MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

無骨さなら任せて…

2011-05-24 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

05/24 私の音楽仲間 (266) ~ 私の室内楽仲間たち (240)



             無骨さなら任せて…



         これまでの 『私の室内楽仲間たち』



             『ラズモーフスキィ』第

                   素通りする音
                  音楽すきィ伯爵
                   誰が縁結び?
                   厳しさと重圧
                    涙する長調
                 無骨さなら任せて…
                   61歳の試練
                    半拍の差
                    読者も踊る
                 忠ならんと欲すれば
                   ここにもロシア
                 悲しみよ こんにちは
              ロシアと張り合う Beethoven
                音の濃淡とアンサンブル
                   謎の美女 出現
                規律違反の癒し?
                  美女の素姓?
                  喪服の美女





       [音源ページ ]  [音源ページ




 "ラズモーフスキィ" の名で親しまれている作品59 の、3曲の
弦楽四重奏曲。 Beethoven の中期の傑作とされる名曲です。



 その第1番ヘ長調は、40分を超える、長大な作品。
これに挑戦したのが、今回の私たち。

 メンバーは、Violin が私、I.さん。 Viola が T.M.さん
チェロは Si.さんです。




 I.さんは、この場では普段 Viola で登場しておられます
が、メンバーの体調不良のため、急遽代役で Violin を
引き受けてくれました。



 前回の変ホ長調の夕靄では、"お団子の I.さん" など
と書いてしまいましたが、実は大変な才人。 いつも冗談
ばかり口にしておられますが、実は、「生真面目な性格を
カムフラージュするためではないか…?」

 私は、いつもそう感じ、尊敬しています。



 ひょっとして Beethoven も、I.さんのような人だったのか
な…? 私などは、勝手にそう思っています。




 この曲の第Ⅱ楽章は、3/8拍子。 "Allegretto vivace
e sempre scherzando" と指定されています。

 直訳すると、「快速気味で活発に、常にふざけて」。
私なりに意訳すれば、「速過ぎずに生き生きと、終始
おどけて」…といったところでしょうか。



 ところが、大変これが難しい…。 軽やかでありながら、
テンポが速過ぎてはいけないからです。

 もしそうなれば、聴き手が何かを感じる前に、音楽は
目前を素通りしてしまい、心には何も残らないからです。

 残るのはただ、鮮やかな演奏者の技術だけ。 聴き手
の意識は、作曲者の心中にまで及びません。




 この楽章で大変重要なのが、短い音の連続で、音符
で言えば、16分音符、8分音符でしょう。 弦楽器では、
"弾く" よりは "叩き気味" に演奏しなければなりません。

 これを慎重、大切、丁寧に演奏しすぎると、軽妙さは
表現できないからです。 音は長く、時には鈍重になり
がちで、この楽章には相応しくありません。

 かと言って、ただ乱暴に叩けば、音はどうしても大きく
なり、また雑音の要素も増えてしまいます。 弦楽器の
奏法上の、究極の課題の一つです。




 さて、これには私も常に取り組んでいるのですが、この
日も余りうまく行きません。 愛好家の方々とご一緒し、
お手本を示さねばならないのに、出るのは雑音ばかり。

 かと言って、「美しい音を! 慎重に!」…などと心がける
だけでは、作品の目指す精神とは、ほど遠いものになって
しまいます。




 私は、いつも録音を録っていますが、それを聴いてみると、
皆さんの弾き方が、徐々に変わって来ているのが判ります。

 "弾き気味" から "叩き気味" へと…! 

 口では一言も、「そうしましょう」…などと、頼んでいないの
ですが…。 これは責任重大…!



 そう思って力めば力むほど、結果は思わしくなくなる…。



 
 ちなみに、この4人は全員が男性。 それに、考えてみれば、
どなたも私より年長の方々なのです。

 私の若年の頃をご存じの、チェロの Si. さんまでおられます。



 この大傑作に対する、私たち4人の挑戦。 無骨な表現に
かけては、引けを取りませんよ!

 繊細さの点では及びませんが。

 Beethoven さん、赦してね…?



 さて、ラズモーフスキィさんについては、これまでも再三
触れてきましたが、こちらはどんな方だったのでしょうか?




         第Ⅱ楽章後半の演奏例

        最初の音量が大き過ぎることがあります