今回は、法律、弁護士、行政組織や選挙などについての私の意見を書いてみました。中国は北朝鮮よりは民主的だと思いますが、国家主席が絶大な権限を持った”独裁国家”と呼んでも良いと思います。民主主義国は巨大な船の様にユックリしか方向転換出来ませんが、中国は最新鋭の戦闘機の様に上下左右猛烈なスピードで自分の行きたい方向に進む事が出来るのです。
民主主義のお手本の様に言われていたイギリスは、2016年6月に国民投票で”EU離脱”を決めました。既に2年以上経過して、もうすぐEUとの交渉期限がきますが、国内の意見が纏まりません。まさに”小田原評定”です。民主主義の欠点の一つが、「意見を纏めるのに時間が掛かる」/「意見が纏まらない場合もある」と言う事です。中国の「政府と企業が一体になって世界貿易戦争をする」と言う状況を考えると、各国とも”民主主義を少し後退させる”必要が有る様に思えます。
【中国の法律】
中国にももちろん法律は有りますが、全国人民代表大会(全人代)と全人代常務委員会によって制定されます。 全人代の委員は、大半(70%程)は共産党員です。 共産党に都合が良い法律が制定される事になります。
立法機関の一つである全人代は、我が国の国会とは全く異なります。議論する場所ではありません、政府が提出した法案を(原則として)追認する機関です。 なお、全人代は年に一度開催されます。 もう一つの立法機関の全人代常務委員会は、常設で、憲法で規定された権限の範囲内で法律を制定、改定して良いとなっています。 実際は、何でも出来るのです。 従って、必要になれば何時でも、(スピーディーに)法律の改正/制定が出来ます。
全人代の下に行政府、裁判所、検察があり、三権は分立していません。 全人代は共産党員が大半ですから、共産党が全てを支配している事になります。
国家機密に関する犯罪は、非公開で裁判が行われる事になっています。 貴方が中国でスパイだとして逮捕されたら、間違いなく非公開裁判に掛けられてしまいます。 スパイ罪の最高刑は死刑です。 中国では死刑執行件数を公表していないませんが、スパイ罪以外にも麻薬犯罪や殺人罪などが死刑になり、私達では考えられない人数が死刑に処せられていると思われます。
(余談) 20年以上前の話しですが、友人が中国に出張した時、「日本人が見たことの無い所に連れて行ってあげる」と言われて、バス停の様な粗末な小さな建物に案内されたそうです。 壁一面に、名刺大程の名前付きの写真が貼ってあり、数人が食い入る様に見ていました。 最近、死刑が執行された人達の写真で、重罪で逮捕された人の家族は、そこに行って生死を確認するのだそうです。(死刑が執行された人の氏名が、新聞で報道される事は無い様です。)
【中国の弁護士】
清朝を継いだ中華民国には弁護士はいましたが、共産軍には勿論いませんでした。1949年に共産中国が建国した時、それまでの弁護士は廃業させられました。その後、長い間弁護士制度は有りませんでした。弁護士の国家試験が最初に実施されたのは、1986年です。さらに、10年後(1996年)に弁護士法が制定されました。
弁護士は、国有の弁護士事務に所属しなければなりませんでしたが、後に民営化を進める様になり民間の弁護士事務を認める様になりました。日本の様に、弁護士一人が事務所を設ける事は認められていません。1992年に、外国の弁護士事務所が中国に事務所(支所)を設けても良い事になりました。日本の弁護士事務所も支所を開設している様です。
弁護士は、司法部又は地方の司法局の管轄下に置かれて、生殺与奪権を握られた存在なのです。(この点は日本とは違います。)
資格試験は、毎年一回行われ、60%強程の得点を取れば合格になる様です。日本の様に合格者数を事前に決めて、上から何人まで合格と言うのとは違います。弁護士になってから勉強して、競争に勝たないと高給が望めない厳しい職業の様です。優秀と認められた弁護士は、日本では考えられない高額の所得を得ているようです。
人権派弁護士が逮捕されたニュースが流れた事が有りますが、弁護士は「法律違反していない」、「法律ではどちらが正しいか」と言った議論をする職業であって、「法律が間違っている」とか「判決が間違っている」とかを論ずる職業では無いと、中国政府は考えているのだと私は思います。
【判事と検事】
検事と判事は、大学、大学院や専門学校で法学を勉強した人が資格試験無しでなっていました。1985年から試験が始まりました。2001年から、検事、判事、弁護士は同じ試験を受けて、振り分けられる仕組みになっています。
全人代の下に最高人民法院と最高人民検察院が有り、その下に"省級”や“”県級”の法院や検察院が有ります。裁判所は四段階になっています。
【中国の地方自治と行政単位】
中国は国土が広く、人口も多いので行政組織/行政単位が複雑です。日本の場合は中央政府の下に都道府県が有りますが、中国には省・自治区・直轄市・特別行政区が有ります。 (日本の官庁の”省”に相当するのは”部”です。)
中国では地域によって所得格差が大きいため、年金支給額、医療保険制度のレベルなどに差を設けています。 地方政府が、それぞれ異なった年金制度や医療保険制度を運用しているのです。 その点では、中国の地方分権は進んでいます?
① 省 :12省 (別に台湾省=実態はありません。)
② 直轄市:4市(北京、重慶、上海、天津);東京都の様なものです。
③ 自治区:5区(広西壮族、内モンゴール、寧夏回族、新疆ウィグル、チベット)
④ 特別行政区 :2区 (香港、マカオ)
①~④の大きな行政単位のなかに、”市”、”県”と”鎮/郷”が有り、”市”の中に”市”が有る所もある様です。 日本では”県”の下に”市”が有りますが、中国は逆です。 日本の”村”に相当する、行政単位が”鎮”か”郷”で、規模の大きい方が”鎮”です。上下関係では有りません。
省の下に”地区”が有ったのですが、現在は殆ど残っていません。中国の話しや記事に”村”が出てきますが、憲法には規定されていますが自治組織で、行政単位では有りません。日本の町内会に”毛が生えた”様なものか?
代表的ケース: 中央政府→省→(地区)→県→鎮/郷
”省”や”自治区”には”自治州”と言う行政単位が有りますが、これは少数民族に自治権を与えた行政単位のことです。 内モンゴール自治区には”旗”と呼ぶ行政単位があります。自治県と同じの様です。
【中国の選挙制度】
中国にも選挙制度は有ります。1953年に選挙法が制定されています。その後、何度も改定されていますが、現在でも選挙は形式的なものに止まっています。 (”大会”は日本の議会に相当します。天安門の近くに有る”人民大会堂”は国会議事堂に相当します。)
① 全国人民代表大会(全人代):省の代表を②の議員が選出(②の議員で無くても良い)
② 省級人民代表大会 :県の代表を③の議員が選出(③の議員で無くても良い)
③ 県級人民代表大会 :直接選挙
④ 郷級人民代表大会 :直接選挙
国家主席、省長や県長の様な行政機関のトップは、直接選挙で選ばれるのではなく、各人民代表大会で選出される事になっています。例えば、国家主席ですが、長老達が集まって決めて、全人代で追認するのです。
(余談) 株式会社の重役人事は株主総会で決める事になっていますが、実際はその会社の長老達の話し合いで決めた案を株主総会が追認しているのが実情です。従業員数が連結で5万人程の大企業が利用していた料亭の女将をしていた方から、長老達の話し合いについて色々聞いた事があります。料亭を貸し切りにして、徹夜で話し合っていたそうです。(聞いた話の詳細は、その会社の現役の方がヤル気を無くすと思うので書けません。) よく似た話が、『失権 島田文六著 幻冬舎』に出ています。
立候補者数の調整 : 日本の選挙管理委員会の様な所が、定員と立候補者が同じになる様に調整していました。これを、”等額選挙”と呼ぶ様です。 少し民主的になり、現在は競争率が、2倍以下になる様に調整している様です。これが、”差額選挙”です。
村長選挙 : 自治組織である”村”の”村長”は直接選挙で選ばれています。少しずつ民主的に改革した様ですが、共産党に都合の悪い事が多々あって、改革は停滞している様です。
直接選挙中に中国を旅行しても、殆どの旅行者は気付かない様です。道端に投票箱が置かれている程、(国民に関心が無い、)いい加減な選挙の様です。 日本に、中国の選挙制度を研究している学者がおられます。もっと知りたい方は、先生方がインターネットに公表している論文を読んで下さい。
(余談) 中国の選挙は非民主的だと考えますか? 我が国には”御用組合”が多数存在しますが、その選挙の実態は中国の県級や郷級の人民代表大会の選挙にかなり似ています。「会社が推薦する人間を如何にして当選させるか!」あの手この手、違法なことまで行われています。 会社の意向を受けた人間が組合の専従役員になり、彼らの給料は組合費(月額5,000~6,000円)から支払われているのです。”御用組合”の問題は、マスコミで殆ど取り上げられません。 日本の民主主義は、まだまだですね!
【中国の政党】
共産党以外にも政党があります。建国(1949年)以前から存在した、”民主派党”と総称される、8党が合法な政党として認められています。各党は共産党に反対する事は出来ません。仲良くやる事が存続の条件になっています。日本の大臣に相当する”部長”を輩出した事もあります。 新たな政党設立の申請は全て却下される為、国外で政党や政治団体を設立し、活動しています。
民主主義のお手本の様に言われていたイギリスは、2016年6月に国民投票で”EU離脱”を決めました。既に2年以上経過して、もうすぐEUとの交渉期限がきますが、国内の意見が纏まりません。まさに”小田原評定”です。民主主義の欠点の一つが、「意見を纏めるのに時間が掛かる」/「意見が纏まらない場合もある」と言う事です。中国の「政府と企業が一体になって世界貿易戦争をする」と言う状況を考えると、各国とも”民主主義を少し後退させる”必要が有る様に思えます。
【中国の法律】
中国にももちろん法律は有りますが、全国人民代表大会(全人代)と全人代常務委員会によって制定されます。 全人代の委員は、大半(70%程)は共産党員です。 共産党に都合が良い法律が制定される事になります。
立法機関の一つである全人代は、我が国の国会とは全く異なります。議論する場所ではありません、政府が提出した法案を(原則として)追認する機関です。 なお、全人代は年に一度開催されます。 もう一つの立法機関の全人代常務委員会は、常設で、憲法で規定された権限の範囲内で法律を制定、改定して良いとなっています。 実際は、何でも出来るのです。 従って、必要になれば何時でも、(スピーディーに)法律の改正/制定が出来ます。
全人代の下に行政府、裁判所、検察があり、三権は分立していません。 全人代は共産党員が大半ですから、共産党が全てを支配している事になります。
国家機密に関する犯罪は、非公開で裁判が行われる事になっています。 貴方が中国でスパイだとして逮捕されたら、間違いなく非公開裁判に掛けられてしまいます。 スパイ罪の最高刑は死刑です。 中国では死刑執行件数を公表していないませんが、スパイ罪以外にも麻薬犯罪や殺人罪などが死刑になり、私達では考えられない人数が死刑に処せられていると思われます。
(余談) 20年以上前の話しですが、友人が中国に出張した時、「日本人が見たことの無い所に連れて行ってあげる」と言われて、バス停の様な粗末な小さな建物に案内されたそうです。 壁一面に、名刺大程の名前付きの写真が貼ってあり、数人が食い入る様に見ていました。 最近、死刑が執行された人達の写真で、重罪で逮捕された人の家族は、そこに行って生死を確認するのだそうです。(死刑が執行された人の氏名が、新聞で報道される事は無い様です。)
【中国の弁護士】
清朝を継いだ中華民国には弁護士はいましたが、共産軍には勿論いませんでした。1949年に共産中国が建国した時、それまでの弁護士は廃業させられました。その後、長い間弁護士制度は有りませんでした。弁護士の国家試験が最初に実施されたのは、1986年です。さらに、10年後(1996年)に弁護士法が制定されました。
弁護士は、国有の弁護士事務に所属しなければなりませんでしたが、後に民営化を進める様になり民間の弁護士事務を認める様になりました。日本の様に、弁護士一人が事務所を設ける事は認められていません。1992年に、外国の弁護士事務所が中国に事務所(支所)を設けても良い事になりました。日本の弁護士事務所も支所を開設している様です。
弁護士は、司法部又は地方の司法局の管轄下に置かれて、生殺与奪権を握られた存在なのです。(この点は日本とは違います。)
資格試験は、毎年一回行われ、60%強程の得点を取れば合格になる様です。日本の様に合格者数を事前に決めて、上から何人まで合格と言うのとは違います。弁護士になってから勉強して、競争に勝たないと高給が望めない厳しい職業の様です。優秀と認められた弁護士は、日本では考えられない高額の所得を得ているようです。
人権派弁護士が逮捕されたニュースが流れた事が有りますが、弁護士は「法律違反していない」、「法律ではどちらが正しいか」と言った議論をする職業であって、「法律が間違っている」とか「判決が間違っている」とかを論ずる職業では無いと、中国政府は考えているのだと私は思います。
【判事と検事】
検事と判事は、大学、大学院や専門学校で法学を勉強した人が資格試験無しでなっていました。1985年から試験が始まりました。2001年から、検事、判事、弁護士は同じ試験を受けて、振り分けられる仕組みになっています。
全人代の下に最高人民法院と最高人民検察院が有り、その下に"省級”や“”県級”の法院や検察院が有ります。裁判所は四段階になっています。
【中国の地方自治と行政単位】
中国は国土が広く、人口も多いので行政組織/行政単位が複雑です。日本の場合は中央政府の下に都道府県が有りますが、中国には省・自治区・直轄市・特別行政区が有ります。 (日本の官庁の”省”に相当するのは”部”です。)
中国では地域によって所得格差が大きいため、年金支給額、医療保険制度のレベルなどに差を設けています。 地方政府が、それぞれ異なった年金制度や医療保険制度を運用しているのです。 その点では、中国の地方分権は進んでいます?
① 省 :12省 (別に台湾省=実態はありません。)
② 直轄市:4市(北京、重慶、上海、天津);東京都の様なものです。
③ 自治区:5区(広西壮族、内モンゴール、寧夏回族、新疆ウィグル、チベット)
④ 特別行政区 :2区 (香港、マカオ)
①~④の大きな行政単位のなかに、”市”、”県”と”鎮/郷”が有り、”市”の中に”市”が有る所もある様です。 日本では”県”の下に”市”が有りますが、中国は逆です。 日本の”村”に相当する、行政単位が”鎮”か”郷”で、規模の大きい方が”鎮”です。上下関係では有りません。
省の下に”地区”が有ったのですが、現在は殆ど残っていません。中国の話しや記事に”村”が出てきますが、憲法には規定されていますが自治組織で、行政単位では有りません。日本の町内会に”毛が生えた”様なものか?
代表的ケース: 中央政府→省→(地区)→県→鎮/郷
”省”や”自治区”には”自治州”と言う行政単位が有りますが、これは少数民族に自治権を与えた行政単位のことです。 内モンゴール自治区には”旗”と呼ぶ行政単位があります。自治県と同じの様です。
【中国の選挙制度】
中国にも選挙制度は有ります。1953年に選挙法が制定されています。その後、何度も改定されていますが、現在でも選挙は形式的なものに止まっています。 (”大会”は日本の議会に相当します。天安門の近くに有る”人民大会堂”は国会議事堂に相当します。)
① 全国人民代表大会(全人代):省の代表を②の議員が選出(②の議員で無くても良い)
② 省級人民代表大会 :県の代表を③の議員が選出(③の議員で無くても良い)
③ 県級人民代表大会 :直接選挙
④ 郷級人民代表大会 :直接選挙
国家主席、省長や県長の様な行政機関のトップは、直接選挙で選ばれるのではなく、各人民代表大会で選出される事になっています。例えば、国家主席ですが、長老達が集まって決めて、全人代で追認するのです。
(余談) 株式会社の重役人事は株主総会で決める事になっていますが、実際はその会社の長老達の話し合いで決めた案を株主総会が追認しているのが実情です。従業員数が連結で5万人程の大企業が利用していた料亭の女将をしていた方から、長老達の話し合いについて色々聞いた事があります。料亭を貸し切りにして、徹夜で話し合っていたそうです。(聞いた話の詳細は、その会社の現役の方がヤル気を無くすと思うので書けません。) よく似た話が、『失権 島田文六著 幻冬舎』に出ています。
立候補者数の調整 : 日本の選挙管理委員会の様な所が、定員と立候補者が同じになる様に調整していました。これを、”等額選挙”と呼ぶ様です。 少し民主的になり、現在は競争率が、2倍以下になる様に調整している様です。これが、”差額選挙”です。
村長選挙 : 自治組織である”村”の”村長”は直接選挙で選ばれています。少しずつ民主的に改革した様ですが、共産党に都合の悪い事が多々あって、改革は停滞している様です。
直接選挙中に中国を旅行しても、殆どの旅行者は気付かない様です。道端に投票箱が置かれている程、(国民に関心が無い、)いい加減な選挙の様です。 日本に、中国の選挙制度を研究している学者がおられます。もっと知りたい方は、先生方がインターネットに公表している論文を読んで下さい。
(余談) 中国の選挙は非民主的だと考えますか? 我が国には”御用組合”が多数存在しますが、その選挙の実態は中国の県級や郷級の人民代表大会の選挙にかなり似ています。「会社が推薦する人間を如何にして当選させるか!」あの手この手、違法なことまで行われています。 会社の意向を受けた人間が組合の専従役員になり、彼らの給料は組合費(月額5,000~6,000円)から支払われているのです。”御用組合”の問題は、マスコミで殆ど取り上げられません。 日本の民主主義は、まだまだですね!
【中国の政党】
共産党以外にも政党があります。建国(1949年)以前から存在した、”民主派党”と総称される、8党が合法な政党として認められています。各党は共産党に反対する事は出来ません。仲良くやる事が存続の条件になっています。日本の大臣に相当する”部長”を輩出した事もあります。 新たな政党設立の申請は全て却下される為、国外で政党や政治団体を設立し、活動しています。