霧、19度、96% 香港
香港を「東洋の真珠」と呼ぶようになったのはずいぶん古い話です。この街に住んでいた30年、「東洋の真珠」という言葉があまり好きではありませんでした。こう呼び始めたのは白人ではないかしら、何かあまりにもロマチックな呼び方です。実際の香港はバイタリティー溢れる人種のるつぼです。ところがこの街を離れて1年、私は香港を「東洋の真珠」と思うようになりました。夜、遥か空高くから香港を見下ろせば煌々と電気の灯る香港は、真っ暗な海底に沈む大粒の真珠に見えるはずです。
1月7日に香港に戻る予定がありました。ところが前日の6日に義母が骨折で入院しました。ふた月延期して昨夕香港に戻って来ました。毎年この時期の香港は最悪の天候です。湿度が高く、道路までジメジメしています。昨日は予想外に晴れていました。
人の多さ、人種の多さ、言葉の多さ、車の多さ。そんな香港の雑踏に立つと心の底からホッとしました。福岡ではのんびりと静かな生活を送っています。それなのに、このざわめきの中に身を置くとすっぽりと収まったような安堵感を覚えます。家に向かう車はいつもながらの混雑の中を走ります。ほんの1年前まで、私は今福岡で乗っている車でこの雑踏を走らせていました。ちょうど夕方のラッシュのせいもありましたが、我ながらこんなところをよく走っていたものだと思います。香港人の声高の広東語もここで生活していた時は嫌だったのに、今では微笑ましい。30年といえば私の人生のほぼ半分です。
夕飯は普通の広東料理。私の好きなものをよくご存知の主人です。 これさえあればという、ナマコとアワビの煮物。日本の酢ナマコは苦手なのに、中華のナマコの煮物は大好物です。腰はあるものの柔らかなナマコ、アワビもふっくら仕上がっています。おそらくこのナマコは日本のものです。6つの棘があるナマコ、高級品は日本から乾燥して入って来ます。アワビも日本のものが一番高級、小ぶりなものはオーストラリア産です。
こんな大きな蝦の炒め物、流石広東料理です。
お外に出れば見上げても最上階が見えないビルばかり、 ここはモモさんの故郷、香港です。そして、私たち夫婦が人生の半分、結婚生活の4分の3を過ごした香港です。今日は銀行、証券などの用事を済ませ、明日には福岡に戻ります。
ここ数日、家中のモモさんの写真に向かって「モモ、香港に戻るよ。」と言いました。主人もこの家のモモさんの写真に向かって「モモ、お母さんが来るよ。」と言っていたそうです。モモさん、分身の術でいつも私たち夫婦のそばにいます。