おもしろい。
そう思わせるミステリが登場した。
これはこれまでに味わったことのない楽しい面白さである。
著者の名は我孫子武丸。作品はデビュー作『8の殺人』である。
といっても、我孫子先生の作品を読んだのは今回が初めてではない。私はこれまでに『たけまる文庫 怪の巻』、『殺戮にいたる病』、『0の殺人』の三作を既に読んでいる。たしかにどれも面白かったが、唸るほどでもなかった(『殺戮~』は仰天したが)。
しかしこのデビュー作では悶えることとなった。読んでいてこんなに楽しさを感じたミステリは初めてだ。いやもちろん他にも楽しいミステリはあったが、それらとは少し違ってなにかこうウキウキしてしまう感覚なのである。
作中には、欧米ミステリ“黄金時代”の作家ジョン・ディクスン・カーの名が多く登場するが、ミステリマニアでない私にもちゃんと分かるように書かれていた。これはおそらくミステリを全く読まない人にも読める代物だろう。
作品から受けるイメージとしては、ユーモア・ミステリといってよいだろう。凶悪殺人を起こしてどろどろとした雰囲気を作るわけではなく、不可解な事件を中核に置きつつもその周りに魅力的な人間たちを配置し、ちょっとしたコメディを入れつつ、推理も着々と進んでいく。殺人事件なのに、なぜか和やかな雰囲気を漂わせている。そしてそんな軽快な雰囲気の中でも「密室講義」などといういかにもミステリといった要素も欠かさない。
いや、実によくできた作品だった。
最も好感が持てたのは、トリックが簡単だという点である。まぁ、そう言ってしまうと語弊があるが、ある程度ミステリを読みなれている人間であれば、トリックは解けると思われる。そもそも、今までに一度たりともトリックや犯人を当てることができていない私ですら、なんとなく解けてしまったのだ。まぁ、そのトリックのあまりの単純明快さに、まさかなぁ、と疑ってしまったが。
どちらかというと第二の殺人のほうが難しかった。なぜならそれは犯人の意図せぬ結果であり、ちょっと卑怯な、推理を混乱させるような証言があったからである。探偵役の青年がすべてを言ってしまう直前に、まさか! と唸った。
第一の殺人に使われたトリックは、屋敷の形からだいたい予想がついていた。まぁ、そのトリックは解かれるべくして用意されたものだったので、威張れることではない。
一番のミソは犯人だろう。まさかあんなことをする犯人がいたとは、驚きだった。たしかに小説であればそういう博打をする犯人もいるだろう。しかし私は作中至るところに散りばめられた「現実の出来事は小説のように合理的に運ばない」という言葉に洗脳されており、つい、この作品が小説であることを忘れてしまっていたのである。阿呆か。そういう要素もなかなか妙である。
真相が明らかになったころ、私は歓喜していた。なんだこれは、ミステリって面白い! と、そう思った。
これはいい。
まだミステリを読んだことのない人は、これを真っ先に読むべきである。これは十分、ミステリにハマるきっかけとなれる作品だろう。
激しくオススメする。
そう思わせるミステリが登場した。
これはこれまでに味わったことのない楽しい面白さである。
著者の名は我孫子武丸。作品はデビュー作『8の殺人』である。
といっても、我孫子先生の作品を読んだのは今回が初めてではない。私はこれまでに『たけまる文庫 怪の巻』、『殺戮にいたる病』、『0の殺人』の三作を既に読んでいる。たしかにどれも面白かったが、唸るほどでもなかった(『殺戮~』は仰天したが)。
しかしこのデビュー作では悶えることとなった。読んでいてこんなに楽しさを感じたミステリは初めてだ。いやもちろん他にも楽しいミステリはあったが、それらとは少し違ってなにかこうウキウキしてしまう感覚なのである。
作中には、欧米ミステリ“黄金時代”の作家ジョン・ディクスン・カーの名が多く登場するが、ミステリマニアでない私にもちゃんと分かるように書かれていた。これはおそらくミステリを全く読まない人にも読める代物だろう。
作品から受けるイメージとしては、ユーモア・ミステリといってよいだろう。凶悪殺人を起こしてどろどろとした雰囲気を作るわけではなく、不可解な事件を中核に置きつつもその周りに魅力的な人間たちを配置し、ちょっとしたコメディを入れつつ、推理も着々と進んでいく。殺人事件なのに、なぜか和やかな雰囲気を漂わせている。そしてそんな軽快な雰囲気の中でも「密室講義」などといういかにもミステリといった要素も欠かさない。
いや、実によくできた作品だった。
最も好感が持てたのは、トリックが簡単だという点である。まぁ、そう言ってしまうと語弊があるが、ある程度ミステリを読みなれている人間であれば、トリックは解けると思われる。そもそも、今までに一度たりともトリックや犯人を当てることができていない私ですら、なんとなく解けてしまったのだ。まぁ、そのトリックのあまりの単純明快さに、まさかなぁ、と疑ってしまったが。
どちらかというと第二の殺人のほうが難しかった。なぜならそれは犯人の意図せぬ結果であり、ちょっと卑怯な、推理を混乱させるような証言があったからである。探偵役の青年がすべてを言ってしまう直前に、まさか! と唸った。
第一の殺人に使われたトリックは、屋敷の形からだいたい予想がついていた。まぁ、そのトリックは解かれるべくして用意されたものだったので、威張れることではない。
一番のミソは犯人だろう。まさかあんなことをする犯人がいたとは、驚きだった。たしかに小説であればそういう博打をする犯人もいるだろう。しかし私は作中至るところに散りばめられた「現実の出来事は小説のように合理的に運ばない」という言葉に洗脳されており、つい、この作品が小説であることを忘れてしまっていたのである。阿呆か。そういう要素もなかなか妙である。
真相が明らかになったころ、私は歓喜していた。なんだこれは、ミステリって面白い! と、そう思った。
これはいい。
まだミステリを読んだことのない人は、これを真っ先に読むべきである。これは十分、ミステリにハマるきっかけとなれる作品だろう。
激しくオススメする。
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