宇宙論、ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論

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閑話休題・プランク長より小さいBHは存在するのか?

2023-04-08 02:22:39 | 日記

「プランク長が一番最小の単位であって、それを超えて小さいスケールは存在しない」という立場があります。

この立場は極論すれば「空間はそのスケールでデジタル化されている」となります。

他方で「いやプランク長を超えて小さいスケールは観測できないだけであって、存在している」という立場もあります。

これは「空間はどこまで行っても分割可能である」という立場です。

さてそれでお題は「プランク長より小さいBHは存在するのか?」と言うものです。(プランク長より小さいBH=BHのホライズン直径が1プランク長を下回るBH)

ちなみに業界の認識では「BHはプランクスケールまではホーキング放射で順調に小さくなる」となっています。

しかしながらその後のBHの挙動については今の所、業界内で合意された認識はない様です。(注1

 

さてそれで「存在する」という立場の人には、特に問題はありません。

ただ単に「プランク長より小さいBHは存在する」と主張すればそれでお終いです。

そうして通常の寿命式はもちろん、この立場に立ちます。

通常の寿命式は「BHはホーキング放射によってプランク長より小さくなり、最後はその大きさがゼロになって消える」と主張しているだけですから。(注2

 

他方で問題なのは「プランク長より小さいBHは存在しない」という立場です。

この立場にたちますと「それではBHはプランク長に達した後、どうなるのか?」という問いに答えなくてはならなくなります。

答えその1・BHはプランク長に達した所で消え去る。

この答えはエネルギーと運動量の保存則に違反します。

答えその2・BHはプランク長に達した所で2体~複数体崩壊して光+素粒子に変わる。

この答えはエネルギーと運動量の保存則を満足できそうですが、何故そこでBHが崩壊するのか、説明していません。

答えその3・BHはプランク長に達した所でBHではない、別のホーキング放射を出さない何かに変わる。

この答えはエネルギーと運動量の保存則を満足できそうですが、「別の何か」が何であるのか、説明していません。

ちなみに業界では「この何か」を「プランクの遺物」と呼んでいます。

答えその4・BHはプランク長に達した所でホーキング放射が止まり、BHのままで安定化する。

この答えはエネルギーと運動量の保存則を満足しますが、何故そこでBHがホーキング放射をやめるのか、説明していません。(注3

以上の回答が当面、考えられる回答一覧となります。

従って「プランク長より小さいBHは存在しない」という立場に立たれる方はこの4つの回答の中からどれかを選択する、という事になります。

 

さてそれで「あなたはどの立場に立たれるのか」という事になります。

あなたのお気に入りの回答はどれでしょうか?

 

注1:たとえば「ブラックホールとホーキング輻射」: https://www.ipmu.jp/sites/default/files/imce/news/43J_MisaoSasaki.pdf :の様な記事があります。

著者はもちろん、この分野の専門家の方(Kavli IPMU 副機構長)ですから、それなりの見識がおありの方である、となります。

さてそれで、この記事によれば「図はブラックホールの形成と,形成後にホーキング輻射によってブラックホールが次第に痩せ細っていく様子です。」と説明し、そこで終わっています。

そこで注目しなくてはいけない内容は「この記事では通説がいう様な事」=「BHがホーキング放射を出して最後は消えてしまう、という所までは図示されていませんし、説明もされていない」という所です。

「その心は」と言いますれば『ホーキング輻射によってプランクスケールまではブラックホールが次第に痩せ細っていく事は認めましょう。

しかしその後の事は実は良く分かっていないのです。』と言っておられるのであります。(追記参照

ちなみに「BHは最後に爆発して消え去る」とはよく聞く説明ですが、「BHは爆発四散して消え去る」のではありません。

通説の寿命式が示しているのは「BHの最後は爆発的にエネルギーを放出し、BHそのものは蒸発する=ただ単に消え去る」というシナリオとなります。

注2:大きさがゼロ、だけでは消えた事にはなりません。

何と言っても「BHの中心には大きさがゼロで有限の質量をもつ特異点が存在する」のですから。

従って「大きさがゼロになって消える」と明言しておく事が必要です。

注3:BHはプランク長に達した所でホーキング放射が止まる。その理由は「プランク長より小さいBHは存在しないからだ」というのでは「トートロジー」であって説明にはなっていません。

さてそれで当方の立場といえば「プランク長より小さいBHは存在する」と主張する者です。

しかしながら「仮想粒子の大きさはプランク長である」と同時に主張するので、「BHの大きさがプランク長を下回った所で仮想粒子はBHに入れなくなる為、そこでホーキング放射が止まる」と主張します。

そこから出てくる結論は「BHの大きさがプランク長を下回った所でBHは安定化する」となります。

その結論は結果的に答えその4と同じに見えますが、当方の立場では「何故そこでBHがホーキング放射を止めるのかを説明している」という事になります。

そうしてそこで注意すべきは「プランク長より小さいBHは存在しない」がゆえに「BHの大きさがプランク長を下回った所でBHは安定化する」と当方は主張しているのではない、という所です。

最初に示した様に当方の立場は「プランク長より小さいBHは存在する」と主張する者です。

そうしてまた「BHの大きさがプランク長を下回った所で仮想粒子はBHに入れなくなる為、そこでホーキング放射が止まる」とも主張します。

従って当方の立場からは「宇宙初期に誕生した原始BHで最初からプランク長を下回ったサイズで発生したBHは、一度もホーキング放射を出すことなく、今現在でも安定してそのままの姿で存在している」となります。

さてそうであれば「原始BHでホーキング放射を出してプランク長を下回って安定化したBH」「原始BHで最初からプランク長を下回ったサイズで発生したBH」の両方が「ダークマターを構成している」と主張する事になります。

 

追記:プランク単位: https://archive.md/x6uNg :から引用。

『重力との関係
プランクの長さスケールでは、重力の強さは他の力と同等になると予想され、すべての基本的な力がそのスケールで統一されることが理論化されていますが、この統一の正確なメカニズムは不明のままです. [21] 

したがって、プランクスケールは、量子重力の影響が他の基本的な相互作用でもはや無視できなくなるポイントであり、現在の計算とアプローチが崩壊し始め、その影響を考慮する手段が必要です。[22]

これらの理由から、崩壊によってブラック ホールが形成されるおおよその下限である可能性があると推測されています。[23]


物理学者は、量子レベルでの力の他の基本的な相互作用についてかなりよく理解していますが、重力には問題があり、場の量子論の通常の枠組みを使用して非常に高いエネルギーで量子力学と統合することはできません。

それ以下のエネルギー準位では通常無視されますが、プランクスケールに近づくか超えるエネルギーについては、量子重力の新しい理論が必要です。

この問題へのアプローチには、弦理論とM 理論、ループ量子重力、非可換幾何学、因果集合論などがあります。』

こう言った理由によって「プランクスケールにまでホーキング放射で小さくなったBHについては、実はよく分かっていない」のです。

しかしながらそれにもかかわらず通説では「プランクスケールを下回ってもBHは存在し続け、ホーキング放射を出し続けて、最後には消滅する」と主張しているのです。

 

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧

https://archive.md/w14jt

https://archive.md/fNo5b

 

 

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