MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

前後 "上下" のリレー

2010-07-15 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

07/15 私の音楽仲間 (185) ~ 私の室内楽仲間たち (165)




      Fauréピアノ四重奏曲第1番 ハ短調

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   この集いは、すでに何度かお読みいただいているグループです。

         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




 ピアノの .さん率いる、"にわか四重奏団"。

 そして、「この曲は初めて」という弦楽器の3人! Violin
は私、Viola の.さん、チェロがSu. さんの面々です。



 「誰だって、最初はみんな初めてですから…!」 そう
言って三人を励ましてくれる .さん。

 「お優しい! なるほど、そのとおりだ!」…などと、私は
変な感心をするのでした。




 3人とも初めての割には、確かにみんなよく健闘している
のです。 もちろん "事前の研究" もしてきたのでしょうが、
それだけではこんなにうまくは行きません。

 やはり "現場での適応能力" が優れているのでしょうね。
平たく言えば "要領" です。 単に "技術の有る無し" では
なく、「相手が何をしているのかを判断できる能力」とでも
いうのでしょうか。



 「もっと頻繁に "止っちゃう" ことだってあるからな…。」

 そうなんです。 「今、どこ??」 …なんて、代わる
代わる質問しながら! せっかくの流れを止めて。




 ところがそのときです。

 「あのう…。 弦楽器の中で3人が合っていないので、
誰に合わせたらいいのか解らないんですが…。」 …と、
.さんから優しいお叱りをいただいてしまいました。



 うわぁ。 そうだったの? やっぱりね…。 だって、
ピアノしか聞こえないんだもん…。 でも、そんなに
違和感、無かったけどな。

 「一応 Violin に合わせていますから…。」



 あら~…。 私が何も聴いていないのが、ばれて
しまいました。 ごめんなさい…。




 ご存知のように、全体の動きが見渡せる楽譜を持って
いるのはピアニストだけです。 それは、この曲でも同じ。
また曲を一番ご存知なのも、やはり .さんなのです。

 だからといって、「すみません、そこを何とか合わせて
ください」…なんて、絶対に言えませんよね。

 弦楽器の三人が合ってないんですから…。




 それに .さん、譜めくりも一人でやっておられるんですよ。
演奏会のステージではないから、"譜めくり人" はもちろん
いません。

 見ると .さんの譜面は、"コピーの貼り付け" で一杯!
そうまでしなければ、一人でこの日を乗り切れないのです。
事前の準備がいかに大変だったかが、よく解ります。



 おまけに楽器は、弾きにくいアップライト! いくら手慣れ
た曲とは言え、.さんも難敵を色々抱えていたのです。




 でも一番の難敵は、やはり私たち3人?

 「腹背に難敵」だったんだ…。




 曲は四つの楽章から出来ています。



 Ⅰ ハ短調 - ハ長調 3/4拍子 Allegro molto moderato

 Ⅱ 変ホ長調 6/8拍子 SCHERZO. Allegro vivo

 Ⅲ ハ短調 2/4拍子 Adagio

 Ⅳ ハ短調 - ハ長調 3/4拍子 Allegro molto



  [音源ページ




 Fauré の室内楽の特徴としてよく挙げられるものに、
弦楽器のユニゾンがあります。

 下の譜例では Viola とチェロが同じ高さで、またその
1オクターヴ上では、Violin が同じ動きをしています。



 しかし当然のことながら、三つの弦楽器が同じフレーズを
順番に歌って引き継ぐ場合もよくあります。 長さは
"1小節だけ" のことが多いようですが。

 "縦の厚み" と言うよりは、"横のリレー" ですね。 中でも
「まず Viola が歌い始める」場合が多く見かけられます。




 また、同時代人のドビュッシーが好んだ手法に、
全音音階、④ Modal (旋法的) な要素などが
あります。

 しかし Fauré は、ドビュッシーよりは控えめな形で
これらを用いています。



 この譜例は、第Ⅰ楽章の終わり30小節前から、4小節間
の部分です。 最初の2小節では、ユニゾンで動く弦楽器が、
"Do - Si - Do"、"Si - La - Si" と、全音音階的な
動きをしています。

 また、最後の小節の最後の拍では、"Sol、Si、Re" と、
全音音階に由来する "増三和音" が見られます。



 また最初の2小節では、それぞれの和声も "長 - 変ロ
- 長"、"変ロ長 - 変イ長 - 変ロ長" のように音階的に動いて
おり、5度進行など、機能和声的な形を取ってはいません。

 これらは "音階的"、あるいは "旋法的" 和声法と呼ばれる
ことがあります。







 全音音階的な動き、和声の旋法的な移り変わりは、
前回の最後の演奏例 (音源) でも聞かれます。

  (この項終わり)



  第Ⅰ楽章の終わり30小節前から10小節間の演奏例

 

 


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