気がつくとテストが終わっていた。
そして、担任が学校をやめた。
新しい担任は後期から着任ということになる。
テストが終わると同時に前期も終了した。
月曜と火曜が臨時休業になって、水曜から後期授業が始まる。
テストが終わってもぼくは相変わらず風邪を引いていたし下痢も引きずっていた。
なのにテスト最終日の午後はカラオケに行って五時間も歌った。
連れていかれたのである。
咳やくしゃみが . . . 本文を読む
テストが二時間しかなかったので早い時間に学校を出た。お昼までには結構な時間があり、同室者に誘われて海に行った。
青い空と青い海がまっぷたつに別れている境界線が目に飛び込んでくる。
日除けの小さな休憩所みたいな小屋みたいな場所があり、そこでただじっとしていた。
恐ろしく痩せ細った猫がいて、同情してしまいそうになる。近寄ってみても逃げようとせず、逆にむこうから歩み寄ってきた。
僕はケータイの . . . 本文を読む
ついに一度も勉強せずに夜になり風呂の時間ギリギリになった。
なかばしかたなく、なかばやる気なく、風呂の支度をしていざ浴場へ。
脱ぎ捨てられたサンダルの数は10で、5足。普通に考えて先客は5人。その少なさに安堵する。
裸にタオル一枚を当てて風呂場へ。
角……つまり隅っこに陣取る。入口に背を向けたカタチで、このポジションが一番楽だった。ラッキィ。
イスみたいなのに腰を下ろしてみてさてなにを . . . 本文を読む
本棚を見ると妙なことになっていた。かなり以前にあきら氏から借りた自己啓発系の本『「うつ」をやめれば、楽になる』の隣りに『人間失格』があり、その隣りに漫画版『GOTH』(猟奇殺人を主に扱った作品)がある。さらにその隣りが嘘日記集『小生物語』なのだから意味不明だ。
鬱をやめて鬱を再発して殺人衝動にかられ嘘つきの称号を得る。「しっちゃかめっちゃか」とはこのことか。
またさらに隣りを見てみれば、そこ . . . 本文を読む
テスト範囲外のところを勉強してしまってほとんど勉強できてなかったテストが、ヤマが当たってギリギリなんとかなったような気が今している。とはいえ赤点の可能性は大きい。勉強できなかったわりにはまぁ……という話である。半分できていればよい。
ぼくは最近、昼食を時間ギリギリの食堂で食べる。できるだけ人間の少ないときに食べるための配慮である。
しかし残念なことに今日は人が多く、混雑していた。とはいえ席が . . . 本文を読む
僕には普通の家族がいる。
鬱病患者の父とヒステリックな母と人間関係に少々うんざりしている弟、それに左半身不随の母方の祖母である。
鬱病のくせに視線恐怖をあまり感じないのか市内を散歩できる父がうらやましい。家では常に怒るか馬鹿笑いしているけれど外ヅラはよいらしい母がうらやましい。嫌いなやつに好かれるとか愚痴を言いながらも前向きにきちんと生きている弟がうらやましい。七十年以上も一生懸命に生きてき . . . 本文を読む
元母に呼ばれて図書館に行った。
なんか怪しい書類にサインさせられた。保険金詐欺でもするつもりか、ぼくは職業を偽って書くように強制された。
あれはなんだったのだろう……?
怖いので考えないことにする。
そんな元母から解放されて隣りの図書室に行ってみて驚いた。
クラスの男子が低学年女子を複数したがえて本を読んでいた。
これがいわゆるハーレムというやつなのか……? と驚愕した。
一度図書 . . . 本文を読む
嘘日記を再開したのはいいが、ぜんぜん嘘を書いていない。だからこれから嘘を書こうと思う。勉強してないけど書く。
ぼくは好青年だった。どこからどう見ても好青年然としており、非の打ちどころがないようだった。
そんなぼくは、当たり前だが、女子にほっとかれない人間だった。どこにいてもどこからか誰からかの視線を感じる。視線の先には、決まって女の子の目があり、見つめ返すと相手はかならず、頬を朱に染めた。 . . . 本文を読む
ようやく、『人間失格』を読み終えた。
作中の「手記」を本文とするなら、手記の作者が主人公ということになるのだろうか。そうするとぼくは、主人公と似ている。
まぁ、さすがにここまでひどくはないけれど、ぼくも思い込みの激しい人間だから。いろいろと「わかる」思いがあった。
あまり深い話をするとネタバレになってしまうのでしないが、ぼくはこの主人公はとても人間らしいと思うし、どちらかといえば真人間より . . . 本文を読む
あえて誰のことかは言わない。
私は、これは私の勝手な考えなのだけど、大切な人にはできるだけ尽くそう、なんでも望みを聞いてあげよう、誰が否定してもぼくは肯定しよう、そう思ってきた。
けれどそれは、ときに間違いにつながる。甘やかすことになる。甘やかしすぎることになる。
私はようやく、それを危惧できるくらい頭を冷やした。
なんでもしてあげる。それは優しさではなく甘やかしである。
ときには間違 . . . 本文を読む
今から太宰治の『人間失格』を読もうと思います。
自分はなにをすればいいのか。なにをしなければならないのか。なにをしてはいけないのか。なにもしなくていいのか。なにもできなくていいのか。どうでもいいのか。
いいわけがない。
言い訳はしない。
言い訳をしたくない。
自分の意志とは何か。
なにがどうなっているのか。
ぼくは今、わけがわからない状態にある。
自分でなにを言っているのかもよく . . . 本文を読む
勉強がいやになり嘘日記を書くことにした。昨日(きのう)も一昨日(おととい)も一昨昨日(さきおととい)も、全く勉強していない。ずっと勉強せずに寝込んでいた。
嘘日記は嘘なので何を書いてもよかった。でも嘘をつくと心が痛くなるので不用意に嘘は書けなかった。だからいつも嘘じゃない本当のことを嘘っぽく書いている。嘘っぽく書いているだけで全然、嘘じゃない。事実です。
ちなみに嘘日記で嘘を言うと本当になる . . . 本文を読む
「昔のお前のほうがカッコ良かった」
また言われた。
今の、この、自分に自信のない、信念のない、誇りのない、ポリシーのない、フヌケ人間は、昔の一匹狼のときより、ダメ人間だと、そういうことらしい。
他人を片っ端から否定していた昔と、他人の言うとおりにしか動かない今。
昔のほうがカッコ良かった……か。
オレにはどちらも同じに思える。どっちにしたところで、失格人間だ。
どちらにしても、ハタ迷惑 . . . 本文を読む
彼女への手紙を書いていると、クロネコメール便で『人間失格』が届いた。それは先週、僕が自分で注文していたものである。昔の文豪にさほどの興味もないが、人間失格というのが自分にふさわしい気がして、買ってしまった。
もくじを見て、むっとする。
本文のあとに、語注、解説、鑑賞、年譜などという野暮なものが三十ページも続いていたからだ。解説や年譜、語注なんてものはしかたないとしよう。しかしながら鑑賞とはな . . . 本文を読む