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クロマグロ:保護と消費の両立課題に…禁輸否決 毎日新聞

2010年03月20日 21時08分33秒 | Weblog
ワシントン条約締約国会議で焦点になっていた大西洋(地中海含む)産クロマグロの国際取引禁止案が否決されたことに、外食産業や流通業の関係者からは安堵(あんど)の声が上がった。ただ、マグロ資源の減少を懸念する声は業界にも多く、今後は資源を守りながら上手に生産・消費していく工夫が求められそうだ。

 ◇「完全養殖」に力…流通・水産
 東京都内で「すしざんまい」など26店を展開する喜代村(本社・東京都中央区築地)の木村清社長は「大西洋産の禁輸が決まっていたら、今のように安い値段でクロマグロを食べられなくなるのは確実だった」と、ホッとした表情を見せた。

 大西洋クロマグロの資源が減ったのは、幼魚を捕っていけすで育てる「蓄養」の拡大が主因とされている。

 木村社長は90年代初頭から、豪州ポートリンカーンやスペインなどの地中海沿岸で、地元水産業者とともにクロマグロやミナミマグロの蓄養を始めた第一人者。幼魚を減らさないため、産卵後の親マグロを捕って、いけすでさらに大きくする技術を開発した。

 欧米側のクロマグロ禁輸の主張に対しては「クロマグロの漁獲量年4万~5万トンに対し、マグロ・カツオ全体の年間漁獲量は800万~850万トン。大部分は欧州や米国の缶詰用で、生育前のマグロまで一網打尽にする巻き網漁で漁獲されている。それが資源減少の主因だ」と反論。今後も外務省や水産庁に、資源保護のための巻き網漁規制などの必要性を訴えていく考えだ。

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 卵の段階から育てる完全養殖も、資源に悪影響を与えない方法として注目を集めている。

 東京都と神奈川県を中心に店舗網を持つ中堅スーパー「小田急OX」は、川崎市麻生区の新百合ケ丘店など8店舗で近畿大水産研究所が養殖した「近大マグロ」を昨年9月から販売。19日時点の価格は大トロが100グラム2380円、中トロが1580円、赤身が1280円と天然物と同じ水準で、蓄養マグロより5割ほど高い。

 しかし、小田急OXを運営する小田急商事の松崎靖夫バイヤーは「所得に余裕がある団塊の世代を中心に、環境問題に関心が高い消費者に人気がある」と強調。1日に売れるのは10パック前後だが「ホームページを見て近大マグロを指名買いする顧客も増えている」と話す。同店で近大マグロを手に取った麻生区の男性(63)は「クロマグロの資源保護はある程度必要」と、規制強化に理解を示した。【大塚卓也、太田圭介】

 ◇「環境のEU」連敗
 【ブリュッセル福島良典】ワシントン条約締約国会議で大西洋(地中海を含む)産クロマグロの禁輸提案が否決され、欧州連合(EU)は昨年末の地球温暖化対策に続き、環境関係の国際会議で「2連敗」を喫した。いずれも途上国の支持を取り付けられなかったことが響いており、「環境のEU」が直面する南北問題の深刻さを露呈した。

 クロマグロ問題でEUはまず、域内の足並みをそろえるのに苦労した。当初は昨年9月に禁輸支持の方針を打ち出す予定だったが、フランス、イタリアなど漁業国の説得に時間がかかり、支持の正式決定は会議開幕前日の12日にずれ込んだ。

 EU筋は「加盟国以外に根回しする時間的な余裕がなかった。昨秋に決まっていれば、違う展開になっていた」と敗因を分析する。

 結局、EUは漁業国に配慮して禁輸発効まで1年余の猶予期間を置く独自案をまとめた。だが、即時発効を求めるモナコ提案と合わせて、禁輸提案が二つ並ぶ形になり、禁輸支持派を分断する結果を招いた。EU筋によると、モナコ提案の採決で加盟国の大半は賛否を決められず、棄権した。さらにEUが打ち出している「加盟国沿岸での伝統的な漁や域内取引は認める」との立場に途上国が「身勝手」と反発を強め、EU案が大差で退けられる結果につながった。

 昨年12月にコペンハーゲンで開かれた国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)でも、EUは新興、途上国を説得できず、京都議定書に定めのない13年以降の温暖化対策をまとめられなかった。

 今後10年のEUの経済戦略の柱の一つは、環境技術の革新を中心にした「グリーンエコノミー」。しかし、環境分野で相次ぐ途上国からの「NO」は、「独り相撲」を避けるための戦術見直しをEUに迫っている。