宇宙論、ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論

ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論 etc etc

その5-1・ブラックホールの寿命計算

2023-04-11 05:08:37 | 日記

さて次は『3、上記の寿命式ではホライズン上のホーキング温度で仮想粒子の対生成がおきる、という前提で計算されている。

しかしながら実際は仮想粒子が対生成する、BHに一番近い場所はホライズンからプランク長だけ上空に離れた場所と想定するのが妥当である。

この差分はBHのホライズンがプランク長に比較して十分に大きい場合はほとんど無視できるが、BHのホライズン直径がプランクレベルまで減少すると無視できない効果をもつ。

それはつまり「ホライズンからプランク長だけ離れた場所の重力の強さはホライズン上の重力の強さよりも弱い」=「ホーキング温度がホライズン上よりも低い」=「発生する仮想粒子のエネルギーレベルが下がる」=「ホーキング放射エネルギーが下がる」=「BHの寿命が延びる」のである。』についてです。

 

さてBHのホライズン上のホーキング温度を基準にしたホーキング放射のエネルギーの算出が通説の寿命式になっています。

それでBHの中心に近いほど重力の強さは大きくなります。

まあこれは当然、そうなります。

それで実際の所、ホライズン上で仮想粒子が対生成する、とはホーキングも考えてはいないようで、「ホライズンに無限に近い場所で仮想粒子が対生成する」としている様です。

しかしながら寿命式で使っているホーキング温度の算出場所はホライズン上になっています。

さて対生成する仮想粒子からすれば、少なくとも対生成した仮想粒子が占めることになるであろう空間の体積に相当する部分に対生成するだけのエネルギーが供給される必要があります。

しかしながらホーキングの定式化では対生成する仮想粒子がもつ大きさを無視しています。

それはあたかも対生成した仮想粒子は大きさを持たない点粒子であるかの様です。

その様な扱いである為に「ホライズンに無限に近い場所で仮想粒子が対生成する」とできるのです。

しかしながら実際は対生成した仮想粒子は点粒子ではなく、少なくともプランク長の大きさを持つ、とするのが妥当でしょう。(注1)

その様なプランク長の大きさを持つ仮想粒子が2つ、ホライズン近傍の上空で対生成する。

その様に考えますと通説の寿命式の算出においても「仮想粒子が対生成する中心の位置はホライズンから上方にプランク長だけ離れた場所である、とするのが妥当である」と当方は主張する事になります。

その場所で対生成した仮想粒子は、対生成した時には両方ともにBHには属しておらず、しかしながら反対方向に飛び去る仮想粒子の一つは動き出すとすぐにBHに接触する、という状況にあります。

そうであれば、その場所のホーキング温度がホーキング放射を考える時に必要な温度を与える、という事になります。

それに対して通説の寿命式の導出では「ホライズン上のホーキング温度がホーキング放射を考える時に必要な温度を与える」としています。(注2)

 

このホーキング放射のエネルギーを考える際のホーキング温度の設定場所の違いはプランクスケールに近づくにつれて効果を表しますが、そこまでBHが小さくなっていない場合はほとんど無視する事が可能です。

したがってBHのホーキング放射のありようの、プランクスケールにまで到達する前のほとんどの時期では通常の寿命式で対応できます。

しかしながらBHがプランクスケールに近づくにつれて通常の寿命式ではホーキング放射のエネルギーを正確には見積もれなくなります。

そうして通常の寿命式のシナリオでは「BHは最後に爆発して消え去る」となっているのですが、上記の様に仮想粒子が対生成する場所を変更した場合には本当にそうなるのでしょうか?

注意深い検討が必要になります。

 

注1:その様に主張する当方は超弦理論がいう「素粒子は点粒子ではなく大きさがある」を認めています。

注2:対生成した仮想粒子は大きさを持つ、というモデルで考えますと、通常の寿命式が前提としている「ホライズン上のホーキング温度で対生成した仮想粒子のエネルギーを計算する」というやりかたは「仮想粒子が対生成するであろう空間の相当する部分の体積の温度はホライズン上の温度と同じでその温度がその場所に一様に分布している」と想定している事になります。

それはまさにホライズン上に仮想粒子の対生成する中心の位置がある、と主張している事と同じです。

他方で、ホライズン上からプランク長だけ上方に離れた場所で仮想粒子は対生成する、というのが「ホーキング放射の正しいモデルである」とすると、その場所のホーキング温度はホライズン上よりも明らかに低いのです。

そうであるにも関わらず仮想粒子は対生成する場所の温度を「ホライズン上の温度で代用する」のであればそれはホーキング放射のエネルギーを過大に算出している、という事になります。

そうしてそれは最終的にBHの寿命を実際より短く計算する、という事につながります。

 

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧

https://archive.md/arAR7

 

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閑話休題・プランク長より小さいBHは存在するのか?

2023-04-08 02:22:39 | 日記

「プランク長が一番最小の単位であって、それを超えて小さいスケールは存在しない」という立場があります。

この立場は極論すれば「空間はそのスケールでデジタル化されている」となります。

他方で「いやプランク長を超えて小さいスケールは観測できないだけであって、存在している」という立場もあります。

これは「空間はどこまで行っても分割可能である」という立場です。

さてそれでお題は「プランク長より小さいBHは存在するのか?」と言うものです。(プランク長より小さいBH=BHのホライズン直径が1プランク長を下回るBH)

ちなみに業界の認識では「BHはプランクスケールまではホーキング放射で順調に小さくなる」となっています。

しかしながらその後のBHの挙動については今の所、業界内で合意された認識はない様です。(注1

 

さてそれで「存在する」という立場の人には、特に問題はありません。

ただ単に「プランク長より小さいBHは存在する」と主張すればそれでお終いです。

そうして通常の寿命式はもちろん、この立場に立ちます。

通常の寿命式は「BHはホーキング放射によってプランク長より小さくなり、最後はその大きさがゼロになって消える」と主張しているだけですから。(注2

 

他方で問題なのは「プランク長より小さいBHは存在しない」という立場です。

この立場にたちますと「それではBHはプランク長に達した後、どうなるのか?」という問いに答えなくてはならなくなります。

答えその1・BHはプランク長に達した所で消え去る。

この答えはエネルギーと運動量の保存則に違反します。

答えその2・BHはプランク長に達した所で2体~複数体崩壊して光+素粒子に変わる。

この答えはエネルギーと運動量の保存則を満足できそうですが、何故そこでBHが崩壊するのか、説明していません。

答えその3・BHはプランク長に達した所でBHではない、別のホーキング放射を出さない何かに変わる。

この答えはエネルギーと運動量の保存則を満足できそうですが、「別の何か」が何であるのか、説明していません。

ちなみに業界では「この何か」を「プランクの遺物」と呼んでいます。

答えその4・BHはプランク長に達した所でホーキング放射が止まり、BHのままで安定化する。

この答えはエネルギーと運動量の保存則を満足しますが、何故そこでBHがホーキング放射をやめるのか、説明していません。(注3

以上の回答が当面、考えられる回答一覧となります。

従って「プランク長より小さいBHは存在しない」という立場に立たれる方はこの4つの回答の中からどれかを選択する、という事になります。

 

さてそれで「あなたはどの立場に立たれるのか」という事になります。

あなたのお気に入りの回答はどれでしょうか?

 

注1:たとえば「ブラックホールとホーキング輻射」: https://www.ipmu.jp/sites/default/files/imce/news/43J_MisaoSasaki.pdf :の様な記事があります。

著者はもちろん、この分野の専門家の方(Kavli IPMU 副機構長)ですから、それなりの見識がおありの方である、となります。

さてそれで、この記事によれば「図はブラックホールの形成と,形成後にホーキング輻射によってブラックホールが次第に痩せ細っていく様子です。」と説明し、そこで終わっています。

そこで注目しなくてはいけない内容は「この記事では通説がいう様な事」=「BHがホーキング放射を出して最後は消えてしまう、という所までは図示されていませんし、説明もされていない」という所です。

「その心は」と言いますれば『ホーキング輻射によってプランクスケールまではブラックホールが次第に痩せ細っていく事は認めましょう。

しかしその後の事は実は良く分かっていないのです。』と言っておられるのであります。(追記参照

ちなみに「BHは最後に爆発して消え去る」とはよく聞く説明ですが、「BHは爆発四散して消え去る」のではありません。

通説の寿命式が示しているのは「BHの最後は爆発的にエネルギーを放出し、BHそのものは蒸発する=ただ単に消え去る」というシナリオとなります。

注2:大きさがゼロ、だけでは消えた事にはなりません。

何と言っても「BHの中心には大きさがゼロで有限の質量をもつ特異点が存在する」のですから。

従って「大きさがゼロになって消える」と明言しておく事が必要です。

注3:BHはプランク長に達した所でホーキング放射が止まる。その理由は「プランク長より小さいBHは存在しないからだ」というのでは「トートロジー」であって説明にはなっていません。

さてそれで当方の立場といえば「プランク長より小さいBHは存在する」と主張する者です。

しかしながら「仮想粒子の大きさはプランク長である」と同時に主張するので、「BHの大きさがプランク長を下回った所で仮想粒子はBHに入れなくなる為、そこでホーキング放射が止まる」と主張します。

そこから出てくる結論は「BHの大きさがプランク長を下回った所でBHは安定化する」となります。

その結論は結果的に答えその4と同じに見えますが、当方の立場では「何故そこでBHがホーキング放射を止めるのかを説明している」という事になります。

そうしてそこで注意すべきは「プランク長より小さいBHは存在しない」がゆえに「BHの大きさがプランク長を下回った所でBHは安定化する」と当方は主張しているのではない、という所です。

最初に示した様に当方の立場は「プランク長より小さいBHは存在する」と主張する者です。

そうしてまた「BHの大きさがプランク長を下回った所で仮想粒子はBHに入れなくなる為、そこでホーキング放射が止まる」とも主張します。

従って当方の立場からは「宇宙初期に誕生した原始BHで最初からプランク長を下回ったサイズで発生したBHは、一度もホーキング放射を出すことなく、今現在でも安定してそのままの姿で存在している」となります。

さてそうであれば「原始BHでホーキング放射を出してプランク長を下回って安定化したBH」「原始BHで最初からプランク長を下回ったサイズで発生したBH」の両方が「ダークマターを構成している」と主張する事になります。

 

追記:プランク単位: https://archive.md/x6uNg :から引用。

『重力との関係
プランクの長さスケールでは、重力の強さは他の力と同等になると予想され、すべての基本的な力がそのスケールで統一されることが理論化されていますが、この統一の正確なメカニズムは不明のままです. [21] 

したがって、プランクスケールは、量子重力の影響が他の基本的な相互作用でもはや無視できなくなるポイントであり、現在の計算とアプローチが崩壊し始め、その影響を考慮する手段が必要です。[22]

これらの理由から、崩壊によってブラック ホールが形成されるおおよその下限である可能性があると推測されています。[23]


物理学者は、量子レベルでの力の他の基本的な相互作用についてかなりよく理解していますが、重力には問題があり、場の量子論の通常の枠組みを使用して非常に高いエネルギーで量子力学と統合することはできません。

それ以下のエネルギー準位では通常無視されますが、プランクスケールに近づくか超えるエネルギーについては、量子重力の新しい理論が必要です。

この問題へのアプローチには、弦理論とM 理論、ループ量子重力、非可換幾何学、因果集合論などがあります。』

こう言った理由によって「プランクスケールにまでホーキング放射で小さくなったBHについては、実はよく分かっていない」のです。

しかしながらそれにもかかわらず通説では「プランクスケールを下回ってもBHは存在し続け、ホーキング放射を出し続けて、最後には消滅する」と主張しているのです。

 

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧

https://archive.md/w14jt

https://archive.md/fNo5b

 

 

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その4・ブラックホールの寿命計算

2023-04-05 09:04:47 | 日記

さて次は『2、BHのホライズン上での重力の強さから計算される典型的なエネルギーをもつ仮想粒子(=光)の波長はホライズン直径の14倍になっている。

つまりホライズン上で発生した仮想光子は自分の波長よりも小さなBHに吸収されなくてはならない。

つまり「発生した仮想光子は100%、BHに吸収される事はない」=「ホーキング放射はその分、出力が低下する」のである。

そうしてその吸収確率はBHによるレイリー散乱の確率に似たものと推定できる。』についてです。

 

さて、まずは「BHに入れる光の波長はBHホライズンの直径が上限である」と想定し、話を進める事とします。

つまり「BHの直径よりも大きな波長をもつ光はBHには入れない」とするのです。

その場合、その限界波長はどれぐらいになるのでしょうか?

 

質量MのBHのホライズン半径RsはRs=2*G*M/C^2 .でした。
直径が限界波長 λ になりますから限界波長 λ=4*G*M/C^2 です。
その時の λ に対応する光の限界周波数 ν は ν=C/λ=C/(4*G*M/C^2)=C^3/(4*G*M)です。

そしてその時のBHのホーキング温度TはT=ℏ*C^3/(8*pi*Kb*G*M)。
プランク則よりその温度の時の最も多く放出される光子の振動数νpは (生h)*νp = 2.82*Kb*Tから
νp=(2.82*Kb*T)/(生h)
生h=ℏ*2*Piを代入して
νp=(2.82*Kb*T)/(ℏ*2*Pi)
上式にT=ℏ*C^3/(8*pi*Kb*G*M)を代入して整理すると
νp=(2.82*C^3)/(16*Pi^2*G*M)

次にνがνpの何倍になっているか調べます。
レシオRはR=ν/νp=(C^3/(4*G*M))/((2.82*C^3)/(16*Pi^2*G*M))

整理して
R=(4*Pi^2)/2.82=13.99942≒14

そういうわけで、BHが受け入れ可能な光子の振動数はBHのホーキング温度Tで計算される黒体放射スペクトルのピーク周波数νpの14倍以上からである、と言う事が分かるのでした。

その事は又、波長 λ =C / 周波数ν ですからBHが放射するホーキング放射で最も多く放出される光子の振動数νpのもつ波長 λp はBHの直径の14倍、という事になります。

つまりは「発生する主なホーキング放射の波長に対してBHの直径は14分の1でしかない」という事になります。

 

さてそれで、ホーキング放射が起きる為にはまずは仮想粒子、但しこの場合は仮想光子になりますがそれがBHに入らなくてはなりません。

しかしながらBHの大きさの14倍もある波長の光がBHに入る事ができるのでしょうか?

BHが相手を吸収できるのはBHのホライズン直径以下の大きさのものに限る、とは従来からの当方の主張であります。

そうであればここでもその様に主張しなくてはなりません。

しかしながら今回、吸収するべき相手は波長と言う大きさを持つ波です。その様な波に対してどのように考えればよいのでしょうか?

 

それで注目すべきは「仮想粒子のBHによる吸収は、BHによる仮想粒子の観測である」という見方です。

この場合、吸収されるべき相手は仮想粒子の波動関数であり、それがBHによって観測される=吸収されるのです。

そうしてその際に起こっている事は「観測による波動関数の収縮」です。

つまり「広がったままでの波動関数ではBHの中に納まりきれませんが、それが観測によって光子に収縮する、そうなれば光子の大きさはプランク長とみなせますので、BHのサイズがプランク長を下回るまで光子はBHの中に入れる」とそういう事になります。(注2)

 

それで次は仮想粒子の波動関数の2次元の広がりをSとすればそれはBHの半径Rsを使って次の様に表せるであろう、となります。

S=pi*(14*Rs)^2

それに対するBHの2次元の広がりは Pi*Rs^2 と表せますから散乱効率=吸収効率は(注1)

吸収効率=(Pi*Rs^2)/ (pi*(14*Rs)^2)

=1/14^2

=0.0051

となります。

つまり「波長の長い仮想粒子の波動関数をBHが取り込める確率は200分の1程度」という事になるのです。

これによって従来の寿命式よりもBHの寿命は200倍に伸びる事になります。

 

注1:散乱効率(散乱断面積との関係): https://archive.md/Va63T :

『単一粒子が一様な入射光に照射されるとき,全方向に散乱される光の総エネルギーを入射光強度で除すると面積の単位を有する量が得られる。これをその粒子の散乱断面積という。つまり入射光強度に散乱断面積を乗ずると散乱光の総エネルギーが得られる。散乱断面積と粒子の投影面積との比を散乱効率という。・・・』

参考文献:「光の散乱」テキスト : http://fir.u-fukui.ac.jp/thzlab/files/Lectures/Tani/optical_scattering.pdf :

散乱効率を考える場合、入射する光は平面波として扱います。そうしてその光を散乱する事になる対象物が入射してくる光に対してもつ2次元の大きさ=散乱断面積を考慮して、散乱効率がもとまります。

この考え方をBHに吸収される事になる仮想光子にあてはめたものが、上記の議論内容です。

注2:BHの直径が1プランク長未満になったらどうなるのか?

仮想光子がBHに衝突してそこで観測が行われたとしても、その結果、波動関数が収縮したとしても、そこに現れる仮想光子の大きさは1プランク長程度。

そこで見方は2つに分かれます。

従来からの当方の主張では「光を含めてどのような仮想粒子も直径が1プランク長未満のBHには入れない」と言うものです。

そうしてもう一つの見方は「ある確率で1プランク長未満の小さなBH内にそれより大きなサイズの1プランク長の仮想光子は入る事が出来る」とするものです。

それでその場合、これは「トンネル効果に似た現象」としてとらえる事が出来そうです。

さてそれで「事実はどっちだ?」と聞かれても今のところは誰もその答えを知りません。

ちなみにこのあたり通説の寿命式では仮想光子の大きさはゼロ、つまり「点粒子」としていますので「BHのサイズがどれほど小さくなっても仮想光子はそのBHの中に100%入れる」として計算しています。

 

追記:ホーキング計算機による確認 :https://www-vttoth-com.translate.goog/CMS/physics-notes/311-hawking-radiation-calculator?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc

質量を「1地球質量」で入力

BHの半径が0.00887mとなる。

この2倍がBHにはいる事ができる光の波長の上限になる。

上限波長=0.01774m

その時にプランク則よりその温度の時の最も多く放出される光子の振動数νpから求めたホーキング放射波長は0.24836m(上記波長を14倍したもの)

他方でホーキング計算機は「Peak photons」として同様の計算を行っている。

但しデフォルトの単位が「eV」になっているので、これをmに代えると

Peak photons 波長=0.178617m

を得る。

一方で本文計算での結果は0.24836m

オーダーは合っているものの数値が微妙に違っている。

これは本文計算での黒体放射のピーク位置は周波数でとらえているのだが、ホーキング計算機はそれとは違う方法でピーク位置を計算している事による。

それで、ホーキング計算機の数値を使うならば倍率14倍は

0.178617/0.01774≒10.07≒10.1倍

という事になる。

以上、ご参考までに。

ちなみに黒体放射光のピーク位置については: https://archive.md/Nh670 :を参照願います。

 

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧

https://archive.md/35Lem

 

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その2-1・ブラックホールの寿命計算

2023-04-02 08:01:10 | 日記

次のページでは「BHの寿命は通常の寿命式の計算よりもその寿命式では考慮されていない4つの要因によって延びる」という話をします。

それでその事はそのままホーキングが行った寿命式の算出方法への批判になっています。

まあそれはそうなんですが、その前にホーキングがどのように考えて通説の寿命式を提示してきたのか、そうして現時点で何故それが批判されなくてはならないのかをもう一度振り返っておきたいと思います。

 

まずはホーキングがホーキング放射を定式化した動機の部分ですね。

これはホーキングに先行していたベッケンシュタインの「BHはエントロピーを持つ」という主張に対して「それを否定する為に始めた仕事である」というのが真相の様です。(注1)

そうであればそれはBHはエントロピーを持つのか?、という事を否定するのが当初の目的であった研究でした。

しかしながらその研究の結果としてホーキング放射を定式化し、それまでは「BHはものを飲み込むだけで何もそこからは脱出できない」という一般相対論の結論が常識であった時代に「いやBHはホーキング放射を出して、最後は消えてしまう」と主張したのでした。

そうしてホーキングがホーキング放射を定式化した対象のBHといえば「恒星が燃えるのを止めた時にその質量が太陽質量の3倍程度以上残っていたなら、それはBHになる」といわれていたような、いわゆる「恒星質量のBH」でした。

さてそのような「プランク質量に比較すれば桁違いに重いBHを対象にしていた」研究であれば、そのBHがホーキング放射をだしてプランク質量まで小さくなった時に、それはもう「『BHは消えてしまった』と近似的に見なしても良い」とも言えそうです。

あるいは「プランク質量以下のBHなどは消えたも同然である」とは恒星質量のBHからみれば、確かにそのように見なせるでしょう。

そうして「そのような立場から導出されたものが通説のBHの寿命式である」と言えそうです。

 

しかしながら「宇宙にはダークマターという重力相互作用しかしない謎の粒子が存在する」という観測的な事実が明らかになるにつれて「プランクスケールのBHがダークマターではないのか?」と当然、そのように考える者たちが現れます。

そうしてその者たちにまずは立ちはだかるものが、ホーキングが提示したBH寿命式であり、それによれば「プランクスケールに到達したBHは、かつてそれが存在していた、としても現時点ではすでに消えてしまっている。」とされてしまいます。

さてそこで「ああそうだね、プランクレベルのBHなど今は存在しない」と納得するのか、それとも「本当にその通説の寿命式は正しいのか?」という疑問をもってBHの寿命式の見直しを始めるのか、まあそこが分かれ目になります。

 

さてそれで「納得しない者たちによる寿命式の再検討」が始まります。

そうするとホーキングの寿命式は「BHのホライズン表面を黒体表面と見なして、そこからの黒体熱放射がホーキング放射である」という前提に立ったものである、という事が分かるのです。

その部分はホーキングがホーキング放射を定式化した、その本体部分の数式展開と論理展開に比べれば「量子力学と一般相対論の理解が必要」という程のものではなく「通常の黒体放射理論にそった形のいわゆる古典論での記述になっている」という事に気が付くのです。

そうであればその部分を理解する為には「量子力学と難解な一般相対論の理解が必要」という事にはなりません。

そうではなくて「ホーキング放射の妥当な物理モデル」が想定できれば、あとは黒体放射の古典論に準じながら計算を進めることが出来るのです。

さてホーキングはそのようにしてホーキング放射の発光場所はホライズン表面であり、その場所の温度はホーキング温度として定式化できる、後はStefan-Boltzmann の法則を使って全放出エネルギーEが求まる、という様に計算を進めました。

 

しかしながらホーキングの寿命式に対して「仮想粒子の対生成で生じた2つの仮想粒子の内の一つがBHに飛び込み、もう一つがBHから飛び去る。飛び去った方が実体化しそれがホーキング放射として観測される」というホーキング放射の物理モデルから出てくる結論は「ホーキング放射の発光場所はホライズン表面だけではない」と言うものでした。

そうしてそこからは「ホーキング放射の発光場所はホライズン上空に広がっている空間からも出てくる」そういう結論が出てきます。

そうなりますと、通説の寿命式にその部分の修正が必要になります。(注2)

 

それからもう一つの事はホーキングはホーキング放射として出てくるエネルギー粒子の大きさをゼロ、つまり「事実上は点粒子であると想定している」という事が指摘できます。

「点粒子」でありますから、その仮想粒子の対生成する場所はホライズンに無限に近い場所で起きる事ができ、その点粒子の対生成する時の温度はホライズンのホーキング温度で良い、と出来るのです。

しかしながら、「素粒子は有限の大きさを持つ」という事は超弦理論の発展によって業界内ではほぼ認められた内容です。

そうなりますと「仮想粒子とはいえその大きさも実粒子相当のものである」とするのが妥当でありましょう。

したがって「仮想粒子が対生成できる、ホライズンに一番近い場所」としては「ホライズン上空に1プランク長だけ上ったところである」という様に想定するのが妥当、という事になります。(注3)

そうしてその場所のホーキング温度が対生成してくる仮想粒子のエネルギーを決める事になります。

この指摘内容は恒星質量のBHのホーキング放射の全エネルギーを計算する時には無視できますが、プランクスケール近傍にまで小さくなったBHのホーキング放射の全エネルギーを計算する時には無視できない効果を持ちます。

 

さてそれに加えて通説の寿命式では「仮想粒子は点粒子」としている為に「対象のBHがホーキング放射を出して、その大きさがプランクスケールを超えて小さくなっても、対生成した仮想粒子の片方は何時までも、どれだけBHが小さくなってもそこに飛び込める」となっているのです。

あるいは「仮想粒子が大きさを持つ」にも関わらず通説の寿命式では「BHがどれだけ小さくなってもそのBHの大きさよりも大きな仮想粒子が飛び込めると想定している」とも言えます。(注4)

その時に「いや、BHが仮想粒子の大きさよりも小さくなったら、そこには何物も飛び込めない」従って「そこでホーキング放射は止まる」という考え方が当方が従来から主張しているものです。

そうしてこの考え方に立った議論は今までしてきました。

それに対して以降のページで検討する寿命式は「通説の寿命式の前提=どれほどBHが小さくなってもそこに仮想粒子は飛び込める」という内容を認めたものになっています。

その様に想定した場合には一体ホーキング放射の寿命式はどうなるのか、BHの寿命はどうなるのか、興味深い結論が示される事になります。

 

注1:ホーキングとベッケンシュタイン: https://archive.md/XtF8T :

http://maruyama097.blogspot.com/2018/03/blog-post_85.html

『・・・ただ、ベッケンシュタインは、考えた。
もし熱いガスの入ったボンベを、ブラックホールに投げ込んだとしよう。ブラックホールに三本しか毛がないのなら(ブラックホールを特徴づける物理量が三つしかないなら)、熱いガスの持っているエントロピーは、この宇宙からなくなってしまうことになる。それは、エントロピーの不可逆な増大を主張する熱力学の第二法則に矛盾する。それはおかしい。この矛盾を解決するには、ブラックホール自身が、熱力学の対象として、エントロピーを持つと考えるしかないと。
(こうした思考実験は、その後の量子重力理論や量子情報理論の発展を考えると、極めてユニークで重要ななものだ。それについては、別稿で。)
ホーキングは、最初は、この発見を馬鹿にして、無視していた。ただ、彼は途中で考えを変える。(それは、悪いことではない)
ホーキングが、際立った天才なのは、ベッケンシュタインが計算出来なかった、表面積とエントロピーの比例定数が1/4であることを示し、合わせて、ブラックホールの「温度」の正確な定式化を与えたことである。ブラックホールは蒸発するという「ホーキング放射」の発見である。・・・』

注2:この件については、前のページでも言及しました。そうして又このページに続く記事「その3」でも説明する事になります。

注3:素粒子の大きさとしては「1プランク長程度であろう」とされています。

注4:通説での寿命式は「BHはホーキング放射を出す事で小さくなり、最終的には消えてしまう」と主張しています。

それでその場合BHはまずはホーキング放射によってプランクスケールまで小さくならなくてはなりません。

そうしてそこでホーキング放射が止まることは無く、継続してホーキング放射を出し続けます。

その結果、当該BHの直径は1プランク長を下回る事になります。

しかしながらそこまで小さくなってもそのBHは今までと同じようにホーキング放射を出す事が可能である、と通説の寿命式は主張している事になります。

何故ならば「当該BHが消える為にはそのBHは大きさがゼロになるまで順次ホーキング放射を出し続ける事が必要であるから」ですね。

そうであれば「ホーキング放射でBHは消え去る」と主張する事は「そのBHは直径が1000分の1プランク長になろうともBHとして存在していて、そこでもホーキング放射を出す」という主張になっています。

そうでなくてはBHは消え去る事はできないからですね。

そうしてその様な主張は「それが事実である」とするならば「実に驚くべき事である」と言えそうです。

 

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧

https://archive.md/onnCe

 

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