階段がまともに上れないくらい
まともに口が利けないくらい
片足で立ってズボンが脱げないくらい
速攻でベッドに転がり込むくらい
それでも、玄関の明かりは消えていて、戸に鍵がかかっていたから、どうなっているのか不思議だわ。
朝になって夫が言った。
「昨日は俺はイヤだって言ったんだけど、キューリが(なすという苗字のお友達のこと)おい、行くぞ!と誘うから、俺はかかあが来てるからダメだと言ったら、帰ってなにするなんにもすることないだろ、それともあるのかって言うからな、ないなと思って、しこたま飲んできたわ。」
そのとおりだわ、帰ったって飲んで酔って寝るだけだもんね、おんなじことだ。
ホンとだわ、面白いこと言うねえと大笑いした。
「今日はなにするの?」と聞くから、「特に何もないね。」と答えたけれど、
昨日も今日も何にもないでは勿体無い。
混んでいないところ、静かなところ、昼ごはんを食べるところがすぐ見つかるところ、それからちょこっとお店が覗けるところ、地上に出なくていいところ、ときたら知っている範囲では、国立新美術館か。
『ウィーン美術史美術館 静物画の秘密展』
望みどおり人がいなくて、観ている2,3人の人たちも立ち止まるでもなく足早に通り過ぎて・・・
私も、ベラスケスのマルガリータ王女にだけしっかりお目にかかって・・・
ミュージアムショップを覗いている時間のほうが長くて(ここの商品は斬新だから好き)・・
まあ、都会に出かけたというだけでなにするでもなかった。
なにするでもなかったけれど、昼どき、食事をしていると、女性社員の人たちがお財布だけ持ってお店でテイクアウトしている姿が目に入ってきた。
つい、同じような年頃の娘のことが思い浮かぶ。夕べの残り物を詰めてお弁当を持っていっているという姿が。つましい姿が。誰かどこぞのいい人がいないのかしら、と普段考えてもいないことがひょいと頭に浮かぶ。
なにするでもないどころではなかったわ。なにするという買い物を抱えてきたわ。
なにするというものは結構重たかったから早々に帰ってきた次第で・・・