晴れ、29度、82%
香港島の東にあるマントバットラーに一人で上るようになって、すでに20年近くになりました。だいたい、1日と決めています。山に入ることは若いときから好きでした。20年以上前は、主人が香港の100kトレールに参加していました。4人一チームで100キロの山の縦走を競うイベントです。毎年10月頃に行われます。春先から、少しずつ練習を始める主人のお供はこの私でした。約半年、毎日曜日は早朝から山に向かいます。まだ、30代の終わりでしたから、体力もありました。それに、日焼けも何のその。真夏の30度を超す山道を歩くのは、辛いのですが、小さな喜びが一杯です。牛の糞に生えた小さな緑の芽とか、急に目前に拡がる海の青さ、ヤマユリの風に揺れている様子など、家の中にいては決して味わうことが出来ない楽しみです。
香港の山は高くありません。しかも、海山共にとても身近にあります。我が家から歩けば香港島の太平山のピークまで、50分ほどです。しかも、山に登ることは健康の第一歩とばかりに、お年寄りも早朝に上ります。昨日は、通り雨の後の山登りでした。7時前に山に入ったもののすでに30度を超しています。雨上がりの山から吹き下ろして来る風は、心地よく感じます。40分ほど上がると、山の峠に出ます。下り道を取れば、香港島の南に。右がバットラー山、左がパーカー山です。ほとんどの人が香港島の南に向かう中、右手の細い階段の上り道をとります。 バットラーの頂上まで、約600段。ここまでの道は香港らしく舗装されていますが、いよいよ、山らしい道になります。しかも、かなり急な登りです。ここを上り始めるとき、いつも思い出す言葉があります。息子ほども若い方に昔聞いたことです。「山の上りは、ゆっくりでもいいから休まずに上ること。一度休んだら、もう、休まないでは上れなくなる。」以来その言葉を守って、自分なりのペースでこの600段を休まずに上ります。以前より随分時間がかかるようになっているはずです。冬場ならまだしも、これからの3ヶ月は足取りも重くなります。山に向かう前は、走りに出る前と同じように、自分の体の調子を点検して出かけます。体が今日は止めた方がいいよ、と教えてくれることもあります。年々、体力は落ちてきています。
ゆっくりとゆっくりと、上り詰めると、右手にはビクトリア湾、左手には、南シナ海が見えます。見出し写真は、手前が香港島の貯水池、空の下に拡がる南シナ海です。600段の後に、こんなご褒美が待っています。40代の頃は、この頂上から尾根伝いに我が家まで歩いて帰っていました。あの頃は、Gショックでタイムを取っていた頃です。3時間半ぐらいで家までたどり着きます。もう、どんなにゆっくり歩いても、そんな無茶は出来なくなっています。
香港のお年寄りを見習って、いつまでも山に行きたいと思います。上り道は、自分のペースで休まずに少しずつ上って行く、若い人に聞いた言葉ですが、なにか山登りばかりでなく、人の生きて行くことに通じる言葉です。