私の非常に数少ないレパートリを紹介する「My Repertoire」です。今回はDavid Regal氏の「Clarity Box」です。私が約束された場でクロースアップマジックを見て頂く際、必ずと言っていいほど行うカードマジックの手順があります。その手順のトリとして用いているのがこの「クラリティ・ボックス」です。この10年最も使ったマジック道具の一つになります。手順を大まかに書きますと、前半と後半に分かれてまして、前半ではトライアンフから始まりWOWで一区切りとなります。続いて後半は、WOWで使ったサインカードを使ってアンビシャスカードを行い、最後にこの「Clarity Box」からサインしたカードが出てくるという手順です。マジックをされる方にとっては、「なんとオーソドックスな...」と思われるかもしれませんが(;^ω^)
ご存知の無い方がいらっしゃるかもしれませんので、一応「Clarity Box」を紹介します。まずは、PVDです。
そして、David Regal氏の商品サイトです。
コメントしてくれているマジシャンのなんと豪華なことでしょう…商品も素晴らしいですが、氏のマジシャンとしての人柄もいいのだと思います。
日本のサイトとしてフェザータッチさんのページを示します。
クラリティBOX(透明BOXの予言)|メンタル,予知・予言やメンタルマジックグッズ通販のマジックショップ|フェザータッチ
現象は上記PVなどを見て頂いた通りで、はじめから置いてあった透明の箱にある折りたたまれたカードを取り出すと、なんと、観客のサインしたカードになっている!ということが実現できるボックスです。いわゆる「Card in Box」です。カード・イン・ボックスについて私の知ってる範囲で恐縮ですが示しておきます。このマジックを有名にしたのはやはり、フレッドカップス氏だと思われます。1958年、ドイツのマジシャンBruno Henni(ブルーノ・ヘニング)氏がフレッド・カップス氏に指輪ケースの中から折りたたまれた観客のカードがに見せました。フレッド・カップス氏はとても気に入り、このマジックをするようになりました。これがこの観客がサインしたカードが箱の中から出てくるという始まりだとされていますが記録が無いだけでもっと以前からあったかもしれません。(下記ページを参考)。
Cards | Card In Box (Conjuring Credits)
そして、指輪ボックスを使ったトミー・ワンダー氏の素晴らしい手順が生まれました。(このボックスについても別の機会に紹介したいと思います)。
その後、さらに「Card in Box」に革命が起こります。1996年(ごろ?)John Kennedy氏によって「Mystery Box」が作られたのです。この商品に付いての詳細は別の機会にに紹介したいと思いますが、きれいな木製の箱です。はじめ空の箱を観客に見せることが出来き、さらに終わってからも箱を渡すことが出来る画期的な箱でした。
そして5年以上経った、2013年頃、この「Mystery Box」の透明版のような「Clarity Box」が登場しました。箱を透明にすることで印象がだいぶ変わったと思います。トミー・ワンダー氏やジョン・ケネディー氏の箱の場合、「移動現象」であるのに対して、これは、カードが入った状態から始めるため、「交換現象」になるわけですね。ずっと目の前に置いてあったカードが自分のサインしたカードと入れ替わっている!ということになります。「どっちがいいのか?」は、なんとも言えませんが、この透明ボックスが多くのマジシャンの心をつかんだのは確かです。「Clarity Box」が登場した後、次々と新しい透明「Card in Box」用Boxが作られます。「Card to Clear Box」というジャンルができた感じがします。少しだけ紹介します。
<パラゴン 3D>
タイトルに3Dとあるように、立体的なカードを見せることができます。しかも、カードを取り出した後、ケースを手渡しすることもできます。コンパクトで完全なクリアボックスであるところも特徴だと思います。
フレンチドロップさん商品URLを示します。
かなりの絶賛紹介文ですよね(笑)。著名なマジシャンたちも推薦文を出しています。
<VISION BOX 2.0>
João Miranda(ジョーミランダ)氏の作品です。最近は高精度なサウンドデバイスを発売して話題になってますよね。いつも興味深い商品を出されます。「パラゴン 3D」と同じく、立体的なカードが入っていてほぼ360度角度から見ることができます。さらに、取り出した(?)カードをそのまま観客に渡すことが出来る(シャトルパスの必要もない?)ところが特徴です。
ビジョンBOX 2.0(新インビジブル・スイッチBOX)|カードマジック,変化・移動やメンタルマジックグッズ通販のマジックショップ|フェザータッチ
このフェザータッチさんの商品ページでは、たのクリアボックスとの比較のページがありますので、参考になると思います。
この他にも例えば今年(2023年)のブラックプールに出品していたDavid Penn氏とTCCのMystery Solved 2.0があります。まだまだいろいろ販売されているとは思いますが、このあたりが代表作品でだと思います。私は上2つを購入しましたが、結局クラリティ・ボックスを使っています。これは、演者がどこにポイントを置くか、で決まるものだと思っておりまして、だれにでもこれが一番というのは難しいかなと今のところ思います。
私がクラリティ・ボックスを利用している理由を簡単に言いますと、導入が楽(自分にとって自然に出せる)で、ハンドリングにストレスがほとんど無いという点です。
まず、導入に関してですが、はじめからカードを置いておくマジックを行う場合、個人的には何故折りたたまれたカードをマジックの前から置いておくのか?に違和感がありました。ピエールさんがされているJay Sankey氏のPaperclippedとかなら、取り出したカードから1枚選んでクリップで留めておきますね…という流れで自然なのですが、いきなりクリップに挟まった、もしくはボックスに入った折られたカードを取り出してきて「後で使いますね」というのはOKなのだろうか?…違和感ないだろうか?とモヤモヤしていたのですが、Clarity Boxには、「EMERGENCY USE ONLY」と書かれたシールが貼られているのでこのカードが何なのか、を説明しながら取り出すことが出来ます。
※ちなみに手順的にはアンビシャスカードで最後観客に「やってみますか?」と言ってカードを差し込んだ半分を観客に渡し、指を鳴らしてもらいます。一番上をめくってもらいますが、来ていません…「え?来てません?」といってもう一度やってもらいますが来ていません?どんなカードでしたっけ?と言いながら1枚ずつめくってもらい、後半はスプレッドしますがありません。私が持っているカードを広げて見せますがやはりありません…「すいません!やらかしてしまいましたね…これをマジック界の専門用語で『緊急事態』と言います...」というと、観客ははじめの話を思いだして、ハッとクリアボックスを見ます…という感じです。
次にハンドリングにストレスが無いというのは、ボックスから手に出すときの操作が非常に楽です。VISION BOX 2.0の引き出す出し方は「私にとっては」やや不自然でストレスでした。クラリティボックスは、ストレスがありません。何も考えずにボックスを傾けるだけです!さらに、出した後のハンドリングもストレスがありません。手のひらには観客のサインカードのみですので、かなりラフに扱うことが出来ます。ここが「パラゴン 3D」より私が好む点のひとつです。さらに、私はマーキュリーフォールドが上手くないので、「パラゴン 3D」のようにギチギチに入った小さなボックスから取り出したようには見せる自信がないです…もちろんこれはクラリティボックスでも気になるので、出したらすぐに広げる作業に取り掛かり、広げて見せた後、私は両手で再度きれいに4つ折りにさりげなく一度折ってから観客の手に渡しています。
クラリティボックスの欠点の1つで言われている、「終わった後ボックスを渡せない」、という点に関してですが、カードが出てきたとき、観客は「まさか...」と思っているのでカードに目が行きます。出てきた後の箱に関しては興味を持ちません。私が演じるのはマジシャン相手でないからかもしれませんが、これまで100回以上やっておりますが、一度もボックスを調べさせてほしいと言われて事はありません。不思議なくらい言われません(;^ω^)。
もちろん、私も問題だと思うクラリティボックスの欠点はあります。まず、背後から見せることが出来ないことです。これは完全に囲まれた状況でマジックをされる方にとっては致命的ですのでそういう方に取ってはClarity Boxは使えません。あとは少し大きいので持ち運びに場所を取るということです。これも致命的となる方はいらっしゃるかもしれません。私もそういう場合は同じカードマジックをするにしても、最後はミント缶を使うか、折りたたまず、ルポールの財布になっている自分の財布を使います。
というわけで、私のようにカバンを持って行って、マジックをはじめ、後ろに観客がいないという状態で演技をし、ハンドリングにストレスを感じたくない方にお勧めの「Clarity Box」でした!