【はじめに】
先日(1月8日)に『黒い金』の記念碑的存在だった『目白御殿』が全焼してしまいました。 そして、とうとうパーティー券問題で逮捕者が出ました。 今年は、「黒い金を減らす」変革の年になって欲しいです!
岸田総理は『政治維新本部』を立ち上げましたが、最高顧問の一人に派閥の長である麻生太郎氏を就任させ、メンバー38人中に問題の安倍派から10人も選びました。岸田氏の本気度が疑われます。 私は、「黒い金を必要としない、自民党に生まれ変わって欲しい!」と願っています。
「衆議院を昔の様に『小選挙区制』に戻すべきだ」と言う方がいますが、黒い金が飛び交う事になってしまいそうなので、私は大反対です。
本稿では、「昔、黒い金をドンナニして作ったのか?」を皆さんに知って頂く必要が有ると思ったので、私の経験談を書きます。私より詳しい方が、今でも数十万人は生きておられると思いますが、皆さん墓場まで秘密を持って行くと決められている様です。
【政治家の金が絡んだ事件】
戦後の政治家が絡んだ、(私の記憶に残っている)黒い金の事件を以下に列記します。
・・・ 戦後の政治家が絡んだ、黒い金の事件 ・・・
★ 福島県政汚職事件 :1950年 ・・・800万円→→木村守江知事
★ 田中彰治事件 :1966年
★ ダグラス・グラマン事件 :1970年に発覚 ・・・日商岩井・5億円→→松野頼三氏
★ 東京佐川急便事件 :1987年~ ・・・発端を作ったのは総理就任前の竹下登氏、数千億円の金が動きました。事件に関する本が沢山出版されました。
★ リクルート事件 :1988年~89年 ・・・竹下登氏
★ 共和汚職事件 :1991年
★ ゼネコン汚職事件 :1993年~94年
★ 日歯連闇献金事件 :2001年 ・・・1億円→→橋本龍太郎氏、野中広務氏、青木幹雄
★ 河井夫妻選挙違反事件 :2019年
★ 日本風力開発汚職事件 :2023年 ・・・数千万円→→秋本真利衆議院議員
★ パーティー券問題 :2023年
★ 柿沢未途議員公選法違反事件 :2023年
【黒い金についての私見】
古株の記者達は、巨額の黒い金が動いていた事は承知していたと推察しますが、あまりにも全国津々浦々に蔓延していたので、「ニュースにはならない!」と考えていた様に思います。 国民の多くは、「政治には金が要る!」と黒い金を問題視しなかったのでは?と思います。
目白に有った田中角栄氏の御殿で、「土産として紙袋に1億円入れて持って来たのを、目撃した」と話す記者がいましたが、「彼は黒い金に麻痺して、殆ど問題視していない」様に見えました。
今から・たったの三十数年前まで、毎年!毎年!1兆円~2兆円もの黒い金が政界に流れていました。現在60歳代の政治家の多くは、そんな黒い政治の世界に足を踏み入れたのです。先輩達は、ふんだんに入って来る黒い金で愉快にやっているのを見ていたと想像します。彼らが、当選回数を重ねるたびに黒い金の額が小さくなっていって→→高級料亭や高級クラブに行けなくなりました。
現在55歳以下の営業マン達は、入社後に裏金作りに走り回る必要が無くなっていたと思います。 国民は段々政治家の不正を嫌悪する様になり、現在では黒い金は最盛期の『数%』まで減少していますが、収支報告書に記載しない事すら問題視する様になっているのです。
政治家達は三十数年間に、「黒い金が悪だ!」と言う学習が出来ませんでした。国民の多くは「黒い金が悪だ!」と考える様になりました。政治家達と国民の考え方の乖離(かいり)が大きすぎる様に思います。
【政治家が黒い金を集める昔の仕組み】
戦後、政治家の絡んだ『黒い金の事件』は沢山あり、特捜部が活躍しました。 然し、特捜部は『黒い金を集める仕組み』を暴く事は出来ませんでした。
三十数年前の日本の政治/経済を知って頂く必要が有ると考えているので、適任者とは言えませんが、私が『官庁商売』で得た知識を以下に書いておきます。
《 第0ステップ :黒い金の相場 》
官庁商売では、受注金額の『3%』を現金で、国会議員、知事、市町村長に渡すのが相場になっていました。千葉県は成田空港建設の頃から『7%』だったと記憶しています。発注金額が『4%』高かったので企業は損をしなかったのです。某県は何故か?『5%』で、発注金額が『2%』高かったです。
誰も集計した事が無いと思われるので、確かな話では有りませんが、国の一般会計予算と特別会計予算、地方公共団体の予算の総額から人件費を除いた額の『3%』が黒い金になったと思います。従って、1990年頃でも、黒い金は『2兆円』に近かったと私は見ています。
(余談 :革新系市長) 1990年頃の話しですが、某政令指定都市の一市(K市)に革新系の市長が誕生しました。私が勤務していた会社では、「今後は市長が発注先を決める慣習は廃止する」と判断しました。就任して間も無く、「市長の沖縄出張の航空券、ホテルを某社が手配して、現地で大接待した」と言う情報が入りました。 新市長は、メーカー選定権を独占して、黒い金を貰ったのです! 私は、「金を何に使うのか?」不思議に思いました。
K市では、前任の市長の時代から市民病院を建て替える計画が進んでいました。 建物の構造的問題から、非常用発電設備の燃料タンクの設計が難しく、私は知恵を絞って特殊なタンクを設計していました。 市長が、非常用発電設備を他社に発注しました。 受注した会社から、破廉恥にも「タンクだけ作ってくれ!」と言ってきました。
《第一ステップ :業界の談合組織への参加 》
昔は、官公庁向けだけで無く大手民間企業に納入する会社は、業種毎に作られた『談合組織』に参加していました。鉛筆や消しゴムなどの文房具業界にも、『談合組織』が有りました。
兆円単位の巨額の取引を行う『談合組織』も有りましたが、事務所は設けていませでした。 組織に参加している会社の課長か部長が、ホテルの一室で話し合いをしたのです。
重電機器(重電)業界の談合組織は鉄壁の結束を誇る組織でした。3社組織、7社(?)組織などが有り、各案件の受注会社を決めていました。
談合体質の問題点 :競合会社がフェアーに競争して/切磋琢磨して技術を革新し、コストダウンするから国際競争力を養う事が出来ます。 談合は、この公理に反します。
1980年代の話しですが、談合組織に入るのが嫌で舶用や海外向けにのみ製造/販売していた優良企業が有りました。ポンプの新興金属工業所(現:(株)シンコー)と発電機の大洋電機(株)です。
ニデック(日本電産)は1973年に設立されて、精密モーターの分野では世界トップ企業に成長しています。 昔は、大型のモーターは重電が製造していましたが、現在はニデックが沢山製造しています。「多分、ニデックは談合組織に参加していないのでは?」と想像しています。
談合の擁護 :談合は昔から犯罪でした。然し、悪い面ばかりでは無かったのです。 例えば、ダムの建設は計画開始から完成まで十年以上掛かります。毎年計画変更が有って、その都度・見積書、仕様書、配置図などの図書の提出依頼が有りました。 業界で各計画毎の担当会社を決めて対応せざるを得ないのです。
役所が経験の無い設備が必要になったとします。役人は勉強しませんから、メーカが『負んぶに抱っこ』して、計画を練り上げる必要が有り→→メーカの負担が大きくなりますが→→予算は通常の案件とほぼ同じになります→→談合が必要になります。
談合は、関税と同様に外国企業の参入を防止する効果が有ります。(アメリカは今でも『インチ/ポンド単位』を使用していますが、外国企業の参入防止に現在は役立っていません。)
《 第二ステップ :入札参加資格 》
国や地方公共団体が工事や物を発注する場合は原則として、『競合入札』の形にします。(稀に『随意契約』が有ります。) 入札に参加する為には『入札参加資格』を事前に取っておく必要が有ります。
各社が→→入札参加資格審査申請を役所毎に提出→→審査→→問題が無ければ→→実績などを加味して、会社のランクを決め→→『入札参加資格』が認められます。
国や地方公共団体の工事や物を発注する部署・それぞれに入札参加資格審査申請を提出する必要が有り、審査基準や有効期限がマチマチなので厄介です。 『入札参加資格』の詳細は書略します。
《 第三ステップ :情報の収集と担当者への働き掛け 》
国や地方公共団体の情報は比較的簡単に入手出来ます。営業マンは自分が担当している機械装置が計画に入っている時は、役所の担当者に会って、「お手伝いさせて下さい」とお願いするのです。
稀なケースでしたが、自民党の政治家の事務所から電話を掛けて貰わないと担当者が会ってくれない事が有りました。 役所の担当者が、「黒い金を集めるシステム」を公然と認めていたのです。
私が勤務していた会社(K社)では、民間企業の情報を得るのは難しかったです。重電3社は、支店、営業所に情報収集のセンサー網を張り巡らしていて、重電3社に内緒にする事はほぼ不可能でした。 某国から大規模な装置をK社が受注した時、重役の一人が中堅の重電に大型のモーターを注文したら→→重電3社の1社(T社)の重役が乗り込んできて→→「貴社も談合しているでしょう! 本件は当社が受注する事になっていた。今回は目をつぶるが、次に同じ事をやったら重電3社との取引は出来なくなりますよ!」と言ったそうです。
《 第四ステップ :政治家への働き掛け 》
官庁案件の場合は、各社がそれぞれ、別々の政治家にお願いしておきます。 例えば、A1社はa1先生、A2社はa2先生・・・A5社はa5先生に、「メーカ選定権利を得たらよろしく」とお願いしておきます。
民間企業が顧客のケースでは、業界の談合組織の中で話し合って受注者を決めるのが原則でした。特別の県以外では、民間案件に政治家は介入しませんでした。 大手企業のKH社が、殆どの民間案件で、他社は勿論、KH社も赤字になる金額で見積書を提出して困りました。
緊急の金集め :総理大臣が代わる時は、20億円~30億円の金が必要になると言われていました。そんな時は、民間案件に政治家が介入して短時間に金を集めました。 例えば、民間企業(A社)が装置を→→B社に発注していたとします→→政治家からA社に「発注先をC社に変えてくれ」と圧力を掛けます→→A社は仕方なくC社に発注して、B社にお詫びします→→C社から黒い金が政治家に渡されたのです。
C社は談合組織のルールを破った事になりますが、新総理大臣には逆らえませんから、談合組織内では問題になりませんでした。私は、こんな金集めで2回も被害を受けました。
《 第五ステップ :入札金額 》
役所が「これ以上の金額では契約できない金額」を決めます。これを『予定価格』と呼びます。競争入札の場合は、各社が金額と会社名を書いた紙を封筒に入れて箱に入れます。役所の担当者が、全ての封筒を開けて→→一番安い金額を書いていた会社に発注します。 然し、全ての会社の価格が『予定価格』を上回っていたら、第2回目の入札が行われます。5回ほど入札しても、『予定価格』を下回る会社が出て来なかったら、日を改めて入札が行われている様でしたが、そんな事は私の経験では有りませんでした。
政治家が落札して良い業者を決めましたが、『予定価格』は承知しておらず→→業者に教える事は有りませんでした。
5社(A1社、・・・A5社)が入札するケースについて書きます。A1社がお願いしていた先生がメーカ決定権を得ました。A1社は残りのA2社~A5社にそれぞれ、第1回~第N回の入札金額を書いたメモを渡します。各社はそれぞれ、そのメモに書かれた金額で入札します。 入札を何回やっても、必ずA1社が一番安い様に仕組まれているのです。
落札してはいけない会社(A3社)が第N回目に記入する金額を、間違えて二、三回目に書いてしまったので、A3社が落札してしまったケースが有りました。こんな場合は、(どんな業界でも)A3社がA1社にお願いして機械を作って貰い→→A3社が作った事にして納入しました。保守点検は、全てA1社が行いました。
民間企業の入札でも同じような要領で行いました。大企業の入札で、1回だけハプニングが起こりました。私の勤務していた会社が落札する事になっていたのですが、何が何でも受注したい会社が、第1回目に『1円』と書いたのです。開封したのが、技術に詳しい温厚な紳士の重役さんでした。開封して、顔を真っ赤にされて、「君の会社の慈悲を受けなければならないほど、我が社は零落れていない!」と仰いました。
《 第六ステップ :政治家に黒い金を渡す 》
納入が完了して役所から金が支払われると、企業が先生に黒い金を渡しました。 勿論、領収書は頂けません。
渡す前に衆議院選挙が有るケースでは、先生は銀行から借金するケースが多かった様です。 先生が、黒い金を受け取る前に亡くなられた事が有りました。息子さんが補欠選挙で当選したら、多分、黒い金は息子さんに渡されたと想像します。血族で無い人が後を継いだら→→亡くなった先生の権利は、白紙に戻して→→先生達が話し合って→→別の先生が権利を得た様です。
大昔、現役の国会議員(特に衆議院議員)が 急逝(きゅうせい)されて、銀行等に多額の借金が残ったケースが有りました。私は、そんな例を二、三知っています。
黒い金は先生達の表か裏の事務所に現金で届けました。某県には黒い金を集める事務所が有って、全ての先生達の金はその事務所に一旦集めていました。別の某県では、社会党の古参の市会議員(M1氏)の事務所に一旦集めていました。 私が絡んでいた案件で、黒い金を渡す数ヶ月前に、市会議員選挙が有り、M1氏が立候補しなかったのです。 先生から、「社会党の市会議員(M2氏)の事務所に届けてくれ」と連絡が入りました。 金の一部は、M1氏とM2氏に渡っていたと想像しました。
【技術志向の役所】
昔は、役人がメーカを決定するのは原則タブーでしたが、技術者を育てて、計画中の案件に最も適した装置/機械を製造するメーカを選定する役所が有りました。 旧国鉄や防衛省などです。
民間企業でもプラントエンジニアリング会社(日揮、千代田など)は人材育成に力を入れて、日ごろから各種装置/機械の勉強をして、公平な機種/メーカ選定をしていました。
近所の奥さんは免許書を持たず、体調が悪いので長時間・車に乗れませんでした。旦那さんが休みの日に、奥さんの気晴らしの為に、近くのスーパーに二人で買い物に車で出掛けていました。 大型のハイブリッド自動車に買い替えたのですが、経済的とは言えませんよね! 使用目的/条件によって機種を選定すべきなんです。
先日(1月8日)に『黒い金』の記念碑的存在だった『目白御殿』が全焼してしまいました。 そして、とうとうパーティー券問題で逮捕者が出ました。 今年は、「黒い金を減らす」変革の年になって欲しいです!
岸田総理は『政治維新本部』を立ち上げましたが、最高顧問の一人に派閥の長である麻生太郎氏を就任させ、メンバー38人中に問題の安倍派から10人も選びました。岸田氏の本気度が疑われます。 私は、「黒い金を必要としない、自民党に生まれ変わって欲しい!」と願っています。
「衆議院を昔の様に『小選挙区制』に戻すべきだ」と言う方がいますが、黒い金が飛び交う事になってしまいそうなので、私は大反対です。
本稿では、「昔、黒い金をドンナニして作ったのか?」を皆さんに知って頂く必要が有ると思ったので、私の経験談を書きます。私より詳しい方が、今でも数十万人は生きておられると思いますが、皆さん墓場まで秘密を持って行くと決められている様です。
【政治家の金が絡んだ事件】
戦後の政治家が絡んだ、(私の記憶に残っている)黒い金の事件を以下に列記します。
・・・ 戦後の政治家が絡んだ、黒い金の事件 ・・・
★ 福島県政汚職事件 :1950年 ・・・800万円→→木村守江知事
★ 田中彰治事件 :1966年
★ ダグラス・グラマン事件 :1970年に発覚 ・・・日商岩井・5億円→→松野頼三氏
★ 東京佐川急便事件 :1987年~ ・・・発端を作ったのは総理就任前の竹下登氏、数千億円の金が動きました。事件に関する本が沢山出版されました。
★ リクルート事件 :1988年~89年 ・・・竹下登氏
★ 共和汚職事件 :1991年
★ ゼネコン汚職事件 :1993年~94年
★ 日歯連闇献金事件 :2001年 ・・・1億円→→橋本龍太郎氏、野中広務氏、青木幹雄
★ 河井夫妻選挙違反事件 :2019年
★ 日本風力開発汚職事件 :2023年 ・・・数千万円→→秋本真利衆議院議員
★ パーティー券問題 :2023年
★ 柿沢未途議員公選法違反事件 :2023年
【黒い金についての私見】
古株の記者達は、巨額の黒い金が動いていた事は承知していたと推察しますが、あまりにも全国津々浦々に蔓延していたので、「ニュースにはならない!」と考えていた様に思います。 国民の多くは、「政治には金が要る!」と黒い金を問題視しなかったのでは?と思います。
目白に有った田中角栄氏の御殿で、「土産として紙袋に1億円入れて持って来たのを、目撃した」と話す記者がいましたが、「彼は黒い金に麻痺して、殆ど問題視していない」様に見えました。
今から・たったの三十数年前まで、毎年!毎年!1兆円~2兆円もの黒い金が政界に流れていました。現在60歳代の政治家の多くは、そんな黒い政治の世界に足を踏み入れたのです。先輩達は、ふんだんに入って来る黒い金で愉快にやっているのを見ていたと想像します。彼らが、当選回数を重ねるたびに黒い金の額が小さくなっていって→→高級料亭や高級クラブに行けなくなりました。
現在55歳以下の営業マン達は、入社後に裏金作りに走り回る必要が無くなっていたと思います。 国民は段々政治家の不正を嫌悪する様になり、現在では黒い金は最盛期の『数%』まで減少していますが、収支報告書に記載しない事すら問題視する様になっているのです。
政治家達は三十数年間に、「黒い金が悪だ!」と言う学習が出来ませんでした。国民の多くは「黒い金が悪だ!」と考える様になりました。政治家達と国民の考え方の乖離(かいり)が大きすぎる様に思います。
【政治家が黒い金を集める昔の仕組み】
戦後、政治家の絡んだ『黒い金の事件』は沢山あり、特捜部が活躍しました。 然し、特捜部は『黒い金を集める仕組み』を暴く事は出来ませんでした。
三十数年前の日本の政治/経済を知って頂く必要が有ると考えているので、適任者とは言えませんが、私が『官庁商売』で得た知識を以下に書いておきます。
《 第0ステップ :黒い金の相場 》
官庁商売では、受注金額の『3%』を現金で、国会議員、知事、市町村長に渡すのが相場になっていました。千葉県は成田空港建設の頃から『7%』だったと記憶しています。発注金額が『4%』高かったので企業は損をしなかったのです。某県は何故か?『5%』で、発注金額が『2%』高かったです。
誰も集計した事が無いと思われるので、確かな話では有りませんが、国の一般会計予算と特別会計予算、地方公共団体の予算の総額から人件費を除いた額の『3%』が黒い金になったと思います。従って、1990年頃でも、黒い金は『2兆円』に近かったと私は見ています。
(余談 :革新系市長) 1990年頃の話しですが、某政令指定都市の一市(K市)に革新系の市長が誕生しました。私が勤務していた会社では、「今後は市長が発注先を決める慣習は廃止する」と判断しました。就任して間も無く、「市長の沖縄出張の航空券、ホテルを某社が手配して、現地で大接待した」と言う情報が入りました。 新市長は、メーカー選定権を独占して、黒い金を貰ったのです! 私は、「金を何に使うのか?」不思議に思いました。
K市では、前任の市長の時代から市民病院を建て替える計画が進んでいました。 建物の構造的問題から、非常用発電設備の燃料タンクの設計が難しく、私は知恵を絞って特殊なタンクを設計していました。 市長が、非常用発電設備を他社に発注しました。 受注した会社から、破廉恥にも「タンクだけ作ってくれ!」と言ってきました。
《第一ステップ :業界の談合組織への参加 》
昔は、官公庁向けだけで無く大手民間企業に納入する会社は、業種毎に作られた『談合組織』に参加していました。鉛筆や消しゴムなどの文房具業界にも、『談合組織』が有りました。
兆円単位の巨額の取引を行う『談合組織』も有りましたが、事務所は設けていませでした。 組織に参加している会社の課長か部長が、ホテルの一室で話し合いをしたのです。
重電機器(重電)業界の談合組織は鉄壁の結束を誇る組織でした。3社組織、7社(?)組織などが有り、各案件の受注会社を決めていました。
談合体質の問題点 :競合会社がフェアーに競争して/切磋琢磨して技術を革新し、コストダウンするから国際競争力を養う事が出来ます。 談合は、この公理に反します。
1980年代の話しですが、談合組織に入るのが嫌で舶用や海外向けにのみ製造/販売していた優良企業が有りました。ポンプの新興金属工業所(現:(株)シンコー)と発電機の大洋電機(株)です。
ニデック(日本電産)は1973年に設立されて、精密モーターの分野では世界トップ企業に成長しています。 昔は、大型のモーターは重電が製造していましたが、現在はニデックが沢山製造しています。「多分、ニデックは談合組織に参加していないのでは?」と想像しています。
談合の擁護 :談合は昔から犯罪でした。然し、悪い面ばかりでは無かったのです。 例えば、ダムの建設は計画開始から完成まで十年以上掛かります。毎年計画変更が有って、その都度・見積書、仕様書、配置図などの図書の提出依頼が有りました。 業界で各計画毎の担当会社を決めて対応せざるを得ないのです。
役所が経験の無い設備が必要になったとします。役人は勉強しませんから、メーカが『負んぶに抱っこ』して、計画を練り上げる必要が有り→→メーカの負担が大きくなりますが→→予算は通常の案件とほぼ同じになります→→談合が必要になります。
談合は、関税と同様に外国企業の参入を防止する効果が有ります。(アメリカは今でも『インチ/ポンド単位』を使用していますが、外国企業の参入防止に現在は役立っていません。)
《 第二ステップ :入札参加資格 》
国や地方公共団体が工事や物を発注する場合は原則として、『競合入札』の形にします。(稀に『随意契約』が有ります。) 入札に参加する為には『入札参加資格』を事前に取っておく必要が有ります。
各社が→→入札参加資格審査申請を役所毎に提出→→審査→→問題が無ければ→→実績などを加味して、会社のランクを決め→→『入札参加資格』が認められます。
国や地方公共団体の工事や物を発注する部署・それぞれに入札参加資格審査申請を提出する必要が有り、審査基準や有効期限がマチマチなので厄介です。 『入札参加資格』の詳細は書略します。
《 第三ステップ :情報の収集と担当者への働き掛け 》
国や地方公共団体の情報は比較的簡単に入手出来ます。営業マンは自分が担当している機械装置が計画に入っている時は、役所の担当者に会って、「お手伝いさせて下さい」とお願いするのです。
稀なケースでしたが、自民党の政治家の事務所から電話を掛けて貰わないと担当者が会ってくれない事が有りました。 役所の担当者が、「黒い金を集めるシステム」を公然と認めていたのです。
私が勤務していた会社(K社)では、民間企業の情報を得るのは難しかったです。重電3社は、支店、営業所に情報収集のセンサー網を張り巡らしていて、重電3社に内緒にする事はほぼ不可能でした。 某国から大規模な装置をK社が受注した時、重役の一人が中堅の重電に大型のモーターを注文したら→→重電3社の1社(T社)の重役が乗り込んできて→→「貴社も談合しているでしょう! 本件は当社が受注する事になっていた。今回は目をつぶるが、次に同じ事をやったら重電3社との取引は出来なくなりますよ!」と言ったそうです。
《 第四ステップ :政治家への働き掛け 》
官庁案件の場合は、各社がそれぞれ、別々の政治家にお願いしておきます。 例えば、A1社はa1先生、A2社はa2先生・・・A5社はa5先生に、「メーカ選定権利を得たらよろしく」とお願いしておきます。
民間企業が顧客のケースでは、業界の談合組織の中で話し合って受注者を決めるのが原則でした。特別の県以外では、民間案件に政治家は介入しませんでした。 大手企業のKH社が、殆どの民間案件で、他社は勿論、KH社も赤字になる金額で見積書を提出して困りました。
緊急の金集め :総理大臣が代わる時は、20億円~30億円の金が必要になると言われていました。そんな時は、民間案件に政治家が介入して短時間に金を集めました。 例えば、民間企業(A社)が装置を→→B社に発注していたとします→→政治家からA社に「発注先をC社に変えてくれ」と圧力を掛けます→→A社は仕方なくC社に発注して、B社にお詫びします→→C社から黒い金が政治家に渡されたのです。
C社は談合組織のルールを破った事になりますが、新総理大臣には逆らえませんから、談合組織内では問題になりませんでした。私は、こんな金集めで2回も被害を受けました。
《 第五ステップ :入札金額 》
役所が「これ以上の金額では契約できない金額」を決めます。これを『予定価格』と呼びます。競争入札の場合は、各社が金額と会社名を書いた紙を封筒に入れて箱に入れます。役所の担当者が、全ての封筒を開けて→→一番安い金額を書いていた会社に発注します。 然し、全ての会社の価格が『予定価格』を上回っていたら、第2回目の入札が行われます。5回ほど入札しても、『予定価格』を下回る会社が出て来なかったら、日を改めて入札が行われている様でしたが、そんな事は私の経験では有りませんでした。
政治家が落札して良い業者を決めましたが、『予定価格』は承知しておらず→→業者に教える事は有りませんでした。
5社(A1社、・・・A5社)が入札するケースについて書きます。A1社がお願いしていた先生がメーカ決定権を得ました。A1社は残りのA2社~A5社にそれぞれ、第1回~第N回の入札金額を書いたメモを渡します。各社はそれぞれ、そのメモに書かれた金額で入札します。 入札を何回やっても、必ずA1社が一番安い様に仕組まれているのです。
落札してはいけない会社(A3社)が第N回目に記入する金額を、間違えて二、三回目に書いてしまったので、A3社が落札してしまったケースが有りました。こんな場合は、(どんな業界でも)A3社がA1社にお願いして機械を作って貰い→→A3社が作った事にして納入しました。保守点検は、全てA1社が行いました。
民間企業の入札でも同じような要領で行いました。大企業の入札で、1回だけハプニングが起こりました。私の勤務していた会社が落札する事になっていたのですが、何が何でも受注したい会社が、第1回目に『1円』と書いたのです。開封したのが、技術に詳しい温厚な紳士の重役さんでした。開封して、顔を真っ赤にされて、「君の会社の慈悲を受けなければならないほど、我が社は零落れていない!」と仰いました。
《 第六ステップ :政治家に黒い金を渡す 》
納入が完了して役所から金が支払われると、企業が先生に黒い金を渡しました。 勿論、領収書は頂けません。
渡す前に衆議院選挙が有るケースでは、先生は銀行から借金するケースが多かった様です。 先生が、黒い金を受け取る前に亡くなられた事が有りました。息子さんが補欠選挙で当選したら、多分、黒い金は息子さんに渡されたと想像します。血族で無い人が後を継いだら→→亡くなった先生の権利は、白紙に戻して→→先生達が話し合って→→別の先生が権利を得た様です。
大昔、現役の国会議員(特に衆議院議員)が 急逝(きゅうせい)されて、銀行等に多額の借金が残ったケースが有りました。私は、そんな例を二、三知っています。
黒い金は先生達の表か裏の事務所に現金で届けました。某県には黒い金を集める事務所が有って、全ての先生達の金はその事務所に一旦集めていました。別の某県では、社会党の古参の市会議員(M1氏)の事務所に一旦集めていました。 私が絡んでいた案件で、黒い金を渡す数ヶ月前に、市会議員選挙が有り、M1氏が立候補しなかったのです。 先生から、「社会党の市会議員(M2氏)の事務所に届けてくれ」と連絡が入りました。 金の一部は、M1氏とM2氏に渡っていたと想像しました。
【技術志向の役所】
昔は、役人がメーカを決定するのは原則タブーでしたが、技術者を育てて、計画中の案件に最も適した装置/機械を製造するメーカを選定する役所が有りました。 旧国鉄や防衛省などです。
民間企業でもプラントエンジニアリング会社(日揮、千代田など)は人材育成に力を入れて、日ごろから各種装置/機械の勉強をして、公平な機種/メーカ選定をしていました。
近所の奥さんは免許書を持たず、体調が悪いので長時間・車に乗れませんでした。旦那さんが休みの日に、奥さんの気晴らしの為に、近くのスーパーに二人で買い物に車で出掛けていました。 大型のハイブリッド自動車に買い替えたのですが、経済的とは言えませんよね! 使用目的/条件によって機種を選定すべきなんです。