晴、9度、74%
「ココア」が欲しい季節になりました。手のひらで熱々のコップを握り、ゆっくりと口に運びます。飲み終わるとお腹の中から温かくなります。嬉しい「ココア」です。
おそらく自分で初めて火を点けて作ったものは「ココア」だったと記憶しています。ガスの火を点けるのは子供には勇気がいることでした。母が作っているのを見よう見まねです。一人でお留守番していた時だったと思います。母は「ココア」の作り方を博多の「ばんぢろ」という珈琲屋のご主人に習ったそうです。「ばんぢろ」のお店の前を通りますが、子供の私は珈琲屋には連れて行ってもらえませんでした。そのうち母は珈琲を飲まなくなりました。「ばんぢろ」は移転を重ねていましたが、いつの頃からか街中から姿を消しました。老舗の珈琲屋でした。帰国して聞いたところお店は閉店したのだそうです。
秋に入る頃、「ばんぢろ」が19年ぶりに当初の店近くに再オープンしたと聞きました。まだ暑さの残る頃、映画の帰りに立ち寄りました。生憎お休みでした。表のメニューを読むと、珈琲ばかりか紅茶も充実しています。もちろんありました、「ココア」。私の「ココア」のルーツです。店主は変わっても「ばんぢろ」には「ココア」があります。
私が使う「ココア」はずっと「バンホーテン」、ここ数十年はオランダ元詰めの「バンホーテン」を使っています。コクや香りが日本のものとは違います。 子供の頃の「ココア」は溶けにくくダマを作りました。最近のは熱にかけるとよく溶けます。それでも目を離さずかき回します。沸騰直前まで火を入れます。吹きこぼしたことが幾度もありました。でも、熱々が好きです。水は使わず、ミルクとお砂糖を加えて作る「ココア」です。
来週は寒さが一段と進むそうです。「ばんぢろ」にもう一度足を運ぼうと思います。どんな味の「ココア」でしょうか。どんなカップに入って私の前に運ばれてくるのでしょうか。「ばんぢろ」に行くのはこの60数歳で初めてのことです。