宇宙論、ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論

ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論 etc etc

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと・5・プランクスケールBHの最終形態

2019-02-28 00:29:47 | 日記
プランクスケールのBHについて

プランク質量はMp=sqrt(h*C/G)=2.176*10^-8 (kg)<--リンク
『他の自然単位の値が非常に小さいか大きいかであるのとは異なり、プランク質量の値はほぼ人間が取り扱えるスケール内にある。
すなわち、1プランク質量は一般的なコピー用紙を 1mm×0.3mm に切ったものの質量くらいである。』

そう言う訳で「軽い軽いBH」の登場です。

ずうっと検討してきたM=1.73*10^11(Kg)のミニBHもホーキング放射によってついにここまで軽くなりました。
さて、そのときのBH温度Tですが5.64*10^30 (度)、まあちょっとしたものです。
(ちなみにLHCでの陽子加速後の粒子温度は7TeV = 7X10^16(度)でした。)

その時に放出されるニュートリで一番数がおおいものの一個当たりの質量換算での全エネルギーは4.32*10^-9(Kg)。
これで前回同様に粒子継続時間⊿tを求めますと、⊿t=2.70*10^-43(秒)。
粒子間距離は1.62*10^-34(m)。

これは陽子直径の1480京分の1。
プランク長Lp=1.62*10^-35(m)の10倍です。
そう言う訳で、ホライズン上空の5プランク長あたりが仮想粒子発生ポイントとしての限界になります。

さてMp=2.176*10^-8 (kg)でしたのでM=4.32*10^-9(Kg)のニュートリノが5個までは飛び込めそうです。
5個飛び込みますとBH質量は1.6*10^-9(Kg)となります。

しかしながらここで「ホーキングさんが考えたこと・2」で想定した制約条件が関係してきます。
Mp質量のBHの直径は4Lpでした。
Mp/4質量のBHの直径がLpになります。
ニュートリノの大きさを弦理論の想定の様にLpとしますと、Mp/4質量を下回った時点でBHの直径はLpを下回り、ニュートリノはもはや飛び込めなくなります。
といいますか、どのような弦理論で記述される粒子も飛び込めない、つまりはそこで安定してしまう、という事になります。

上記の例で言いますとニュートリノが3個飛び込んだ時点でBH質量は8.8*10^-19(Kg)
Mp/4質量=5.44*10^-19(Kg)ですから、もうひとつニュートリノが飛び込むとそれで終わりになります。
そう言う訳でニュートリノが4個飛び込んで、最終BH質量が4.48*10^-19(Kg)でこのブラックホールの旅は終了となるのです。

さて、ホーキング放射プロセスはランダムに確率的に変動しながら続いていきますから、最終BH質量がいくつになるのかは、そのBHのたどってきたBH人生によって異なってきます。
しかしながらいずれにせよ0<最終BH質量<Mp/4という範囲に落ち着くであろう、というのが「ダークマターはプランクスケールのBHである」という主張の内容になるのであります。

さてそうしますと最終BH質量=ダークマターの平均質量はMp/8ということになり、それは2.72*10^-9(Kg),『一般的なコピー用紙を 0.13mm×0.3mm に切ったものの重さくらい』という事になります。
まあこの結果は、われわれの日常感覚から言いますとどうということはない、まさに「ゴミ・ホコリくらいの重さ」ではありますが、「ダークマターは素粒子だ」といって地上での観測を推し進めている方達にとっては、これはまさに「ビックリ仰天の話」になるのでありました。

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ダークマター・ホーキングさんが考えたこと・4・不確定性原理と仮想粒子の対生成

2019-02-27 02:24:55 | 日記
不確定性原理と仮想粒子の対生成について

以下の説明から見ていきましょう。
・「ホーキング輻射はどのような仕組みで起こるとされているのでしょうか?」<--リンク

『真空とは何もない空間ではないんです。
もし何もないとすると、ずっと同じ状態が続きます。
これは不確定性原理に反します。
なので真空はエネルギー的に揺らいだ状態でなければなりません。
時間とエネルギーは共役関係にあり、不確定性原理から以下の不等式が成り立ちます。
⊿E×⊿t≧h/2π≒1.05×10^-34

要するに極短い時間であれば(この不等式が成り立つ限り)何もないはずの空間からエネルギーが生まれることになるんです。
実際真空では絶えず仮想粒子と反仮想粒子が対生成・対消滅を繰り返しているんです。
これは実証された事実です。・・・・』

さて、こうして真空の揺らぎから時間とエネルギーの不確定性によって仮想粒子対が生まれるとされています。
そうして、その粒子の存在継続時間は⊿t程度である訳です。

次に「ホーキングさんが考えたこと・1」で取り上げた質量M(=1.73*10^11)Kgを持つミニブラックホールの場合は、その典型的な放出ニュートリノの一個当たりの全エネルギーは質量換算で5.41*10^-28(Kg)になる、と言うのが「ホーキングさんが考えた事・2」の結論でした。
E=M*C^2でエネルギーにもどして、それを2倍して(粒子生成は2個ですからね)、それでh/2πを割ってやれば継続時間⊿tが出てきます。

そうやって⊿tを求めると1.084*10^-24(秒)となります。
この時間をほぼ光速で正反対に2つの粒子は走りますからその場合の粒子間距離は6.50*10^-15(m)程度。
これは陽子直径の4分の1程度の距離になります。
これぐらい離れると時間切れでこの仮想粒子対は2つ同時に消滅する、と言う事になります。

さてこの時に仮想粒子でBH側に飛んだやつがホライズンを超えて中に飛び込むと話が厄介になります。
といいますか、そうやってホーキング放射が起きるのでした。
そうであればこの仮想粒子対の発生ポイントはホライズン上で陽子直径の8分の1程度までが限界になり、それ以上離れますと発生した仮想粒子はBHに飛び込む前に消えてしまう事になります。

そうして、その距離は発生する仮想粒子のエネルギーの大きさによって左右され、より高いエネルギーの粒子が発生した場合はより短い存在時間しか与えられない事になります。
それがこの式の意味でした。-->⊿E×⊿t≧h/2π≒1.05×10^-34

つまりよりホライズンに近い所で発生しないとBHには飛び込めないのです。
しかしながら、そのような仮想粒子の発生エネルギーによる到達距離の違いについては皆さん方が今までにおやりのBH寿命計算では考慮されてはおらず、従って反映されてはいない様に見受けられます。


さて、⊿Eというエネルギーを貸した真空としてみれば、常に時計とにらめっこです。
そうして⊿t秒後には「貸したエネルギーをきっちりと回収する事」になります。
つまりその時に「この二つの仮想粒子は消滅する」のでした。
これは何を意味しているかといいますと、発生した2つの仮想粒子は当然ながらエンタングルしていますが、それだけでなく貸し元の真空ともエンタングルしている必要がある、と言う事です。

そして消える時も別にどこかの場所でこの2つの粒子が出会って、それで消え去るのではありませんね。
生まれた時も「ただ単に一緒に生まれた」のですから、其の終わりも同様に単に「同時に消え去ればいい」のであります。
というよりは、もともとこの2つの粒子は自由粒子が2つ、という身分ではありません。
エンタングルしている上に存在時間を限られた仮想粒子でありますから。

そうして、発生した粒子の片割れが貸し元の真空からBH内の真空に移籍する、移籍した、というならば、貸し元の真空のエネルギー損失は⊿Eとなります。
これでは約束が違いますね。
「⊿t秒後に間違いなく返す」というから⊿Eのエネルギーを用立てたのです。

さあそう言う訳で貸し元の真空は⊿Eをどこからか取り立てなくてはなりません。
そうして、その取り立て先は対生成した仮想粒子のうちの一つを飲み込んだ目の前のBHしかないのであります。

そう言う訳でBHは貸し元の真空に⊿Eのエネルギーを返します。
これで貸し元の真空はもとの状態にもどりました。
さてそれでBHのエネルギー収支はどうなったでしょうか?
まずは仮想粒子一つを飲み込みましたので⊿E/2のプラスです。
しかしながら同時に貸し元の真空に⊿Eを戻しましたから、差し引き⊿E/2のマイナスになります。

話をエンタングルメントに戻しますと、仮想粒子がホライズンを超えてBH内に入った瞬間に元々あったもう一つの仮想粒子とのエンタングルが切れて、そしてまた貸し元の真空とのエンタングルも切れる、そうしてようやく2つの自由粒子の誕生と言う事になったという様に解釈する事が出来そうです。
それは又BHから貸し元の真空への⊿Eというエネルギーの支払いと同時でもありました。

さて、上記では同時と言いましたが、物事には順序と言うものがあります。
まずはBHに向かって飛び込んできた仮想粒子がホライズンを完全に超えた、つまり仮想粒子がBHのものになった、というのが原因で、その結果として貸し元の真空への⊿Eというエネルギーの支払いが生じ、それをBHが気前よく行った、という事です。
つまりBHは気前よく払いますが、それはあくまで「後払いが基本」という事であります。


さて、忘れてはいけないのはこうしてエネルギー保存則は成立しているのですが、同時に又この相互作用においては運動量の保存則も成立していなくてはいけない、と言う事であります。
その場合の運動量を計算する、観測する座標系の原点は2つの粒子が対生成したその点に取るのが妥当でありましょう。

そうしますと発生したニュートリノの内の一つが運動量Pをもって座標原点から、そしてBHから離れていくのが見えます。
そうでありますから、もう一方のニュートリノを飲み込んだBHは当然ながら逆方向への運動量Pをベクトル値として引き受けなくてはなりません。
BHは仮想粒子を吸収した位置から運動量Pをもって逆方向に動き出さなくてはいけないのです。
そうやってP+(-P)=ゼロとする事が運動量保存則から要請されるのであります。

そうしてこの要請が「一度誕生したBHがホーキング輻射によって消え去るという事は決してできない」という主張のもう一つの理由になるのでありました。

追記(2019/5/6)
上記議論の続きは
「23・BH(ブラックホール)は消滅可能なのか?」と
「24・BH(ブラックホール)は消滅可能なのか?(2)」で行われ、
一応の結論まで到達しました。

議論内容詳細につきましては
・ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧<--リンク
から該当記事に入れますので、記事内容にてご確認願います。



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ダークマター・ホーキングさんが考えたこと・3・熱暴走するBH(ブラックホール)

2019-02-26 00:31:56 | 日記
BHの考察に関係する式のおさらいを少々やります。

ホライズン半径 Rs=2*G*M/C^2=定数項1*M
ホライズン温度 T=h*C^3/(8*pi*Kb*G*M)=定数項2/M
放射エネルギー E=定数項3*T^4*(4*Pi*Rs^2)=定数項3*T^4*(BH表面積)

さてこれ等の式からBHの質量Mが半分になるとBH半径は半分になり、温度は2倍になり、そうして放射Eは(2^4/(2^2)で4倍になる事が分かります。
半径が半分になりますので球の表面積は4分の1になるのですが、いかんせんエネルギーEは温度の4乗に比例しますので、差し引き放射エネルギーは4倍になってしまいます。

そして放射EはE=M*C^2でBHの質量の減少分になります。
これが「BHは小さくなるとドンドン熱くなり、そうなるとさらに加速度的に小さくなる。」につながり「最後は爆発し消滅する」という表現になっている理由ですね。

さて、大筋の議論はそうでありましょうが、しかしながら最後の所の議論がいかにも「大雑把」であります。
なにやらビックバンに似ていて、「爆発させれば跡かたもなく消えてしまうだろう」とでもいうような、荒っぽい結論です。


この「爆発的な最後を迎える」というシナリオの根拠になっているのが、質量が減少して温度が2倍になると放出されるエネルギーは4倍になる、という計算結果でした。
これは黒体輻射の式から導かれる結論ですが、その式の成り立つ前提は放射されるエネルギーは黒体の表面から放射され、その量は表面積に比例するというものです。

つまりエネルギーが放出される層は黒体表面に張られた厚さがたとえば1ミクロンの層であり、この層は光の透過率が100%であって、しかもどれだけ黒体が大きくなろうが、小さくなろうが層の厚みは変わらない、そういう事を前提としています。
しかしながら、もしこの層の厚みが黒体の大きさが半分になったら、それはBHの場合は温度が2倍になるということですが、層の厚みが半分になっている、としたらどうなるでしょうか?

その場合は放出されるエネルギーは4倍ではなく2倍と言う事になります。
つまりこのばあいはBHは確かに熱暴走はするのですが、それは爆発的ではなくなる、と言う事になります。

さて、このエネルギーを放出する事になる層の厚さについての議論詳細は次の「ホーキングさんが考えたこと・4」で扱っていますので、そちらを参照ねがいます。<--リンク


次に現在の宇宙背景放射温度2.725Kと丁度釣り合っている、熱平衡状態にあるBHの質量を求めます。
そうするとその質量MはM=4.503*10^22Kgとなり、これは月の質量の60%にあたる事が分かります。

このBHは仮想粒子を飲み込む事でホーキング放射をしていますが、その温度は2.725K。
そうしてホーキング放射を出す代わりに、宇宙背景放射のマイクロ波を飲み込んでいます。
そうでありますから、このBHの質量の変動はなく、温度的には定常状態にあります。

さてネットによれば『・・・最後には中心部に中性子星が残る。
中心核の質量が太陽の質量の約2~3倍以上ある星では重力崩壊は止まらず,最後にブラックホールが生じると考えられている。』とのこと。
そうであれば上記のようなBHは星の重力崩壊で誕生する事はできず、ビックバン直後に生成されたとされる原始BH(PBH)として誕生する以外に方法はなさそうです。

そうして、このBHより重量のあるBHの温度はいつも宇宙背景放射温度よりも低く、つまりBHが吸収する宇宙背景放射のエネルギーは常にホーキング放射でBHが失っているエネルギーを上回っているという事になります。
そうであればそのようなBHは決して蒸発することはない、と言う事になります。
それどころかそれらのBHの温度は次第に下がっていくのであります。

以上の事は我々の宇宙において、星が重力崩壊して誕生した、あるいはこれから誕生する事になる全てのBHに当てはまります。

他方で熱平衡状態にあるBHのホライズン半径Rsは67ミクロンであり、そうであればこのBHは運良く物質の塊、たとえば星間ガスなどに遭遇すれば、それを吸収して重量を増やす事ができます。

但し、このBHよりも少しだけ軽いBHはホーキング放射によってエネルギーを失う量が宇宙背景放射を吸収する量を上回りますから、質量減少の坂道をころがり落ち始める事になります。
そうして、そのBH人生の中で運悪く物質のかたまりに遭遇する事がなければその行先はプランクスケールのBHと言う事になります。

追伸(4月7日訂正内容)
上記は宇宙背景放射と熱平衡状態にあるBHが存在しうると仮定した議論でありました。
しかしそれ以降の検討結果では、BHが光をホーキング放射する場合はその波長λは最長で2*Rsまでしか許されない事が分かりました。

その条件を入れますとBHが宇宙背景放射温度2.725Kで放射される光を吸収し放射する為には上記で提示した質量の14倍の質量を持つ事が必要になります。
それはつまり「月の質量の8.4倍の重さのBHである事が必要である」と言う事になります。

そしてこのBHは背景放射光のピーク周波数以上の光とは吸収と放射を行いますが、それに達しない振動数の光に対しては「透明」になっています。
つまり2.725Kの黒体放射光を「白色光」と見る生物にとっては「このBHは緑から青色に見える」と言う事であり「黒体には見えない」と言う事になります。

以上、この事についての詳細の議論は「BHは光を出すのか?」の章に譲ります。


さて話は変わって、次にホライズン上での重力加速度Aの事を考察します。

万有引力の式に観測質量として1kgを入れる事でA=G*M/Rs^2でAが決まります。
これも結局はA=定数項4/Mという形になり、つまりBHの質量が半分になるとホライズンでの重力の強さは倍になることがわかります。
そしてそれはちょうど温度Tの式と同じ形をしていて、つまりは重力のつよさがホライズンの温度を決めている、ホライズンでの空間の曲がり具合が温度を決めている事になります。

そうしてこの温度というのはその場所での仮想粒子対の発生の頻度と発生した粒子一つあたりのエネルギーの大きさを決めているのでした。
強い重力場は多くの仮想粒子を生み出し、それはまたきわめて局所的な現象として量子力学で記述できる、そうホーキングさんは言っているのです。
そしてこの局所現象としての仮想粒子の生成と消滅に対して、BHホライズンというのは局所的な現象ではなく(つまり、その場所の重力場の強さで記述できる現象ではなく)つねにBHシステムとしてBH全体で考える事が必要の様です。

ちなみにこの重力場による仮想粒子の生成については、BHであろうと太陽、あるいは地球が作る重力場であろうと区別はない様です。
しかしながらそれでは地球上でも重力場があるのだから、それなりに仮想粒子が発生している事になりますが、BHホライズンと比較するとあまりにも地球上の重力は弱いので、ほとんど重力ゼロの場所での粒子生成と変わりはない様です。
(ちなみに下記BHでのホーキング温度TはT=3.977*10^-20(K)でした。)


BHホライズンについてのちょっとした計算
地球上での重力加速度はご存じのように9.8m/s^2です。.
それではホライズン上の重力加速度が9.8m/s^2になるBHの質量はどれくらいになるのでしょうか?

計算結果は地球の51京倍、太陽の15.5兆倍でした。
Rsは0.49光年ほどになります。
これぐらいのサイズのBHですと、ホライズン上の重力は地上と同じ、しかし一度ホライズンの中に入ったら二度とホライズンの外には出られない、というのがアインシュタインの結論でした。

「いや、9.8m/s^2程度の引力ならロケットで脱出できるでしょう」というのはニュートンさんの意見です。
しかしながらアインシュタインは「いいや、けっしてできない」と言うのでありました。

ちなみに今までに見つかっているBHの一番大きなものは「太陽の210億倍の質量のBH」であるらしく、まあとても15.5兆倍には遠く、我々の宇宙では今の所はここで考えている様な、そんなに大きなBHは存在していない様に思われます。<--リンク

そして、我々の銀河の質量が太陽の7000億倍ですから、このBHを実現させる為には天の川銀河20個分をまとめてBHにしなくてはいけません。<--リンク
さてそうであればBH同士の衝突・合体があるとはいえ、これはなかなか大変な目標と言えそうです。

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ダークマター・ホーキングさんが考えたこと・2・ホーキング放射のメカニズム

2019-02-25 09:45:34 | 日記
"ホーキング放射の簡略な説明はうぃき「ブラックホール」の蒸発の項目にあります。<--リンク

"そして、簡略かつ詳細な説明は「ホーキング輻射って正しいんですか?」のベストアンサーではない3番目の
pis***さんの説明、「ホーキング輻射は正しいと思いますが、正しくない説明を見かけます。・・・」が良さそうです。<--リンク"

その中でBHから出てくる(様に見える)粒子についての言及があります。
『ブラックホール近辺から、あたかも、温度がkT=h/4πRであるようなエネルギー分布で粒子が放出されるのが見えます。
これがホーキング輻射です。
(引用注:ここでのhはプランク定数を2πで割ったもの。RはRs、シュワルツシルト半径)
このとき、どういう粒子が出てくるかは、たとえば
Particle emission rates from a black hole; Massless particles from an uncharged non-rotating hole
Don N. Page
Phys. Rev. D 13 P.198 (1976)
によれば、ニュートリノ:81%、光子:17%、重力子:2% となっています。』

そうして、このホーキング放射の説明のポイントはここです。

『この結果、生成消滅演算子も、空間が平らでないと、形を変えます。
空間が曲がっているときの消滅演算子をa'とすると
a'=αa-βa†
というように、ボゴリューボフ変換で結ばれます。』

「ボゴリューボフ変換」、難しい言葉ですねえ。<--リンク
しかしどうやらこれがホーキングさんがBHのホライズン近傍の重力場についてやった事のポイントの様です。

その結果、BHから離れた所から見ているとBHのホライズンで仮想粒子のペアが発生し、その半分がBHに落ち込む事で
『あたかも、温度がkT=h/4πRであるようなエネルギー分布で粒子が』BHのホライズンで生成されている様に見えると言う訳です。
これはBHの存在によって空間が曲げられた効果の結果であり、BHの存在が原因でその結果として粒子の放出が観測される、と言う事になります。

以上の説明がホーキング放射の説明としては良さそうですが、この方の説明の最後の部分、エネルギーバランスについての説明には少々疑問が残ります。


さて「ホーキングさんが考えたこと・1」で取り上げた質量M(=1.73*10^11)Kgを持つミニブラックホール、シュワルツシルト半径Rsが2.57*10^-16 (m)をまずはプランクレベルまで「蒸発」させなくてはいけません。
そしてここはニュートリノ君にがんばってもらう事としましょう。

このBHの温度を計算しましょう。
T=h*C^3/(8*pi*kB*G*M)   
(注:ここでのhはプランク定数を2πで割ったもの)
諸式に定数をいれて質量Mの関数としてT=0.1227*10^(+24)/M(ケルビン)とこうなります。

Mに1.73*10^11(Kg)を入れるとT=7.09*10^11(K)
709000000000度=7090億度、まあ大したことはありませんね。
ちなみにLHCでの陽子加速後の粒子温度は7TeV = 70,000,000,000,000,000 eV= 7京 ℃=7X10^16度です<--リンク


さて、この温度でのプランク則によるピーク波長(光換算)はλ=H*C/(4.97*k*T)。
よってこの光子の振動数SはS=C/λ=(4.97*k*T)/H。
エネルギーはE=H*SよりE=(4.97*k*T)(ジュール)
E=M*C^2よりM=(4.97*k*T)/C^2

そう言う訳で、質量換算でM=(7.63*10^-40)*T(Kg)の全エネルギーを持つ粒子の放出が一番多いとそう言う事になります。
今の場合はT=7.09*10^11(K)ですから5.41*10^-28(Kg)という全エネルギーをもつ粒子の放射が一番多い事になります。
それはつまりBHにしてみればこの粒子ひとつを放出するたびに、5.41*10^-28(Kg)というエネルギーでBHの質量が減っていく、そういうことになります。

そしてニュートリノで考えていますので、BHから出てくる(様に見える)一個のニュートリノの静止質量Moと運動エネルギーEkの合計が5.41*10^-28(Kg)になると、そう言う事でもあります。

ちなみに参考までに電子と陽子/中性子の質量を掲げておきます。
電子      9.11*10^-31(Kg)
陽子/中性子  1.67*10^-27(Kg)

このBHの放出するニュートリノのエネルギースペクトルのなかで、一番数が多い、と言う意味でのこのBHにとっては典型的なニュートリノになる訳ですが、その一個が持つ全エネルギーの換算質量が5.41*10^-28(Kg)ですが、それが陽子/中性子の質量の約3分の1と言う事で、相当に重くなっている、つまりほとんど光速で飛び出している、ということがこれによって分かります。

そうして、こうしたプロセスによって質量M(=1.73*10^11)Kgを持つミニブラックホールが質量ゼロになるのに宇宙年齢程の時間が必要になる、というのが皆さんの計算結果でした。


さてこのBHのホライズンの表面積SはS=4*Pi*Rs^2ですが、その上にプランク長さLpを直径とした円がいくつ取れるか計算しましょう。
その最大値はRs^2/(Lp/2)^2程度になると予想でき、その値は1.00*10^+39個ほどです。

これは何を計算したのか、といいますと、ニュートリノの大きさをプランク長さ程度とした時に、一度にどれぐらいの数のニュートリノがホライズン上に存在できるのか、という数字になります。
そうして、これほどの数のニュートリノがホライズン上に存在できるのであれば、なるほど今のこのサイズのBHであれば統計力学を適用する事が妥当であろうと、そう言う事になります。

しかしながらプランク質量程のBHのRsは2*Lpでありますから、さてその場合はRs^2/(Lp/2)^2は16個、たかだか16個のニュートリノの集団に対して統計力学をそのままあてはめて使うのは、これは妥当とは思えないのであります。

これがプランク質量のBHについては、まずは考慮されなくてはいけない一つ目の問題です。
連続的に質量が減っていくのではなく、離散的に、確率的にしか質量は減っていかない、そういう状況になります。

以上は従来から皆さんがおやりになっているBHの寿命計算のやり方への批判になります。
離散的、確率的になる状況をつかむには代数計算では無理で、数値計算によるシミュレーションが必要になると思われます。
(プランク単位系についてはEMAN物理のプランク単位系を参照願います。<--リンク)


二つ目の問題は、いつまでニュートリノがこのBHに飛び込めるか、と言う事です。
BHの半径が2Lp程度であればたしかにLpの大きさの粒子は中に入れそうですが、BHの半径がLpになった時にはどうか、さらにはLp/2になったら、これはもはやどの粒子もこのBHの中には入れそうもありません。
そしてそのBHの質量(重量)はMp/4となります。

そうであれば半径がLp/2以下のBHはそれ以上蒸発する事は出来ない、そのように考える事ができそうです。
そうして、その事が「プランクスケールのBHが蒸発して消え去る事は出来ない」という主張に結びつくのでありました。

PS
BH蒸発についての良い説明が見つかりましたのでご参考までに載せておきます。
ブラックホールが蒸発するとはどういうことですか?<--リンク


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ダークマター・ホーキングさんが考えたこと・1・小さなBHは本当に消えたのか?

2019-02-23 11:58:53 | 日記
さて、結論は前に示した通り「ダークマターはプランクスケールのブラックホールである」と言うものです。

しかしながら、そういいますと「そんな小さなブラックホールはとっくに蒸発しているよ」とホーキングさんが言うのです。

そうして皆さん、それを信じておられる、その認識を共有しておられる様です。

例えばこの論文を参照して見てください。
論文1・Hawking 輻射とブラックホールの蒸発<--リンク
http://astro-wakate.sakura.ne.jp/ss2013/web/syuroku/grcosmo_24a.pdf

あるいはこれではどうでしょう。
論文2・Kaluza-Kleinブラックホールの蒸発過程<--リンク
http://www-tap.scphys.kyoto-u.ac.jp/~keiju/papers/master.pdf

上の論文ではイントロダクションでこう述べられています。
『しかし、ブラックホール時空上の場の量子論を考えるとブラックホールは熱的な輻射(Hawking 輻射) を出し蒸発していくことが分かる。
ナイーブに考えればブラックホールはそのうち蒸発して消えてなくなると考えられる。
しかし、ブラックホール蒸発の最終段階 (ブラックホール質量 ー> MPl:プランク質量レベル) では、Hawking 輻射の温度が Planck 温度まで上がるため、背景時空への反作用とさらに量子重力の効果が効いてくる。
そのため、蒸発の最終段階のダイナミクスや終状態についてはほとんど何も分かっていない。
4 次元ブラックホールについては、そのような Planck スケールの物理における問題は残されてはいるが、少なくとも Planck 質量になるまでは、準静的にやせていくだけであろうと考えられている。・・・・・』

『少なくとも Planck 質量になるまでは、準静的にやせていくだけであろう・・・』

いやいやプランクレベルに至るまでに、すでに状況はそんなには楽観的ではないと思われます。

そうしてプランクスケールに至るや、もはや何物もBHには飛び込めず、従ってまた何物もBHからは出てくる事はできない、そこで安定してしまう、と言うのが当方の主張であります。


さてまずは論文1から見ていきましょう。

BHの温度TをT=h*C^3/8*Kb*G*Mと算出した後、黒体表面から単位時間あたりに放出されるエネルギーEを計算し、E=MC^2を使って質量に換算して、BHの質量の減り具合を見積もります。

そうやってもともとのBHの質量が消え去るまで、ホーキング輻射でエネルギーが持ち去られて蒸発するまでの時間を見積もります。

さてその結果は「宇宙初期に作られた 、質量M(=1.73*10^11)Kgを持つミニブラックホールは今頃に蒸発する」という結論に至るのであります。
「Non-equilibrium model inspired from Black Hole」の6ページ目を参照ねがいます。<--リンク
https://www.cc.kyoto-su.ac.jp/project/MISC/menu/symposium/2016/slide/Umetsu.pdf

1730000万トンというと地球質量5.9736 ×10^24 kgの34500億分の1、そう言う訳でミニブラックホールと言います。

そしてこれが物理学者の皆さん、天文学者のみなさんが「宇宙初期に作られたミニブラックホールはダークマターにはなれない」という理由であります。

「全て蒸発してしまった」と、そう言う訳です。

しかしながら実際は、といいますと上記Pdfの7ページにある様な各段階を経てプランクスケールBHに至り、さてそこで本当に蒸発するのかどうか、後かたもなく消えてしまうのかどうか、論文2が言う様にまだ確定はしていないのです。


さてそれで、梅津さんPdfの7ページにある2つの段階、粒子放出に伴う背景時空への影響が無視できない段階と次のプランクスケールで起こっている事、それを真面目に検討しなくてはなりません。

論文1に抜けているのはそこの部分の考察であり、それは「マクロパラメータはどこまで行っても変化しない」という前提、仮定の事であります。

BHがエネルギーが抜けるに従って、「事象の地平」、シュワルツシルト半径Rsが小さくなる事は自明の事であります。<--リンク

そうなった時にBHの近傍空間を黒体と見なし、プランクの法則で記述されるような黒体輻射が発生し続けられるのか、まずは疑問であります。<--リンク


上記の質量M(=1.73*10^11)Kgを持つミニブラックホールのシュワルツシルト半径RsはRs=2*G*M/C^2より
2.57*10^-16 (m)と計算されます。

さて、中性子の半径が約1.2 × 10^-15(m)、つまり中性子よりひとけた小さいのですね、このBHは。

そうであればこのBHは「中性子を喰えない」のであります。

中性子が大きすぎてこのBHの口には余るのですよ。


次に素粒子「クォーク」です。

素粒子「クォーク」の半径の上限は 4.3×10^-19m であるとZEUS Collaborationgが決定した。<--リンク

「クォーク」一個であればこのBHに飛び込めそうですが、残念ながら「クォーク」一個という存在形式は出来ない様です。

そうしますと残るのは電子かニュートリノか光子ぐらいなものになります。

さすがに電子では電荷をもちますので何かと支障がでます。

それでニュートリノか光子が残る、と言う事になりますか。

そうしてこれらのものは弦理論ではプランクスケールの弦の振動ととらえられています。

そうであればサイズ的にはそれらのものはこのBHに飛び込める、ホーキング輻射を発生させる事が出来る訳です。


その様な粒子が中性子よりひとけた小さなこのBHの事象の球面の周りの空間で発生しては消えていく、そのうちのいくつかがBHに飛び込む事でBHの質量が消えていく、そうホーキングさんは主張されている訳です。

さてそれではニュートリノの質量はいかほどでしょうか?
・ニュートリノの質量とは <--リンク
https://www2.kek.jp/ja/newskek/2004/sepoct/doublebeta1.html

『この実験からは現在では、ニュートリノ質量は2.2電子ボルトよりも小さいという結果が得られています。
(1電子ボルトは約5グラムの1京分の1のさらに1京分の1)』

さあそうなりますと、いったいいくつのニュートリノがこのBHに飛び込めばM(=1.73*10^11)Kgという質量がゼロになるのでしょうか?

単にニュートリノがBHに飛び込むだけでは、このBHは消滅しそうにもありません。


論文3・量子トンネル効果に基づくホーキング放射の導出と事象地平面近傍の次元縮約<--リンク
https://ci.nii.ac.jp/els/contentscinii_20190222161715.pdf?id=ART0009701868
↓P47
『ホライズンの極近傍において,エネルギー E を持つ粒子-反粒子を作るエネルギーのゆらぎ 2E を考える.
もし,この粒子対がホライズンのすぐ外側で作られるならば,反粒子は時間 h/2E が経過する前にホライズンの中に落ち込む可能性がある.
我々の世界では不安定である反粒子も,ホライズンの内部では実現可能な軌道に乗せることができ,安定となることが知られている [10].

我々は,今,反粒子のみブラックホールに吸収され,実粒子が我々の世界に留まることを考える.
特に,質量の無い実粒子はホライズンに吸い込まれることなく無限遠に到達することが可能となる.
このとき,我々の世界にいる観測者から見ればブラックホールは反粒子(負のエネルギー状態 -E)を吸収したことによって,自身のエネルギーを減少させ,一方で,その減少分と同じ量のエネルギー E を持つ実粒子が我々の世界に出てきたことになり,これを放射として理解することができる(図1).

これが,あたかもブラックホールが粒子を放出するかのように振る舞うホーキング放射のメカニズムである.
Hawking は実際に Bogoliubov 変換を用いて,重力崩壊する天体が作る時空において,生成される粒子数期待値を計算した.
すると,ブラックホールからの放射はある温度(ホーキング温度 TH = κ/2π)を持つ黒体放射スペクトラムに一致する,すなわち,ブラックホールが黒体放射のように振る舞うことを示した.・・・・・』

これがホーキング先生が語った事の要旨の様です。
さてそうであるとすると、いったいニュートリノの何がプランクの法則で記述されるようなエネルギー分布を持つ黒体輻射を形造る事ができるのでしょうか?

『特に,質量の無い実粒子はホライズンに吸い込まれることなく無限遠に到達することが可能となる.』

いったいこの名前もない実粒子というのは何であって、そうしてまた何がプランクの法則で記述されるようなエネルギー分布を持つ黒体輻射を実現するのか、それがまったく分からないのであります。

そいうことが一切不明のまま「宇宙初期に作られたミニブラックホールはダークマターにはなれない」、「全て蒸発してしまった」と、そう主張されているのでありました。

KWD ダークマター プランクスケール ブラックホール

http://archive.fo/vfEqo


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