The Orange Tree Magicというメーカー(マジックショップ?)をご存知でしょうか?私はあまり、意識してなかったのですが、有名なようで…言われてみれば、私が持っている商品では、「ニルヴァーナ」というカードマジック(ギミック)がありました。
いきなり脱線ですが、Orenge Treeといえば、「近代奇術の父」と呼ばれるフランスのマジシャン、ロベール・ウーダンの演目ですよね。やはり、そこからとっているのでしょうか…。せっかく話が出てきたので、Paul Daniel氏がウーダンとなり(?)このマジックを演じている映像をご紹介します。(動画埋め込めませんでした(T . T))
https://youtu.be/-Ht_afydffk?si=yjyktxF4NDAVI6PE
ここで使われているオレンジの木はJohn Gaughanという方が様々な資料を元に再現されたようでMAGUSさんも所有されているとのことです。MAGUSさんは現代風にアレンジした「オレンジの木」を演じられているそうです(見てみたい...)
話を戻して今回紹介するのは、ちょっと、こだわりがありそうなこのThe Orange Tree Magic(頭文字をとってTOT)がリリースした限定のコンボカップセット「TOT Cups and Balls Combo Set」です。限定300とありますが、まだ現時点では売り切れにはなっていません。前回紹介したTCCのMaster Cupが750セット限定だったので、それに比べると半分以下ですが、値段や知名度のこともあるので、どのくらいでなくなってしまうかは全く予測できませんね(;^ω^)
ー「セット」というだけあって、カップだけでなく、ウォンドやボール、エッセイが書かれた小さな冊子も含まれています。HP上の情報とほとんど同じですが、それぞれ紹介していきます。
<ケース>
まず、ケースが凝ってます。紙製ですが、上下にデザインがあり、開けると中にヒエロニムス・ボス(ボッシュ)(Hieronymus Bosch)の「手品師(いかさま師)(英語:The Conjurer)」がプリントされています。このBoschの作品はカップ&ボールが描かれている最も有名な作品ですよね。しかし、Wikipediaには「しかし近年の研究により、ボスの他の作品との間に多くの相違点が指摘され、現在では工房の作品あるいはボス以降の追随者による作品とする見解が強くなっている」と書かれています。また、同Wikipediaには「オリジナルの作品は失われており、本作品を含む5点のバージョンと1点のエングレーヴィングが知られているが、ほとんどの研究者はサン・ジェルマン・アン・レー市立美術館のバージョンを最も信頼できる複製であると考えている」とも書かれています。いろんなバージョン(カエルが口から出ているやつとか…見たことあると思います)。この絵だけでもいろいろありますが、本題では無いので、このへんで(;^ω^)。
ケースの中には緩衝材をカットしてカップとウォンド、ボールが収納できるようになっています。小ボール、カップ、ウォンドは専用のカットされたところに配置しますが、大ボールはカップの中に入れてカップと一緒に型に入れます。
<カップ>
カップはシルバー色のカップでHPによるとレアな日本製のSteel(鋼鉄)で手で紡がれており、きれいに磨かれています。英語力の問題で自信ないのですが、材料だけ日本ということでしょうか…。CNCではありません。形は「Base on the traditional Paul Fox design」と書かれているようにポールフォックスタイプです。かなりポールフォックス(Type1)に近い形ですが、わずかにスリムな気がします。参考としてみかめくらふと(ミカメクラフト)製のカップとテンヨー製のカップの間に置いてみました。
テンヨーのアルミ製カップ - カップ&ボールのカップ中心にいろいろ紹介
みかめくらふとのカップよりわずかにスリムでショルダービードも少しだけ高いです。ただ、かなり近い形ですし、重さも近いですので、もし、みかめ製のカップを使いたくて、でも入手できないという方にはオススメです。最近のCNCタイプのカップに比べるとかなり軽く感じますが、個人的にはこちらの方が扱い易いです。商品ページにはカップ同士をぶつけた時にきれいな音が出ると書かれています。確かにきれいですが、音に関してはやはりCNCの方がきれいな(単一周波数っぽい)音が出ますね。
コンボカップなので1つはチョップカップですがよくできていて底を見ても差はわかりません。磁力は強すぎず、良いと思います(個人的にはさらに弱いのが好きですが(笑))。最後に大きさ、重さについてです。HPの値を引用します。
カップの口径:64mm
カップの高さ:64mm
カップの重さ:約91g
<ボール>
ボールは手縫いのニットボールでワインレッド(赤紫?)色です。落ち着きのある色で個人的には好みの色です。派手過ぎないのでフラッシュする確率を減らしますし、かといってシルバーのカップの上に乗せれば、しっかり目立ちます。この色は後で紹介するJared Kopf氏の中でも書かれているのですが、Charlie Miller氏の助言に基づいてBob White氏が使っている色です。
小ボールの直径は23㎜と1インチよりわずかに小さいサイズで、軽すぎる事のない重さのボールです。毛糸はちょっと太目ですかね。4つ小ボールが付属しますが1つはチョップボールです。チョップボールだけ重いということもなく、しっかり作られています。先に述べましたようにチョップボールの磁力もしっかりカップと調節されています。大ボールは同色のボールで3つで、ジャストサイズに作られており、サイズは60mmです。割と重さもあってよい感じです。3つしか大ボールは入っていませんので、もし4つ使う方は60mmのボールを他のお店で購入されると良いと思います。このサイズは特殊ではなく例えばRINGS-N-THINGS MAGICさんで購入できます。
<ウォンド>
ウォンドは約32cmの長さで、細めです。そして、写真にありますように非対称なウォンドです。対照的なウォンドが多い中、非対称なウォンドにしたのは何故でしょうか...まあ、ハリーポッターなどの魔法使いはこのウォンドのようにやや先のとがったウォンドを使うので、そのあたりのデザインを意識したのかもしれません。わりと軽いウォンドです。
<冊子(エッセイ)>
このセットには、Jared Kopf(ジャレッド・コッフ)氏の2000語程度のエッセイが書かれた冊子が付いています。Jared Kopf氏といえば、2015年の箱根クロースアップ祭で日本に来て、皆を驚かせたそうですね。レクチャーノートが出ています。
また、Penguin LIVEにも出てます。
これらのレクチャーの内容を見ると、カードマジックばかりで、カップ&ボールをする感じではありません...では、なぜ??と思っていたら、氏はBob Whilte氏を師としているんですね。Bob Whilte氏といえば、カップ&ボールに通じており、評価の高いカップ&ボール解説ビデオを出しています。そしてよく見るとこのビデオの中でJared Kopf氏の名前も入っていますね…。このDVDについてはまたブログで紹介させて頂きたいと思いますが、このカップのセットのボールとBob Whilte氏がDVDで使っているボールが同じ色なのは偶然ではないと思われます。
冊子は、歴史的な話から始まり(このパートは古い英語の引用など英語が難しくて完全に理解できていません(笑))、トピック的にファイナルロード、ウォンド、ボール、カップの話などが書かれています。
総評として、最近のCNCのカップが個人的には少し重いと感じることもあり、昔からの職人さんの手で紡がれた(日本のSteelを使った)このカップは、大きさ、重さ、形、全てにおいて、いいカップだと思いました。ファイナルロード用のボールもカップ専用のぴったりサイズであることもGoodです!
というわけで非常におすすめですが、気になる点としては、お値段が高い、大きさがやや小ぶり、CNCではないという点でしょうか。セット&限定商品としての価格のためやはり高いと感じます。カップのみで200ドルくらいで販売してくれればありがたい…。テニスボールが入らないので、大きなボールを出したい人にはお勧めできません。また重いカップがいい、という方にもこのカップは軽くはないのですが、重いのが好みならCNCをお勧めします。購入をご検討の方はこの辺りも考慮されればと思います。
2023年最後のカップ紹介の予定です。今年もいろいろなカップが紹介できてよかったです。次回は、何か一般的な商品を挟む可能性はありますが、今年の振り返りを書きたいと思います。是非見て頂けると幸いです。