「日本でしか通用しない歴史観」を国際会議の場で披露して大恥をかいた安倍
世界にとって「右翼のルーピー」となった安倍首相:ダボス会議の衝撃
(注:第二章の部分で事実誤認がありましたので削除し、なぜかについての内容としました。詳細はその部分やこの直後の論考をご参照くださいませ。なお、英独と同じ発言は誤訳ということですが、それが言い訳にならないことも同論考で指摘しております)
年末に、安倍首相は右翼のルーピーとなるという論考、ケネディ大使が駐日大使ならぬ反日大使になるという論考を投稿したが、今、それがイルカ発言や慰安婦問題でのケネディと韓国大使の意気投合等と現実のものとなりつつある。
本稿では、そのトドメとなり、日本が孤立する決定打となってしまった感のある、安倍首相のダボス会議での発言が、何故こんなにも国際社会で取り上げられているのか、何故中国との戦争を決意した危険な指導者と理解されてしまったについて主に論じたい。
1.安倍首相は開戦を決意したと理解された理由:欧米の大学一年生でもわかる理屈
米欧の報道機関は驚いて報道し、BBCの記者は驚きとともに恐怖も感じたと言っている。何故、そうした反応を彼らはしてしまうのだろうか。
実は、この発言、国際関係論を大学一年生が学ぶ内容を理解していれば、かなり危険と受けとめられても仕方がないものなのだ。欧米人が大学等の国際関係で最初に学ぶのは、古代ギリシャのペロポネソス戦争である。これらの戦争の原因として、いささか教訓的に語られるのは、「最終的に戦争が回避できない」という政策決定者の確信が戦争を呼び寄せるということである。これはゲーム理論的には、プレイヤーが「裏切り」一択に掛けるため、相手の「協調」インセンティブを削ぐからである。
駐日大使候補になったこともある、ジョセフ・ナイ(ハーバード大学教授)は、彼の大学生向けの教科書でわかりやすくこれを説明している。少し長いが、わかりやすくして引用しよう(注1)。
「……ここに、戦争が不可避だと確信することが国際政治において如何に破壊的かの理由がある。戦争が不可避だということになれば、お互いの関係はもう終わりに近いわけである。終わりとなれば、相手を今後も信じてよいかということになる。なにせ命がかかっているのである。であるならば、相手を信頼し、協力し続けるよりは、先に裏切った方が安心ということになる。アテネ人も同様の選択を行い、どうせ戦争になるならば、敵国を不安にさせようが戦争になろうが、どうしようが自国の戦力を強化する為に中立国を侵略した方がいいとし、破滅への道を選択した」
そして、こうした議論は、第一次大戦に至った原因を議論する際にも一つの論点として引用され、政治指導者が選択するべきではない思考方法として取り上げられる。
余談だが、実際、90年代には、ナイ等はこうしたロジックで、米中関係がお互いの戦争不可避という思考で危険になりつつあると積極的に議論を展開し、今では米国の主流のコンセンサスになっている。少し語弊があるが、中国が「軍事的な」脅威だと思っているのは、米国では少数派なのだ。少なくとも第二次オバマ政権にはいない。その前任のドニロン、現職のNSC補佐官のライス等の米国での講演を読めばわかるように、彼らが問題にしているのは、中国のサイバー問題なのだ。この点はまた指摘しようと思うが、話を戻す。
これで安倍首相が最悪の事例を使って説明したことが、おわかりいただけただろうか。欧米では、政治指導者は「緊張状態にある国家に対して、最終的な開戦が避けられないと考えてはならない」がタブーとされる。(だからこそ、ネオコンが批判されたわけなのだが)そこに、安倍首相はまさしく、そうした思考法を満面の笑みで開陳し、しかも、代表的な駄目な事例とされる第一次大戦を欧米のエリートの前で、しかも欧州で持ち出したのである。
欧米のエリートの思考方法からすれば、中国との開戦を決意した危険な指導者としか思えない。しかも、さんざん今まで欧米紙では、右翼、右翼と言われてきた男である。特に、そういえば、中国大使が盛んにいってたな……と盛んにロビー活動をする中国人の言動は、その説得力を倍加させる。
2.その後の報道を確認し、事実誤認がありましたので削除しました
3.ダボス会議の発言の影響
そして、なにより不味いのは、これまでの日本政府の「中国が挑発している」という説明は説得力を失ったということである。欧米人からすれば、ヒトラーの友人の神社を参拝した首相が中国との戦争は不可避と宣言したとしかみえない。つまり、中国政府のいう「日本が中国を挑発している」という説明が説得力をもってしまったのである。
実際、安倍首相の中国は年間の軍事費を10%のペースで増加させているという主張も、英国のテレグラフ紙からは「そうは言うけど、日本は昨年度予算で軍事費を増加させたし、戦後では最大のヘリ空母(ジェット機も搭載可能)を進水させたよね」と、お前がいうなという扱いを受けている。私もこのテレグラフ紙の意見は相当おかしいとは思うが、問題はそこではなく、安倍首相がそういう反応を受けているということなのだ。
また、特に深刻なのは、私も彼らに言われたことがあるが、よく日本側が英米などで言われる、「安倍首相は、今なら勝てると思っているのではないか?このままでは日中は軍事的に逆転する。であるならば今ここで戦争をしようと考えているのではないか。勝てる内に、米国を引きずり込んで、中国の軍事力を粉砕して、将来に渡る安心を得ようとしているのではないか?実際、君たちだって1941年に真珠湾を攻撃したときだって、今なら勝てるが将来は米海軍の物量に勝てないって理由で対米戦を決意したじゃないか」という欧米の一部の疑念が証明されてしまったことである。
実際、安倍首相は、尖閣諸島周辺の紛争でならば海自・海保は勝利できると信じているとの話も私でさえ聞くので、あまり信じたくはないのだが、欧米人がそう思ってしまうのは無理もない。(むしろ、これは本当なのかもしれない)
4.結論:予想される最悪の事態
正直不愉快な話だが、これが現実なのである。世界が間違っている。そう一部の日本の人は言うかもしれない。
私だってそういいたくなる部分もある。(感情的な内容なので削除しました)日本国民だって、そこまで危険な戦争を望んでいないだろう。
しかし、安倍首相やネット右翼の愚かな行動は中国の「戦争を望む日本」論をまさに証明しているとしか言いようがないのだ。彼らの理屈は先日の論考でも書いたが、欧米人の納得する理屈ではないのだ。大体、世界が間違っていて、自分が正しい。だから世界と対決するというのが、政治指導者、いや社会人として賢明な行動だろうか。
こうした状況はどういう結果を生むのだろうか。
第一は、既に何回も述べたように中国が正しく、日本が危険という国際社会の反応を生む。
第二は、これ幸いと中国が尖閣諸島を奪取しても国際社会は日本が悪いと批判する。なにせ、開戦を決意したと安倍首相は宣言しているのだ。どうしようもない。
第三は、日本の説得力は根本的にないので、日中や日韓の問題では日本が不利になるし、第三国は助けないばかりか日本が非難される。
第四は、北朝鮮問題では、日本は12歳のままということで、日本を除く米中韓で裏側の協議が進む。
つまり、日本はあらゆる問題で大人扱いされず、貧乏くじを引かされ、拉致被害者も帰ってこないのである。安倍首相が存在し続ける限り、日本人は12歳扱いなのである。ダボス会議での安倍首相が国際社会に与えた衝撃は、私たちにそういう形で跳ね返ってくるのだ。
だからこそ、繰り返し言いたい。安倍首相一派は、早く別の自民党議員―勿論、ナチスのやり口に学ぶ麻生等ではない―に譲るべきなのだ。日本の国益と日本人の名誉のために。
付記
欧米から一等国と言う評価を受けて、日本の自立を確保する為だったのではないか。それをドブに捨てたのが東条たちであり、そして、今捨てようとしているのが、その孫の安倍首相なのではないか。もう一回、そんなみじめ苦労を子や孫にすべきなのだろうか。孫の貯金箱を叩き壊して、死んだ爺さんの墓作りに使うのが愛国者のすることなのだろうか。私は嫌だ。存在しない過去より、確実にあるべき未来に使うべきだ安倍首相の支持者は、こうした現実を考えてほしい。
注1:ちょっと日本人にはなじみのない古代ギリシャ世界の話があるので、乱暴だが一部割愛や換言して、わかりやすく纏めた。もし正確もしくはもっと知りたい方は、ジョセフ・ナイ「国際紛争」(田中明彦翻訳)有斐閣の第一章のペロポネソス戦争の部分をご参照いただきたい。だいたいの書店で立ち読みできると思います。
站谷幸一(1月24日)
「日本と中国は開戦前夜なのか」 安倍首相発言に欧米メディア衝撃
1月24日
安倍晋三首相が欧米メディアの記者に向けて発言した内容が、波紋を呼んでいる。関係悪化が続く日本と中国について、第1次世界大戦前の英国とドイツになぞらえた部分が大きく取り上げられたのだ。
政府は「第1次大戦のようにしてはならないとの趣旨だ」と説明し、誤解を解こうと躍起だ。だが欧米メディアは、日中関係が大戦前の英独のような緊張状態と受け止め、「日中は戦争に進むのか」と題した記事を配信したところもある。
■FT「軍事衝突が起こるなど問題外、とは言わなかった」
スイスで開かれた世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に出席した安倍首相は2014年1月22日、海外メディアを招いて懇親会を開いた。その席で中国との関係について説明した発言が、報道陣を驚かせた。
英フィナンシャルタイムズ(FT)紙の記者は、1月22日付の記事冒頭、「安倍首相に日中間での戦争はあり得るかを尋ねた。興味深いことに、その種の軍事衝突が起こるなど問題外だ、とは言わなかった」と書いている。
続けて、今日の日中の緊張状態と第1次大戦前における英国とドイツの競争関係を比較して、「似た状況」と述べたという。当時の英独には現在の日中同様、強固な経済関係があったが、これが1914年の軍事衝突につながる緊張状態を防ぐことはできなかった。この事実に基づいて安倍首相は、英独と日中を比較して説明したとなっている。
英BBCニュースの記者は、安倍首相の話が「面白いが少々恐ろしかった」と報じた。「日中の悪化した関係は、今から100年前、第1次大戦前の英国とドイツの関係を思い起こさせる」としている。これが「コメンテーターならともかく、日本のリーダーが話しただけに衝撃が強い」と評した。
記事は続く。当時の英独関係と同じく、日中も膨大な相互利益をもたらす貿易パートナーであり、平和こそが両国および周辺地域の繁栄のための防波堤となる。だが中国が防衛予算を年間10%増加させている点を、安倍首相が挑発的だととらえたのは明白だとしている。
米ニューヨークタイムズ紙は、FTと同じく今日の日中関係と過去の英独関係が「似た状態(similar situation)」との表現を用いた。さらに「安倍首相は、1914年の英独における強い経済関係は、今日の日中間の経済的な相互依存とよく似ていると述べた」と書かれていた。
ゴシップ紙が扇情的に報じたのではなく、主要メディアが流した記事だけに「安倍首相が日中関係を、第1次大戦前の英独関係に例えて話した」との内容は、首相のねらいとは別に、高い信用度を持って日中の緊張が強まっていると世界に広めてしまったことになる。
参考 三バカトリオ
安倍の失態:まず、安倍の茶坊主が失態の事実を否定し 次に安倍の広報紙産経が失態の事実を(国民のめからそらすために)攪乱させる方向で報道する。いまの安倍政権はこの’ゴマカシ’のワンパターンでもっている。はやく日本人はこれに気づくことだ。それでないと、日本の外交はこいつら三バカトリオによってガタガタにされる。
安倍本人、英独発言「全然問題ない」
1月26日
安倍晋三首相は26日午後(日本時間同日夜)、日中関係を第1次世界大戦前の英独関係に例えたとして波紋を広げた自らの発言について、「同席していた方に聞いてもらえば、全然問題なかったということが分かってもらえる」との認識を示した。ニューデリーのホテルで同行記者団に語った。
波紋を広げた首相の発言は、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)出席のため訪れていたスイスで、外国メディアの取材に対して行われた
安倍の茶坊主菅義偉、わけの分からないこじつけで事実を否定。
菅義偉官房長官は1月23日の記者会見で、安倍首相の発言の真意は「日中関係を第1次大戦のようにしてはならないという意味」と説明した。100年前の英独は経済関係があったにもかかわらず戦争へと進んでしまった。決して同じ轍は踏んではならず、日中間で問題があるときには相互のコミュニケーションを緊密にすることが重要とも強調した。さらに各国大使館を通じて、発言の意図を海外メディアに説明する方針だという。
安倍の広報チアガール紙産経、通訳のせいにして事実の攪乱報道。
1月25日
英紙の安倍首相発言報道 通訳の補足説明で誤解!? - 産経新聞