archive.md/rPMpY

 

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その7-6・静止しているブラックホールの寿命計算

2023-05-23 12:27:50 | 日記

「ローパスフィルターになったBHについての寿命式の導出」の3

4.補正係数R(X)の寿命式への導入

前のページで出された補正係数R(X)を寿命式に入れる事でローパスフィルターになったBHの近似寿命式が出来ます。

手順は「その7-3・静止しているブラックホールの寿命計算」で示した単位時間あたりにBHがホーキング放射で出すエネルギーを示している式に補正係数R(X)をかけます。

 その式は 1/(15360*M^2*(pi)) でした。

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=1%2F%2815360*x%5E2*%28pi%29%29

最初のグラフではM=0の時に出力エネルギーが発散する事を示している。

しかしながらそこでの継続時間がゼロなので、出力エネルギーは発散しません。

2番目のグラフはそのあたりの状況が分かる様に拡大表示されている。

これを見ると2プランク質量あたりからホーキング放射で出てくるエネルギーが増加し始め、1プランク質量ではすでに暴走状態になっている事がわかるのです。

この式に補正係数R(X)をかけます。

R(x)=9.9294*x^4

こうして修正された単位時間あたりにBHがホーキング放射で出すエネルギーを示している式が出ます。

修正式=1/(15360*M^2*(pi))*R(x) 

 =9.9294*M^4/(15360*M^2*(pi))

=9.9294*M^2/(15360*(pi))

このあとの手順は 通説の寿命式導出の手順を示した「その5-3・ブラックホールの寿命計算」に戻ります。

 

ブラックホールが単位時間あたりに放つエネルギーを質量の欠損によるものとして

 E=M*C^2 より

 dE=dM*C^2 

C=1 なので

dE=dM

従って単位時間当たり(=1プランク秒あたり)のBHの質量減少率は

-dM/dt=E

=1/(15360*M^2*(pi))*R(M)

=9.9294*M^2/(15360*(pi))

と通説の諸式運用ではそうなっていますのでこれに従います。

変数分離をすると

15360*(pi)/(9.9294*M^2)dM=dt

 

左辺をウルフラムで定積分すると寿命がでてくるのでした。

15360*(pi)/(9.9294*x^2) の0から0.5まで積分

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=15360*%28pi%29%2F%EF%BC%88%EF%BC%99%EF%BC%8E%EF%BC%99%EF%BC%92%EF%BC%99%EF%BC%94%EF%BC%8A%EF%BD%98%EF%BC%BE%EF%BC%92%29%E3%80%80%E3%81%AE%EF%BC%90%E3%81%8B%E3%82%89%EF%BC%90%EF%BC%8E%EF%BC%95%E3%81%BE%E3%81%A7%E7%A9%8D%E5%88%86

答えは「積分は収束しません」

積分の視覚的表現を見ると分かります様に「BHの質量がゼロに近づくにつれて積分の値が上昇していく、発散していく事」がわかります。

そうして「積分の値が寿命を示します」ので「BHの質量が小さくなればなるほどBHの質量の減り方は遅くなっている」という事がこのグラフから分かります。

「その理由は」といいますれば「通説ではBHが軽くなればそれだけBHがホーキング放射で出すエネルギーは上昇する」のですが、相対論による規制がそれに加わりますと「1プランク質量を越えたあたりから相対論による制約=BHがローパスフィルターになる効果」が効き始めて、それがBHの質量が減れば減る程さらに効く、とうことになっています。

その為に通説とは逆に「BHの質量が減ればそれだけホーキング放射によるBHのエネルギー減少が少なくなる」=「BHの質量減少が小さくなる」のです。

そうしてこのR(X)という補正係数式の場合は「どれほどたってもBHの質量はゼロには到達できない」という事になります。

 

ちなみにここで注意が必要な事は「BHそのもののホーキング温度の上昇は通説が主張するように、BHの質量が小さくなればそれだけ高くなる」のです。

相対論による規制が働く場合もその状況に変わりはありません。

ただ異なってくるのは「発生した仮想粒子のうち、エネルギーの高いものをBHが無視するようになる」という事です。

その為にホーキング放射のエネルギーレベルはBHが小さくなればなるほど少なくなるのです。

 

さてそれで、ここで再度R(X)の挙動を確認しておきましょう。

y=0,y=1,x=0.0000001,y=9.9294*x^4,x=0.4737,y=0.5 の0<x<1,-0.0001<y<1.1 プロット

実行アドレス・・・図6

https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%3D0%2Cy%3D1%2Cx%3D0.0000001%2Cy%3D%EF%BC%99%EF%BC%8E%EF%BC%99%EF%BC%92%EF%BC%99%EF%BC%94%EF%BC%8A%EF%BD%98%EF%BC%BE%EF%BC%94%2Cx%3D0.4737%2Cy%3D0.5%E3%80%80%E3%81%AE0%3Cx%3C1%2C-0.0001%3Cy%3C1.1+%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88

x=0.4737で0.5=50%

黒体放射100%でホーキング放射を許している通説の補正係数は1です。

これは図6では水平の赤いラインで表されています。

それに対して静止しているBHに許される補正係数R(x)は緑色で示された4次曲線で表されます。

その曲線はx=0.4737で0.5=50%であり、xがゼロに近づくにつれて急速にゼロになっていきます。

これが今回導出された補正係数R(x)となります。

 

この補正係数がホーキング放射のエネルギーを抑え込む状況は次のようになっています。

y=0,x=0.000001, y=1/(15360*x^2*(pi))*(9.9294*x^4), y=1/(15360*x^2*(pi)) の0<x<0.5,-0.000001<y<0.001 プロット

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%3D0%2Cx%3D0.000001%2C+y%3D1%2F%2815360*x%5E2*%28pi%29%29*%289.9294*x%5E4%29%2C+y%3D1%2F%2815360*x%5E2*%28pi%29%29%E3%80%80%E3%81%AE0%3Cx%3C0.5%2C-0.000001%3Cy%3C0.001+%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88

通説の寿命式でのエネルギー放出は緑色の上昇するカーブです。

それに対して修正されたエネルギー放出カーブはコトブキ色で示されています。

 

もう少しBH質量が0.5プランク質量のあたりを拡大してみましょう。

y=0,x=0.000001, y=1/(15360*x^2*(pi))*(9.9294*x^4), y=1/(15360*x^2*(pi)) の0.3<x<0.5,-0.000001<y<0.0003 プロット

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%3D0%2Cx%3D0.000001%2C+y%3D1%2F%2815360*x%5E2*%28pi%29%29*%289.9294*x%5E4%29%2C+y%3D1%2F%2815360*x%5E2*%28pi%29%29%E3%80%80%E3%81%AE0.3%3Cx%3C0.5%2C-0.000001%3Cy%3C0.0003+%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88

 

今度はBH質量が0プランク質量のあたりを拡大してみましょう。

y=0,x=0.000001, y=1/(15360*x^2*(pi))*(9.9294*x^4), y=1/(15360*x^2*(pi)) の0.<x<0.1,-0.000001<y<0.000003 プロット

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%3D0%2Cx%3D0.000001%2C+y%3D1%2F%2815360*x%5E2*%28pi%29%29*%289.9294*x%5E4%29%2C+y%3D1%2F%2815360*x%5E2*%28pi%29%29%E3%80%80%E3%81%AE0.%3Cx%3C0.1%2C-0.000001%3Cy%3C0.000003+%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88

 

以上の様にして相対論による規制がBHにかかるために、BHの寿命は通説とは逆に無限になるのであります。

そうしてその有様はまた「BH消滅不可能定理」の数式による検証にもなっています。

 

追記:35.4%の出力を50%と大きめに近似したにも関わらずBHの寿命が無限になりました。

それでこの近似では14.6%ほど実際よりBHがホーキング放射で出すエネルギーを多めに近似していますので、この部分を補正しますと寿命はさらに40%ほど伸びる事になります。

無限に1.4倍しても無限ですから「静止しているBHは消えない」という結論に変わりはありませんが、BH質量の減少速度が実際は近似寿命式が示すはやさより遅くなる、という事は認識しておく必要があります。

 

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧

https://archive.md/401sT

 

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その7-5・静止しているブラックホールの寿命計算

2023-05-20 03:21:48 | 日記

「ローパスフィルターになったBHについての寿命式の導出」の2

3.補正係数R(X)の導出

前のページで出した図4を再度参照します。

y=-0.5556*(x-1.32),y=0.5556*(x-0.4737),y=0.5*x,y= 0.1122/x,y= 2.32*0.1122/x,x=0.4737 の0<x<1,-0.0001<y<1 プロット

実行アドレス・・・図4

https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%3D-0.5556*%28x-1.32%29%2Cy%3D0.5556*%28x-0.4737%29%2Cy%3D0.5*x%2Cy%3D+0.1122%2Fx%2Cy%3D+2.32*0.1122%2Fx%2Cx%3D0.4737%E3%80%80%E3%81%AE0%3Cx%3C1%2C-0.0001%3Cy%3C1+%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88

計算対象は図4のx軸読み値で0.5から0までです。

そうしてまずはこの範囲での任意のXの値の時に黒体放射を前提とした時の仮想粒子の発生エネルギーに対する、相対論から出された規制式②で示される規制ラインよりも下側に発生する仮想粒子のもつエネルギーを求める事になります。

ちなみに規制式②は以下の通りです。

m/2 = P ・・・②式

ここでmはBHの静止質量をあらわし、Pはホーキング放射の運動量=エネルギーを示しています。

そうして図1の表現ではmはX軸にPはY軸になっています。

 

さてそれでまずはBHの質量がxの時の黒体放射前提の場合に発生する仮想粒子の合計エネルギーを求めます。

そうしてそれは図4で示した「50%ラインを頂点とする二等辺三角形の面積」で表すのでした。(その様に近似します。)

それでその二等辺三角形の面積は次のように計算されます。

 

三角形の底辺の長さ=「50%ラインのy値」*2

ここでBHの質量がxの時に「50%ラインのy値を示す関数」をf(x)とします。

そうしてこの時の三角形の高さをh(x)とします。

そうするとこの三角形の面積Sは

S=0.5*(50%ラインのy値*2)*h(x)

=0.5*f(x)*2*h(x)

 

次に規制ライン②式よりも下側にできる直角三角形の面積s1を求めます。

この直角三角形の頂点はx=0.5の時には上記の二等辺三角形の頂点と同じ位置にあります。

しかしながらxの値が0.5より小さくなりますと二等辺三角形の頂点は50%ライン上にあるために上方に上がっていきます。

他方で規制ライン上にある直角三角形の頂点は、規制ラインが下がるにしたがって同じように下がってきます。

たとえばBHの質量が0.3プランク質量の時は図5の様になります。

y=0.387,y=-0.5556*(x-1.7),y=0.5556*(x-0.3),y=0.5*x,y= 0.1122/x,y=0.15,x=0.3 の0<x<1,-0.0001<y<1 プロット

実行アドレス・・・図5

https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%3D0.387%2Cy%3D-0.5556*%28x-1.7%29%2Cy%3D0.5556*%28x-0.3%29%2Cy%3D0.5*x%2Cy%3D+0.1122%2Fx%2Cy%3D0.15%2Cx%3D0.3%E3%80%80%E3%81%AE0%3Cx%3C1%2C-0.0001%3Cy%3C1+%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88

ここでBHを黒体放射100%と見た時の放射エネルギーは大きな二等辺三角形の面積で表されます。

それに対してBHはローパスフィルター=ハイカットフィルターになっているために実際にホーキング放射が許されるエネルギーレベルは規制ラインより下の部分の直角三角形の面積分だけになります。

 

さてそれでその時に規制ライン②式よりも下側にできる直角三角形の面積s1は次のようになります。

底辺の長さ=0.5x

これはBHの質量がxの時に規制ラインの式 m/2 = P のPの値に対応しています。

この時にできる直角三角形の高さH(x)は次のように考えます。

50%ラインでの高さはh(x)で与えられています。

そうしてこの高さh(x)は「50%ラインのy値」に対応しています。(注1)

それでH(x)は何に対応しているか、といいますと「底辺の長さ=0.5xに対応している」のです。

従って

H(x):h(x)=0.5x:「50%ラインのy値」=0.5x:f(x)

だから

H(x)=0.5x*h(x)/f(x)

従って直角三角形の面積s1は0.5*底辺の長さ*高さ より

s1=0.5*0.5x*0.5x*h(x)/f(x)

 

こうして補正係数R(X)が求まります。

R(X)=s1(X)/S(X) とすると

R(X)=(0.5*0.5x*0.5x*h(x)/f(x))/(0.5*f(x)*2*h(x))

=(0.5x*0.5x)/(2*f(x)^2)

ここでポイントとなるのはh(x)が消えてくれる事です。

 

さてそれでf(x)の正体は

f(x)=0.1122/x  でした。

従いまして

R(x)=0.5*(0.5x)^2/(0.1122/x )^2

=(0.5)^3*x^4/(0.1122)^2

=(0.5)^3/(0.1122)^2*x^4

=9.9294*x^4

となります。

R(x)=9.9294*x^4 から

補正係数が0.5になるxの値は

x=0.4737・・・

と逆算されます。

そうしてこの数値は実際に50%ラインと②式で示される規制式がクロスする点のx座標になっています。

 

 さてそれでR(x)=9.9294*x^4の挙動を見ておきます。

y=0,y=1,x=0.0000001,y=9.9294*x^4,x=0.4737,y=0.5 の0<x<1,-0.0001<y<1.1 プロット

実行アドレス・・・図6

https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%3D0%2Cy%3D1%2Cx%3D0.0000001%2Cy%3D%EF%BC%99%EF%BC%8E%EF%BC%99%EF%BC%92%EF%BC%99%EF%BC%94%EF%BC%8A%EF%BD%98%EF%BC%BE%EF%BC%94%2Cx%3D0.4737%2Cy%3D0.5%E3%80%80%E3%81%AE0%3Cx%3C1%2C-0.0001%3Cy%3C1.1+%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88

x=0.4737で0.5=50%

黒体放射100%でホーキング放射を許している通説の補正係数は1です。

これは図6では水平の赤いラインで表されています。

それに対して静止しているBHに許される補正係数R(x)は緑色で示された4次曲線で表されます。

その曲線はx=0.4737で0.5=50%であり、xがゼロに近づくにつれて急速にゼロになっていきます。

これが今回導出された補正係数R(x)となります。

 

注1:ここで全ての温度Tの値に対してプランク分布形状は相似である、という事を使っています。

 

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧

https://archive.md/JAfyE

 

 

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その7-4・静止しているブラックホールの寿命計算

2023-05-17 10:39:21 | 日記

2、ローパスフィルターになったBHについての寿命式の導出

相当に荒っぽい近似をする事になりますが、つねに寿命が短くなる方向に=放射エネルギーが大きくなる方向に近似していく事にします。

それはつまり「BHの寿命は無限である」という「BH消滅不可能定理」に対しては不利な前提での近似寿命式の導出になっている、という事になります。

そうでありますからこの近似寿命式で計算した場合の寿命が無限であった場合は「近似なしの方法で導出した寿命式ではもちろん寿命は無限となる」という結果が保証される事になります。

基本的に「近似寿命式での寿命計算時間< 近似なしの寿命式での寿命計算時間」となっていますからその様に主張する事は妥当な事であります。

 

さてそれで、状況をもう一度確認しておきます。

y=0,x=0.000001,y=0.5*x,y= 0.1122/x,y= 2.32*0.1122/x の0<x<2,-0.0001<y<2 プロット

実行アドレス・・・図1

https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%3D0%2Cx%3D0.000001%2Cy%3D0.5*x%2Cy%3D+0.1122%2Fx%2Cy%3D+2.32*0.1122%2Fx%E3%80%80%E3%81%AE0%3Cx%3C2%2C-0.0001%3Cy%3C2+%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88

 

双曲線で50%ラインと90%ラインが表示されていますが、下の曲線である50%ラインを使います。

それでこの50%ラインが規制ライン(=②式)とクロスする点はほぼ0.5プランク質量となっています。

そうして近似寿命式ではここから質量ゼロまでの寿命計算を行う事を考えます。

 

さて図1の認識として「0.5プランク質量では発生する仮想粒子のエネルギーのほぼ半分、高エネルギー側がホーキング放射にならない」という様に理解します。

あるいはその様に図1の状況を解釈します。(注1)

 

そうして今度は周波数を横軸に取ったプランク分布を参照するのです。

黒体輻射に対するプランクの分布則: https://archive.md/5rtYS :図1・1「黒体輻射強度のスペクトル分布の振動数依存性」を参照します。

図1・1が周波数を横軸に取ったプランク分布になっています。

それを見ると分かるのですが「黒体の温度が上がると分布は右にずれますが、分布形状は相似である事」がわかります。

これが「プランク分布は温度によって分布形状が変わらない」と言われているものです。

それでこの分布のピーク位置で発生した仮想粒子のエネルギーを求めて示したものが上記図1で示した50%ラインのカーブになっています。

 

そのプランク分布形状だけを抜き出すと以下の様な式で表現できます。

x^3/(e^(x/100)-1) ,0<x<1500

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=x%5E3%2F%28e%5E%28x%2F100%29-1%29+%2C%EF%BC%90%EF%BC%9C%EF%BD%98%EF%BC%9C1500

このグラフの極大値はこうなります。

x^3/(e^(x/100)-1) ,0<x<1500 の極大値

実行アドレス・・・図2

https://ja.wolframalpha.com/input?i=x%5E3%2F%28e%5E%28x%2F100%29-1%29+%2C%EF%BC%90%EF%BC%9C%EF%BD%98%EF%BC%9C1500%E3%80%80%E3%81%AE%E6%A5%B5%E5%A4%A7%E5%80%A4

結果にある右上の「近似値」をポチります。

Xが282.14の時に極大値を取る事がわかります。

そうしてこの282.14と言う値がプランク則でピーク位置のエネルギーを出す式

E=2.821*kb*T 

の係数になっている事が分かるのです。

ちなみにこの式でkbはボルツマン定数、Tは温度です。

 

そうして次は図2に示されたプランク分布の形状を二等辺三角形で近似する事を考えます。

やり方は「図2の原点からグラフのピーク位置まで直線を引きそれを左辺とし、そこで折り返してピーク位置から左辺に対称にX軸に向かって直線を引いてそれを右辺」とします。

-(1421435/282.14)*(x-564.28),1421435/282.14x,x^3/(e^(x/100)-1) ,0<x<1500,0<y<1500000 プロット

実行アドレス・・・図3

https://ja.wolframalpha.com/input?i=-%281421435%2F282.14%29*%28x-564.28%29%2C1421435%2F282.14x%2Cx%5E3%2F%28e%5E%28x%2F100%29-1%29+%2C%EF%BC%90%3C%EF%BD%98%3C1500%2C0%3Cy%3C1500000%E3%80%80%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88

そうやって作られたこの二等辺三角形の面積はもともとのプランク分布形状よりも小さい事に留意してください。

 

それで図1に戻るならば、その二等辺三角形の底辺がX軸上の0.5プランク質量を示す位置からY軸に平行に上方に立ちあがっている様に想像します。

そうしてその二等辺三角形のトップの位置をちょうど50%ラインの位置に合わせるのです。

それでその時には相対論による規制ラインがほぼその三角形のトップの位置にある事になっています。(注2)

 

y=-0.5556*(x-1.32),y=0.5556*(x-0.4737),y=0.5*x,y= 0.1122/x,y= 2.32*0.1122/x,x=0.4737 の0<x<1,-0.0001<y<1 プロット

実行アドレス・・・図4

https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%3D-0.5556*%28x-1.32%29%2Cy%3D0.5556*%28x-0.4737%29%2Cy%3D0.5*x%2Cy%3D+0.1122%2Fx%2Cy%3D+2.32*0.1122%2Fx%2Cx%3D0.4737%E3%80%80%E3%81%AE0%3Cx%3C1%2C-0.0001%3Cy%3C1+%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88

そうしてその時にその二等辺三角形がBHが0.5プランク質量の時に発生しうる仮想粒子のエネルギー分布=プランク分布を示している、とするのです。

その様にこの二等辺三角形を解釈しますと、そのエネルギー分布の上半分が規制ラインよりも上にあるのでホーキング放射とならない事がわかります。

このように近似する事でこのBHが0.5プランク質量の時に黒体近似して求めたBHのエネルギー放射量の少なくとも半分は無効になっている事を示す事ができました。

しかしながら実際にそこにプランク分布形状を正しく置くならば、規制ラインより上方にある面積はそこに置かれた三角形の半分を超えている事は事前に指摘した通りです。

従ってこの三角形の上半分にしめる部分のエネルギー総量は下半分のエネルギー総量よりも実際は多いことになります。

 

さてそうではありますがここでの状態で、黒体放射に対する修正係数を0.5とします。

つまりこれは「ここに置かれた三角形の下半分の面積がホーキング放射となる事を許される」という事になります。

もちろん、実際の修正係数は0.5よりも相当に小さくなっているのですが、ここでは0.5として扱います。

こうやって「BHの寿命を実際よりは短く計算する様に近似寿命式を組み立てる」のです。

 

注1:実際は「その7-2・静止しているブラックホールの寿命計算」で示した様にその点までエネルギーゼロから積分しますと35.4%の出力となります。

この点のういき表示の数字では64.6%になっていますが、ういきは高エネルギー側からの積分表示なのでここで使う数値は以下の様にういきの表示とは逆転します。

35.4%=100%-64.6%

ですから残りの高エネルギー側の出力は64.6%となります。

つまりは「0.5プランク質量で発生する仮想粒子のエネルギーの64.6%がホーキング放射にならない」のですがこれを50%がホーキング放射にならない、と近似します。

それは「実際よりも多くのホーキング放射が発生している」という条件になるのですがそれで近似式を考えるのです。

そうであればこの前提からは「導出された近似寿命式では実際の寿命よりも短く寿命が計算される」という事になるのです。

ちなみに「50%ライン」は実は「35.4%ライン」なのですがそれをここでは「50%ライン」と呼んでいます。

注2:実際は0.5プランク質量より小さい場所で50%ラインと②式で表された規制ラインがクロスしていますので、その場所での状況を説明している事になります。

とはいえきりが良い数字を使いたかったのでここではそれを0.5プランク質量として話しています。

 

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧

https://archive.md/jB2Wj

 

 

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その7-3・静止しているブラックホールの寿命計算

2023-05-14 03:15:32 | 日記

1、ローパスフィルターになったBHについての寿命式導出の考え方

前のページで示した様にBHは②式よりも高いエネルギーでホーキング放射を出す事ができません。

m/2 = P ・・・②式

これはつまりBHがローパスフィルター=ハイカットフィルターになっている事を示しています。

 

さて通説のBHの寿命式の導出は「BHは黒体放射をする」が前提になっています。

つまり「ホーキング温度を黒体温度と読み替えることでBHからでてくるホーキング放射が黒体放射分布のスペクトルをもつ」としているのです。

しかしながらその様な前提が成立するのは1プランク質量のBHまでであり、それ以降はそのBHはローパスフィルター=ハイカットフィルターとしてふるまう、という事を前のページでは示しました。

従いましてローパスフィルターになったBHの寿命計算についてはいままで通用していた黒体放射前提でのやり方がそのままでは使えなくなります。

それではどうするのか?

黒体放射前提のやり方を修正して、それは近似計算になるのですが、寿命式を出す事が必要になります。

その寿命式で計算した時に実際に「BH消滅不可能定理が成立しているかどうか」が寿命式導出がうまくできたかどうかの目安になります。

 

しかしながら、②式が制約条件を表していますので、それを使って1プランク質量あたりからランダムシミュレーションを行う事も可能です。

そうであれば「そのように具体的にホーキング放射をシミュレートすれば良いのでは?」という声がきこえます。

しかしながらその方法では「なるほど順次BHの質量は減少していく」という事は分かるのですが、多数回のホーキング放射を出した後でBHの質量がゼロになるのかならないのか、それが分からないのです。

というのも「無限回のホーキング放射のシミュレーション」と言うのは計算機では不可能であるからです。

したがいまして「どうしても積分を前提とした寿命式が必要」であって、そのようにできれば今まで行ってきたように「1プランク質量から0プランク質量まで積分する事」でどれほどの時間が必要になるのか、あるいは積分が発散して有限の寿命値にならないのか判断できる事になります。

 

さてその近似寿命式導出の手順ですが、次のようになります。

通説では黒体放射を前提としたStefan-Boltzmann の法則より温度 T,半径 r の物体が単位時間あたりに放つエネルギー Eを次のようにしています。

但し以下の諸式運用では自然単位系を使っています。

ホーキング温度Tは

T=1/(8*(pi)*M)

Stefan-Boltzmann の法則より温度 T,半径 r の物体が単位時間あたりに放つエネルギー E は

E=((pi)^2*T^4)/(60)*(4*(pi)*r^2)

Schwarzchild ブラックホールの半径 r は

r=2GM/C^2=2M

 および,温度 T は

T=1/(8*(pi)*M)

代入して

E=((pi)^2*T^4)/(60)*(4*(pi)*r^2)

=((pi)^2*(1/(8*(pi)*M)^4)/(60)*(4*(pi)*(2M)^2)

ここでウルフラムに登場願う

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=%28%28pi%29%5E2*%281%2F%288%EF%BC%8A%28pi%29*M%29%5E4%29%2F%2860%29*%284*%28pi%29*%282M%29%5E2%29

答えは

1/(15360*M^2*(pi))

ちなみに同時にプロットされているグラフが単位時間あたりにBHがホーキング放射で出すエネルギーを示している。

最初のグラフではM=0の時に出力エネルギーが発散する事を示している。

しかしながらそこでの継続時間がゼロなので、出力エネルギーは発散しません。

2番目のグラフはそのあたりの状況が分かる様に拡大表示されている。

これを見ると2プランク質量あたりからホーキング放射で出てくるエネルギーが増加し始め、1プランク質量ではすでに暴走状態になっている事がわかるのです。(注1)

 

さてこのように通説の寿命式ではBHはハイカットフィルターにはなっておらず、BH近傍で対生成した仮想粒子のエネルギーがどれほど大きくてもBHはそれを受け入れる、つまり「分光放射率で見た時に、BHは100%の効率でホーキング放射をだす」という事が前提となっています。

しかしながら実際はその時に相対論による規制が②式によってかかります。

その結果はStefan-Boltzmann則で算出できた単位時間あたりにBHが放出するエネルギーが少なくなる、つまりは「100%の出力が出なくなる」のです。

従って「その分BHの寿命はのびる」という事になるのです。

 

そうであれば問題は「どれだけ相対論による規制によって放出エネルギーが抑えられるのか」が分かればよい、そうなればそれを通説の寿命式導出の手順の中に組み込める、という事になります。

そうしてそれができれば「積分計算で寿命が計算できる」となります。

 

注1:通説の寿命式導出の手順は「その5-3・ブラックホールの寿命計算」からの引用です。

 

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