満天の星空が見たい!

温泉旅がメインの生活。酒とグルメとミステリ小説、ごくたまに失恋の話。

宮崎市青島の温泉ホテルで回想…。

2017-03-26 21:26:28 | 人間
青島神社の入り口。横は「鬼の洗濯岩」である。

会社の慰安旅行で大阪から日向(ひゅうが、宮崎県)までフェリーで行き、
宮崎、鹿児島旅行に行った思い出はあるが、ほとんどが鹿児島の観光地を巡った。
だから、自分の中では、宮崎は未踏の地だった。今回、宮崎の温泉巡りをしたが、
思った以上に魅力的な観光地だった。

宮崎…。宮崎と言えば、中学時代のある男を思い出す。自分も九州男児、鹿児島生
まれではあるが、5歳から山口県新南陽市(現・周南市)で高校まで過ごした。だか
ら彼、Yが宮崎から転校してきたときは大いに歓迎した。彼の宮崎弁は耳に心地よ
く、毎日一緒に遊んだ。ともに家は貧乏、食うものも食わず、欲しいものは手に入
らず、それでいて文句も言わず…。男はじっと我慢ーそんな毎日だった。

中学3年の時、ある事件が勃発し、それまで一枚岩の、仲が良かったグループが二
分した。彼がAのトップ、そして自分がBのトップだった。毎日学校で小競り合い
が続き、いよいよ総勢の対決間近だった。それを知らせに来たのは彼だった。昼休
みに彼ひとりが我々(20名ぐらい)の前に来て、「××で、5時に待っている」と告
げ、自分を睨んだ。

その時、自分のグループ(B)の一人が、「お前、ええ根性しているじゃないか」と
言い、いきなり彼の顔にパンチを食らわした。その男は体も大きく、力自慢でYは
吹っ飛んだ。しかし、彼はそれで終わらなかった。Yは数秒倒れていたが、むくりと
立ち上がり、鳩尾(みぞおち)に逆襲のパンチを出した。それが見事に決まり、逆に味
方の男がうずくまってしまった。「じゃあ、待っているから」と、彼は何事もなかっ
たように教室から出て行った。

その騒動を見ていた女生徒が学校に通報し、対決は未遂に終わったが、Yの評判はう
なぎ上りになった。事件は誤解から生じた事が判明し、まだグループは一枚岩になっ
た。自分とYは、元の親友に戻ったのである。しかし、彼は中学卒業後に行方をくら
ました。彼の家族も一家離散、まったく情報が途絶えてしまった。

それから7、8年後、大阪で彼の存在を知ることになった。自分も田舎の生活が嫌にな
り、突発的に大阪に出てきたのだが、彼の名前を聞くことになるとは思ってもみなか
った。それも、大阪ミナミの居酒屋である。友人と飲んでいると、隣の席で喋ってい
たヤーサン二人の会話が衝撃的だった。『宮崎生まれのメチャ喧嘩の強い男、男前で、
組長の娘が惚れて、将来の組長候補」…。

最初は、「まさか!」と思っていたが、Yの本名を聞いて間違いないと思った。その
組は大阪市内ではなく、大阪の地方都市だったが、一般人だった彼が何かの弾みで喧嘩
騒動になり、相当に暴れたらしい。それを見ていた組の幹部がスカウトしたというが、
彼の生活も行き詰っていたのではないかと思う。大都会で徒手空拳でのし上がることな
ど、夢また夢である。

その後は何も知らないし、知りたくもなかった。彼にはゆるぎない根性があった。「や
くざは嫌いだ」と言っていたが、それは将来の自分を予想していたのではないか…と思
う。何十年前のことを、宮崎市青島の温泉ホテルで、しばし回想にふけった。