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自動車革命と世の中の変化 (その3)

2023-03-11 12:47:11 | 工業技術
【はじめに】
 今回は、自動車革命についての最終稿です。

 私が物心付く前(1948年)に、木炭バスが故郷を走っていたそうです。1950年頃、まだ乗用車もバイクも殆ど見掛けませんでした。それから『第一次自動車革命』が始まり、故郷でも殆どの家が自家用車を持つ様になりました。その後、高齢化が進んで廃車した家が増加しています。 現在は『第二次自動車革命』が始まっています。今後、世の中はドンナニ変化するのでしょうか?!

【第一次自動車革命】
 日本では戦後急激に自動車が普及しました。私は、終戦から2016年までを『第一次自動車革命』の時代だったと思います。自動車は生活と産業にとって不可欠な物になり、自動車産業は急激に成長して外貨を稼ぎ、『自動車は国家なり』と言える状況になりました。

・・・ 自動車の保有台数の推移 ・・・ 出典=検察庁の資料
★ 1950年 :70万台 ・・・終戦は1945年
★ 1960年 :300万台
★ 1970年 :1,900万台
★ 1980年 :3,900万台
★ 1990年 :6,100万台
★ 2000年 :7,600万台
★ 2010年 :8,000万台
★ 2018年 :8,300万台
(注記) グラフから読み取った数字なので多少正確さに問題が有ります。

 『第一次自動車革命』を達成する為に、国と自動車メーカーがドンナ工夫と努力をして来たのか? 概要を以下に書いておきます。(私も少しだけですが、参加出来ました。)

 現在市販されている車には、ユーザーに知らされていないコネクターが付いていて、専用のパソコンに接続すると→→どの系統が破損しているのか?表示する様になっています。

(1) 道路網の整備 :1963年に日本で最初の高速道路が開通しました。(名神高速道路;尼崎IC~栗東IC) 国道、都道府県道等々が整備/新設されました。過疎地では産業が少なかったので、道路工事が重要な産業になった時期が有りました。

(余談 :故郷へ) 私の家は神戸市に有り、故郷は和歌山県田辺市龍神福井です。昔は車で6時間以上かかりましたが、高速が出来たのでキッカリ3時間で帰れます。集落から龍神温泉まで昔は山越えのクネクネ道を車で走ると、2時間ほどかかりましたが、トンネルが数本出来たので30分で行けます。集落の人達は、時々公営の露天風呂を楽しんでいる様です。

(2) 車の価格 :日本は、(世界に例の無い)軽自動車と原動機付自転車の優遇処置を取ったので、庶民でも買える様になったと思います。(軽自動車の優遇は1949年から始まりました。)

(3) 騒音対策 :保有台数が増加すると、車が発生する騒音が社会問題になって来ました。高速道路の周辺では沢山騒音訴訟が起こされました。①防音壁/能動制御防音壁の設置、②高機能塗装(水と空気を通す塗装)、③ノージョイント化(路面のつなぎ目を無くす)などの対策が施されて、道路周辺の騒音は低減しています。

 なお、高機能塗装は水溜まりを減らすので、スリップ事故を減らす効果も有ります。 更に、水と空気を通すので、道路の横に植えた樹木が、道路の下に根を広げる事も出来→→都市部の緑化に少し貢献しています。

(4) 排気ガス対策 :1999年当時の石原慎太郎知事が、真っ黒いススの入ったペットボトルを見せて、ディーゼル車の排気ガス問題を呈示しました。以来、メーカーが努力して『クリーンディーゼル』と呼ばれるディーゼルエンジン車が開発されました。

(5) 燃費の向上 :大昔の車の燃費は『数km/リットル』でした。①エンジンの吸排気弁の改良、②DOHC(ダブル・オーバーヘッド・カムシャフト)、③ターボチャージャーを設ける、④エンジンを電子制御する、⑤車体の軽量化、⑥車体を流線形にして空気抵抗を減らす、⑦タイヤの性能改善・・・等々で大幅に燃費は改善されています。 ガソリン車でも『20km/リットル』以上が達成されています。

 究極の燃費向上策はハイブリッド車の開発でした。 『30km/リットル』以上のハイブリッド車が市販されています。 燃費が向上すると→→燃料の消費量が減り→→排気ガス量が減り→→環境汚染問題が軽減します。

(余談 :私とDOHCの思い出) 私は大学で機械工学を学びました。(1970年)4年生になると『卒業設計』と『卒業実験』が必修でした。授業の無い時間、(夕方から夜に)各自が取り組むのです。『卒業設計』では、自分で機械と仕様を決めて、強度/性能計算書を作成し、組立図と主要部品の製作図を作成しました。

 1969年に日産がスカイライン2000GT-Rを発売し、雑誌にDOHC(ダブル・オーバーヘッド・カムシャフト)エンジンを搭載していると紹介されていました。私は卒業設計にDOHCを選びました。非常に難しく、手間が掛かったので、下宿には週に1日だけ洗濯と風呂に帰りました。同級生からは「お前はあほだ!」と言われました。

 完成したら教授が日産からエンジンの図面を取り寄せてくれました。私の作成した図面に良く似ていました。

(6) 安全性の向上 :私の記憶では安全対策を先導したのはベンツです。

6-1) シートベルト ;シートベルトの使用は極めて効果大です。エアバック無しでも助かる確率が高いです。 日本人は従順なので、車に乗ったらシートベルトを着用しますが、アメリカ人は束縛されるのが嫌いな様で、シートベルトを着用しない人が多いい様です。一時期、着席すると自動的にシートベルトが装着出来る装置が市販されましたが、アメリカ人はナイフでシートベルト切断したそうです。

6-2) 衝突エネルギーの吸収 ;大昔の車は、車体を頑丈に作って衝突事故が発生しても、運転者と同乗者の損傷を軽減する設計思想を採用していました。 誰か?が、「運転席より前方を弱くして、衝突したらグニャグニャに壊れる様にして運動エネルギーを吸収させる方が安全だ!」考えました。現在の車は、この思想を改良して設計しています。

6-3) 車体を流線形にした ;車のフロント部に丸みを付けると、通行人と接触した時→→傷を軽減出来ると言う報告が有りました。

6-4) エアバッグ ;火薬で膨らませるエアバッグを1963年に発明したのは日本人(小堀保三郎氏)でしたが、誰も小堀氏の話を信用しませんでした。1970年代にアメリカで実用化されて、1980年にベンツがオプション装備として販売を開始しました。

(余談 :某社の社長の話し) 私はエアバッグの開発チームに参加した事が有ります。量産機械加工業者を探していた時、中規模の会社の社長に見積依頼をした事が有ります。最初訪問した時、社長は「眉唾物だ!」と相手にしてくれませんでした。2週間ほどして再度訪問すると、「是非ともやりたい!」と言うのです。

 社長はエアバッグ付きのベンツに乗っていたのですが、最初の訪問後に『九死に一生を得る』様な追突事故を起こしていたのです。

6-5) 安全確認実験 :自動車メーカーでは新型車を発売する前に、種々の実験をしています。その一つに衝突試験が有ります。車の中に人間の特性に似せて作った、超!超!高価な人形を乗せて→→時速50km/hでコンクリート壁面に衝突させて→→人形にドンナ力が加わったか?データーを採取しています。

(7) 信頼性向上 :「○○が起こる確率は一万分の一である」などと言う話を時々聞きます。発生確率を計算/検討するのが『安全工学』と『信頼性工学』です。 (破損すると人命に関わる事故が予想される)車の重要部品は、『安全工学』と『信頼性工学』をフルに活用して種々の検討を行い→→設計して→→機械的特性が保証された素材を入手して→→部品を製造し→→過酷な条件で実験を行って→→発生確率の検証を行っています。

(8) 利便性向上 :運転しやすさを追求する研究が行われ、種々の機構が開発されました。昔はハンドル操作に大きな力が必要でしたから、大型バスや大型トラックの運転手は男性に限定されていました。現在では、超!大型の建設機械でも女性が運転出来ます。 トラックの座席は座り心地が悪かったですが、快適な座席に取り換える事が出来ます。

8-1) オートマチックトランスミッション(AT) :現在はオートマが普及したので、運転が楽になっています。クラッチ(変速機)が無くなっている分けでは無く、自動的に切り替わるクラッチを採用しているのです。

8-2) パワーステアリング :私が子供の頃の自動車は、ハンドルの先に歯車が付いていて、人力で車軸を動かしていました。現在のハンドルは指先でも操作出来ます。

8-3) 電子料金収受システム(ETC) :日本では1997年からETCの実験が始まりましたが、色々有ってナカナカ普及しませんでした。2022年の普及率は94%の様です。

8-4) カーナビ :1991年にパイオニアが世界で最初のGPS式のカーナビを発売しました。

(余談 :長距離トラック) 2005年頃の話です。既に携帯電話が普及していました。遠方に大きくて重い荷物を運ぶ必要が有りました。助手席に奥さんを乗せた大型トラックがやって来ました。喫煙しながら、運転手と話をしたのですが、「自宅は青森ですが全国を走り回る。一度出かけると10日ほど帰らないので、時々家内を連れて走っている」、「携帯電話にA工場→→B工場に運べ、次はC工場→→D工場に運べと指示が有り、10日ほどすると青森の近辺に運ぶ様に会社が段取りしてくれる」と言っていました。 別の運送会社に依頼した時も、奥さんを連れていました。

 全国各地に大型トラックの運転手さん達が利用する、広い駐車場が付設された食堂が有ります。大抵は少し交通の不便な所に有るので、一般の方は余り利用されません。私は、その手の食堂を何カ所か利用しました。ボリューム満点で、安くて美味しかったです。

【第二次自動車革命】
 私は、中国が電気自動車(EV)の普及に取り組みだした『2016年』から『第二次自動車革命』が始まったと考えています。

 EVの技術はそれほど難しくないので、第二次自動車革命の課題は『自動運転に関する技術開発と実証実験/問題の抽出』だと思います。『レベル4』は公道で試験を行っています。

(1) 自動運転車 :レベル4→→レベル5
(2) 電気自動車(EV)

【電気自動車が普及してきたら】
 私は、2022年2月11日に『電気自動車(EV)の問題点 (その1)』、18日に『・・・(その2)』を投稿しました。 そこで触れ無かった問題点と世の中がどう変化するか?について書きます。

(1) 車の価格 :EVは、電池を除いて考えると、部品点数が大幅に減る為に車は安くなると予想します。中国がリチュウム電池の製造設備を近年急激に増設した為に、昨年(2022年)夏頃からリチュウム電池の在庫が急激に増加しています。今後、リチュウム電池メーカー間で熾烈な競争が始まり→→電池の価格が低下し→→EVも安くなると私は予想しています。

(2) 家庭用電気料金 :EVが普及してくると、電力の需給が逼迫(ひっぱく)して家庭用電気料金も高くなる恐れが有ります。(想像以上に電気料金が高くなる様だと、EVは普及し無くなるでしょう!)

(3) 燃料税の減少 :現在、燃料税(ガソリン税など)は年間『4兆円』ほど徴収されたいますが、電気には燃料税の様な税金が掛かっていないので、EVの普及に連れて税収は減ってきます。 多分、財務省は「EVの電気を区別して、税金を徴収する手段を模索している」と想像しています。

(4) 車の寿命 :EVになると、電池とタイヤを除くと、部品の点数は少なくなり、寿命の短い物が無くなります。『ユーロ7』では、「走行距離20万kmまたは10年間、規制値を保持する事」を要求しています。言い換えると、現在の常識では考えられない長い!長い!『保証期間』を要求しているのです。それだけ、EVの寿命は長いと考えているのだと想像します。

(5) 雇用の喪失 :EVの部品点数は大幅に少なくなるので、以下の職場で沢山雇用が失われます。
5-1) 自動車メーカーの工場従業員
5-2) 部品メーカーの従業員
5-3) 修理工場の従業員

(6) 中国の台頭 :今からエンジン車の会社を起こすのは高度な技術者をスカウトして、莫大な資金を集める必要が有ります。然し、EVの新会社を設立するのは、比較的簡単だと思います。その証拠は、中国が近年、EVを量産し始めた事です。

 EVでは、自動車メーカーが長年努力して蓄積した技術が必要で無くなります。日本を含めた欧米の自動車メーカーは、国家と一体になった中国のメーカーと熾烈な価格競争に立ち向かう必要が有ります。「中国車に関税を掛ける等々の対策をしないと、太刀打ち出来ないのでは?」と危惧しています。

 EVでは、価格競争が激化して、自動車メーカーの収益が大幅に低下すると予想します。『自動車は国家なり!』と言う時代が終わるのです。日本は別の『○○は国家なり!』と呼べる産業を育てる必要が有ります。

(7) 電池のリサイクル :リチュウムイオン電池は既に沢山使用されています。日本政府は2001年に『資源有効利用促進法』を制定し、リチュウムイオン電池のリサイクルを行う一般社団法人JBRCが設立されました。携帯電話については『MRN(モバイル・リサイクル・ネットワーク)』と言う組織が取り組んでいます。

 リチュウムイオン電池のリサイクル事業は赤字の様です。現在は、リチュウムは回収出来ず、ニッケルとコバルトが回収されています。 政府はリチュウムイオン電池のリサイクル技術開発に金を出して、採算ベースに乗る技術を開発する必要が有ります。古紙の様にリサイクルで利益が出る様になれば、中国に対抗出来ます。

(8) 高速道路の防音壁が不要 :EVは静か過ぎるのが問題なので、音を発生する装置が義務付けられています。EVが普及したら高速道路の防音壁が撤去されて、景色を楽しみながら旅行する事が出来る様になると思います。

【ガソリンスタンドが少なくなってきます!】
 自動車の燃費が改善したのが最大の原因で、既に日本のガソリンスタンドの数は激減しています。ピークだった1994年には全国に6万ヵ所有りましたが、30年後の現在3万ヵ所以下になっています。

 EV用の急速充電器の規制を政府は23年度に緩和する方針を発表しました。ガソリンスタンドに急速充電器を設置しても、自家用車(マイカー)や業務用車の多くは家や事務所で充電すると予想されます。コンビニ、スーパーマーケット等の駐車場に急速充電器が設置されると予想します。 EVが主流の時代になったら、ガソリンスタンドの経営は成り立たなくなる可能性が有ります。

 消防法の改正で、2018年から、ガソリンスタンドの地下タンクは40年経過したら改修が必要になりました。タンクの回収には億円単位の金が必要ですから、ガソリンスタンドは益々減少すると予想します。→→仕事を失う方が沢山出てくるのです。


・・・ ガソリンスタンド数の推移 ・・・
★ 1994年 :60,000ヵ所 (100%)
★ 2000年 :53,600ヵ所 ( 89%)
★ 2010年 :38,700ヵ所 ( 65%)
★ 2019年 :29,600ヵ所 ( 49%)
出典 :不破雷蔵 『ガソリンスタンド数や急速充電スタンド数の推移をさぐる(2020年公開版)』

【自動車修理工場の仕事】
 以下に述べる様に、EVが普及したら自動車修理工場の仕事は減ると予想します。 電池とタイヤを除いて、EVの寿命は長いと思われるので車検の必要性について国は検討するべきだと考えます。

 EVは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンの代わりに直流電動機(DCモーター)が付きます。構造が単純で部品点数が飛躍的に少なくなります。交換/点検が必要なスパークプラグ、エアフィルター(ろ過紙)、オイルエレメントが有りません。勿論、エンジンオイルも不要です。EVは、減速時にモーターが発電機になってブレーキ(回生ブレーキ)の役割をするので、ブレーキパッドの消耗毛が少なくなります。

 DCモーターは速度制御が簡単で、起動時に大きなトルクを発生させる事が出来るので、EVではクラッチ(変速機)が不要です。この点でも、修理工場の仕事は減ります。(但し、終減速機はEVでも必要だと思われます。)

【レベル5自動運転EVが普及したら?!】
 全国どこに行くのにも、人工知能(AI)が自動車を運転する『レベル5自動運転EV』が利用出来る時代を想像して見て下さい。車内にはハンドル、アクセルペダル、ブレーキペダルは有りません。 運転免許証は必要有りません。ご婦人達は会話を楽しみながら、気軽に観光旅行に出掛けられます。 電池の残量が少なくなると、AIが急速充電器の有る場所を探すので、”ガス欠”の心配が有りません!

FS映画の世界の様ですが、私は10年~15年後には『レベル5自動運転EV』が市販される様になると予想しています。『レベル4』は現在既に公道試験を行っています。『レベル4』の問題点を洗い出して、少し技術を高めれば『レベル5』が完成します。 問題は、国が『レベル5』に対応出来る様に道路を整備し、法律を整備する事です。










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